機動戦士ガンダムSEEDASTRAY X INFINITY   作:ichika

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謎めく記憶

noside

 

『アメノミハシラ、こちらイズモ、入港許可を願う。』

 

『こちらアメノミハシラ、了解、

35スペースゲートより入港されたし!』

 

青く輝く惑星、地球の衛星軌道上に存在する宇宙要塞、アメノミハシラに向け、

ゴールドフレーム、そしてストライクを収容した戦艦、イズモが進んでいく。

 

アメノミハシラ、

元はオーブが建造予定であった軌道エレベーターの登頂部として建造されたが、戦争の影響により開発計画は頓挫し、

現在は主に軍事ファクトリーとして、サハク家当主、ロンド・ミナ・サハクの管轄とされている場所である。

 

現在は壊滅状態にあるオーブの国民を匿い、

来るべき再起の時を息を潜めて待ち続けている場所でもあった。

 

アメノミハシラに帰港したイズモは、

着岸と同時にハッチとタラップを繋ぎ、

クルーの退艦準備を直ぐ様完了させた。

 

「医療班を急がせろ!なんとしてもこの者を救え!!」

 

「り、了解しました、ミナ様!!」

 

普段は平静を崩さないミナが血相を変え、

黒髪の青年を乗せたストレッチャーを引く衛生兵に向けて叫ぶ。

 

その様子に、周囲に控えていた全ての者は、

あまりにも驚くべき光景に絶句し、目を見開いていた。

 

「ミナ様!病棟の準備、完了しました!」

 

「よし、すぐに治療してやってくれ!!」

 

「ハッ!!」

 

しかし、そんな中にあったとしても彼等もプロ、

自分の為すべき事を弁えているため、

迅速な行動を起こし、ストレッチャーを移動させる。

 

医療班を見送ったミナの護衛を勤めていたフォーソキウスは、何時もの様に表情を崩さぬまま彼女に近付いていく。

 

「ミナ様、あの方の事をご存知なのですか?」

 

なんの抑揚も無く、ただ淡々と尋ねるソキウスの問いに、ミナは何か引っ掛かるとでも言うかの様に表情を変える。

 

「いや、何故か助けねばならぬ気がしたのだ、

彼には会ったことも、話した事も無い。」

 

「では何故ですか?」

 

彼女の返答に、理解できないとでも言いたげなソキウスは、表情を変える事はしないまでも、

僅かだが言葉の端に怪訝の色が滲んでいた。

 

「済まぬ、上手く言い表せぬのだ・・・、

兎も角、任務御苦労だったな、次の任務まで休むといい。」

 

「ありがとうございます。」

 

自分に対し、詫びと労いを同時にかけ、

歩き去っていくミナに礼をしながらも、

フォーソキウスは、イズモから運び出されるゴールドフレームとストライクに目をやる。

 

その瞳は虚ろで、感情一つ読み取る事は出来なかった。

 

心を壊された彼には、その事すらも分からないのだろうが・・・。

 

sideout

 

 

side一夏

 

「あ・・・、ぐっ・・・!」

 

身体に襲い掛かる鈍い痛みに叩き起こされるかの様に、

俺の意識は強制的に覚醒された。

 

ゆっくりと瞼を開いて見ると、

見知らぬ天井が飛び込んで来た。

 

「ここは・・・?何処だ・・・?」

 

確認の為に身体を動かそうにも、

起き上がるだけの力が身体に入らない。

 

暫く待てば身体を起こす事ぐらいは出来るだろうが・・・。

 

待てよ、そもそも何故俺は生きている・・・?

 

あの傷はどう考えても致命傷だった筈だが・・・。

 

切り落とされた筈の左腕の感覚もちゃんとある・・・、どうなっているんだ・・・?

 

それに、首に着いていたはずの待機形態が無い。

あれは認証コードが無いと外れない筈だ・・・。

 

では、まさか此処が死後の世界と言う場所か・・・?

