機動戦士ガンダムSEEDASTRAY X INFINITY   作:ichika

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愛しき人へ

noside

 

宇宙区間、デブリベルトに四隻の船の姿があった。

 

一隻は白亜の戦艦、アークエンジェル、その真横に停泊しているのは水色の戦艦、クサナギ、更にそのやや右斜め後方にはワインレッドの戦艦、エターナルの姿があった。

 

彼等は別名、三隻同盟と呼称され、ナチュラルとコーディネィター関係なく構成されている。

 

元々の軍の在り方、ナチュラルとコーディネィターの争いの連鎖に疑問を抱いた者達が集い、ナチュラルとコーディネィター、つまりは連合とザフト、その両方を滅ぼさずに戦争を終結させようとする者達で構成されている。

 

大義は実に立派であり、聞こえはいいかもしれないが、理想で飯は食えないし、腹も膨れない。

 

特定の軍に属さない彼等は物資や弾薬を補給する手だても、そして当てもなかった。

 

これでは機を前に自分達が枯渇してしまうと考えた彼等は、どうにかして補給の手立てを整える必要があった。

 

そこで、エターナルの艦長であった、元ザフトの地上部隊隊長で、砂漠の虎と呼ばれていたアンドリュー・バルトフェルドは、自身を死の淵から救い出してくれたジャンク屋の存在を思い出し、彼等に物資の補給を依頼したのだ。

 

そのジャンク屋とは、たまたま戦闘の影響で地球へと降下していたロウ・ギュール一行であったのだ。

 

ジャンク屋組合は民間の組合なために中立を貫いており、言い方は悪いが、金さえ払えばどんな団体にも物資を届けることも請け負うのだ。

 

そんな理由で、現在ジャンク屋、ロウ・ギュール一行は三隻同盟と接触、補給活動を行っていた。

 

エターナルの付近に停泊するジャンク船、リ・ホームのとある部屋に、長い金髪をポニーテールにした女性と、ベッドに横たわる短い金髪を持った少年がいた。

 

「プレア、調子が悪いなら無理しちゃダメだよ、焦っても何にもならないんだから。」

 

ベッドの傍らに置かれていた椅子に腰かける女性、シャルロット・デュノアは、目の前に横たわる少年に言い聞かせるように話した。

 

彼女の優しげな雰囲気と言葉から、無理をしてでも起きていようとする子供を優しく叱る母親の様にも見える。

 

「はい・・・、御心配をお掛けします、でも、本当に大丈夫ですよ、発作も収まりましたし・・・。」

 

彼女に対して申し訳なさそうに言いながらも、もう大丈夫と言わんばかりに起き上がろうと身を起こす。

 

「だーめ、ここの所、ずっと気を張ってたでしょ?休める時に休まないと、もっと辛くなるからね?起きてても良いから横になる、いいね?」

 

しかし、それを許すシャルロットではない、プレアの肩を掴み、ベッドに横たわらせる。

 

流石に力が入らなかったのか、彼はされるがままに身体を横たえた。

 

「はい・・・、分かりました・・・、大人しくしてます・・・。」

 

「分かってくれたなら嬉しいよ、何かあってからじゃ遅いもの。」

 

微笑みながらも、彼女はどこか憂いが窺える様な表情を一瞬だけ見せた。

 

それを見逃さないまでに体力も集中力も戻ったプレアは、訝しげに彼女に尋ねてみた。

 

「シャルロットさん・・・?どうかされたんですか・・・?」

 

「えっ?どうしたの?」

 

自分がどんな表情をしていたのかに気が付かなかったのだろうか、シャルロットは驚いた様に目を丸くし、プレアに尋ね返していた。

 

「いえ・・・、なんだか、悲しそうな感じがしたので・・・、何となく、そう感じたんです・・・。」

 

「・・・、そっか・・・、分かっちゃう、か・・・。」

 

自分が一瞬だけ感じた心の痛みを、自分の年齢の半分にも満たない少年にまで見抜かれてしまったとなると、もう隠し事は出来ないと、彼女は何処か影のある笑みを浮かべた

 

「何か、あったんですか・・・?」

 

「そうだね・・・、さっきまでのプレアを見てたら、ずっと昔に死んだお母さんの事思い出しちゃってね・・・。」

 

自分はまずい事を聞いてしまったのではないかと言う風に、不安げな表情を浮かべる彼に、彼女は呟く様に話し始めた。

 

「僕の家は母子家庭だったんだ、お母さんと僕と・・・、二人で小さな田舎町で暮らしてた・・・。」

 

それは、シャルロットの過去、彼女が今も思い続ける者達と出会う、更に前の事だった。

 

