機動戦士ガンダムSEEDASTRAY X INFINITY   作:ichika

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隠されし秘密

noside

 

デブリベルト付近を航行するエターナルの艦内、船長室に五人の男女の姿があった。

 

その内の二人の男女は、ジャンク屋組合のロウ・ギュールと、彼の護衛を務めているシャルロット・デュノアであり、彼等と向かい合う様にしている二人が、この船の艦長であるアンドリュー・バルトフェルドと、彼の副官であるマーチン・ダコスタである。

 

そして、最後の一人は、サーペント・テールのリーダーであり、生ける伝説と名高い傭兵、叢雲 劾である。

 

「どうして劾が?」

 

劾がここにいる理由が分からなかったのだろう、ロウはバルトフェルドに尋ねる様に彼を見た。

 

「劾君には立会人として僕が呼んだ、その方が君にも詳しい事情が話せると思ったのでね。」

 

ダコスタからコーヒーの入ったコップを受け取り、香りを楽しみながらも彼の問いに答えていた。

 

「(あの人が叢雲 劾・・・、セシリアを助けてくれた人・・・。)」

 

そんな彼等を見ながらも、シャルロットは劾を食い入る様に見詰めていた。

 

それもそうだ、彼は彼女の唯一無二の盟友、セシリア・オルコットの命を救ってくれた人物、セシリアにとっても、そしてシャルロットにとっても恩人の様な物だ、期を見て礼を言いたくて仕方がないのだろう。

 

「それで、ロウ君、そちらの麗しき御嬢さんはどちら様だね?見たところジャンク屋の人間ではなさそうだが?」

 

初対面のシャルロットの事が気になったのだろう、バルトフェルドは彼女を見ながらもロウに尋ねていた。

 

「僕はシャルロット・デュノアと言います、つい先日、ロウに助けてもらって、ご一緒させてもらってるんです、よろしくお願いします、バルトフェルド艦長。」

 

自分が挨拶し損ねていた事に気付いたのだろう、シャルロットは我に返り、自己紹介をしながらも彼に頭を下げていた。

 

「う~ん、美しいねぇ、ロウ君も隅に置けないな?」

 

彼女の事をロウの女だとでも思ったのだろうか、バルトフェルドはからかう様に笑いながらも尋ねていた。

 

「何勘違いしてるんだよ?シャルロットは違う奴の事を探してるんだ、俺なんかにゃ見向きもしないだろうぜ?」

 

彼の言葉を否定するように、ロウは冗談混じりながらも答え、そんな事は良いという風に話の続きを目で要求していた。

 

「そうか、まぁいい、君達にここに来てもらったのには訳がある、それについては劾君に聞いた方が早いだろう。」

 

彼の言葉を受け、バルトフェルドは浮かべていた笑みを潜め、真剣な表情浮かべながらも劾の方を向き、説明してやれとでも言う様に言葉を紡いだ。

 

「では、今回の件は俺から説明しよう、俺は数か月前にある男から今回の件に関する依頼を受けた。」

 

頃合いかと言う様に、劾は一歩前に踏み出し、ロウとシャルロットを見据えながらも言葉を紡いだ。

 

「その男は常にプラントと世界の今後の事について考えていた、コーディネィターだけでなく、ナチュラルにも未来が訪れるようにと。」

 

「その男って誰だ?聞く限りじゃプラントのお偉いさんに聞こえるが・・・?」

 

「それについては答えられない、守秘義務の内に含まれているからな。」

 

劾の口振りから、ロウは自分が抱いた想像を確かなものにするために彼に尋ねるが、答えられないと突っぱねられたのでここは諦める事にしたのだろう。

 

「話を戻そう、その男はザフトによって開発された新型MSの処遇について重大な決心をした。」

 

「そのMSが、ドレッドノートと言う事ですか?」

 

彼の言葉に、そのMSの存在に気付いたシャルロットは、確認する様に尋ね、劾の返事を待った。

 

