機動戦士ガンダムSEEDASTRAY X INFINITY   作:ichika

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ジャンク屋の戦い 前編

noside

 

戦闘終了後、ユーラシア連邦所属艦〈オルテュギア〉に繋がれたリ・ホームの内部に連合の制服を着た者達が数人乗り込んで行く。

 

その中には、先程単機でザフト軍を壊滅させたカナード・パルスの姿もあった。

 

彼は特務兵という、他の兵の指揮を担う立場であるのと、自らの手で標的を捕える事に拘っているため、自ら乗り込んで来たと言う訳だ。

 

「さぁて、ザフトがお前達を狙っていたと言う事は、此処にあるんだろう?核搭載のMSが!」

 

艦橋に入った彼は、此処に来る途中の格納庫付近で捕縛したロウ、リーアム、プレア、そしてセシリアとシャルロットを連れ、艦橋にいた残りのメンバーを纏めて捕縛、中心に集めて座らせた。

 

「(あれがハイぺリオンのパイロット・・・?)」

 

「(若いね・・・。)」

 

カナードを横目で見ながらも、隣り合わせで座らされたセシリアとシャルロットは、彼の見た目の若さに驚きながらも、自分達にしか聞こえない程度の声量で話していた。

 

嘗ての世界での自分達の年齢と変わらぬ青年に対し、何か思う事でもあるのだろうか・・・?

 

「パルス特務兵。」

 

そんな時だった、リ・ホームの艦橋に一人の若い兵士が入ってきた。

 

何かのデータを持ってきているのだろうか、その手には情報端末が握られていた。

 

「見つかったのか?」

 

「いいえ、まだ・・・。」

 

成果が思わしくないのだろう、その兵士の表情は暗かった。

 

「(ジョージは?)」

 

「(隠れて貰っているわ、これからの動きに必要だからね・・・。)」

 

彼の意識が逸れている内に、ロウとプロフェッサーは耳打ちをし、情報を交換し、これからの方針を選択する。

 

「指示のあった赤い機体ですが、バラバラにして調べましたがターゲットではありませんでした。」

 

「チッ、ハズレか・・・、他の機体は?」

 

思っていた機体と、レッドフレームが一致しなかった事に苛立ったのだろう、カナードは露骨な舌打ちをし、気持ちを切り替えるかの様に次の報告を尋ねた。

 

「それが・・・、この船にはジャンクパーツを含めると相当な数のMSが格納されています、それらを全て調べるにはかなりの時間がかかるかと・・・。」

 

申し訳なさそうに告げる兵士の報告に、カナードはロウ達を睨みながら言葉を発した。

 

「協力しろと言ったはずだがな?」

 

「へっ!部外者に教えられるかってんだ!!こちとら生活が懸かってんだからな!!」

 

「そーよそーよ!!」

 

彼の言葉に、ロウと樹里は生活の為だと突っぱねた。

 

とは言え、それはただの時間稼ぎであり、彼は後ろ手で課せられた手錠を抉じ開けようとしていたのだ。

 

不幸中の幸いと言うべきか、円形に座らされた事で、背中に回された腕が見えにくくなっており、こそこそと手錠を外そうとする事が出来たのだ。

 

もっとも、銃を向けられている時点で絶体絶命に近い事だけは間違いなく、彼も内心で焦りながらも手を動かしていた。

 

「よし、例のウイルスを使え。」

 

「う、ウイルスだって・・・!?」

 

彼の反応を探る様に放ったカナードの言葉に、ロウは驚愕の声を上げた。

 

「そうだ、量子コンピュータを好きなように出来るウイルスだ、これを防げるコンピュータは存在しないのさ。」

 

カナードの指示を受けた兵士が胸元からディスクの様な物を取り出し、リ・ホームのコンピュータに読み込ませてゆく。

 

ロウの反対側に座らされたセシリアとシャルロットは、その説明を聞かされて思い当たる節があるのか、揃って驚いた様な表情をしていた。

 

それもその筈だった、彼女達は以前の世界で、彼等が使用しているウイルスと似た様なモノを使用した事があり、その経験からウイルスの効力の恐ろしさを知っているのだ。

 

「この前の奴が使ってたのと同じか・・・!」

 

独り語の様に呻くロウの脳裏には、グレイブヤードに立ち寄る前に遭遇した機体の姿が浮かび上がっていた。

 

ウイルスの力でMSのコンピュータを狂わせ、レッドフレームとブルーフレームを戦わせた悪魔の様な機体であった。

 

その時は『8』が居てくれたから何とか凌げたものの、今は拘束されている上に、『8』はある作戦のため、彼の手元にはいないのだ、対処のしようが無かった。

 

「素直に協力しておけば、無駄死にせずに済んだものを・・・、愚かだな・・・。」

 

彼等の対応を嘲る様に、カナードは銃口をロウへと向ける。

 

恐らくはリーダーであるロウを始末しようとすれば何かしらのリアクションが起きると踏んでいるのだろうか・・・?

