機動戦士ガンダムSEEDASTRAY X INFINITY 作:ichika
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L1宙域を一隻の戦艦、オルテュギアが非常にゆったりとした速度で航行していた。
特に行く宛も無いのだろう、行き先が決まるまでの時間つぶしと形容できるほどであった。
「連合軍月面基地を襲撃する!!」
その艦橋内にて、この船の実質的な舵を取っているカナードは、副官であるメリオルとその隣にいた少年、プレアに向けて宣言していた。
「ハイぺリオンでですか?」
「そうだ、補修パーツも手に入った、修理も間もなく終わるだろうしな。」
確認するかのようなメリオルの問いに答え、彼はモニターに表示された月面基地の見取り図を眺める。
月の裏側に面し、地球連合軍の宇宙拠点であるプトレマイウス基地からもそれなりの距離がある基地であり、主に物資を集める拠点であった。
「しかし何故・・・、まさか・・・!」
彼の提案の真意を読めなかったのだろうが、考えてみれば分かる事だったのだろう、メリオルとプレアは驚いた様な表情を見せた。
「そうさ、Nジャマーキャンセラーを手に入れる、アルテミスで俺が追われたのも、恐らくは大西洋連邦がそれを増産しているからだろう。」
彼等の驚愕に答える様に、彼は不敵な笑みを浮かべながらも語る。
「だからこそ、それをいただいてハイぺリオンをパワーアップさせるのさ!」
「待って下さい!」
彼の言葉に、プレアはある種の困惑と僅かな憤りを浮かべた表情で食い掛かった。
彼が止めに入る事ぐらい折込済みだったのだろう、カナードは僅かに口元を釣り上げるだけで、特に何も言おうとはしなかった。
「Nジャマーキャンセラーが欲しいならドレッドノートから取ればいいじゃないですか!基地を襲えば、また大勢の人が巻き添えになるのに!!」
プレアの反発は尤もだ、カナードがハイぺリオンで襲撃を掛ければ、死ななくて済んだ者が犠牲になる恐れもある、それを知っていて尚攻めようとする彼が許せないのだ。
「お前のドレッドノートには手を付けない、お前はいずれあれに乗り、俺と決着を着けるために戦うのだからな!」
「そんな・・・!たったそれだけの理由で・・・!」
だが、彼が止まらないのも、今のプレアでは彼を止められない事も分かっていたのだ、それ故に、彼はこれ以上何も言えずにいた。
「確かに、核エンジン自体は大戦前からありふれた技術です、ハイぺリオンに後付けする事も可能ではあります、ですが、肝心のNジャマーキャンセラーはドレッドノートの解析の結果から、我々の・・・、いえ、ユーラシアが持っている技術では複製は不可能の様です・・・。」
彼等の話を聞きながらも、メリオルは自身の考えを口に出してゆく。
彼女の言葉通り、Nジャマーキャンセラーは非常に高等な技術の結晶でもあるため、複製するにしてもそれ相応の技術力を要求される。
しかし、その肝心の技術力が彼等には足りず、複製する事は叶わないのだ。
ならば、手っ取り早く手に入れる方法は一つに絞られてくる・・・。
「ならば、既に量産されている物を使うしかありませんね。」
「だからって・・・!あなた方の味方の基地を襲うなんて・・・!!」
「いいえ、大西洋連邦は味方ではありません!」
自身の言葉に反発し、味方を襲うべきではないという彼の言葉に対し、メリオルは棘を含んだ言葉を彼に投げつける。
思いもしなかった言葉だが、それは残酷な事実を物語っていた。
「大西洋連邦は我々ユーラシアの事を捨て駒としか思っていません、現にアラスカでは、多くの同胞達が彼等の罠に嵌り、囮としてサイクロプスの餌食になりました。」
約二か月前、ザフトが連合軍最高司令基地であるアラスカを奇襲した際、情報を事前に掴んでいた大西洋連邦の手により、ユーラシアを含めた不要な兵力と共にザフト地上軍の八割を撃破、その結果、多くのユーラシアの兵士が犠牲となったのだ。