「そうだ、YMF-X000A ドレッドノート、核のパワーで動く次世代の試作MSだ、あれは元々テスト機に過ぎず、データを集めた後に様々なパーツに分解され、核エンジン及びNジャマーキャンセラーを含めた機密パーツ以外は全て破棄される、筈だった。」

 

彼女の問いに答えつつ、劾は自身のクライアントであった男から聞かされていた情報を話しながらも、一旦言葉を区切り、全員を見渡してゆく。

 

それにどういう意味があるのかは、彼以外には分からなかったが・・・。

 

「それをその男はジャンク屋組合を通じて、全てのパーツがマルキオ導師に渡るように手配したんだ。」

 

「地上のエネルギー問題を解決するためにか。」

 

ドレッドノートがジャンク屋によって運ばれていた理由に漸く合点が行ったロウは、劾に彼が気付いてはいた思いを尋ねていた。

 

彼も、Nジャマーキャンセラーが持つ意味を知り、それがマルキオ導師に渡ろうとしている事で気付いていたのだ。

 

「その通りだ、マルキオならそのために尽力してくれる筈だと、彼は信じていたのだ、俺もそれには異存はなかった。」

 

彼の言葉が正しいという事を裏付ける様に、劾は己が聞かされた想いを答え、同時に自身の考えも告げていた。

 

「パーツはプラントから密かに運び出されたが・・・、それが本当に正しい選択だったかは、その男にも分からなかった、一つ間違えれば世界は更に混乱してしまう・・・、プラントの未来についても大きな責任があったその男が、プラントの脅威を生み出す事はあってはならないのだ。」

 

彼の言葉通り、プラントの指導者がプラントの未来を、コーディネィターの未来に脅威を生み出してはならない事は確かであり、選択肢を間違えてしまえばプラントは破滅の戸口に立たされたも同然となってしまう。

 

つまり、その男は敵であるナチュラルを救うために同胞を殺したことになりかねないのだ、それは本人にとっても、彼から多くの依頼を受けてきた劾にとっても望む物ではなかった。

 

「その事態を見守る監視者が、他でもない劾君と、サーペント・テールだったという訳か・・・?」

 

「クライアントから俺への依頼は、事態の変化を見極め、ドレッドノートの処遇を決めること・・・、つまりは、連合にもプラントにも不利益にならない様に監視する事が求められたのだ。」

 

「なるほど・・・、だからあんな海賊紛いの行為をしてでもドレッドノートを、Nジャマーキャンセラーを守っていたんですね。」

 

監視者という役目を負っていた彼の、サーペント・テールの行動に納得がいったのだろう、シャルロットは感心したような表情を見せ、彼を注視していた。

 

自分の予想、そして、セシリアが語った内容と合致していた事で、彼等が行った強奪事件の真相が語られたのだ、感心しているのであろう。

 

「僕は劾君がどの様な仕事をしているかは具体的には知らない、あえて聞くまい、劾君に討たれても困るしな。」

 

冗談混じりながらも、バルトフェルドは語りながらもコップをテーブルに置き、自身の懐に手を入れる。

 

「そこで、だ・・・、もう一つ厄介な問題がある、ドレッドノートのテストで得られたデータから生み出されたシステムの設計図がここにある。」

 

懐からなにやらメモリーディスクを取り出し、三人に見せながらも彼は真剣な表情を見せていた。

 

ここから先の話には、冗談を交える隙もないと、彼の雰囲気が物語っている。

 

「ザフトから出奔する時に盗み出してきたデータだが、僕はこのデータの扱いについて非常に悩んだ・・・、これは扱い様によれば、ドレッドノート本体よりも危険なシロモノだからだ。」

 

指でディスクを弄びながらも、彼は非常に難しい表情を見せていた。

 

それほど、そのデータが危険かつ、重要度の高いものだという事が、その言葉を聞いているロウ達にもヒシヒシと伝わってきた。

 

