機動戦士ガンダムSEEDASTRAY X INFINITY   作:ichika

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シリアスが支配しているこの小説ですが、たまには息抜きと言うことでちょっとお馬鹿な話をひとつ・・・。


番外編 降臨、丸いヤツ

noside

 

一夏の身の上話が終わり、彼等が本当の意味で飲み始めてからすでに二時間が経過しようとしていた。

 

普段からそこそこ飲んでいるジャックと、久方振りの飲酒とは言えど、酒に強い一夏との飲み会は何の問題もなく進んでいた、様に見えた・・・。

 

「はははっ!!もっと飲めよジャック~、こんなもんじゃないだろ~?」

 

「お前こそ飲めよ!さっきから全然減ってねぇぞ~!」

 

煽る様にジョッキに酒を注いでいく一夏に対し、ジャックも負けじと彼のジョッキにビールを注いでいく

 

見ればわかるだろうが、この二人、顔を真っ赤に染め、すでに泥酔状態に陥っていた。

 

目の焦点は定まらず、酒を注ぐ手はよく見てみれば小刻みに震えており、時折酒を溢しそうにもなっていた。

 

何故こんな事になったのだろうか、そんな事を考える事もせずに彼等は酒を浴びる様に飲み干していく。

 

こうなった事には、実はちょっとした理由があった。

 

一つ目には、一夏が久方振りの飲酒だった事もあり、自分の限界をスパッと忘れていた事と、蓄積されていた疲労の為に酔いが一気に回った事にあった。

 

そして、もう一つには、ジャックの飲み過ぎにも原因があった。

 

次々に飲み干してゆく一夏に乗せられ、彼も普段以上に飲酒量が増えてしまったのだ。

 

二人とも、何処かで止める事が出来る人間がその場にいたのならば、ここまで泥酔する事もなかったのだろうが、不幸な事にこの部屋には彼等しかおらず、その結果としての泥仕合であったのだ。

 

「あぁ?酒がもう切れちまったじゃねぇか、しゃぁねぇ、取ってくるわ。」

 

何杯目になるのだろうか、ジャックはジョッキを片付け、冷蔵庫から新しい酒を取ってこようと動く。

 

しかし、彼も相当酒が回っているのか、千鳥足となっており、何時ぶっ倒れても可笑しくはなかった。

 

「う~ん・・・?ジャック、あれはなんだ~?」

 

そんな彼を見送りながらも、部屋に置かれていた作り掛けの何かを見つけた一夏は、どこに焦点を定めているのか分からない目でジャックに尋ねていた。

 

ハッキリ言って、彼も相当危ない状態である事は否めなかった。

 

彼が指差したのは、球体にも見えるが、所々内部機器が露出しており、組み立て途中である事を物語っていた。

 

「ん~?それか?そいつはAIだ、MSのサポートを行える様にしようとしてたんだけか・・・。」

 

随分以前から手を着け、暫く放置していたためなのか、彼は思い出しながら話していた。

 

というか、酔っ払っているために、その説明すら嘘か真か分からぬ状態である事は間違いない。

 

「しっかしなぁ、あんま進まなくて放置してたんだわ、興味あるのか?」

 

「面白そうだったしな、興味はあるよ。」

 

作り掛けの機械を渡された一夏は、それを見ながらも酒を呷った。

 

作りかけながらも、しっかりとした手順を踏んで作られてきたのだろう、作りはしっかりしているし、あと少し弄れば完成しそうな雰囲気があるのだ、完成した姿を見てみたくなるのも必然であると言えるだろう。

 

「もうすぐ完成しそうなのにな・・・、もったいないな・・・。」

 

「なんなら、今から作るか?プログラミングと組み立てだけで終わるだろうしな。」

 

何処か感傷的な一夏の呟きに反応したジャックは、どこから取り出したのだろうか、工具とプログラミング用のキーボード付き端末を彼に手渡した。

 

どうやら、自分と彼の二人がかりでやれば次の勤務時間までに作り上げられると思ったのだろう。

 

というより、どうしてその結論に至るのだろうかと疑問に思ったりはしないのだろうか?

