機動戦士ガンダムSEEDASTRAY X INFINITY 作:ichika
noside
デブリベルトに程近い宙域にて、小規模な戦闘が発生していた。
ザフトのMS部隊がカナードら、特務隊Xの母艦であるオルテュギアを捕捉、連合艦である事を理由に攻撃を仕掛けたのだ。
だが、戦闘が始まってすぐに、ザフトは窮地に立たされた。
敵が核の力を持ち、尚且つ絶対的な防御力を誇っている光の盾を装備していたのだ、ジンやシグーを中心に構成されていた部隊では、ハイぺリオンに傷一つける事すら不可能だった。
「ハーッハッハッハッ!!核のパワーを手に入れたこのスーパーハイぺリオンは無敵だぁ!!消えろ雑魚めっ!!」
そのコックピットで、パイロットであるカナードは圧倒的な戦力と、圧倒的な破壊に狂喜し、次々に敵機を撃ち、損傷し、動けない敵にもトドメを刺してゆく。
『もうやめてください!!艦を護るためならここまでしなくてもいいでしょう!!』
そんな彼を止める様に、予備のビームサブマシンガンを持ったドレッドノートが戦場に乱入し、彼のハイぺリオンと向かい合った。
「言った筈だぞ、俺を止めるには俺を殺すしかないとな!」
一頻り敵を殲滅したカナードは、プレアの言葉を一蹴しつつも周囲を見渡し、敵が生き残っていないか確かめていた。
するとどうだろう、ドレッドノートのすぐ傍を漂っていたジンが、助けを求める様に手を伸ばしていた。
とはいえ、その機体も最早半壊しており、戦闘不能である事は明白だった。
「フン、しぶとい奴がいる。」
だが、彼はそのジンにビームサブマシンガンの弾丸を浴びせかけ、爆散させた。
これも、彼の目の前にいる少年を挑発するためだけの行動だった。
『あぁ・・・っ!?貴方は・・・っ!貴方と言う人はっ・・・!!』
目の前で虐殺が行われた事に激怒したのだろうか、プレアは咽喉から血を吐く様な声で叫び、彼に銃口を向けた。
その行為は、カナードが待ち続けたモノだった。
「いいぞ!!俺を撃てプレア!!そのMSだって人殺しの道具だ!!それに乗った者の運命だ!!俺と戦えっ!!」
『僕は・・・っ!僕はぁ・・・っ!!』
彼の言葉に怯んだのか、それともただ人を撃ちたくないからのか・・・、プレアは戦意を喪失し、銃口を下した。
「どうした!?来ないのかプレア!良いだろう、その気になれば俺と戦えば良い、ハーッハッハッハッハッ!!」
彼の反応を嘲笑いながらも、カナードは狂った様に周囲の残骸を乱れ撃ち始めた。
その姿はまさに、戦うことだけに憑り付かれた者の姿だった・・・。
noside
side一夏
「出撃準備完了、いつでも出せるぞ、一夏!」
格納庫の一角、ストライクの前で待機していた俺は、ジャックから整備と調整が完了したという報せを受け、ヘルメットとハロを抱え、備え付けられていたベンチから立った。
何時も通りのストライクだが、実戦は初と言う事もあって少々大がかりな調整を施していた為に何時もより待たされる事になったが、それも大したものじゃない。
流石はウチのスタッフと言うべきか、仕事が早い上に正確と来ている、お蔭で俺は俺のやるべき事だけに集中できる。
「了解だジャック、ミナの周辺警護、頼んだぞ。」
リフトに乗り込みながらも、俺は傍に寄ってきたジャックに一つ依頼をしておく事にした。
「そこまで念を入れる事か?ソキウス達が周りを固めてるんだろ?そこまでしなくてもいいんじゃないか?」
「念には念を、だ、ジャンク屋とは言え、裏では何をやってるか分からん連中もいるかも知れん、ソキウス達ではナチュラルを撃てないからな、一番信用できるジャックに頼んでるのさ。」
『ヨウジン、ヨウジン!』
そう、相手の大多数は恐らくナチュラルだ、ソキウスでは何かあった時に危害を加えるナチュラルを止める事は出来ない、遺伝子でそう刷り込まれてるのだからな。
だからこそ、素のナチュラルである誰かに保険として張っておいて貰えば、後手を取る事もないだろう。