「このまま黙殺する事も出来る、そもそも存在しなくても良い物だからな、だが、それではあの人・・・、劾君のクライアントの想いを無視する事になりかねない、しかし、このまま宝の持ち腐れというわけにもいかない、そんな時だった、ロウ君の船にドレッドノートがあるという事を知った・・・。」

 

非常に思い悩んだという事が伝わってkる言葉と共に、彼はロウを見据えながらも言葉を紡ぐ。

 

「そこでこのデータを君に託したいと思う、それが良いのではないかと思いついたという事だ、劾君にはそのジャッジのために出向いてもらったのだ、で、劾君、君のジャッジはどうかな?」

 

ロウにデータを見せつつ、バルトフェルドは劾に視線を向け、これを渡しても良いかと尋ねていた。

 

劾は暫く考え込む様に目を伏せ、答えが出たと同時に口を開いた。

 

「ロウ・ギュールがそのデータを受け取る事に異存は無い、クライアントの意志に反する行為ではないからな・・・、だが、今後の事態の推移によっては大きな危険を伴う事になるだろう、俺はアイツの、ドレッドノートのテストに立ち会った事があるから分かる・・・、ドレッドノートにそのシステムが組み込まれれば、あれは更に強力なMSになるだろう、俺が思っている様なものならば、確実に・・・。」

 

彼は賛同しながらも、同時に危険が存在する事を危惧していた。

 

ロウならばそれを誤った方向へ持っていく事はしないだろうが、ドレッドノートに乗るのは彼ではない、それを思っての事だろう。

 

「だ、そうだが・・・、これを受け取るかどうかはロウ君に任せたい。」

 

「ちょっと待ってくれ・・・、その中には一体どんなデータが入ってるんだよ・・・?」

 

バルトフェルドと劾に、どうするのかという風な視線を向けられたロウは、受け取るべきか否かを決めあぐねていた。

 

メカニックとしては是非とも受け取ってそのデータを確認、作り上げてみたいと思うところではあるが、今までの話を聞けば、それすら出来そうにもない。

 

ドレッドノート単体ですら、一歩間違えれば世界を混沌の渦へと叩き落としかねない危険な機体だ、そこへより強力な追加武装があると言われれば、躊躇して当然と言えるだろう。

 

開けてはいけないパンドラの箱の様な気がしてならなかった彼は、思わず後退りしてしまいそうになった、その時だった、唐突にシャルロットが口を開いた。

 

「ドレッドノートに装備されてるドラグーンの発展型、かもしれないね・・・、危険かもしれないけど、受け取っても大丈夫だよ、ロウ。」

 

「シャルロット・・・?」

 

受け取れという彼女の言葉に、ロウはもちろんの事、劾やバルトフェルドですら軽い驚きをその顔に浮かべていた。

 

彼等の反応は至極当然と言えるだろう、今の今まで説明を、このデータの危険性を語られてなお、何の臆面も無く受け取れる筈がないのだ。

 

それなのに、シャルロットは躊躇う事無く受け取る事を勧めたのだ、それなりの理由があるのだろう。

 

「確かに、劾さんやバルトフェルド艦長が言ってたみたいに危険性は無いとは言い切れない、でも、僕はこれを、ドレッドノートを正しく使う事が出来る人がいる事を知ってる、彼なら、絶対に間違った方向へと持って行かないって、信じられるんだ。」

 

「シャルロット・・・。」

 

心配いらない、彼なら間違った道を歩む事はない、だから、自分達は彼を信じ、それを受け取り、彼に託してやるのだと・・・。

 

それに気付かされたロウは、彼女を見て頷き、バルトフェルドへと歩み寄っていく。

 

そこに迷いなどは一切無く、自分がやるべき事をやるという気概だけが窺えた。

 

「劾、バルトフェルド艦長、このデータ、俺達が必ず、正しく使える奴に引き渡す、だから、そのデータ、受け取るぜ!」

 

「分かった、ロウ君、シャルロット君、任せたぞ。」

 

彼の言葉に頷き、バルトフェルドはデータを手渡した。

 