 

いや、この酔っ払い二人に今何を言っても無駄だろう、自分が何をしようとしてるのかも理解しているのかも怪しいのだから・・・。

 

「俺は組み上げをする、一夏はプログラミングを任せていいな?」

 

「任せろ、一時間で組んでやるぜ~。」

 

もう何を言ってるのかも理解してないのだろう、あからさまにおかしい一夏だったが、酔っているのにも関わらずに驚くべき速さでキーボードに指を走らせていく。

 

だが、それすらも果たして意味のある文字を打ち込んでいるのかどうかは、当然の事ながら不明であるのだが・・・。

 

「やるな、俺も負けてられないな!」

 

負けてたまるか根性が発動したのか、ジャックもナチュラルとは思えない手捌きで調整をしていく。

 

だが、これまた正しい手順で行われているのかどうか怪しい事だけは、傍から見ていても判る事であった。

 

「ここはこうして・・・、エラー?それがどうした、そのまま打ち込んどきゃいいんだよ。」

 

「カチャカチャっとなっ・・・!うん?何か取れたな、ま、何処だか分かんねぇし、別にいいか。」

 

・・・、何やら物騒な音やら警告音が引っ切り無しに鳴り響いているが、この酔っ払い二人はそんな事お構いなしと言わんばかりに、手を止める事すらしない。

 

時折、二人の口からは何とも不気味な笑い声が漏れ、部屋の中に木霊していたのであった。

 

酒の力、恐るべし・・・。

 

sideout

 

side一夏

 

『・・・キロ・・・、オキ・・・。』

 

誰かが俺を呼んでいる様な声が聞こえ、俺の意識は少し覚醒する・・・。

 

だが、なんだ・・・、なんなんだこれは・・・。

 

頭が割れる様に痛い・・・、それに身体も鉛の様に重い・・・。

 

腕を挙げようにも、重さと気怠さ、そして何よりの頭痛が邪魔をして思う様に身体を動かせない・・・。

 

『オキロ、イチカ。』

 

また聞こえた・・・、この声は・・・、誰だ・・・?

 

ジャックじゃない・・・、誰なんだ・・・?

 

寝起きの頭でそこまで考えた時だった、腹に何かが勢いよくぶち当たってきた。

 

「ゴフッ・・・!?」

 

あまりの衝撃に眠気も一気に吹き飛び、同時に猛烈な吐き気も込み上げてきた。

 

「うぅ・・・っ!?な、なんなんだ・・・!?」

 

リバースしない様に口元を押さえつつも、腹部に熨しかかってきた物の正体を見極めるべく身体を起こした。

 

「・・・、なんだこれ・・・?」

 

そこで俺が見たのは、バレーボール程の大きさを持った、オレンジ色の球体だった。

 

なんでこんな物が俺の腹の上に?いや、そもそもこんな球体、この部屋に在ったか?

 

そう思ってると、その球体が俺の腹の上でモゾッと動いた。

 

「うぉっ・・・!?うっぷ・・・。」

 

あまりに唐突だったために叫びそうになるが、再び込み上げてくる吐き気に何とか口を噤み、絶叫だけは避けた。

 

と言うより・・・、今日はなんでこんなに気持ち悪いんだ・・・?昨日の俺、一体何してたんだよ・・・?

 

ジャックと酒飲んでて・・・、二十杯目のビールを飲んだ所までは憶えてるんだが・・・。

 

『ハロ、イチカ、ゲンキ。』

 

「・・・、うぉぉぉぉぅ!?喋ったぁぁぁぁ!?」

 

球体が唐突にこっちを向き、そして喋った事もあり、俺は吐き気も忘れて絶叫してしまった。

 

俺の反応に気を良くしたのだろうか、謎の球体は耳(?)をパタパタと上下に振り、コロコロと転がる様な素振りも見せた。

 

一見して愛らしい様にも見えるが、それが何なのか分からない俺にとっては、その動きの一つ一つが、ある意味不気味で仕方なかった。

 

「ジャック!ジャァァァァック!!」

 

自分でも驚く程取り乱していた俺は、俺のすぐ傍で倒れていたジャックの身体を揺さぶり、彼を起こそうとした。

 

「うごぉぉぉっ・・・!や、やめてくれ一夏・・・!は、吐く・・・!!」

 

彼も気分が悪いのか、真っ青な顔で揺らさないでくれと言わんばかりに身体を震わせていた。

 

一体あれからどれ程の量を飲んだんだ俺達は・・・?記憶が飛ぶなんざ、シャレにもなんねぇよ・・・。

 

いや、それは兎も角、今はもっと大事なことがあるんだった・・・!

 

「それよりもあれを見てくれ!!なんだよあれは!?」

 

『ジャック、ゲンキ、ゲンキ。』

 

「・・・、って、おぉぉぉぉぉ!?喋ったぁぁぁぁぁ!?」

 

俺と同じリアクションありがとう、だが、ジャックが驚くって事は、彼もコイツの事を知らないと言う事か・・・。

 

「い、一夏!なんなんだよコイツは・・・!?」

 

「俺に聞くなよ!コイツに叩き起こされたんだよ俺は!!」

 

気味が悪いが、せめて奴の正体を知らないと、どういう風に対処すれば良いのかも分からない、ならば、ここで俺がすべき事はただ一つ・・・!

