機動戦士ガンダムSEEDASTRAY X INFINITY 作:ichika
sideセシリア
負傷したリーアムさんを医務室へと連れて行くシャルさんとプロフェッサーさんを援護するため、私はロウさん達と共に格納庫へとやって参りました。
格納庫には大小様々なジャンクパーツや身を隠せるほどの大きさのコンテナが無造作に置かれており、隠れる事に苦労しませんでした。
私はロウさんとは別のコンテナの陰に隠れ、レッドフレームに取付いている連合の兵士達の様子を伺います。
今は二人しか見当たりませんが、他にもいるかも知れません、警戒は続けておいて損は無いでしょう。
『くそぅ・・・、レッドフレームを好き勝手にバラしやがって・・・!』
『レッドフレームが・・・。』
耳に付けた通信機からロウさんの悔しそうな声と、樹里さんの何処か気の抜けた声が聞こえてきました。
自分の機体がバラバラにされているのです、悔しさを感じる事は当然と言う事、私もデュエルがあの様にバラバラにされたらキレる事間違いなしですもの・・・。
「(どうされますの、ロウさん?私が飛び出して気を引きましょうか?)」
通信機に向けて彼に尋ねますが、流石に独断で動く様な真似は致しません。
『待ってろセシリア、俺達のやり方がある、失敗したら頼んだぜ。』
「縁起の悪い事を仰いますわね、ですが、お任せくださいませ。」
サポートは得意ですからね、私はそちらに専念させて頂きましょう。
『そんじゃ、俺達も行くぞ、『8』!!』
ロウさんがそう言うや否や、頭部や脚部を取り外されたレッドフレームが突如として動き出しました。
どういう訳・・・、そういえば、シャルさんから聞いた事が有りましたわね、ロウさんをサポートする疑似人格コンピュータがあると・・・。
つまりはそれがレッドフレームを動かしているのでしょう。
「うわっ!?なんで動くんだ!?」
「そんなバカな!?無人の筈だぞ!?」
突如として動き出したレッドフレームに驚いたのでしょう、連合の兵士二人は慌てて機体から離れていきます。
なるほど、これを狙っていたのですね。
『今だっ!!』
コンテナの陰から飛び出したロウさんは隠し持っていたスパナを二つ投擲、身体を浮かせていた兵士達に見事に命中させておられました。
流石はジャンク屋と言うべきでしょうか、トラブル対処能力は傭兵に勝るとも劣りませんわね。
「やったぜ!!」
通信機を介してではなく、普通にロウさんの声が聞こえてまいりました。
まぁ、作戦がうまくいった事が喜ばしいのだとは思いますが、油断は禁物でしょう。
「動くな!!」
「げぇっ!?もう一人いやがったか!?」
案の定と言う所でしょうか、見えない所にいた連合兵が現れ、ロウさんに銃口を向けていました。
このままでは彼の御命が危ういですわね・・・。
やはり、ここは後ろに回り込んで足と腕を撃ち抜いて行動不能にしたいところ、なのですが、先程捕えられた時に銃を奪われてしまいましたので、それも出来ません・・・。
どうするべきでしょうか・・・。
「待ってください!!ジャンク屋の皆さんは関係ないでしょう!!」
「なんだお前は!?」
「プレアさん・・・!?」
何故飛び出したのですか・・・!?貴方が出ても何も変わりませんわよ・・・!!
「僕がこの件のすべてを知っています!!」
この件のすべて・・・?
そういえば、プレアさんがマルキオ導師の代理人でしたか?
ですが、それとこれとは話は別ですわね、何とかしてお助けせねば・・・!
「そうか、では話を聞こう。」
彼の言葉に、連合兵はプレアさんに銃口を向け直しました。
その時でした、頭上から何やら大きな音が聞こえてまいりました。
「なんですの!?」
「なんだっ!?」
音の原因は、上部ハッチを何者かが突き破られようとしていました。
「・・・!まさか・・・!ロウさん!プレアさん!!」
私は皆さんに警告を飛ばし、コンテナの出っ張った部分を掴みます。
このタイミングでの来客と言う事は、恐らく、あの方が来て下さったのですね!!
