機動戦士ガンダムSEEDASTRAY X INFINITY   作:ichika

20 / 133
再会、友よ 前編

noside

 

地球圏L3宙域にほど近い宙域を、一隻の船がゆっくりとした速度で航行していた。

 

その様子はまるで、何処かへ向かっていると言うよりも、何者かと待ち合わせ、つまりはランデブーを待っている様に見える。

 

その船の名はリ・ホーム、ジャンク屋組合所属、ロウ・ギュール一行の母船でもあった。

 

何故ジャンク屋である彼等が、スペースコロニーや資源衛星も無いこの宙域にいるのだろうか?

 

それには、一つの大きな理由があったのだ。

 

それは、先日強奪されたドレッドノートの頭部の処遇について、サーペント・テールが直接彼等に会談を申し入れたのだ。

 

サーペント・テールとの繋がりがあった彼等は会談の申し入れを即座に承諾、指定宙域までやって来ていたのであった。

 

「遂に劾達からの返事が聞けるな・・・、なんであんな事したのか気になってたんだ。」

 

リ・ホームの艦橋内で、ロウはサーペント・テールが姿を現す時を今か今かと待ちわびている様だった。

 

プレアが焦らなくなったとは言えど、やはりジャンク屋の性分として、奪われた物の行方が気が気でなかったのだろう。

 

「でも、結構早く説明に来てくれただけ良いんじゃないかな?話が通じない人達じゃないんでしょ?」

 

そんな彼を宥める様に、シャルロットは穏やかな声色で彼に話し掛けていた。

 

彼女の言葉通り、強奪事件が発生してからまだ一週間も経ってはいない。

 

割りと直ぐに回答が得られたと思うべき期間である事だけは確かだった。

 

「シャルロットの言う通りね、何か良い返事があると良いわね、そう言えば、こちらに来るのは小型挺が一機と、護衛のMSが一機だそうよ、リーダー御本人が来るとは思えないけど、あの二枚目の坊やなら来るかも知れないわね。」

 

彼女の言葉に同意する様に、プロフェッサーは顎に手を当てながらも呟いていた。

 

彼女の言う二枚目の坊や、それはサーペント・テールの二番手、イライジャ・キールを指しての言葉である。

 

それは置いといて・・・。

 

「ちゃんと返してくれれば嬉しいんですが・・・。」

 

彼等の呟きを聞きつつも、プレアは何処か不安げに呟いていた。

 

それもその筈だ、彼はサーペント・テールと接触した事は無く、彼等の事を噂等でしか知らないのだ、どんな人物が来るのか、そして、自分に任されたドレッドノートを返してくれるのかと不安になっても仕方あるまい。

 

「大丈夫さプレア、劾は頑固だけど、話の分からない奴じゃない、話せばきっと分かってくれるさ。」

 

そんな彼の不安を酌み取ったのか、ロウは彼の肩に手を置き、心配ないと言う様に笑った。

 

「はい、ロウさん。」

 

彼の気配りを嬉しく思ったのだろう、プレアは笑みを浮かべつつも頷き、ほんの少しだけ安堵した様な表情を浮かべた。

 

ロウが大丈夫と保証してくれているのならば、そこまで構えなくても良いと言う事なのだろうと彼なりに結論付けたのだろう。

 

『レーダーに反応あり、どうやら遂に来たみたいだぞ。』

 

「おっ、やっと来たか!」

 

そんな時だった、レーダーを見ていたジョージが、彼等に待ち合わせ人の接近を告げ、モニターに接近する機影を映し出した。

 

それに反応した一同は待ちかねたと言う様にモニターの方を向いた。

 

そこには、リ・ホームに接近する一隻の小型艇と、それに帯同する様に寄り添う蒼い機体の姿が映し出されていた。

 

「あの機体は・・・、連合のⅩナンバーですね、確か、デュエルでしたか・・・。」

 

その蒼い機体に憶えがあったのか、リーアムは自分自身に確認させる様に呟いていた。

 

だが、その声には怪訝の色が色濃く滲み出ていた。

 