「そんなに裕福じゃなかったけど、とっても幸せだった・・・、こんな時がずっと続いて欲しいって心から思ってた・・・、お母さんが病気になるまでは、ね・・・。」

 

思い出話を語り、楽しそうだったシャルロットの表情が暗く、寂しそうな表情へと変わっていく。

 

それは戻らぬ時を、戻らぬ者を嘆いている様にも見えた。

 

「僕が君よりちょっと年上ぐらいの時にお母さんの病気が分かってね・・・、僕に心配掛けさせたくなかったからだと思うけど、もう、手遅れだったんだ・・・。」

 

「・・・。」

 

「それから半年もしない内に、お母さんは死んじゃったんだ・・・、だから・・・、僕がもっと気を使ってあげてたら、助けられたんじゃないかって、そう、思っちゃうんだ・・・。」

 

自分が気を使っていれば、自分が気に掛けていれば助けられたかもしれない、それがシャルロットの、プレアに対する心配の根底にあるものだった。

 

それが分かったからこそ、プレアは焦っていた自分が少し申し訳なく感じた。

 

彼も、誰かに心配をかけたくはないのだ、身体の事で心配されても、誤魔化すなりなんなりして乗り切れればと思っていた。

 

だが、シャルロットはこの船のメンバーの中でも、特に自分を気遣っていてくれたのだ。

 

「ごめんなさい、シャルロットさん・・・、気を使っていただいたのに、僕は・・・。」

 

「ううん、いいんだよ、僕のおせっかいみたいなものだったし、こっちこそ、押し付けてゴメンね?」

 

申し訳なさそうに頭を下げようとするプレアを制し、彼女はこちらこそと言う風に頭を下げた。

 

「でもね、プレア、これだけは覚えてて、君はもう僕達の仲間、友達なんだ、一人で焦っても仕方ないじゃない、だから、皆で一緒に頑張ろうよ、僕達皆でさ?」

 

「はい、ありがとうございます、シャルロットさん。」

 

自分の手を取り、優しく微笑む彼女の姿に、プレアは微笑みながらも喜びの感情に包まれていた。

 

自分を仲間と、友と認めてくれた事、彼がこれまで感じた事のない関係性が嬉しいのだろうか・・・。

 

「じゃあ、約束だよ、一人で無理しない、いいね?」

 

「はいっ、シャルロットさんも、ですよ?」

 

シャルロットが差し出した小指に自身の小指を絡ませ、指切りで契りを結ぶ。

 

「うん、これで僕達は本当の意味で仲間だ、これからは甘えても良いんだよ、プレア。」

 

「か、からかわないでくださいよ!」

 

シャルロットの笑みに何を想像したのだろうか、プレアは手を振りながらも慌てていた。

 

思春期はまだとは言えど、シャルロット程の美貌を持った女がこれほど間近にいれば男の本能として何かを感じるのだろうか・・・。

 

「何してるの、シャルロット、プレア?」

 

そんな時に部屋の扉が開き、樹里が入って来た。

 

からかう様に笑うシャルロットと、何故か矢鱈と取り乱すプレアの姿に疑問を持ったのだろう。

 

「あ、樹里だ、どうしたの?」

 

「き、樹里さぁん・・・!」

 

しれっとしたまま振り返るシャルロットと、涙目で彼女をすがる様に見るプレア。

 

端からみ見れば明らかにシャルロットがプレアに何かした様にしか見えない。

 

が、相手は天然ネガティブを地で行く樹里だ、普通にじゃれてたとしか思えなかったようだ。

 

「補給終わったからそろそろ出発するって、二人とも準備してね、それからプレア、ロウが呼んでたけど、動ける?」

 

「は、はい!すぐに行きます!!」

 

樹里の言葉を何かの助け船かと思ったのだろうか、プレアはベッドから跳ね起きると脱兎の如く部屋から飛び出して行った。

 

「ふふふっ♪あれぐらいの男の子はからかい甲斐があるなぁ、反応が大袈裟なんだもの。」

 

「シャルロット・・・、一体何したのよ・・・。」

 

愉しそうに笑うシャルロットの確信犯的な何かを感じたのだろうか、樹里は呆れた様な表情を見せながらも彼女の隣に腰掛ける。

 

「エターナルへの補給も終わったし、後はまたドレッドノートの頭探しよね、私達も忙しいわよねぇ。」

 

「ふふっ、お疲れ様だよ、忙しかったのなら僕も手伝った方が良かったかな?」

 

「大丈夫よ、運搬とかは向こうの人達がやってくれたし、ほとんど何もしてないから。」

 