 

「気がついたか?」

 

状況を把握できない俺に話しかけながらも、

誰かが部屋に入ってきた。

 

「お前はある機体に乗って、宇宙を漂流していた所を私が助けた、

何か覚えているか?」

 

首だけを動かし、声の主を確かめると、

そこには長い黒髪をなびかせた女性がいた。

 

「ロンド・ミナ・サハク・・・?」

 

どうしてロンド・ミナがいるんだ・・・?

いや、彼女が俺の前にいると言うことは、

俺は生きてると言うことか・・・?

 

いや、その前に漂流とはどういうことだ?

しかも宇宙を、だと・・・?

 

「やはり、お前も私の事を知っていたか・・・。」

 

「当然だろ?世界を浄化する為に共に戦った間柄じゃないか?」

 

やはりとはどういうことか?

というか、俺とミナは元から知り合いどころか、

世界の命運を握る放送を行った戦友の筈だが・・・。

 

「私はお前に会ったことも、名を聞いた事も、

そしてお前と共に戦った覚えも無い、

だが、何故かお前を知っているような気がするのだ。」

 

彼女の様子からは冗談を言っているような雰囲気は見受けられない。

 

自分で言うのもなんだが、人の様子を見抜く目は持ち合わせているつもりだ。

 

まぁ、これまで積み重ねた年月と経験を鑑みるなら、

当然の結果だと笑われるがな。

 

「分かった・・・、ロンド・ミナ、

今の世界の事と、この場所の事を教えてくれ。」

 

「分かった、これも何かの縁だ、教えよう。」

 

一度思考を整理した俺に諭すかの様に、

彼女は現在の世界情勢を語り始めた。

 

「今はC.E.71年7月7日、

ナチュラルとコーディネィター、地球連合とザフトが戦争を行っている直中と言うわけだ。」

 

「何・・・!?」

 

C.E.71年・・・!?

ナチュラルとコーディネィター!?

連合とザフト・・・!?

 

おいおい、冗談じゃねぇぞ!?

まさか、この世界は・・・!?

 

俺がいた世界じゃねぇのか・・・!!

 

sideout

 

noside

 

「今の情勢だけを言うと、マスドライバーを有するビクトリア基地は、

既に地球連合によって奪還された、

その半月程前にオーブは地球連合の手により滅びた。」

 

「・・・。」

 

女性、ロンド・ミナ・サハクは、

自身の目の前でベッドに腰掛ける男性、織斑一夏に向けて、この世界の情勢を語った。

 

彼は、それを受け入れがたいのか、

困惑や驚愕が入り雑じった表情をしながらも、彼女の言葉に耳を傾けていた。

 

その様子を見たロンド・ミナは、無理もないとばかりに心配そうな表情を見せていた。

 

「大体の事は以上だ、他の情報を知りたければこの端末を使って調べると良い。」

 

大まかな事を話終えたミナは、

見舞いとばかりに持参していたノート型端末をベッドの横に置いてあった机の上に置き、

彼に背を向けて部屋から去ろうとする。

 

「お前の身体はまだ、完全には癒えきっていない、

今は身体を休めておけ、その後の事は、その時考えれば良い、

私は所用があるのでな、失礼するぞ。」

 

「ロンド・ミナ・・・、一つ、聞いても良いか?」

 

そんな彼女に向け、彼は言葉を投げ掛ける。

 

「なんだ?」

 

呼び止められたミナは、不思議そうな顔をしながらも振り向き、

彼の言葉の続きを待った。

 

「どうして、俺を助けた・・・?