ハッチを突き破り、蒼い機体がその姿を現します、その姿はまさしく・・・!
「ブルーフレーム!!」
その姿を現した機体は右手にタクティカルアームズを構え、左手には何やらコンテナを持っていました。
そういえば・・・、あのコンテナは・・・!?
緊急シャッターが閉じ、急激な空気の流失は収まりました。
真空の冷たさがあったものでしたから、とてつもない寒さが有りましたわね・・・。
コックピットから飛び出した劾さんは、何かに掴まり損ねて飛ばされた連合兵に近付き、鳩尾に一撃を入れて無効化していらっしゃいました。
あ、ついでに連合兵を拘束しておきましょう、後々抵抗されても困りますからね。
私が連合兵三人を捕まえている内に劾さんは床に降り立ち、ロウさん達と向かい合っていました。
「マルキオの代理人はいるか?」
「僕です、貴方が叢雲 劾・・・?」
「借りていたモノを返しに来た、受け取れ。」
劾さんがそう言うや否や、運ばれてきたコンテナのハッチが開き、内部に積まれていた物がその姿を現しました。
やはりそうでしたか・・・、私達がプレアさんから奪い、これまで護っていたもの・・・。
「ドレッドノート!でも、なんで返して下さったのですか?」
確かに、何故このタイミングで変換されたんでしょうか?情勢からして、もっと後になるのではと思っていましたが・・・。
まさか、恐れていた事が・・・?
「状況が変わった、Nジャマーキャンセラーの情報は最も悪い形で流失してしまった。」
「もしかして、連合に・・・!?」
私の想像を裏付けるかの様に発せられた言葉に、プレアさんは驚愕し、秘密裏に事をなせなかった事と、事態が最悪の展開に向かってしまった事を嘆く様に肩を落としていらっしゃいました。
ここにあるNジャマーキャンセラーが流失した訳ではなさそうですが、それでも、世界のバランスを崩す事には変わりがありませんわね・・・。
「風花、セシリア、俺達の任務は終わった、帰るぞ。」
なるほど、此処にあるNジャマーキャンセラーが悪用される事を、ひいては別の勢力に渡らない様に見張る事が私達に与えられた任務でしたわね、その必要が無くなれば、私達がドレッドノートに張り付いている必要もありませんものね。
ですが、このままシャルさんとお別れは寂しいですわね・・・、せめて挨拶ぐらい・・・。
「アタシ、まだここに残る!そう決めたの!!」
そんな時でした、プレアさんを心配そうに見ていた風花さんが、劾さんの言葉にきっぱりと返していました。
恐らく、プレアさんから感じる何かに気付かれたのでしょう、放っておけないと思われたのでしょう。
「そうか、なら、セシリア、引き続き風花の護衛を頼む、気を付けてな。」
あ、それとも私に気を使って下さったのでしょうか?
風花さんがここに残れば、自ずと私もここに残る事が出来ますからね・・・。
「はい、お任せくださいませ、必ずや、皆さんの下に戻りますわ。」
「あぁ、信じてるぞ。」
私にそう言い、劾さんはブルーフレームのコックピットに戻ってゆき、開かれたハッチから漆黒の宇宙へと飛び出して行きました。
『ロウ、敵は途中の隔壁を焼き切ってこちらに向かって来ている、あまり時間は稼げないがどうするね?』
ブルーフレームが去って行った直後にジョージさんが姿を現し、敵の動向を知らせて下さいました。
やはりと言うべきでしょうか、今の時点で最短ルートを通ってここに辿り着くならば、隔壁を突き抜けてくる事が一番の方法ですものね。
「やっぱりそう来るよな、よっし、まずはコイツを直しちまおう、あの兄ちゃんには渡せないからな。」
「えぇ!?でも、そんな簡単に直せるものなの!?」
直すと一言で言いましても、MSの頭部一つをくっ付けるだけですら、動力パイプやら駆動系統やら色々と接続しなければならない物が有ります、それらを取り付けて動かせる様にするまではやはりそれなりの時間が必要なはずです。
ですが、今の状況では出来ないと泣き言を言っている暇ではないでしょう、デュエルもバスターもバラされているかも知れません、今はできる事をする、それだけですわね。
「私も手伝います、やりましょう!」
「僕も手伝います!」
「アタシも!!」
私の言葉に追従する様に、プレアさんと風花さんも協力を申し出ておられました。
これだけの人数がいるのです、それぞれ手分けして作業すれば、より効率的に作業が進むはずです。
「よっしゃ、ジャンク屋の意地、見せてやるぜ!!