プレアもアラスカで起きた事は知っていたが、まさかそれが本当にあるとは思っていなかったのだ。
「我々、特務隊Ⅹは元々、来たるべき大西洋連邦との戦いの為に設立された部隊です、今回攻めるのは大西洋連邦の基地です、何の問題もありません、我々はパルス特務兵に従います。」
彼の言葉など聞く耳持たぬと言わんばかりに、彼女は作戦を了承、すぐさま作戦プランの立案に入った。
「決まりだな、どうしても止めたいのなら、俺を殺してでも止めるんだな!」
「そんな・・・!」
カナードは打ちひしがれるプレアの耳元で囁き、出撃の為に艦橋から出て行った。
それを見送る事しか出来ないプレアは、悔しそうに唇を噛みながらも、何も言い返せない、彼を止められない自分を憎んだ。
このまま戦い続けても、未来はやってくるのか・・・、そんな想いが、彼の中では強くなっていった・・・。
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「なんだって・・・!?」
L2宙域を航行するリ・ホームの艦橋内で、今しがた帰還したばかりのロウは、残っていたメンバーの一人である樹里から聞かされた事に驚愕していた。
プレアがユーラシア連邦に投降していった事を聞かされた彼と、彼に帯同し、現場を知らないシャルロットは彼等がいない間に起こった事に驚きながらも、何処か納得したような表情を見せていた。
「俺達がいない間にそんな事があったのか・・・。」
「これからどうするの・・・?」
どうするべきか悩む様な表情を見せるロウに、樹里は今後の方針を尋ねていた。
だが、その真意はどちらかと言えば、彼にプレアの救出を懇願している様にも見えた。
「とりあえず、バルトフェルド艦長から預かったこのデータに入ってる、すげぇ物ってヤツを作ってみようと思う、それが最優先だな。」
既に話しておいたのだろう、彼はプロフェッサーに渡していたメモリーディスクを受け取り、全員に見せながらもやるべき事を話した。
それに対してあからさまに不満そうな顔をしたのは樹里と風花だけであり、後の全員は納得した様な表情を浮かべ、彼の言葉の続きを待っていた。
「ロウ、プレアの事は・・・?」
その空気が理解できなかったのだろう、風花は不満げに何故助けないのかと尋ねていた。
彼女は彼が投降する理由を聞いていたから尚更不安なのだろう、そんな想いがよく伝わってきた。
「アイツは自分で考えて行動を起こしたんだ、俺達が止めに入るなんて出来ねぇよ。」
「でも・・・!」
彼が自分で考えて起こした行動を止める事は、彼の考えを、想いを否定する事になる、そうは分かっていても心配なのだろう、風花はまだ彼に食い下がろうとしているが、それを見ていたセシリアが彼女の肩に手を置き、落ち着く様にと微笑んだ。
「風花さん、プレアさんを心配なさるのも確かに大切ですが、それ以上に信じて差し上げる事も大切なのです、此処はどうか、彼の思う様にさせてあげてくださいな。」
「セシリア・・・、うん・・・。」
彼女の言葉に、風花は落ち着きを取り戻し、食い下がる事を止めた様だ。
心配するだけでは、相手の事を本当に理解できないのだと、真の意味で分かり合うためには相手を信じる事が大事なのだと・・・。
「それは兎も角、そのデータを何処で作るの?」
「さっき見せて貰ったけど、相当な難物よ?作れるとしたらそれこそプラント・マイウスぐらいね。」
話が付いた事を察したのだろう、シャルロットとプロフェッサーはロウにデータの処遇について尋ねていた。
「あぁ、ここじゃ作れないだろうな。」
彼女達の疑問を肯定する様に、彼はあっさりとリ・ホームでは製造不可能だと言い切った。
それには訳があった。
リ・ホームにはそれを造るだけの資材も無く、同時に設備も十全とは言い難いのだ。