アンタが俺を助ける理由なんて無い、なのに何故だ?」

 

彼の言葉に、彼女は面食らったかの様に目を丸くした。

 

特に理由など無く、気が付けばまるで脊髄反射の如く、

身体が先に動いていたのだから。

 

彼女は改めてそれを実感したのであろう。

 

だが、それを彼にそのまま言うのも何かと引っ掛かる為、あえて言わない事にしておく。

 

「お前は見殺しにされておいた方が良かったのか?」

 

「それは勘弁、命有る限りは生きたい性分でね。」

 

「そうか、ではな。」

 

彼女の返答に肩を竦める一夏の様子を可笑しく思いながらも、ミナは部屋から出ていった。

 

これから起こりうる何かに期待するかの様に・・・。

 

sideout

 

side一夏

 

ロンド・ミナが部屋から出ていった後、

特にすることも無い俺は、彼女から手渡された端末の電源を入れ、

この世界に関する情報を呼び出す。

 

俺が知りうる限りの知識を検索のキーワードとして打ち込み、引き出された情報全てに目を通していく。

 

ファーストコーディネィター ジョージ・グレン、

コーディネィター、コロニーメンデル、そして、MS・・・。

 

どれも俺がいた世界には無かった、もしくは変わっていたものばかりだ。

 

どうやら、この場所、この世界は本当に、

俺が転生し、生きた世界では無いようだ。

 

ISというワードやそれに付随する情報も全て検索してみたが、ヒットしたモノは0、これで裏がとれた。

 

なるほど、それならば彼女の言葉も納得できる、

俺の名を覚えていた事も、女神の細工か何かかと勘繰れば楽に説明できる。

 

「そうか・・・、俺は・・・、俺は死ぬことさえ赦されなかったのか・・・。」

 

彼女が何のつもりで俺を生かしたのかは知らないが、

俺はただ独りでこの世界に流れ着いた様だ。

 

そう、俺独りで、だ・・・。

 

三人一緒に飛ばされたとも考えられなくは無いが、

そうならば同じ時に発見されていても可笑しくない筈だ、

なのに、俺は独りで発見され、生き残ってしまっていた・・・。

 

「セシリア・・・、シャル・・・、お前達は、先に逝ってしまったのか・・・、

いや、俺が離れてしまったと言うべきか・・・?」

 

俺は、これから独りで生きていくのか・・・?

この世界で、何をどうしろと言うんだ・・・?

 

なぁ、答えてくれよ・・・。

 

sideout

 

noside

 

スネイルにたどり着いたサーペント・テールの面々は、

ストレッチャーに乗せられた一人の女性を運んでいた。

 

「急ぐぞ、恐らくは衰弱しているだけだ。」

 

「ロレッタ、お願いだ、なんとしても助けてやってくれ・・・!!」

 

「任せてちょうだい、風花、手伝って!」

 

「うん!」

 

サーペント・テールのリーダーである劾と、

イライジャは切羽詰まった様な表情で頼み込むため、

ロレッタは尋常ではないと悟ったのか。傍らに居た風花に手伝いを頼みながらもストレッチャーを押し、医務室へと消えていった。

 

「・・・、ところでお前さんら、あの女と知り合いなのか?どう見ても連合の人間みたいだったが?」

 

ストレッチャーを見送った劾とイライジャに対し、

少し離れた場所から見守っていたリード・ウェラーがボトルに入った酒を傾けながら尋ねてきた。

 

確かに、今しがた運ばれて行った女性は、

連合製の試作MSに搭乗し、身に付けていたパイロットスーツも連合が支給している物のカスタム品であることは一目瞭然で合った。

 

それを傭兵である自分達が救う等という道理は無い、

人道的立場を持ち出されれば何かと否定しづらいが、

流石に裏切る危険性をわさわざ内部に率いれなくとも良いのではないか?

