機動戦士ガンダムSEEDASTRAY X INFINITY   作:ichika

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巡り会うASTRAY

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地球を見下ろす衛星、月の表面にて、二つの軍隊による激しい戦いが繰り広げられていた。

 

片や、バレルの様な物を十字に装備したMA、メビウス・ゼロ、片や全長18mのMS、ジン。

 

メビウス・ゼロの機体数は5機、ジンの総数は3機と言う、数の面だけ見ればMAの方が有利に思われる。

 

だが、ザフトが開発したMSは汎用性に優れ、旋回や機動力の面で、連合の主力であるMAを大きく上回っていたのだ。

 

開戦当初、圧倒的なまでの戦力差を持ちながらも、地球連合がザフトに敗退し続けたのは、これが原因だったのだ。

 

だが、当然連合も負けてばかりではなかった。

 

ガンバレルと呼ばれる特殊兵装を積んだ、メビウス・ゼロのみで構成された部隊を編成、これにより、ザフトとの戦線を維持しようとしたのだ。

 

ガンバレルとは、本体から離れ、独立稼働した兵装であり、謂わば、たった一機のMAがそれを使う事により、様々な方向からの一斉攻撃を可能としたのだ。

 

如何に高い機動性、運動性を持ったMSとは言えど、全方位に気を配らねばならない状態での回避はそう容易くは無い。

 

しかも、今展開しているメビウス・ゼロはジンの数を上回っている。

 

つまり、それだけガンバレルの数も増えるため、回避しなければならない攻撃の手数も増えていくのは明白であった。

 

たった今、ガンバレルの攻撃を何とか回避したものの、メビウス・ゼロ本体の攻撃に被弾した一機のジンが、スパークを一瞬散らしたかと思えば、次の瞬間には爆散し、真空の宙を彩った。

 

――ダメです・・・!殺さないで・・・!!――

 

その様子を、メビウス・ゼロのコックピットから、いや、戦場全体を眺める様に虚空を佇むプレアが見ていた。

 

その表情は苦悶に歪み、見たくないモノを無理やり見せられているかの様にも見えた。

 

それもそうだろう、この戦場は彼が、いや、彼の基になった人物が経験した戦闘だ、プレアはそれを見せ付けられているのだ。

 

――ヤメテ・・・!殺してはダメです・・・!!――

 

幾ら叫べども、幾ら手を伸ばそうとも、彼の声は破壊音に呑まれ、消えていくだけだった。

 

いや、そもそも届きはしないだろう。

 

なにせ、彼はその戦場にはいなかったのだから・・・。

 

――ヤメテ――

 

そう叫んだ瞬間、彼の目の前は暗闇に閉ざされ、彼の意識も闇の底へと沈んで行った・・・。

 

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「うぅっ・・・?」

 

「プレア?」

 

リ・ホームの医務室にて、ベッドに横たわったプレアが呻いたのを聞き、風花は彼の顔を覗き込む様に身を乗り出した。

 

「あ・・・?風花、ちゃん・・・?」

 

自分の顔を覗き込む彼女を認識したのだろう、彼は少し気怠そうながらも彼女の名を呼んだ。

 

余程心配していたのだろう、目元には薄らと涙が溜まっており、今にも零れ落ちそうになっていた。

 

「大丈夫ですか、プレアさん?」

 

そんな風花の頭を撫でながら、彼女の隣に立っていたセシリアが微笑みを湛えた表情を彼に向け、体調を尋ねていた。

 

「セシリアさん・・・、此処は・・・?」

 

「ジャンク屋組合の補給ステーションです、安心してください。」

 

セシリアに尋ねた彼の問いに答えたのは、少し離れた場所に座っていたリーアムだった。

 

撃たれた肩を包帯で巻いているため、何処か痛々しい様子が窺える。

 

「そうですか・・・、・・・ッ!あのMSは・・・!?あの人は・・・!?」

 