せめて造るのなら、もっと設備が整った場所と言いたいのだろう。
「同じクラスだと地上のデトロイトか、オーブのオノゴロ、宇宙なら連合の月面基地が有りますが、どれも民間が使える様な場所ではありませんね・・・。」
リーアムはMS製造施設がある場所を列挙してゆくが、それらは何処も軍需産業の施設であり、大なり小なりそれぞれの軍の影響が及んでいる場所だ、迂闊に立ち入れない場所でもあったのだ。
それだけに、わざわざドレッドノートを搬入しては間違いなく余計な厄介事を引き起こす恐れがあったのだ。
「それがあるんだよなぁ・・・。」
「えっ?何処に?」
意味深に笑うロウに、彼が言う場所が気になったのか、樹里は何処にあるのかと尋ねていた。
他のメンバーも、そんな場所が何処にあるのかと言わんばかりの表情で彼を注視していた。
「と言っても、断られる可能性もあるけどな、交渉してみる価値はあると思うぜ。」
自信ありげに笑う彼に、他のメンバー達は困惑の表情を更に濃くしていた。
「で?何処に行くの?」
船の進路を彼が指定する場所へと向ける為に、プロフェッサーは機器を弄りながらも尋ねていた。
「地球衛星軌道、オーブ直上の宇宙要塞、アメノミハシラだ。」
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月面基地では既に戦端が開かれていた。
連合軍守備隊はストライクダガーを中心としたMS部隊で応戦するが、たった一機のMS、ハイぺリオンに押されていた。
数で勝るストライクダガー部隊だが、ハイぺリオンは単体でも高い戦闘能力を発揮する機体であると同時に、乗り手であるカナードの技量も相まって、一般兵では太刀打ち出来ない戦闘能力を誇っている。
「雑魚に用は無い!どけぇっ!!」
ハイぺリオンの両手に保持したビームサブマシンガンが火を噴き、的確にダメージを与え、守備隊を撃破してゆく。
「Nジャマーキャンセラーは何処だぁっ!!」
撃ち掛けられるビームや銃弾を防ぎながらも、彼は手に入れていた図面を頼りに目的の区画へと進んでゆく。
狭い通路内ではハイぺリオンに分があるのだろう、一方的と形容するに相応しい有様だった。
暫く進んでゆくと、カナードは製造施設と思しき区画へと到達、すぐさま目標を探し始めた。
そこには、一際目立ったコンテナが置かれており、近くには核であることを示すマーキングが施された弾道ミサイルが幾つもも確認できた。
どうやら、此処がNジャマ―キャンセラーを核ミサイルに搭載する工廠の様であり、彼の目指していた場所である事を物語っていた。
「遂に手に入れたぞ、Nジャマ―キャンセラー!!これで俺のハイぺリオンは無敵だ・・・!」
空になったビームマシンガンの弾倉を棄て、腰に着けていた予備の弾倉を充填しつつ、空いたスペースにコンテナを固定した。
恐らくはこのコンテナに彼が探し求めていたモノ、Nジャマ―キャンセラーが入っており、それを手に入れた今、最早この基地には用はない。
コンテナを手に入れるや否や、彼はここまで来た通路を引き返し、基地から離脱していく。
「ん・・・?」
だが、彼の行く先を阻む様に数機のMSが展開していた。
「援軍か、時間をかけ過ぎたみたいだな。」
それを認めたカナードは小さく呟きながらも、目の前にいる敵機にビームサブマシンガンの銃口を向けた。
『よくも好き勝手にやってくれたな、小僧・・・。』
「なんだ、貴様・・・?」
その時だった、敵の指揮官と思しき機体、特徴的なバックパックを背負ったダガータイプから映像通信が入り、初老の男性が映し出される。
『俺の名はモーガン・シュバリエ、人は≪月下の狂犬≫と呼びたがる。』
「モーガン・・・、知らん名だな、退け、お前らに用は無い。」
モーガンと名乗る男性の言葉を無視しつつ、彼は鬱陶しそうに言い放った。