 

リードは一度そう考えたが、

劾とイライジャの反応を見る限り、どうやら知り合いらしいと推測出来たため、

何も言わずにいたが、焦り様が不自然に写ったため、

確認として尋ねてみたのだ。

 

あぁ、そうだ、とか、そうだぜ、

そう言った返答が返ってくる物だと予想していた彼に、

劾が予想外の答えを返した。

 

「・・・、いや、俺が知っているのはアイツの名前だけだ・・・、他は何も知らない、筈だ・・・。」

 

「なんだと・・・?」

 

あまりにも予想外の返答に、彼は眉をひそめた。

 

しかし、何時も寡黙で冗談を言わない劾が冗談を言うとは考えられず、更に何が何だか分からなくなっていたのだ。

 

「俺も、知っているのはセシリア・オルコットという名前だけだ・・・、アイツとは傭兵時代、ザフト時代、いや、それ以前にも会ったことは無い筈なんだ・・・。」

 

「じゃあ、何でお前達はアイツを助けようと思ったんだよ?」

 

リードには、自身が全く分からない領域で、

何かが働いたのだと思うしかなかったが、納得いく答えは返ってきそうにないと半ば見切りを着けていた。

 

「・・・、すまない、本当に分からないんだ・・・。」

 

「漠然とし過ぎて話せない・・・、ハッキリと分かったら改めて話そう・・・。」

 

二人はリードに向けて言った後、

自身達の機体の整備の為に格納庫に向かってしまった。

 

「ったく・・・、こっちでも少し調べてみるか・・・、何か分かるかも知らないからな・・・。」

 

ボヤきながらも、彼は自身の内に渦巻く得体の知れない不快感を消すために、

自身のパイプをフルに活用すべく動き出すのであった・・・。

 

sideout

 

sideセシリア

 

「うっ・・・?」

 

全身に走る筋肉痛の様な鈍い痛みに叩き起こされるかの様に、私の意識は覚醒しました。

 

ゆっくりと瞼を開いてみると、見知らぬ天井が飛び込んできました。

 

ここは、一体何処なのでしょうか・・・?

 

どうやら天国という訳でも、はたまた地獄という訳でも無さそうです。

 

では、一体この場所は・・・。

 

「あっ!お母さん!気が付いたみたい!!」

 

「あら、気分はどうかしら?」

 

私のすぐ近くから、まだ幼い子どもの声と、

少し落ち着いた女性の声が聴こえて来ました。

 

身体を動かす事もままならない為、

首だけを動かして声が聴こえてきた方向を見ます。

 

そこには、黒髪褐色の女性と、

茶髪の少女が並んで立っていました。

 

「貴女達は・・・。」

 

「私はロレッタ・アジャーよ、こっちは娘の風花よ。」

 

「よろしくね!お姉さん、大丈夫?」

 

ロレッタさんと風花さん(?)が私の傍に近寄って来ます。

 

何処かで会ったような気がしなくは無いのですが、

それが何時、何処でだったかまでは思い出すことは出来ませんでした。

 

「あの・・・、ここは一体・・・?」

 

腹部に触れてみても、抉られた傷は一切なく、

それどころか以前より肌触りが良くなっている様な気もします。

 

「ここは私達サーペント・テールの本拠地、スネイルよ、貴女は私達の艦の近くをMSに乗って漂ってたの。」

 

「サーペント・・・、テール・・・?」

 

何処かで聞いたことのあるような・・・、

無いような名前ですわね・・・。

 

「しがない傭兵だ、俺達はな。」

 

そう思っていると、部屋に二人の男性が入ってきました。

 

一人は癖のある黒髪を持った男性で、

もう一人はサラサラの銀髪を持ったとても美しい男性でした。

 

「劾さん・・・?イライジャさん・・・?」

 

「セシリア、お前も俺達を知っていたか・・・。」

 

知っていたとはどういうことでしょう・・・?

 

そんなに他人行儀ではない筈なのですが・・・。

 

「私に格闘の手解きをしてくださいましたでしょう?

イライジャさんとは何度もお会いして・・・。」

 

「すまない、俺達はお前を知らないんだ、

知らない筈なのに、何故か懐かしい気がする。」

 

「どういう事ですの・・・?」

 

何度もお互いに会話もして、その上で色々と訓練もさせて頂いた仲ですのに・・・。

 

ですが、二人のお顔には冗談の色一つ見えず、

寧ろ何処までも真剣な表情が見てとれます。

 

どうやら、一から物事をお尋ずねせねばならない様ですね。

 

「劾さん、よろしければ、今の年月を教えてはいただけませんか?