 

「な、なんだお前は・・・!?」

 

吐き気もすっかり消し飛んだためか、俺は恐る恐るその喋る球体に問うた。

 

こんな奇妙な物体は、俺の今までの経験の中でも全く覚えが無く、正直言って未知との遭遇を果たした様な気分だった。

 

『イチカ、ジャック、ハロ、ツクッタ、ツクッタ。』

 

そのハロと自称する球体は、敵意が無いのか耳の様な部分をパタパタと上下させ、俺の問いに答えた。

 

いや、待て待て、俺とジャックに造られた?一体どういう意味なんだ?

 

「ジャック、コイツを造った覚えあるか・・・?」

 

「いや・・・、あるにはあるんだが・・・、途中で放置してた筈なんだがなぁ・・・。」

 

ジャック曰く、これの基となる物を造ってはいたが、組立途中で放置していたという事らしい。

 

それならば当然、コイツは完成しておらず、棚に飾られたままの筈であろう。

 

だが、ならば何時コイツは造られたんだ?いや、そもそも、どうして俺も造った事になってるんだ?

 

「ハロさんや、俺達はお前を造った覚えは無いぞ?」

 

それに、なんと言っても、昨日は酒飲んでからの記憶が無いし、俺が造ったと言われても俄には信じられないよな・・・。

 

「いや・・・、一夏・・・、ソイツが言ってる事・・・、間違ってねぇかもしれないぜ・・・。」

 

酔いが若干醒めたのか、ジャックは俺達が倒れていた付近の床を指差していた。

 

何事かと思い、彼が指差す方向に目を向けてみると、そこには散乱した工具とナットやボルト、そしてプログラミング用の端末があった・・・。

 

これらの情報を整理して出てくる結論は・・・。

 

「・・・、えーっと・・・、泥酔して調子に乗った俺とジャックが、放置されてたハロを組み上げて・・・。」

 

「完成と同時に二人とも寝ちまって・・・、寝返りか何かで起動させちまった・・・、ってわけか・・・?」

 

二人して顔を見合わせ、表情を引き攣らせながらもパタパタと動いてるハロの方に目を向けると、ハロは頷く様にして転がっていた。

 

「「あぁぁ・・・。」」

 

それを見た俺達は、揃って溜め息を吐いた・・・。

 

酔っ払った拍子に何してんだと言う呆れと、突貫作業にも程がある期間で完成させてしまった事に対する後悔が入り混じった溜め息である事は間違い無かった・・・。

 

「まぁ・・・、何はともあれ、造っちまったものは仕方ないよな。」

 

外皮が無表情で固定されているために、様々な表情を思い浮かべる事の出来るハロの顔は、今の俺達のやり取りを聞いて、何処か不安そうにも見えてならなかった。

 

生まれてきた機械に罪は無い、それを悪にしてしまうのも、善にするのも所詮は人間次第。

 

だから、俺はコイツを受け入れる、俺が造り出した存在として、俺が面倒を見よう。

 

「ジャック、ハロを貰ってもいいか?これから何が出来るかを見ておきたいしな。」

 

「一夏がそう言うんなら譲るぜ、大事にしてやってくれや。」

 

俺の意志を酌んでくれたのか、彼は苦笑交じりながらも頷いてくれていた。

 

それをありがたく思いながらも、俺はハロの表面を撫でていた。

 

それに対し、ハロは子犬が撫でられるのと同じ様に、ただじっとしていた。

 

「何はともあれ、これからよろしくな、ハロ。」

 

『ヨロシクネ、ヨロシクネ。』

 

瞳代わりのLEDライトを点滅させ、ハロは嬉しそうに耳を動かしていた。

 

さて、コイツが俺のダチ二号になるか、それとも相棒二号になるのか、どちらにしても、楽しみだ・・・。

 

久しぶりに訪れた安息は、これから来る未来をほんの少しだけ照らしてくれたと、今の俺は思う。

 

もう大丈夫、本当の意味で、俺は独りではないのだから・・・。

 

sideout




次回予告

運命の悪戯か、それとも必然か、別たれた魂が今響きあう。

次回機動戦士ガンダムSEEDASTRAY X INFINITY

再会、友よ 前編

お楽しみに~
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