自分が気を失う前の事を思い出したのだろう、彼は思わず跳ね起き様としていた。

 

「大丈夫ですわ、プレアさん、彼は貴方が倒しましたわ。」

 

そんな彼を安心させる様に、セシリアは彼の身体を支え、ゆっくりとした優しい口調で話していた。

 

焦る必要は無い、そう言っている様にも見えた・・・。

 

「そう、ですか・・・、あの人からは、黒い炎が見えました・・・、とても悲しい炎が・・・。」

 

彼女の言葉に安堵したのだろう、プレアは大きく息を吐き、自分がハイぺリオンのパイロットに感じた印象を小さく呟く様に話した。

 

「他の皆さんはドレッドノートの整備とレッドフレームの整備を行っています、ここならば資材も手に入るので直ぐに完了するでしょう、あ、ロウとシャルロットは用事で出掛けています。」

 

「そうですか、皆さんが無事でよかった・・・。」

 

リーアムの説明にプレアは頷きながらも言葉を紡いだ。

 

まだ疲れているのだろう、彼は疲労を浮かべた表情を見せた。

 

「急に気絶しちゃったからビックリしちゃったよ、セシリアがアドバイスしてくれてなかったら危なかったよ。」

 

「本当だね、風花ちゃんとセシリアさんのお陰で助かったよ。」

 

風花の言葉に苦笑しながらも、彼は助かったと言う言葉で自身の幸運を喜んでいる様にも見えた。

 

彼はマルキオからの依頼を背負っている、それを完遂させずに死ぬ事は、彼にとっては何よりも後悔すべきものなのだろう。

 

「何処か、御身体が悪いのですか・・・?」

 

彼の様子から何かを察したのだろう、セシリアは彼の瞳の奥を見る様に視線を送った。

 

「いえ・・・、ドラグーンの操作に疲れただけです・・・、まさかあんなに疲れるなんて・・・。」

 

そんな彼女の視線に気付いたのか、彼は誤魔化す様に笑い、疲れただけだと言った。

 

だが、そんな事ぐらい、セシリアには御見通しだった、何せ、彼女も異世界ではドラグーン使いだったのだから。

 

「(嘘、ですわね・・・、幾らドラグーンの操作が初めてでも、気を失うなんて事はある筈が有りませんわ・・・、それに、先程の動きはどう見ても、私よりも巧い・・・。)」

 

先程の戦闘を見ていたセシリアは気付いていたのだ。

 

彼がドラグーンを、またはそれに類似する兵器を以前にも使った事があると言う事に・・・。

 

「(まさか・・・、過去に何かあったのですか・・・?)」

 

如何に空間認識能力を持っている彼女とは言え、人の過去を覗き込む事など不可能に近い。

 

だからこそ、彼が触れて欲しくない話題には触れない事にしたのだ、何時か、彼が話してくれると信じて・・・。

 

「ドラグーン・・・、初めて見たわ・・・、あれがあればアタシでも戦えそう。」

 

「あはは・・・、あれは誰にでも扱える訳じゃないんだ、かなり特殊なモノだからね・・・。」

 

風花の言葉に苦笑しながらも、彼はそんな事は無いと言う風に言葉を紡いだ。

 

彼の言葉通りだと、それを聞いていたセシリアは誰にも気付かれない程度に首を縦に振った。

 

「そうなんだ・・・?」

 

「連合のガンバレル・システムに似ていますね、あちらは有線式ですが・・・。」

 

よく分からないと言う風に首を傾げる風花に、リーアムは自分の記憶の中にあった、ドラグーンに似た兵器の名を口にしていた。

 

「えぇ、原理は同じです、ドレッドノートにはザフトで実用化した量子通信が使われているんです。」

 

「なるほど・・・、量子通信が実用化段階に入ったのですか、ザフトの技術力は凄いですね・・・、それなら、Nジャマーの影響を受けずに無線コントロールが可能ですね。」

 