それと、世界情勢も・・・。」

 

何事も、情報が物を言いますからね、

一夏様もシャルさんもおられない今は、

情報収集でこれからの身の置き方を考えませんと・・・。

 

「分かった、俺が分かっている情報だけを教えよう、

今日はC.E.71年の7月7日だ、

現在の情勢を言うならば、ナチュラルとコーディネィター、簡単に言えば、地球連合とザフトが戦争をしている只中というわけだな。」

 

コズミック・・・イラ!?

そんな年号聞いたことありませんわ・・・!?

 

それに、ナチュラル!?コーディネィター!?

連合にザフト・・・!

 

まさか、まさかこの世界は・・・!

私達がいた世界じゃ無いのですか・・・!?

 

sideout

 

noside

 

「・・・、以上が俺達の知っている情報だ、

混乱するのも分かるとは思うが、今は休め、

身体と気持ち、両方を落ち着ける為にもな。」

 

全てを話終えた劾は、俯く彼女に向けて静かに言葉を発した。

 

無理もない、彼は内心でそう思っていた。

 

荒唐無稽な話ではあると思うが、

恐らく彼女は別の世界の住人だったとしか考える事が出来なかった。

 

彼女が自分の事を知ってる理由が、

嘗ての世界での自分に会っているからと考えれば何も不自然な事は無い。

 

しかし、何故自分やイライジャが彼女の事を知ってるのか、

その理由には全く合点がいかないのではあるが・・・。

 

「休んでる間に知りたい事があれば、

この端末を使って調べると良い、分からなければ俺達を頼れ。」

 

「何か用があれば、私を呼んでね、力になるわ。」

 

劾とロレッタはそれぞれセシリアに向けて声をかけ、

部屋から出ていこうとする。

 

風花とイライジャも、彼女の身体を休ませてやろうと、

彼等に着いて部屋から去ろうと動く。

 

「・・・、ひとつ、お訊ねしてもよろしいでしょうか・・・?」

 

そんな彼等に、セシリアは声を投げ掛けた。

 

その瞳にはある種の困惑の色が色濃く滲んでいる。

 

「どうして、私を助けて下さったのです・・・?

何の関わりも無い、私を・・・?」

 

彼女の問いに、一番面食らった表情をしていたのは、

意外にも劾だった。

 

なんと答えれば良いのか分からない、

そう言いたげな表情であった。

 

「そうしたかったから、だよな、劾?」

 

「あ、あぁ、その通りだ、不満だったか?」

 

助け船を出すかの様に言ったイライジャの言葉に乗る様に、

彼は少ししどろもどろになりながらも訊ね返した。

 

「ふふっ、いいえ、お助けくださり、ありがとうございました。」

 

そんな彼等の様子が可笑しかったのか、

セシリアは少し微笑んで彼等に優雅にお辞儀をしていた。

 

風花は、そんな彼女の気品に暫し呆然としていたが、

ロレッタに連れられる様にして部屋を後にした。

 

「気にするな、ではな。」

 

セシリアに笑み返した後、彼等は背を向け、

部屋を後にした。

 

何処か楽しむような表情で・・・。

 

sideout

 

sideセシリア

 

劾さん達が退出された後、

独りになった私は手渡された端末の電源を入れ、

直ぐ様幾つかのキーワードを打ち込みました。

 

最後の確認という意味を込めて、

表示されたデータ全てに目を通します。

 

ユニウス・セブン、血のバレンタイン、Nジャマー、

そして極めつけはMSと呼ばれる存在・・・。

 

これでよく分かりました、ここは私達が生きていた世界とは全く違う場所なのですね・・・。

 

私はただ独りで生き残ってしまいました、

そう、ただ独りで・・・。

 

「私は・・・、生き残ってしまったのですね・・・、

お二人と分かれて・・・。」

 

何時も、どんな時でも隣にいてくださった一夏様も、

共に、一夏様から愛されていたシャルさんも、

今は、私の傍にいらっしゃいません・・・。

 

どうして私だけなのですか・・・?