彼にとって、今その視界に捉えているのはモーガンではなく、図らずも彼と行動を共にしている少年、プレア・レヴェリーと、彼の宿敵、キラ・ヤマトだったのだ。
彼等、そこら辺にいるMSパイロットと同じ様にしか見えないのだろう。
『言ってくれるな小僧、俺は元々ユーラシアの大戦車部隊を指揮していた者だ、お前の事は上から聞いている、ユーラシアの脱走兵らしいな?同胞を討つのは忍びないが、俺が直々に引導を渡してやる!!」
「やれるものならやってみろ!!」
相手に戦闘の意志があると見たカナードは、ビームサブマシンガンを撃ち掛けようとするが、相手の動きの方が早かった。
『行くぞ!!』
モーガンの掛け声と共に、ダガーのバックパックから四基のバレルの様な物が分離し、独立稼働しながらもハイぺリオンにリニアガンやミサイルを多方向から撃ち掛けて行く。
この時のカナードは知らなかったが、モーガンが乗っている機体はストライクの正式量産機、105ダガーにガンバレルストライカーを装備した機体、通称ガンバレルダガーだった。
メビウス・ゼロの特徴を持ちながらも、MSとしての性能を持っているため、戦闘能力は決して低くないのだ。
「これは・・・!ドレッドノートの奴に似ている・・・!!」
一瞬驚くも、彼はその表情を愉悦に歪めた。
まさかこんな所で対ドレッドノート戦のシュミレーションが出来るとは思いもよらなかったのだろうが、それはまさに、彼にとっては行幸にも等しかった。
「ソイツを打ち破り!アイツとの戦いの予行演習とさせてもらおうか!!」
撃ち掛けられる弾丸を回避しながらも、彼はアルミューレ・リュミエールを展開、他の機体から浴びせかけられる銃弾を弾き返した。
「先ずはうるさい雑魚共を蹴散らしてやる!お前は後回しだ!!」
周囲に展開するストライクダガーに向け、ビームマシンガンを撃ち掛けながらも、彼はガンバレルの動きを追っていた。
このパターンを覚えておけば、必ずやドレッドノートとの一騎打ちでも役に立つと考えたのだろう。
彼が撃った銃弾に当たり、中破した機体が次々に戦列を離れ、あっと言う間に残ったのは彼とモーガンの機体だけだった。
「邪魔者はいなくなったな!さぁ、お前の力を俺に見せてみろっ!!」
『おのれ・・・!ここまでの力とは・・・!!まぁいい、部下は撤退させた、お前には完璧な兵器など無い事を教えてやる!!』
部下がやられた事に怒ったのだろう、モーガンはガンバレルを巧みに操作し、フォーメーションを組みながらもハイぺリオンを撃とうと狙いを定めていた。
「面白い!この無敵のアルミューレ・リュミエール、破れるものなら破ってみろ!!」
彼の宣言と同時に、ガンバレルの銃口から数発の弾丸が発たれ、一直線にハイぺリオンを目指して進んでゆく。
その先は、アルミューレ・リュミエールの基部があり、モーガンはそこを破壊する事で無敵のシールドに穴を開け、本体を討とうと考えたのだろう。
その考えは正しい、アルミューレ・リュミエールは幾つもの発生基から構成されるビームシールドだ、どれか一つでも欠ける様な事があれば当然の事ながら全方位から攻撃を防ぐ事は不可能となるのだ。
「ちぃっ!!」
カナードも一瞬でそれに気付いたのだろう、強引にスラスターを吹かし、直撃の位置をずらす事でハイぺリオンへのダメージを防いだ。
これは並のナチュラル、いや、コーディネィターにも難しい所業であり、スーパーコーディネィターの資質を持つ彼にしかなせない荒業でもあった。
『バカな・・・!?避けただとっ・・・!?』
「なかなかいい攻めだった、当たれば俺も危なかっただろう、だが、この俺の乗るハイぺリオンの力をなめるなよ!!」
驚愕し、硬直してしまったモーガンの隙を突くかの如く、ガンバレルを全て破壊し、本体目掛けてフォルファントリーを撃ち掛けた。
硬直しているモーガンでは避けられまい、そう思っていた彼だが・・・。
──背中の装備を切り離すんだ!!──