それもその筈、彼の機体は数か月前にザフトに強奪され、現在もザフトで運用されている上、サーペント・テールが所有している機体はブルーフレームとジンの二機のみ、デュエルは含まれてなかった筈なのだ

 

リーアムを含み、サーペント・テールと直接接触した事があるメンバーは、何故デュエルがサーペント・テールの小型艇を護衛する様に付いているのかが理解できなかった。

 

「・・・!あの機体はっ・・・!?」

 

そんな空気の中、、シャルロットは一際驚いた様に声を上げ、口元を押さえていた。

 

その驚き様は尋常ではなく、彼女の両隣に立っていたプレアと樹里がビクリと身体を震わせていた。

 

「ど、どうしたんですかシャルロットさん!?」

 

「び、ビックリしたぁ~!!」

 

プレアと樹里は彼女に向けて尋ねるが、シャルロットは心此処に在らずの様子であり、目を見開いてデュエルを注視していた。

 

「(あっ・・・、まさかシャルロットの彼氏さんが乗ってた機体に似てるのかな・・・?)」

 

何故こうも彼女が驚いているのか、その理由に合点が行った樹里は、少し心配そうにシャルロットを見た。

 

つい半日ほど前、彼女はシャルロットから過去の話を聞いており、その中で彼女が愛した男性の事を聞いたのだ。

 

今接近して来ているMSが、嘗て恋人が乗っていた機体に似ている事に驚いたのだと樹里は思い至ったのだ。

 

「どうしたんだシャルロット、あのMSに見覚えがあるのか?」

 

そんな事など露知らずなロウは、いきなり叫んだ彼女に怪訝の表情で話しかけていた。

 

樹里以外のメンバーも、彼同様、驚愕や怪訝の表情で彼女を見ており、それに気付いたシャルロットは慌てた様に笑顔を取り繕った。

 

「あ、ううん、何でもないよ、昔見たことあった機体に似てたんだ。」

 

「そうか?ならいいいんだけどよ、それじゃ、来客を出迎えようぜ。」

 

彼女の言葉に今だ不思議そうにするロウであったが、それ以上の詮索を止め、来客を迎えるべく、格納庫へと足を向けた。

 

「あ、待ってよロウ~!!」

 

「僕も行きます!」

 

彼を追う様にして、樹里とプレアは艦橋から出ていき、リーアムも何処かやれやれと言う風に彼等の後に続いて出て行った。

 

「(あの機体はデュエル・・・、まさか、セシリアが・・・?)」

 

彼の後を追いながらも、シャルロットは接近してくるデュエルのパイロットに想いを馳せた。

 

嘗ての世界で、唯一友と胸を張って呼び合う事の出来た女性・・・。

 

その彼女がこの世界にいるのではないかと、シャルロットは僅かな希望を抱いたが、それを直ぐ様頭の隅に追いやる様に首を横に振った。

 

「(いや・・・、そんな漫画みたいな事、あるわけないよ・・・、もう、いないんだから・・・。)」

 

下手に希望を持つと、裏切られた時の痛みは何倍にも膨れ上がり、自身を責め立ててくる事を彼女は身をもって理解していたのだ。

 

「(それに・・・、折角励ましてくれた樹里にも悪いし・・・、ね。)」

 

大きく深呼吸を数回繰り返し、今度こそ彼女はロウ達の後を追った・・・。

 

sideout

 

noside

 

「風花さん、あの船で宜しいのですか?」

 

同じ頃、デュエルのコックピットに座るセシリアは、隣を曳航する風花に通信を入れていた。

 

彼女達は現在、合流する手筈となっているジャンク屋組合所属の船、リ・ホームを視界に捉える場所まで接近していた。

 

『うん、あれで間違いないよ、向こうもこっちを見付けてると思うし、そのまま進んで。』

 

「畏まりましたわ。』

 

風花から届いた指示に頷きながらも、彼女は周囲を警戒しながらも進んで行く。

 

ランデブー直前、または最中を攻撃されては堪ったものではない、その為の警戒である事は明白であった。

 

「周囲に機影は確認できませんわね、これならば安心ですわね。」

 

待伏せや他勢力の襲撃がまだ無い事に安堵したセシリアは、少し大きく息を吐いていた。

 