私達は、三人で一つでは無かったのですか・・・?

 

答えてくださいな・・・、一夏様・・・、シャルさん・・・。

 

sideout

 

noside

 

ジャンク船、リ・ホームは、真空の宇宙を廃棄コロニー、グレイブヤードを目指し進んでいた。

 

一見すれば何事も無く、順調に航行している様に見えるが、

その船内は正しく戦場と呼ぶべきあわただしい雰囲気に包まれていた。

 

「衰弱してるだけかしら?他は異常は見られないわ、

樹里、彼女の治療を手伝って!」

 

「分かった!ロウは入っちゃ駄目だからね!」

 

「分かってる!プロフェッサー、樹里、頼んだぜ・・・!」

 

リ・ホームの一室を臨時の療養所とし、

そこに先程保護したバスターのパイロットを運び込むプロフェッサーと樹里の後ろ姿を見送り、

ロウはやはり何かと心配そうな表情を浮かべていた。

 

「ロウ、彼女は何者なのです?見たところ、組合の人間ではないようですが・・・?」

 

『そうだな、会ったことも無い上に、

連合のパイロットスーツを着ていたんだ、お前が助ける謂れはないぞ?』

 

リーアムは確認を取るかの様に、

8はこれまで経験してきたデータを検索していたが、

彼女の情報がヒットする事が無かったため、訝しむかの様な文字を表示した。

 

二人(と言っても片方は機械だが。)の記憶、記録にはロウがシャルロットと呼んだ女性の事は無く、

自分達とそれなりに長く共に行動してきた彼の知り合いならば、彼女の事を知っていても可笑しくは無い。

 

「いや、俺が知ってるのはアイツの名前だけだ、

それ以外の事は何も知らないんだ・・・。」

 

しかし、当のロウ本人すら知らないと言う風に話した為、リーアムは怪訝の色を更に深くし、8は『?』と表示していた。

 

「どういうことです?私はてっきりロウの知り合いだとばかり思っていましたが・・・。」

 

「いや、知り合いだったら覚えてる筈なんだ、

だけど、どうしてもアイツと会った覚えが無いんだ。」

 

行動、言動ともに迷いなく、そして真っ直ぐなロウにしては分かりにくい説明に、彼は更に理解しがたいといった表情を濃くしていく。

 

「何故です?名を知っているならば面識、もしくは噂やそれに付随する何かを知っていて当然では?」

 

「いや、全く無いんだ・・・、なのに、知ってる様な気がするんだ・・・、

ワリィ、今は上手く話せない、解ったら教えるからよ・・・。」

 

そう言いながらも、ロウはリーアムに背を向け、

格納庫の方へと去っていった。

 

直にグレイブヤードに到着する、

それまでに出来ることをやっておきたいのだろう。

 

「何時もの突拍子も無い思い付き、では無さそうですね・・・、一体、なんなのでしょうか・・・。」

 

疑念をぬぐい去ることは出来ないが、

今は事態の推移を見届けよう。

 

リーアムはそう割り切り、

艦橋へと歩みを進めていった。

 

sideout

 

sideシャルロット

 

「うっ・・・、ううっ・・・!?」

 

身体に走る鈍痛に、僕の意識は闇の中から一気に呼び起こされた。

 

ゆっくりと目を開いてみると、見知らぬ天井が視界に入った。

 

「ぼ・・・、僕は、どうなったの・・・?」

 

指一つ動かそうにも全身に走る激痛が妨げになって身体を動かす事もままならない。

 

そんなことよりも、身体が痛むということは、

僕は生きているということになる。

 

そんな馬鹿な事はない。

確かにあの瞬間、僕の身体は貫かれた筈だった。

 

でも、死んでない。

 

助かった?そんな訳は無い、全身から感覚が無くなる刹那を僕は体験した。

 

でも、ならばどうして・・・?