「そっか。」

 

二人きりになった彼女達は、年が然程離れていない事も相まってか、和やかな雰囲気の中で会話を始めた。

 

あまりゆっくりと女同士で話す機会も無かったのだろう、仕事も一段落した今は絶好の会話の機会だった。

 

「それはそうと、私さ、この一週間ずっと聞きたいなって思ってた事があるんだけど、聞いていい?」

 

「何かな?僕に答えられる事なら何でも答えるよ。」

 

以前から聞きたがっていた事があったのだろう、樹里は好奇心に満ち満ちた瞳をシャルロットに向けていた。

 

シャルロットとしても、樹里が自分の事を知りたがっているのならばそれに答える事が礼儀だと思っていた為に、答えられる範囲なら答えようとしたのだ。

 

だが、それは苦い思い出を呼び起こす事になる事も、また必然であった。

 

「シャルロットって、此処に来るまでは何してたの?ロウを知ってたって事は、やっぱりジャンク屋なの?」

 

樹里にとっては、本当に何気なしの質問であったのだろうが、その問いは、シャルロットにとっては、今は無き、愛しき者達への燻る思いを呼び起こすも同然だった。

 

「そっか・・・、そう、だよね・・・、まだ、話してなかったもんね・・・。」

 

「えっ・・・!?ま、まさか、聞いちゃダメだったの・・・!?」

 

シャルロットの表情が曇り、何処か痛みを堪える物に変わった事に、樹里は自分が踏み込んではいけない話題に踏み込んでしまったのかと焦った。

 

現に、シャルロットの雰囲気にいつもの明るさは無く、何処か悲壮感すら漂う沈鬱な物になってしまっていた。

 

「ううん・・・、大丈夫だよ・・・、知っておいて欲しい事でもあるから・・・。」

 

「で、でも・・・、無理しなくても・・・!」

 

自分の気持ちを優先して話してくれる事は嬉しいが、何も苦しい思いをしてまで話さなくてもと、樹里は彼女の言葉を遮ろうとしたが、シャルロットの手がそれを制した。

 

「いいんだ・・・、聞いてほしいんだ、僕の気持ちの整理を着けるためにも・・・、樹里に知っててほしい。」

 

「そ、それなら・・・、うん、聞かせてほしい、かな?」

 

彼女が話すと決めた以上、それを無碍にする事は出来ないと、樹里は姿勢を正し、聞く体勢を整えた。

 

「先ずは、そうだね・・・、僕がロウを知ってる理由から話そっか、そっちの方が後々の話にも繋がって行くし、これだけは大前提として知っておいて欲しんだ、僕は、この世界の人間じゃないってことを。」

 

「えっ・・・!?どういう事・・・!?」

 

突拍子もないシャルロットの言葉に、彼女は声をあげた。

 

この世界の人間ではないとはどういう事なのか、彼女はここに存在しているではないか・・・?

 

「荒唐無稽な話だと思ってるだろうけど、本当の事なんだ、僕は前の世界でロウとジョージに会ってる、だから彼等の事を知ってるんだ。」

 

彼女の驚愕を受けつつも、シャルロットは静かに頷きながらも言葉を紡いでいく。

 

その言葉は何処までも実直であり、彼女を欺こうとする気配は何処にも無かった。

 

「で、でも、仮にそうだとしても、それは向こうの世界での話でしょ?なんでこっちのロウが会った事も無いシャルロットを知ってたの?」

 

「それは・・・、うん、僕にも分からないんだ・・・、だけど、多分だけど人智を超えた何かが働いたとしか言えないよ・・・。」

 

そう、樹里の指摘の通り、シャルロットが出会ったのは以前の世界でのロウ・ギュールであり、この世界の彼ではない。

 

なのに何故、彼は初対面である筈の彼女を知っている様な素振りを見せたのかという疑問が残る。

 

それについては、シャルロット自身も良くは分かっていなかった為に、曖昧な答えしか返す事が出来なかった。

 

「わ、分かったわ・・・、それで、シャルロットは向こうの世界で何をしてたの?」

 

しかし、そこばかりを追求し続けていても話が進まないと思ったのだろうか、樹里は彼女の言葉を信じる方向で続きを尋ねていた。

 

「僕は日本って国で学生をやってたんだ、ロウと知り合ったのはとある開発企業での事なんだよ。」

 

「へぇ~、学生かぁ、企業って事は、やっぱりMSとかの?」

 

シャルロットが話す内容に好奇心を掻き立てられたのだろうか、樹里は前のめりになりそうな勢いで質問を繰り出した。

 