それを受け取ったロウは、早速作ってやらんとばかりに艦長質を出て行こうとする。

 

「それじゃ、俺達は行くな!また補給が必要なら何時でも呼んでくれ!」

 

「あ、待ってよロウ!」

 

シャルロットが引き止めようとするよりも早く、彼は艦長室から出て行ってしまった。

 

「相変わらずだな・・・、お前も行け、帰れなくなるぞ。」

 

「あ、はい・・・、そうだ、劾さん。」

 

「なんだ?」

 

置いて行かれる前に早く追えという劾の言葉に頷きながらも、彼女は言いそびれていた事があったのを思い出し、彼と向き直った。

 

「セシリアを、僕のたった一人の親友を助けてくださってありがとうございます、セシリア共々、この御恩は一生忘れません。」

 

「お前がセシリアの・・・?そうだったのか、良かったな、また会えて。」

 

彼女がセシリアの友人である事に驚いたのだろうか、一瞬だけ劾は驚いた様な表情を見せるが、彼女の嬉しそうな表情に微笑んでいた。

 

それほど会いたかった者と再会できたのだと、彼女の表情から読み取る事が出来たからだ。

 

「はい、それじゃあ、僕も行きますね。」

 

彼の言葉に頷き、彼女はロウの後を追い、艦長室から出て行った。

 

「セシリアとシャルロットは出会った、か・・・、一夏とも会えるといいな・・・。」

 

不意に自分の口を突いて出た言葉に、彼自身も驚いたのだろう、人には見せない顔をしていた。

 

だが、それでも悪い気だけはしなかった。

 

互いに愛し合う者達が再び巡り会う事の何処に、負の感情を入れるのかと・・・。

 

sideout

 

sideシャルロット

 

ロウに追いついた僕は、彼と一緒にエターナルの格納庫まで戻り輸送船のコックピットに入った。

 

もうここに長居する意味は無いし、早く皆の所に行ってデータを見せてあげたいしね。

 

「シャルロット、良いのか?お前の捜してる兄ちゃんの事を聞かなくても?」

 

エンジンに火を入れながらも、ロウは何処か申し訳なさそうに僕に話しかけてきた。

 

今謝る位なら、もう少し時間を置いても良かったんじゃないかって事は言わないでおこう、それが彼の良い所でもあるんだし。

 

「良いよ別に、此処に居たとしても会えるかどうかは別問題だし・・・、それに、僕とセシリアなら、彼を見付けられるって信じてるから、今はプレアの事を優先してあげたいんだ。」

 

もし一夏がここにいるなら、それはそれで会いたい、探したいとは思うけど、今は時間が無いんだし、目の前にある事の方を優先したいって思うんだ。

 

僕だけじゃなくって、セシリアも、そして一夏も、不確定要素よりも目の前に確かに存在する事物の方を優先するだろうしね。

 

だから、どれだけ遠回りしても、どれだけ時間が掛かったとしても、何時の日にか、また会えるならそれで良いって思うんだよね。

 

「だから、早くリ・ホームに戻ろう、樹里達が待ってるよ?」

 

「あぁ、そうだな、行くか!」

 

僕の言葉に力強く頷き、彼は開いたハッチから輸送船を真空の闇へと繰り出した。

 

その先に待つ仲間の下へと戻るために、そして託されたモノを渡す為に・・・。

 

「(ねぇ、一夏、貴方は今、何処にいるのかな?)」

 

今はこの世界に生きていてくれるだけでいい、何時の日か、僕とセシリア、二人揃って貴方の下へ帰るよ。

 

そして、また昔みたいに三人で暮らそうよ・・・。

 

だから、今はもう少しだけ、仲間の為に働く事を許してね・・・。

 

昔、そう出来なかった分を、ここで取り戻すために・・・。

 

sideout




次回予告

月面基地を襲撃するカナード、その頃、ロウはある場所へと舵を採ろうとしていた・・・。

次回機動戦士ガンダムSEEDASTRAY X INFINITY

強襲

お楽しみに~。
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