ここに来るまでの間、ずっと気を張り詰めていた為に少し気疲れでもしたのだろうか・・・。

 

そんな時だった、リ・ホームのカタパルトが、彼女達を迎え入れるかの様に開いた。

 

『セシリア、先に入っていい?』

 

「えぇ、どうぞお先に、殿はお任せくださいね。」

 

風花が乗る小型艇を先に着艦させ、彼女も機体に制動を掛けつつ着艦した。

 

彼女達の乗る機体が格納庫に入ると同時に隔壁が閉じられ、エアーが充填されていく。

 

エアーが充填されきった事を確認したのだろう、リ・ホームの乗組員と思しき者達が続々と格納庫の中へと入って来た。

 

それを認めたセシリアは、機体の電源を落とそうとしたが、その際、格納庫に置かれていた一機のMSに目が留まった。

 

「あれは・・・、バスター・・・!?」

 

予想だにしなかった機体の存在に、彼女の目が驚愕に大きく見開かれた。

 

それもその筈、彼の機体は彼女が唯一友と公言できる者が駆った機体であり、それが存在するという事は、自分と同じ様に彼女もこの世界に来ているのではないかと、セシリアに思わせるには十分すぎる材料であった。

 

「(いいえ・・・、そんな都合の良い奇跡なんて、有り得ませんわね・・・。)」

 

だが、彼女はすぐさまその考えを否定し、頭の片隅へと追い遣った。

 

有るのか無いのかも判らない希望に縋っては、裏切られた時に生ずる痛みは何倍にもなり、その身を苛むと、彼女は理解していたのだ。

 

「(それに・・・、折角気を使っていただいたのに、私がこれでは風花さんにも失礼ですわね・・・。)」

 

何処か寂しさを覚えつつも、彼女はデュエルの電源を落とし、コックピットから降りた。

 

既に風花も小型艇から降りていた様で、たった今ヘルメットを取り、汗を払う様に頭を振っていた。

 

「風花・アジャー、サーペント・テールの代表として参りました。」

 

彼女の姿に驚いたのだろうか、茶髪の少女と金髪少年は驚愕に染まりきった表情を見せ、硬直していた。

 

無理もない、風花の隣に降り立ったセシリアはヘルメットの内側でそう思っていた。

 

彼女自身、風花の様な少女がサーペント・テールの一角を担っている事に驚いていたし、それが原因で彼女の不興を買ってしまった事があったのだから。

 

「そうか、お前が来たんだな。」

 

そんな中、茶髪を逆立てている男性、ロウ・ギュールは特に驚いた様子も見せずに、至って普通に接していた。

 

彼にとって、大事なのは年齢でも見てくれでもなく、その本質なのだという事が、初見であるセシリアにも伝わってきた。

 

「はい、アタシが全てのお話をお伺いします。」

 

「そ、それは良いけど、そっちの人は誰なの?サーペント・テールのメンバーなの?」

 

風花が話している最中、驚愕から我に返った樹里は、彼女とその隣に立っているセシリアを見ながらも尋ねた。

 

その言葉に、その場に集ったメンバー全員の視線が彼女に集中する。

 

「あっ、この人は・・・。」

 

「申し遅れましたわ、私はサーペント・テールの準隊員、セシリア・オルコットですわ、今回は風花さんの護衛のために参りました、どうぞ、お見知りおきを。」

 

説明しようとする風花を制し、セシリアはヘルメットを脱ぎながらも自己紹介をし、優雅にお辞儀をしていた。

 

その動作の一つ一つから気品が滲み出ており、見る者を引き込む美しさを振りまいていた。

 

「そうか、よろしくなセシリア、ところで、あのデュエル、右腕がおかしくないか?」

 

「あら、流石ですわね、実はここに来る前に戦闘を行いまして、少し壊れてしまいましたの、宜しければ後で見ていただけませんか?」

 

握手しながらも、自分が乗ってきた機体の不備を一瞬で見抜いた彼の洞察力に驚きながらも、彼女は事情を説明し、機体の修理を依頼した。

 

「おう、任せとけって、それも仕事の一つだしな、けど、その前にドレッドノートの事での答えをくれないか?」

 