ロウさんの言葉に雄叫びを上げながらも、プレアさんと風花さんはコックピットへ、樹里さんは頭部を持ち上げるためのクレーンを動かしに制御室へ、ロウさんは下拵えをするのでしょう、先にドレッドノートの首元に行かれました。
それぞれがやるべき事を理解し、そして動く、当たり前の様でこれほど難しい事はありませんわね。
かつての私なら、誰かの力など借りずに自分独りで済ませようとしたでしょう、それが出来た世界でしたから尚更です。
ですが、今の世界では右も左も、そして自分が何の為に存在するかも分からぬもので、独りで出来るのはほとんど無いと言って良いでしょう。
ですが、お陰で学べた事が有りました、人は独りきりでは何も出来ぬと、寄り添って、支え合ってこそ力を発揮できるのだと・・・。
「(一夏様・・・、貴方様は今も、独りで戦っておられるのですか・・・?)」
もしそうなら、もう一度お会いする事が出来た暁として、私が貴方様を止めてみせますわ。
嘗て、ドレッドノートに乗った方に教わった愛の形を、貴方様にお届けするためにも・・・。
今はまだ見えぬ愛しき人に想いを馳せながらも、私は身体を浮かせ、ドレッドノートへと向かいました。
この危機を乗り越える為に、皆で次も笑いあうためにも・・・。
sideout
noside
「これが最後です、もう少し待ってください!!」
隔壁が焼切られる光景を見ながらも、カナードは今か今かと忙しない様子であった。
オルテュギアから傭兵のMS二機が撤退したと言う報告は受けていたため、彼等は時間との勝負と言わんばかりに隔壁を突破していき、遂に格納庫と通路を隔てる隔壁に辿り着いたのだ。
「急げよ!何かされた後では遅い!必ず手に入れるんだ!!」
兵士を急かしつつ、彼は今にも焼切れそうな隔壁の向こう側にあるターゲットを睨んでいた。
自分の機体を強化するために必要な核を使用できるようにする装置、最初はそれさえあればよかったが今は違う。
散々人をおちょくる様な仕掛けで足止めを喰らっていた事と、素直に提供を拒んだジャンク屋にある種の怒りを覚えていたのだ。
この怒り、晴らさずにいられようかと言わんばかりに、彼は殺意を籠めた目をしていた。
そして、暫くの後、漸く最後の隔壁が破られ、壁が奥へと倒れた。
「ジャンク屋め、皆殺しだっ!!」
反撃を警戒する事も無く、彼は真っ先に格納庫内へと足を踏み入れた。
格納庫内を見渡しながらも進んで行くと、浮遊物が少なく、視界的に開けた場所に辿り着いた。
そこには、たった今起動してゆく一機のMSの姿があった。
「っ!?これは・・・っ!」
ダークグレーからトリコロールへと色づいてゆく装甲は、おそらくPS装甲を使っている事が傍目からでもうかがい知る事ができ、量産の機体で無い事は一目瞭然であった。
だが、そんな事は彼にはどうでも良かった。
何故ならば、彼の目を引いたのはその頭部、人間の目の様なツインアイ、そして四本のブレードアンテナ、それはまさしく・・・。
「ガンダムだとっ!?」
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次回予告
動き出すドレッドノートと、それを狙うハイペリオン、二つの力が、今ぶつかり合う。
次回機動戦士ガンダムSEEDASTRAY X INFINITY
ドレッドノートVSハイペリオン
お楽しみに~。