彼の説明に捕捉する様に語られたプレアの言葉に、リーアムは納得しながらも、実用化が難しいと言われていた量子通信を実用化させたザフトの技術力に感嘆していた。

 

「連合のガンバレルは、今では使える人間はほとんどいないと聞いています、確か、以前はそれ専用の部隊もいたとの事ですが・・・。」

 

「ふぅん・・・、どっちにしても、プレアじゃないと操縦出来ないんでしょ?凄いじゃない!」

 

リーアムの言葉に納得したようなしてないような返事をしながらも、風花はプレアに向き直り、手放しに褒めようとしていた。

 

彼女からしてみれば、選ばれた人間が使える様な兵器を、目の前にいる少年が使う事が出来るのだ、純粋な尊敬の念すら覚えるだろう。

 

「・・・。」

 

「プレア?」

 

だが、当の本人は思い詰めた様な表情をしており、嬉しさなど全く無かった。

 

「凄くなんてないよ・・・、武器が、兵器が上手く扱えるなんて、全然、凄くなんてないんだよ・・・。」

 

「・・・。」

 

彼の言葉の意味を直感と自身の経験から察したのだろう、セシリアは複雑な表情で彼を見ていた。

 

自分は嘗て、技を、兵器を上手く使える様になるため、また、それで人を殺める為に自分の持つ力を磨いてきた存在だったのだ。

 

彼は自分とは違う状況で、そういった兵器の扱い方を憶えさせられたのだと、彼女は感じ取っていた。

 

だが、それと同時に、セシリアは自分が彼に何か言葉を掛けてやる権利が無い事も悟っていた。

 

彼女は人の命を奪う事を目的にその力を使っていたが、プレアは違ったのだ。

 

力を忌避し、寧ろ疎ましくさえ思っている、そんな彼に人殺しである自分が何も言えるはずが無い事ぐらい、彼女は冷めた思考で結論付けていた。

 

彼女自身、何をすれば良いのか、今だ答えが出てはいなかったのだから・・・。

 

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デブリベルト付近を、一隻の小型輸送船が航行いていた。

 

見たところ、荷物を運んでいる訳でも、はたまた、配達帰りという訳でもなさそうだった。

 

「この忙しい時に呼び出しやがって・・・、ダコスタの奴、何の用事だ?」

 

 

『まったくだ!』

 

その操縦室では、操縦桿を握るロウがぼやき、それに同意する様に『8』もビープ音を鳴らして、画面に文字を表示していた。

 

「来いって言ってただけだよね?通信を傍受されてたら拙い話なのかもね。」

 

副操縦士席に座るシャルロットは、彼からの又聞きながらも自分の予想を告げる。

 

確かに、補給やそれに準ずる依頼ならば、通信を入れるだけで事足りる。

 

だが、彼等を呼び付けた相手は、わざわざ自分達の所まで来させるのだ、何か裏があると見て良いだろう。

 

「補給じゃないと言うし・・・、話がある、って事だけか・・・。」

 

「うん、間違いなく何かありそうだね。」

 

彼の言葉に頷き、シャルロットはコックピットの外に広がる虚空を眺めた。

 

その先に待つ何かに想いを馳せているのか、それとも・・・。

 

『前方に反応あり、戦艦クラスが3つだ。』

 

そんな時だった、センサーで感知したのだろう、『8』がビープ音を鳴らし、目的に近づいている事を告げた。

 

「おっ、見えたか?」

 

目を凝らすと、そこには彼等の方に近付いてくる三隻の戦艦、アークエンジェル、クサナギ、エターナルの艦影が徐々に見えてきた。

 

「エターナル、こちらジャンク屋、ロウ・ギュール、着艦許可をくれ。」

 

『了解、そのまま進め、ロウ・ギュール。』

 

向こうも彼等の接近を確認していたのだろう、通信を入れると間髪入れずに許可が返ってきた。

 

「さて、理由を聞きに行くとしようぜ。」

 

「うん。」

 