「はい、できる限りのお答えをさせて戴きますわ。」

 

ロウの言葉に頷きつつも、彼女はさり気無く風花を自身の前に立たせた。

 

恐らくそれは、自分が役目をすべて掻っ攫ってしまう事を防ぐ目的と、彼女を立てようとする気持ちから来ている行為であった。

 

「小さい・・・、女の子・・・?」

 

そんな時、タイミング悪く茫然自失状態から立ち直ったプレアがそんな言葉を口走ってしまった。

 

それを聞いてしまった風花は、ブチっという音が聞こえるかの様に眉間に皺を寄せ、彼に詰め寄った。

 

「なによ!?アンタだって大きいとは言えないじゃないっ!!」

 

「えぇ!?あの・・・?」

 

風花の剣幕に気圧される様に、プレアは後退りしてしまう。

 

「まぁ、ここで立ち話するのも何だ、艦橋に上がろうぜ。」

 

「はい。」

 

彼に助け船を出す様に言ったロウの言葉に、彼女は彼から背を向け、ロウ達と共に歩いて行ってしまう。

 

「あんな女の子がドレッドノートを・・・?そんなバカな・・・。」

 

その様子に、プレアは呆然と彼女達を見送っていた。

 

その表情は信じられないと言わんばかりの色が強く滲み出ており、彼の動揺の具合がよく判った。

 

「ふふっ、貴方はまだまだ、女性の心と言うモノを分かっておられないようですわね?」

 

プレアの様子を可笑しく思ったのだろう、セシリアはクスクスと笑いながらも彼に近づいていた。

 

「えっと・・・?なんですか・・・?」

 

「もう少し気を遣いなさいと言う事ですわ、女性を怒らせると、恐ろしい事になりますから♪」

 

いきなり話しかけられた事に対する驚きで、プレアはまたしても仰け反りそうになるが、セシリアの雰囲気に彼を責める気配が無い事に安堵したのか、表情を和らげた。

 

「あっ、自己紹介がまだでしたね、僕はプレア・レヴェリー、マルキオ導師様の使いです。」

 

「あら、貴方がそうでしたの、手荒な真似をしてしまい、申し訳ありません、誠心誠意、御説明させて頂きますわ。」

 

プレアがマルキオの代理人だと知ると、セシリアは申し訳なさそうに頭を下げながらも語った。

 

サーペント・テールとしての意向はあったとしても、彼女自身は彼に対しての申し訳無さがあり、それを少しでも払拭したいのだろう。

 

「は、はい、でも、何時返してくれるんですか?なるべく早く地球に行かないといけないんです・・・!」

 

「・・・?」

 

何処か焦りを滲ませながらも話す彼の雰囲気に、セシリアは何か奇妙な胸騒ぎを覚えた。

 

何が彼を急かすのか、その理由に触れそうになった様な気分だったが、彼女にはその正体を明確にする事が出来なかった。

 

「取り敢えず、風花さん達を追い掛けましょう?話はそれからでも遅くはないでしょう?」

 

「はい・・・、わかりました。」

 

焦るプレアを宥めながらも、セシリアは先に行ってしまったロウ達を追いかけようと、出口に足をむけ、彼の背を押しながらも歩き始めた。

 

その時だった・・・。

 

「セシ・・・リア・・・?」

 

「っ・・・!?」

 

自分の名を呼ぶ声に、彼女は弾かれた様に顔を上げた。

 

その声に聞き覚えが有るどころではない、何度も、何時も聞いていた愛すべき友の声・・・。

 

彼女が顔を上げた先には、驚愕の表情でこちらを見る金髪の女性の姿があった。

 

その姿に、彼女は驚きのあまりに目を見開く。

 

忘れる筈が、見紛う筈がない、その姿は嘗て、共に愛しき男の隣に立ち続けた、唯一無二の友のものだった・・・。

 

「まさか・・・、シャルさん・・・!?」

 

sideout




次回予告

絆が巡り合わせた二人の再会は、これから訪れる未来への布石なのか・・・。

次回機動戦士ガンダムSEEDASTRAY X INFINITY

再会、友よ 後編

お楽しみに~
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。