「言葉が走った・・・!?」
脳裏に閃いた言葉の直後、目の前のダガーはバックパックを切り離し、フォルファントリーの光弾を回避、武装が無くなった事で不利と感じたのだろう、カナードには目もくれずに撤退していった。
「今の感じはなんだ・・・?まるで誰かが頭に直接話かけてきたみたいだったが・・・。」
彼は不可思議な現象に首を傾げながらも、それが自分に向けられたものではないと当たりを付けていた。
敵機はその言葉に反応する様にして光弾を回避し、撤退して生き延びたのだ、間違いないだろう。
「メリオル、作戦は終了した、帰投するぞ。」
考えても答えは得られないとばかりに頭を振り、彼は空域より離脱しながらもオルテュギアに通信を入れた。
『カナード!!プレア君の様子が・・・!』
「どうした?」
彼の耳に返ってきたのは、副官の何処か焦った様な叫びだった。
それを訝しみ、彼は状況の報告を求めた。
『急に苦しみだして・・・!今は意識が有りません・・・!!』
「なんだと・・・?死なせるなよメリオル!早くメディカルルームへ!」
『了解しました!』
プレアの容態の急変を聞き、すぐさま介抱する様に命じた後、彼は機体の速度を上げ、母艦への帰路を急いだ。
「えぇい・・・!一体なんだって言うんだ・・・!」
訳の分からない事が立て続けに起こる事に苛立っているのだろう、口汚く吐き捨てながらも彼は機体を操った。
自分に傷を付けた者の様子を窺い知るために、そして、戦い続ける為に・・・。
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「見えて来たぞ。」
地球衛星軌道上に辿り着いたリ・ホームの艦橋で、ロウは目的の場所を指差しながらも宣言した。
彼の言葉に、メンバー達は一斉にその方向へと視線を向け、宇宙空間に佇む巨大な要塞の姿を目視した。
まだそれなりに距離はあるが、かなりの大きさを誇る場所なのだろう、目を凝らせば細部まで見て取れそうだった。
「要塞・・・?本当にあったんだ・・・。」
目の前に現れた要塞に目を奪われたのだろう、シャルロットは呆ける様に呟いていた。
異世界の人間であった彼女からしてみれば、宇宙に要塞がある事自体が驚きの対象であるが、目の前の要塞はある種の威厳を放っている様にも見えたのだろう。
「でも、どうしてこんな所があるって知ってたの?」
ロウが何故、この様な要塞の事を知っているのか分からなかった風花は、何処か困惑した様に尋ねていた。
「ちょいと前に知り合いの情報屋のオッサンに教えて貰ったんだよ、正確な情報だったからな、賭けてみる価値はあるぜ。」
彼女の質問に、如何にも自信ありと言う様に笑いつつ、彼は目の前に聳える要塞を、何処か意味深な目で見ていた。
それが理解できなかったのか、風花は首を傾げるだけで、それ以上追及しようとはしなかった。
『止まれ!何者だ!?』
そんな時だった、アメノミハシラも彼等を捕捉したのだろう、身元を判別するための通信が入った。
「ジャンク屋組合のロウ・ギュールだ、そっちのファクトリーを借りたくて来た、主に取り次いでくれ。」
『・・・、少し待て。』
彼が身元を明らかにし、要件を話すと、通信を入れてきた相手は待つように指示し、一旦通信を切っていた。
「だ、大丈夫なのぉ・・・?」
そんなやり取りに、樹里は心底不安そうに彼に尋ねていた。
彼女の反応は尤もだろう、何せ、彼等の前にある要塞は、以前ロウを何度も殺しにかかったゴールドフレームのパイロットが治めている場所だ。
撃退したとは言えど、その事で恨まれているかもしれないのだ、たとえ殺されても不思議ではない。
「奴とは面識がない訳じゃない、かといって友好的って訳でもないからな、まぁ、運次第だな。」
「そんなぁ・・・!」
ロウの無責任な言葉に、彼女は膝から崩れ落ちた。
もっと安全な場所に行くべきだと言いたげでもあったが・・・。