二人は頷き合い、輸送船をエターナルのハッチに向け、進んでいく。

 

これから明かされる、真実にを知りに・・・。

 

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ジャンク屋組合所属の補給ステーションを、急な揺れが襲った。

 

「なに!?」

 

ステーションとドッキングしていたリ・ホームにもその突発的な揺れは伝わり、医務室内にいた風花は驚きの声を上げていた。

 

「これは・・・、この感覚は・・・。」

 

「はい・・・、彼が・・・、あの人が戻って来たんですね・・・。」

 

この揺れを引き起こした原因を感じ取ったのだろう、セシリアとプレアは顔を見合わせていた。

 

高い空間認識能力を持つプレアは兎も角として、セシリアも彼程では無いにしろ、空間認識能力を持っている、敵が発する気配を読み取る事も出来るだろう。

 

「まさか、もう攻めて来たんですの・・・?」

 

敵がもう攻め込んできたと考えたセシリアだが、それは到底難しいと思っていた。

 

何故ならば、ハイぺリオンは完膚なきまでに破壊され、辛うじて残っていたのはバイタルエリアと頭部のみだった、起動はおろか、修復すら完全でないと結論付けた。

 

だが、今このステーションを攻めて来ているのは、あのハイぺリオンのパイロットである事は紛れもない事実だった。

 

間違える筈もない、この世界に、黒い憎しみの炎を身に纏っている人間がどれだけの数いるだろうか・・・。

 

「・・・、僕が行きます。」

 

「・・・。」

 

何かを決心したのだろう、プレアはベッドから起き上がり、医務室の出口に足を向けていた。

 

そんな彼から何かを察したのだろう、セシリアはただ押し黙り、彼の様子を窺っている様だった。

 

「戦うのなら、アタシも一緒に!!」

 

彼が迎撃に向かうと思ったのだろう、風花は自分の役目とばかりに席から立ち、彼の後を追おうとした。

 

「いや、風花ちゃんは残ってて、僕は戦いに行く訳じゃないんだ、一人で大丈夫さ。」

 

「え・・・?」

 

自分が想像もしていなかった事を言われたためか、彼女は驚愕のあまり硬直してしまった。

 

「そんな・・・!ダメよ!殺されちゃうよ!!」

 

彼の思いに気づいたのだろう、彼女は必死になって彼を止めようとしていた。

 

彼女の反応は至極当然だった、敵はドレッドノートを、ひいてはそのパイロットであるプレアを狙っているのだ、今投降する様な真似をすれば、命の保証は無い。

 

「大丈夫、とは言い切れないけど・・・、でもそうしたいんだ、あの人の炎を、憎しみの炎をあんなに大きくしてしまったのは僕の責任なんだ、僕が戦ったから・・・。」

 

心配する彼女に大丈夫だと笑いかけながらも、プレアは決意を固めたと言わんばかりの表情を浮かべていた。

 

これは自分の責任、だから風花を巻き込む訳にはいかないと、彼の瞳は物語っていた。

 

「で、でも・・・!!」

 

理由を聞いても尚食い下がろうとする彼女の両肩を、今まで静観していたセシリアが落ち着かせるように掴んでいた。

 

「貴方の覚悟は分かりましたわ、お行きなさい、プレアさん。」

 

「セシリア!?どうして・・・!?」

 

彼の想いを理解していない風花ではなかったが、今の状況で行けと言うセシリアが信じられなかったのだろう、彼女を怒りと困惑が籠った目で見ていた。

 

「風花さん、プレアさんが決めた事なのです、私達が口出し出来る事ではありません、どうか、彼の想い通りにさせてあげてくださいな。」

 

自分達が縛り付ける事は出来ない、そう告げる彼女の言葉に、風花は何も言う事が出来なかった。

 

「プレアさん、必ず無事で戻って来るのですよ?良いですね?」

 

「はい、セシリアさん、風花ちゃんをお願いします。」

 