「ううん、僕がいた世界にはMSは無かったんだ、その代わりに、ISっていうパワードスーツが在ったかな。」

 

「IS・・・?何なのそれ?」

 

彼女の口から聞きなれない単語が出てきた為か、樹里は怪訝そうな表情を浮かべていた。

 

「簡単に言えば宇宙開発用の為の機械だった、でも、実際はどんな戦闘機よりも早く、どんな戦車よりも堅く、その上に強力な攻撃力があった、それだけなら良かったんだけど、ISには最大の欠陥があったんだ、女にしか動かせないっていう欠陥がね・・・。」

 

「えっ・・・、それって・・・。」

 

彼女の言葉に、樹里は現在の戦争の要因の一つを思い出した。

 

それは・・・。

 

「うん、ナチュラルとコーディネィターみたいなものかな、力を持ったと勘違いした女達は、男達を虐げ始めたんだ、当然、男達は納得出来なかっただろうね、本当に酷い有様だったよ、こっちとは真逆の対立関係だけどさ。」

 

「・・・。」

 

彼女が考えていた事を肯定するかの様に話すシャルロットの言葉に、樹里は悲しいような、そしてやはりかと感じる自分がいる事に気付いていた。

 

力を持つ者は持たざる者を蔑み、持たざる者は持つ者を嫉み、憎む。

 

それが人間の持つ性質の一つだと分かってはいても、何処か遣る瀬無い気分になっても仕方がない。

 

「でも、そんな世界に異を唱えた人がいたの、彼の名前は織斑一夏、世界でたった三人しか見つからなかった男性IS操縦者の一人だったんだ・・・。」

 

「織斑・・・、一夏・・・。」

 

その男性の名を呟くシャルロットの表情が、慈しむ様な、哀しむ様な表情になった事を樹里は見逃さなかった。

 

その表情は、心から愛する者を想う女の物であり、彼女はその一夏と言う人物とシャルロットとの関係を察した。

 

恐らくは、互いにとって無くてはならない、心の底から愛し合っていたのだろうと・・・。

 

「彼はとっても強かった、誰よりも、何よりも・・・、そして誰よりも優しかった・・・、だから、歪んで行く世界を許せなかったんだ・・・。」

 

「・・・。」

 

懐かしむ様に話すシャルロットは、堪え切れなくなったのだろうか、涙を零し始めた。

 

そんなシャルロットの様子に言葉を失いつつも、樹里は一言一句聞き逃すまいと耳を澄ませる。

 

「彼は仲間を集め、世界に反旗を翻した、僕も彼に従って世界と戦った、世界を元のあるべき姿へと戻そうとその力を振るったんだ、そして、僕は唯一無二の盟友と一緒に、戦って戦って、その終わりに、僕達は、死んだんだ・・・。」

 

「死ん・・・、だ・・・?どういう事なの・・・!?」

 

悲しげに話すシャルロットの言葉に、樹里は絶叫しながらも彼女にその真相を尋ねた。

 

ただ単純に信じられないのだろう、今自分の目の前にいて、話をしている人物が死んだという事を・・・。

 

「僕を殺す役目を請け負った子に、僕はここを貫かれて死んだんだ・・・、即死は、出来なかったけどね・・・。」

 

シャルロットは胸を、正確にはその下を指しながらも、何処か懐かしむ様な、悲しそうな、そして何処か申し訳なさそうな表情を窺わせた。

 

嫌な役目を押し付けてしまった事への負い目か、それとも共に同じ志を抱けなかった事への後悔か・・・、その表情は樹里に彼女の過去を推察させる大きな手助けになっていた。

 

「友達・・・、だったの・・・?」

 

「どうだったかなぁ・・・、僕が敢えて拒絶してた様なものだし、向こうがそう思ってくれてたのかも、もう分からないかな・・・。」

 

樹里の質問に、彼女はイエスともノーとも答える事が出来なかった。

 

嘗ての彼女は、全てを欺く為とはいえ、彼女を友と思っていた者の想いに背を向け、それらを全て踏み倒してきた様なものだったのだから・・・。

 

「でもね・・・、それでも構わなかったんだ・・・、一夏と、たった一人の友達、セシリアと三人でいられたら、それで良かった・・・、誰に恨まれても、憎まれても・・・、それなのに・・・・。」

 

話の途中、遂に堪え切れなくなったのだろうか、そのアメジストを思わせる瞳から大粒の涙を幾つも、幾重も零し始めた。

 

その涙には、割り切れなかった想いと、嘗て傍に在った温もりが今は無い事への寂しさから来たのだろうか・・・。

 