 

「(いぃ・・・っ!?待ってくれよ、まだ外れてねぇんだよ!!)」

 

面には出さないも、彼は内心で盛大に焦っていた。

 

このままでは撃たれる、それだけは間違いないため、何か時間稼ぎをしようと頭を回転させる。

 

「ねぇ、君はどうしてキラ・ヤマトを追ってるの?」

 

そんな彼を助ける様に、カナードがキラを追っている事を知っていたシャルロットはカマをかける様に尋ねていた。

 

「(シャルさん・・・?一体何を・・・?)」

 

彼女の言葉の真意、そしてその意味を知らないセシリアは怪訝の表情を浮かべ、シャルロットの顔を見た。

 

「貴様!?キラを知っているのか!?」

 

彼女の言葉に、彼は予想以上の食い付きを見せた事に、ロウはこれならばと言葉を続ける。

 

「会ってどうする?何の用があるんだ?」

 

「お前もキラを知っているのか!!余計な質問をするな!こっちが質問をしているんだ!!」

 

彼の言葉に、カナードはお前が知る必要は無いと一喝、尋問する様な口調で問い質した。

 

「よくは知らない、だけど、アイツが乗ってたMSは最後までアイツを護ろうとしてた・・・、俺はメカが信じる奴を信じる、アンタのメカはアンタを護ってくれるのかい?」

 

その質問は、機械を、メカを愛する彼にとって、メカが護ろうとする程の人物ならば自分も信じられるという意味の問いであり、まともな人間ならすぐさま理解できるであろう。

 

「くっ・・・!!メカまでもが俺を蔑み、裏切るとでも言いたいのか・・・!?奴は完全で、俺は不完全だとでも・・・!?」

 

顔を怒りに染めながらも、彼はロウに向けて銃を構える。

 

どうやら、質問の意味をキラ・ヤマトとの対比と捉え、自分を貶された気分に陥ったのだと推察できる。

 

「(マズった・・・!!殺れる・・・!!)」

 

手錠を解除しきれていないロウは、撃たれる事を覚悟して身構えた。

 

だが・・・。

 

「やめなさい!貴方方はジャンク屋組合の権利に不法介入しています!!」

 

彼を庇う様にリーアムが立ち上がり、抗議の声をあげる。

 

それは一見脅しに聞えるが、ロウの手錠を外す為の時間稼ぎでしかなかった。

 

「これ以上暴挙を続けるならば、連合に対し、正式な抗議を行い───」

 

言葉を続けようとした彼の右肩を、カナードが発った一発の弾丸が撃ち抜いた。

 

真っ赤な鮮血が飛び散り、彼の身体が慣性で後方へと流されようとしていた。

 

「リーアムっ!!こんにゃろう!!」

 

彼が撃たれた瞬間に手錠を抉じ開けることが出来たロウは、手錠を投擲、カナードの手に握られた拳銃を弾き飛ばした。

 

「今よっ!!」

 

好機と見たのだろう、プロッセッサーが叫ぶと、彼等が座る床が下がってゆく。

 

どうやら、二層構造になっていた床の様で、緊急避難用であることは明白だった、

 

「調子に乗るなよ兄ちゃん!!」

 

「貴様っ!?」

 

リーアムの身体を庇う様に立ちながらも、捨て台詞を吐くロウに追い縋ろうと動くが、手が届く寸前に床が閉じ切り、カナードは彼等を逃してしまった。

 

「ふざけた仕掛けを・・・!!探せ!探し出すんだ!!」

 

腕に付けた通信機に向けて叫びながらも、彼はコンピュータを操作していた兵と共に艦橋を飛び出していった。

 

sideout

 

noside

 

艦橋下の隠し通路に、カナード等から逃れたロウ達が辺りを警戒しながらも集結していた。

 

既に全員が拘束から逃れており、プロフェッサーとシャルロットは負傷したリーアムの手当てに専念していた。

 

「リーアムは?リーアムは!?」

 

「大丈夫、肩に当たっただけだよ、でも、球を摘出しないと不味いわ。」

 

樹里の叫びに答えながらも、プロフェッサーは止血を行いながらも状況があまり思わしくない事に顔を顰めていた。

 

「すまない、もっと早く動くべきだった、ウイルスのせいで一部の機能が使えなくなっていてな。」

 

「いや、助かったぜジョージ。」

 

その傍らでは、姿を隠していたジョージとロウが言葉を交わしながらも対策を立てようとしていた。

 

「ロウさん、このままではいずれ捕まってしまいます、何とかしないと・・・!」

 

状況に焦りを感じているのだろうか、プレアは僅かに上ずった声でロウに話しかけていた。

 

だが、彼の言う事はもっともだ、敵は彼等を見付けていないだけで、艦のシステムの一部を掌握している、艦内の構造を読み取られてしまえば、それこそ捕えられかねない状況なのには変わりない。

 

「なに、格納庫に行きゃ色々ある、なんとかなるさ、ジョージ、他の場所の奴等の足止めを頼んだぜ。」

 