必ず生きて帰って来い、その言葉に頷きながらも、彼は医務室を飛び出していった。

 

それを見送り、セシリアは今だ続いている振動を引き起こしている人物に想いを馳せた。

 

「(あの男・・・、一体何の目的でプレアさんを・・・?)」

 

彼は当初、Nジャマーキャンセラーを狙っていた筈だった、だが、今はどうだ、リ・ホームに攻撃を仕掛ける訳でも無く、ただ挑発の様に攻撃紛いの事を繰り返しているだけだ。

 

この事から、彼女はハイぺリオンのパイロットがNジャマーキャンセラーではなく、プレアの方であると見抜いたのだ。

 

だが、その目的までは、彼女でも分からなかったが・・・。

 

「(プレアさん・・・、どうか御無事で・・・。)」

 

自らの弟の様な少年の無事を祈り、彼女は指を絡めていた・・・。

 

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「出てこい!ガンダムゥゥ!!」

 

母艦、オルテュギアの艦載機であったMA、メビウスに乗り、カナードはリ・ホームが停泊するジャンク屋の補給基地に攻撃を仕掛けていた。

 

条約では、ジャンク屋への武力行使は当然の事ながら容認されていない。

 

だが、そんな事彼にとってはどうでも良かった、今はただ、自分の果たすべき目標に突き進むのみと、彼は機体を操り、攻撃を続けて行った。

 

『こちらステーションの守備隊だ!直ちに攻撃を停止せよ!!繰り返す!直ちに攻撃を停止せよ!!』

 

そんな彼の前に、二機のプロトジンが姿を現した。

 

その手にはマシンガンが握られ、いかにも戦えますと言った雰囲気だった。

 

「邪魔をするなぁっ!!」

 

だが、彼には守備隊の事など関係なかった、リニアガンの射撃で瞬く間にジンを撃破、旋回して再度攻撃を仕掛けようとした。

 

これだけ暴れれば、見ていられなくなるだろうと判断したのだろう、彼は威嚇射撃の様にリ・ホームの船体スレスレを狙い始めた。

 

そんな時だった、リ・ホームのハッチが開き、中からドレッドノートが発進してきた。

 

「来たか!!借りを返してやる!!」

 

遂に出て来てくれたと、彼は歪んだ歓喜の声を上げ、攻撃を仕掛けるべくトリガーを引こうとした。

 

だが・・・。

 

「・・・、なんだ・・・?」

 

ドレッドノートは武装の類いを一切装備せず、腕を広げて此方に向かってくるだけであり、まるで投降しようとしている様にも見えた。

 

『ステーションへの攻撃を止めて下さい!こちらは交戦する気はありません!』

 

訝しむ彼の耳に、先日の少年の声が飛び込んできた。

 

どうやら本当に戦うつもりが無いのか、ヘルメットを脱ぎ捨て、両手を挙げていたのだ。

 

「どういう事だ・・・?何のつもりだ?」

 

少年の行動が理解できなかったのだろう、彼は思わず少年に尋ね返していた。

 

『投降します、だからこれ以上の攻撃を止めて下さい。』

 

彼の言葉に嘘はない、カナードは何故かは分からなかったがそう感じていた。

 

待ち伏せという訳でもあるまい、MA一機を墜とすのにそんな搦め手を使う必要は皆無だ。

 

「・・・、分かった、投降すると言うのなら着いて来い、逃げたら後ろから撃つぞ?」

 

『分かりました。』

 

彼の脅しにも一切動じず、逃げる気配を見せない事を確認し、カナードはドレッドノートを先導する様に帰還ルートを先行してゆく。

 

そんな彼を追う様に、ドレッドノートもスラスターを吹かし、同じルートを進み始めた。

 

「(思わぬ物が手に入ったな・・・、これでキラを・・・。)」

 

彼は後を着いてくるMSが核エンジン搭載MSなのだと、直感で当たりを付けていた。

 