 

「あっ!気が付いた?」

 

その先を考えようとした時、

若い女の子の声が耳に届いた。

 

なんとか痛みを堪えて、首だけを動かして声がした方に目を向けると、

ベッドの脇から僕を見る女の子の顔が見えた。

 

「よかった~、起きないんじゃないかって、心配したわよ~!」

 

多分僕と同い年位だろうけど、

その自信なさげな様子から実年齢より幼く見えてしまう。

 

なんだろう、彼女を見てると、鈴を思い出すなぁ・・・。

 

気が弱いけど、それでも誰かの事をずっと心配してた優しい彼女を・・・。

 

「あ、あの・・・、君は・・・?」

 

「あ、ごめんなさい!私は山吹樹里、ジャンク屋をやってるの、貴女は?」

 

「僕はシャルロット・デュノア、こんな喋り方だけど女だよ、よろしくね樹里。」

 

「よろしくねシャルロット。」

 

握手は出来ないから取り敢えず互いに笑いあって敵意の無いことを示しあう。

 

ジャンク屋って一体どんな仕事してるんだろ?

廃品回収か何かかな?

 

って、そんな詮索は後で良いんだ、

今はこの場所が何処かって事を知っておかないと・・・。

 

「樹里、此処は一体何処なの?」

 

「えっ?あぁ、そうだった、教えないとね、此処は・・・。」

 

「此処はジャンク屋ギルド所属のジャンク船、リ・ホームだぜ、目が覚めて良かったな。」

 

樹里が説明しようとしたと同時に、

別の男性の声が聞こえてきた。

 

って、あれ?

あの逆立った茶髪に緑のバンダナって・・・。

 

「ロウ・・・?」

 

どうしてロウ・ギュールが此処にいるの?

 

それに船ってどういう意味なんだろう?

 

「やっぱりな・・・、お前も俺を知ってたな・・・。」

 

「やっぱりってどういう事・・・?

僕達は元から知り合いだよね・・・?」

 

僕の機体の整備を担当してくれたのは、他でもない彼だ、

そんな彼がどうしてこんな他人行儀にしてるんだろう?

 

「悪いんだが、俺はお前に会った事が無いんだ、

名前を知っている理由も分からない。」

 

「え・・・?」

 

何かの悪い冗談・・・?

 

いや、でも、彼の眼は嘘を吐いていない、そんな気がする。

 

いや、何かあるかもしれない・・・、

 

今は僕しかいないみたいだし、

情報は自分で集めないとね・・・。

 

「ロウ、今の世界の事、教えてくれないかな・・・?」

 

「分かった、今はC.E.71年7月7日、

地球連合とプラントが戦争をしている真っ只中だ。」

 

コズミック・イラ・・・!?

そんな年号聞いたことないよ・・・!?

 

それに地球連合にプラント・・・!!

 

まさか・・・、まさかこの世界は・・・!

 

僕達がいた世界じゃないの・・・!?

 

sideout

 

noside

 

「もうかれこれ一年以上戦争は続いているが、

一層酷くなっていくばかりなんだ、

ワリィな、あんまりこう言った事には詳しく無いんだ。」

 

説明を終えたロウは、

何処か申し訳無さそうに言葉を紡ぎ、

シャルロットを気遣わしげな目で見ていた。

 

彼女は教えられた事実に愕然としているのだろうか、

何処か思い詰めているような表情を浮かべていた。

 

(無理もねぇか・・・。)

 

彼は言葉にはしないながらも、内心ではそう感じていた。

 