「任せておきたまえ。」

 

ロウの言葉に了解し、ジョージはホログラム化を解除して消えた。

 

「ロウ、劾から連絡があったよ、もうすぐ来れるって。」

 

「ありがとな風花、これでちっとは動きやすくなるぜ。」

 

風花の報告に、彼は勝算を見付けたのだろうか、表情を僅かに緩ませ、全員を見渡した。

 

「プロフェッサーとシャルロットはリーアムを頼む、俺達は格納庫に行ってドレッドノートを守るぞ。」

 

彼の力強い言葉に、全員が頷き、それぞれがやるべき事のために動き出した。

 

「俺達ジャンク屋と、傭兵の戦い方を見せてやるぜ!!」

 

sideout

 

noside

 

「うわぁ!?まただ!?」

 

「また勝手にシャッターが閉じた!?そんなバカな!!」

 

リ・ホーム内のとある通路にて、隔壁に阻まれ立ち往生している連合軍の兵士達姿があった。

 

彼等から逃れたジャンク屋のメンバーと、核搭載MSを探す為に船内を移動している彼等だったが、どういうわけか、シャッターや隔壁が独りでに動き、彼等の動きを阻害していたのだ。

 

「この船のシステムはこちらがウイルスで掌握しているんじゃなかったのか!?」

 

足止めを食らう内の一人、カナード・パルス特務兵は苛立ちを隠そうともせずに機器を操作している兵士に怒鳴る様に尋ねた。

 

「コンピュータは支配下にあるのですが、この船には別のコントロール系統が有る様で・・・、それには何故かウイルスが効きません・・・。」

 

「量子コンピュータを使ってないとでも言うのか?そんなバカな・・・。」

 

兵士の言葉に、彼は馬鹿げた事を言うなとでも言う様に言葉を紡ぐが、その可能性も捨てきれないと思考を巡らせた。

 

「何をしている!!ジャンク屋に手を出すな!!」

 

そんな時だった、彼等の背後から聞き覚えのある怒鳴り声が聞こえてきた。

 

彼等が振り向くと、そこには何故かアルテミスの指令、ガルシアの姿があった。

 

「ガルシア指令!?どうしてこちらに・・・!?」

 

「すぐに帰投したまえ!!」

 

「・・・。」

 

カナードの隣にいた兵は驚愕の叫びをあげるが、彼は何かの違和感に気付いたのだろう、持っていた拳銃でガルシアを撃った。

 

弾丸は狙い違わずに彼の頭を突き抜けるが、血飛沫などは飛び散らず、その姿は蜃気楼の様に揺らめいて消えてしまった。

 

「ホログラムだ・・・、何なんだこの船は・・・!」

 

まるで人をおちょくるかの様な仕掛けが施されているこの船の構造に苛立っているのだろう、カナードは歯軋りを堪える事が出来なかった。

 

だが、熱くなっていては、見つけられるモノも見付けられなくなると自分に言い聞かせる様に頭を振り、先に進もうと隔壁が閉じていない方へと歩き出そうとした。

 

「パルス特務兵!オルテュギアから緊急通信です!!」

 

「何?どうした!?」

 

情報端末を持った兵士が彼に近づき、母艦との回線が開かれている端末を手渡した。

 

そこにはメリオルの顔が映し出されており、何処か焦りの様な表情が窺う事が出来た。

 

『こちらに急速接近してくるMSの反応が有ります!数は2!!』

 

「なんだと!?まさか、あの時の蒼い奴か・・・!?」

 

彼の脳裏には、自分の機体に傷を付けた蒼い機体の姿が思い浮かんでいた。

 

何故、彼はそのMSが来ると感じたのだろうか・・・?

 

理由は、この船にもう一機の蒼いMS、デュエルがいるため、かの傭兵はこのジャンク屋との関わりがあり、仲間とジャンク屋が自分達に攻め込まれていると知り、救援に駆け付けたのだと判断したのだ。

 

「チッ・・・!面倒な奴が来たな・・・!メビウスを出せ、足止めぐらいは出来るはずだ!!」

 

『了解しました。』

 

通信機に怒鳴り付け、彼は傍らで待機していた部下に視線を戻した。

 

「正攻法では突破出来まい!こうなれば隔壁を焼き切れ!道具ならあるはずだ、探せ!!」

 

「了解しました!!」

 

彼の指示に、兵士はすぐさま動き出した。

 

「(ここまで来たんだ、無駄足なんて事はさせんぞ・・・!)」

 

折角訪れた、己の機体を強化する絶好の機会をこんな所で邪魔される訳にもいかない。

 

そんな仄暗い思いと共に、彼は隔壁の先にいるターゲットを睨みつけた・・・。

 

sideout




次回予告

連合の手に渡った核、それを知ったロウ達は迫る驚異を退けるべく、行動を起こす。

次回機動戦士ガンダムSEEDASTRAY X INFINITY

ジャンク屋の戦い 後編
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