それを無傷で捕えたと言う事は、解析の手間も幾らか省け、それと同時に彼のもう一つの望みも叶えられるのだ。

 

自分の思惑以上に事が運ぶ事に、カナードは盛大な哄笑をあげた。

 

その声は狂喜に歪み、聞く者を震え上がらせるものではあったが・・・。

 

それぞれの思惑を抱えながらも、二機は漆黒の闇を突き進んで行った・・・。

 

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「用ってなんだよダコスタ?俺達は今忙しいんだが?」

 

エターナルの通路を歩くロウは、自身の目の前を歩く短髪の男性、マーチン・ダコスタに要件を尋ねていた。

 

何を隠そう、ロウとシャルロットがこの船に来た理由とは、目の前にいる彼が呼び付けたからであり、それなりの理由があると言う事だ、気にならないはずが無い。

 

「用があるのは俺じゃない、あの人に聞いてくれ。」

 

だが、当の本人は何も知らないと言う風に苦笑しながらも、とある部屋を指差していた。

 

それにより、更に理由が掴めなくなったのだろう、二人は顔を見合わせ、ダコスタが開いた扉の奥に進んで行った。

 

そこは船室にしてはそれなりに広い部屋であり、艦長室である事が窺いしれた。

 

「わざわざ出向いて貰って済まないね、ロウ・ギュール君、それと見慣れない御嬢さん?」

 

「バルトフェルド艦長!久しぶりだな!」

 

自分達を出迎えた人物と会った事があったのだろう、ロウは怪訝そうな表情から一転し、久し振りに会う友人との会話を楽しむ様な表情を見せていた。

 

アンドリュー・バルトフェルド、嘗てはザフト地上軍の指揮官であり、砂漠の虎と恐れられた歴戦の将だった。

 

数カ月前に、アークエンジェル隊との戦闘に敗れ、左腕と左目、そして左足を失った。

 

その後、自身の副官であり、以前からクライン派であったダコスタに誘われる形でクライン派に参加、エターナルの艦長に就任後、その強奪とアークエンジェル、クサナギとの合流を企てた人物であったのだ。

 

ロウとは嘗て、地上にて命を助けてもらっているため、浅からぬ関係である。

 

一方、彼と初対面なシャルロットは、ロウがバルトフェルドと喋り出してしまったためにどうするべきか分からないのと、自分が御嬢さんと呼ばれていい年齢なのか分からないと言った二つの微妙な困惑に苛まれていた。

 

それは置いといて・・・。

 

「僕は君達みたいに自由の利く立場じゃないのでね、君達から出向いて貰わねばならないのだよ、申し訳ないね。」

 

「良いって事よ、それで、要件って何なんだ?」

 

何処か自嘲気味に話すバルトフェルドに対し、ロウは気にするなと言う様に話しながらも、ここに呼ばれた理由を優先する事にしたようだ。

 

「そうだったな、それについては僕から話すより、彼に聞いた方が良いだろう、入って来てくれたまえ。」

 

説明を求めてくる彼に応える様に、彼は扉の向こう側にいるであろう人物へと声をかけた。

 

ロウとシャルロットはバルトフェルドの言葉に釣られるように、自分達が入ってきた扉へと目を向けた。

 

扉が開くと同時に、入室して来ようとする男性の姿が彼等の目に飛び込んできた。

 

「お前は・・・!」

 

その姿に、ロウは驚きのあまり目を大きく見開いていた。

 

まさかここにいるなどと露程にも思っていなかったのだろう、何故お前がここにいるんだと言う様な表情を彼はしていた。

 

その人物とは・・・。

 

「劾・・・!?なんでここに!?」

 

その人物とは、サーペント・テールのリーダー、叢雲 劾、その人だった・・・。

 

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次回予告

ガルシアの思惑により、追われる身となるカナード、彼の危機を救う者とは・・・?

次回機動戦士ガンダムSEEDASTRAY X INFINITY

闇の炎
お楽しみに~
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