荒唐無稽な話ではあるが、

恐らく目の前に横たわる彼女は別世界の人間であるかも知れないと、彼は奇妙な確信を抱いていた。

 

何故自分が彼女の名前を知っていたのかは理解できなかったが、

何故彼女が自分の名を知っているのかには何処か納得いくものがある。

 

彼女が別の世界の人間であるならば、

その世界での自分と関わりがあったからなのだと考える事は容易であった。

 

「(樹里、行くぞ、今は安静にしといてやらないとな。)」

 

「(あ、うん、そうね、行こう。)」

 

ロウは樹里に耳打ちし、彼女を先に部屋から退室させ、枕元にノート型の端末を置いた。

 

「俺達はこれから用事があるからこれでお暇させてもらうぜ、

何か知りたい事が合ったら、これを使ってくれ。」

 

彼女に声をかけた後、

彼は踵を返し、部屋を去ろうとした。

 

「ロウ・・・、もうひとつだけ教えて・・・、

どうして、僕を助けてくれたの・・・?

何の関わりもない僕を・・・?」

 

困惑の色が濃く滲んだ瞳を向けるシャルロットの言葉に、

ロウは一瞬返答に詰まった。

 

そんな理由なんて考えた事は無かった、

ただ、脊髄反射の如く、頭で考える前に身体が動き出したからだ。

 

だが、説明するにしても、どう説明すれば良いのか分からない、

だからこそ、自分に言える事はこれだけだった。

 

「そうしたかったからだぜ、別の俺と仲間だったんだろ?

仲間なら助け合わないとな!」

 

「・・・、そっか、そうだね・・・、ありがとう、ロウ。」

 

彼の言葉に目を丸くするも、

意味を理解した彼女は微笑み、彼に向けて礼を言った。

 

「気にすんなって、仲間なら当たり前だろ?

じゃあ、ゆっくり休んでろよ。」

 

今度こそ彼女に背を向け、彼は部屋から立ち去った。

 

グレイブヤードでやるべきことも間もなく終わる、

あとは蘊・奥老人の大往生まで自分が見守るためだけに、

彼は身体を動かしていたのだ。

 

だが、それだけではない何かが、

彼の心を動かしていた事に、彼はまだ、気付いてはいなかった・・・。

 

sideout

 

sideシャルロット

 

ロウと樹里が部屋を出ていった暫く後、

身体の痛みにも慣れた僕は、上半身だけを起こして、

彼が置いていった端末の電源を入れた。

 

何をするかなんて決まってる、

最後の確信を得るために、この世界の情報を探るだけだ。

 

彼の口から聞かされた単語と、

僕が以前から知っている全ての知識をキーワードに、

公開されている情報を探り当てる。

 

「プラント・・・、コーディネィター・・・、

地球連合・・・、ナチュラル・・・、それにMS・・・。」

 

どれもこれも、僕達のいた世界には無かった意味を持っているモノばかりで、僕が知ってる事は嘗ての世界で敵味方として戦った機体達の一部の名前だけ。

 

ISという言葉やそれに付随する諸々の単語を入れてみても、ヒットする結果は無し、これで確証が持てた。

 

ここは僕が生まれ、生きた世界とは別の世界だ・・・。

 

「僕は、生き残っちゃったのかな・・・。」

 

どうして、僕が生きてこの世界に来たのかは分からないけど、

僕は独り、生き残っちゃったみたいだ・・・。

 

そう、僕独りで・・・。

 

苦しい時も楽しい時も、ずっと一緒にいてくれた一夏も、セシリアもいない・・・。

 

どうして、どうしてまた独りぼっちになっちゃうの・・・?

 

ねぇ・・・?

どうして僕だけ生きてるの・・・?

 

なんでなのさ・・・。

 

sideout




次回予告

傷も癒え、動ける様になった一夏は、己の半身とも呼ぶべき機体との再会を果たす。

次回機動戦士ガンダムSEEDASTRAY X INFINITY

目醒

お楽しみに
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