『ロウ・ギュール、許可が下りた、そのまま進め、MSに誘導させる。』
「おっ、ありがたい。」
暫くすると、先程通信に出た声が入港の指示を出し、割とあっさり通れた事に、ロウ達は一様に安堵の表情を浮かべていた。
それもそうだ、敵地に乗り込む様な物であったし、最悪撃沈させられる恐れもあったのだ、一先ずは安心しても良いだろう。
そんな時だった、要塞、アメノミハシラから二つの光が飛び出し、彼等の方へと向かってきた。
「何・・・?MS・・・?」
その姿は徐々に近付き、はっきりと目視できる距離に入った。
そのMSの姿に、風花やセシリアは驚いた様に目を見開いた。
何せ、その機体の姿や色合いが、彼女達が良く知っている機体に酷似していたのだから・・・。
「青い機体・・・!?ブルーフレーム!?」
「いや、M1の宇宙仕様だ、ここのオーブの宇宙要塞だからな、なにもおかしくは無いさ。」
風花の驚愕に答える様に、ロウは冷静な回答をしつつ、MSを寄越した要塞の主の姿を思い出していた。
彼との因縁浅からぬ、宿敵とも呼べる存在・・・。
「さぁて、ロンドさんよ、どう出てくるんだ?」
要塞へと目指しながらも、彼はその先を睨んでいた・・・。
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「ロウ・ギュール、よもやお前が自ら私の治める城にやってくるとはな・・・。」
アメノミハシラの一室で、城の主であるロンド・ミナ・サハクは何処となく興味深そうに呟いていた。
よもや、自身の弟が死亡する原因の一つとなった男が自ら彼女の前に現れたのだ、軽い驚きとそうまでしてここに来た理由に興味を惹かれたのだろう、そのために易々と彼等をアメノミハシラに引き入れたのだ。
「何か訳があるのか・・・、面白い、私が直々に要件を聞いてやろう、一夏、他の事は任せたぞ。」
「了解した、だが、良いのか?アンタの弟の仇だろ?俺が出て行って墜としてくるのによ?」
彼女の傍らに控え、共にワインを飲んでいた青年、織斑一夏は自身の主の選択に従いつつも疑問を口にしていた。
「構わぬ、殺す事は何時でも出来るが、ギナを打ち破った程の男だ、何をしようとしているのか気になるのだ、それを知った後でも遅くはあるまい?」
彼の懸念を笑いながらも、ミナはジャンク屋の男から要件を聞き、それが面白くなければ自分がどうにかすると彼に告げていた。
事実、此処は彼等の城だ、何の対策も無く飛び込んできた者が攻略、制圧出来る様な場所ではないのだ。
「分かった、ルキーニの情報だと、もう暫くすればザフトが攻めてくるらしい、俺もたまには動きたい、迎撃部隊と共にストライクで出る、ソキウス達は全員アンタの護衛に付けさせるそれで良いな?」
「良かろう、お前は信ずるに足る男だ、任せよう。」
一夏のプランを聞き、彼女は了解したと言わんばかりに首肯し、席を立った。
恐らくは、自らジャンク屋、ロウ・ギュールの下へ出向き、真意を問うのだろう。
「じゃ、俺も行くか、気を付けてな。」
「お前も、な、酒を酌み交わす者がいなくなると寂しいのでな。」
「承知した。」
軽口を叩き合い、一夏は一足先に彼女の部屋から退室、格納庫に置かれている自身の愛機の下へと向かった。
「さて、ロウ・ギュール、お前の真意、聞かせてもらうとしよう。」
彼が出て行った部屋で、ミナは独り呟き、グラスに入ったワインを飲み干した。
そして、女王の如き足取りで、彼女は自室を後にしたのであった・・・。
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次回予告
ミナとロウ、己の道に誇りを持つ者同士が今、相見えた時、彼等は互いの道をどの様に示すのだろうか・・・。
次回機動戦士ガンダムSEEDASTRAY X INFINITY
天空の城の主
お楽しみに~。