「どうして・・・、どうしてなのさ・・・、僕だけが生きてるの・・・?どうして僕ばっかり独りになっちゃうの・・・!?」

 

その言葉は、叫びは既に樹里に向けられたものでは無くなっていた。

 

それは、戻らぬ者を、愛しき時を嘆く様であった・・・。

 

 

「シャルロット、貴女は独りなんかじゃないよ・・・!シャルロットには、私も、ロウも、プレアだっているじゃない!!」

 

シャルロットの嘆きに、樹里は声を張り上げ、自分達が彼女と共に在る事を叫ぶ。

 

代わりになど成れない事は百も承知、だが、今の彼女と共に在る事だけはできると、樹里は彼女に向けて言う。

 

「その人達の代わりになるなんて言えない、言えないけど、私は今、シャルロットと一緒にいる、独りになんかじゃないでしょ?」

 

「樹里・・・。」

 

彼女の言葉に、シャルロットは伏せていた顔を上げ、彼女を見る。

 

「もう、私達は友達でしょ?だからさ、そんな寂しい事、言わないでよ・・・。」

 

「ゴメンね、気を使わせちゃったかな・・・、そうだ・・・、僕はもう、独りなんかじゃない、こんなにも想ってくれる友達がいるんだもの。」

 

自身の手を取り、自分の事でも無いのに泣きそうになっている樹里に感謝しつつ、彼女は頬をつたう涙の雫を拭った。

 

「一夏達の事を忘れるなんて出来ない・・・、でも、今は樹里が、リ・ホームの皆がいてくれてるんだ、寂しい事なんてないよね。」

 

「うん!」

 

彼女の言葉に、樹里は嬉しそうに笑っていた。

 

それは、二人の心が通い合った証拠でもあり、絆でもあった。

 

「それでさ、シャルロットとその人ってさ、どうやってそういった関係になったの?」

 

暗い話はここまでという風に、樹里は表情を緩めながらもシャルロットに男女間の事について質問していた。

 

彼女も一人の男に想いを寄せる乙女、恋バナの一つや二つ聞いてみたいという気持ちが強いのであろう。

 

「ふふっ、ロウとの関係進展の参考にするつもりなの?いじらしぃ~。」

 

「か、からかわないで教えてよ~!減る物じゃないでしょう?」

 

それに気付いたシャルロットの意地悪な言葉に、耳まで赤くしながらも、樹里は引き下がらずに尋ねた。

 

「そうだねぇ、僕が最初に好きって意思表示して、それを一夏が汲んでくれたんだよ、彼、ぶっきら棒に見えてもすごく優しかったから、すぐに一緒になれたんだ♪」

 

「へぇ~、すごく好い人じゃない・・・、羨ましいなぁ・・・。」

 

シャルロットの話の内容に、樹里は一種の羨望を抱いた。

 

彼女の想い人は、一言で表すなら機械バカであり、その他の事に無頓着と言っても過言ではないのだ。

 

そんな彼に、自分の想いを察して欲しいという事は極めて難しい話であった。

 

だからこそ、シャルロットの想い人の様に、片思いを察してくれるなど、夢のまた夢であるのだ。

 

「でもね、やっぱり最後はキチンと彼に伝えたよ、貴方の事を愛していますって、じゃないと、本当の意味で伝わらなかったと思うんだ。」

 

懐かしむ様に、そして慈しむ様に、彼女は樹里に自身の体験談を語り聞かせた。

 

自分の額を樹里の額とくっ付け、静かに話していく。

 

「だからさ、最後に必要なのは思い切りと、素直な気持ちだけだよ、だから、焦らなくていいんだ、自分の気持ちに納得して、それを伝えられるならきっと上手くいくからね?」

 

「うん・・・!私、頑張ってみる!シャルロット、ありがとう!」

 

シャルロットの言葉に、樹里はほんの少し自信を持てたのだろうか、少しだけ微笑んで彼女に礼を言っていた。

 

「うん、どういたしましてだよ、それじゃ、そろそろ艦橋に行こっか、何かあるんでしょ?」

 

「あ、うん、そうだったわね、じゃ、また今度、もっと深く教えてよね!」

 

「もちろんだよ、じゃあ、一緒に行こう。」

 

軽い会話を交わしつつ、彼女達は他のメンバーがいる艦橋に向けて移動を始めた。

 

これから先に起きる何かに向け、恐れずに進んで行く様に・・・。

 

sideout




次回予告

何故自分は独りなのか、どうして彼女達はいてくれないのか、罪と思慕の狭間で揺れる彼の想いとは・・・。

次回機動戦士ガンダムSEEDASTRAY X INFINITY

茨の様に

お楽しみに~。
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