「まぁ・・・、お前がそこまで言うなら気を付けとくぜ。」
「ハロを頼んだ、俺は出るぞ。」
『キヲツケテナ。』
ハロをジャックに預け、俺はストライクのコックピットに乗り込み、機体を立ちあげて行く。
最早ストライクは何度も乗った機体だ、俺の手足同然に扱える様になったが、実戦は初めてだ、今の俺にやり切れるかどうか・・・。
今だ、俺の悪夢は続いている、それも日に日に鮮明に、より俺を食い殺そうとしてくる亡霊達が増えている様にも思えた・・・。
「俺に・・・、人が殺せるのか・・・?」
今の俺は、俺の技量では殺せないと分かっていた相手と戦っていたために、人を殺さずに済んでいた。
だが、これから戦うのは正規軍とは言えど、ミナより格段に劣る敵ばかりと見ていいだろう、戦線を維持するために、名立たるエースはこの様な場所には投入されないからな。
「何を怖がってるんだ・・・、昔は何百人も殺したじゃねぇか・・・、なのに・・・。」
それを誇らしいとは、今の俺には到底思う事は出来ない、寧ろ、人殺しと蔑んでくれる奴がいてくれる方がはるかに気が楽だ、俺がそういう奴だと、より強く自覚出来るからな・・・。
いや、俺に出来る事はただ一つだ、この城を護るために戦う、そのためなら敵を撃つのも正義、と思うしかないんだよな・・・。
セシリア・・・、シャル・・・、お前達は今の俺を嗤うか・・・?
何も出来ない、こんな惨めな男を・・・?
「管制室、ストライク、出るぞ。」
だが、今ここで悩んだとて、答えが出る筈もない、ならば、目の前の敵を倒す事で答え合わせを先送りにしよう・・・。
そうする事しか出来ない、それが俺の弱さなのだから・・・。
『了解しました、カタパルトまで進んでください、ハッチを開放します。』
管制室に通信を入れ、俺は機体をカタパルトまで移動させ、発進のタイミングを待つ。
『進路クリアー、ただし、近くに入港してくるジャンク屋組合の船があります、気を付けて発進してください。』
まだ入港していなかったのか?いや、待たされていたと言うべきんだろうな。
ま、後の事はミナに任せておけばいいだろう、俺は戦うだけさ。
「了解した、織斑一夏、ストライク+I.W.S.P.、行くぞ!!」
宣言と共に、俺は漆黒の宇宙へと飛び出し、これから来るであろう敵機の襲撃を待った。
さぁて、ザフトだろうが連合だろうが、この城は落とさせやしねぇさ。
それが、今の俺の役目なんだからな・・・。
sideout
noside
アメノミハシラに招かれたロウ達一行は、前後を近衛に囲まれながらも通路を進み、MS生産ファクトリーを見下ろすキャットウォークにやってきていた。
「うっひょ~!すげぇ設備だ!!」
眼下に広がる数多のM1Aの姿と、それに取り付き整備をする作業員、そして設備に至るまで全てが最高クラスと呼んで差し障りない水準を保持していた。
「すごい・・・!こんなに大きなファクトリーがあるなんて・・・!」
「アストレイがこんなにたくさん存在しているなんて・・・。」
彼の近くを歩いていたシャルロットとセシリアは、その規模は勿論、生産されているMSの数に圧倒されていた。
それもそうだ、自分達がこれまで触れてきたMSの数を優に上回る数なのだ、驚かない方がおかしいと言うものだ。
『オノゴロクラスの工場だな!』
「これは予想外です・・・、本当にここが使えるのですか・・・?」
『8』は感心しているのだろう表示を表し、リーアムは純粋に驚愕を表しながらもここが使用できるのかと訝しんでもいた。
全員がそれぞれに辺りを見渡していると、彼等が入ってきた入り口とは反対側の通路から三人のソキウスを引き連れた女性が姿を現した。
「あれは・・・、オーブのロンド・サハクですね。」
「あの人が・・・。」
リーアムの言葉に、風花は少し驚きながらも彼女を見ていた。
まさか、要塞を治めている者が、自分の傍にいるセシリアとシャルロットより僅かに年上という若さに驚いていたのだろう。
「ジャンク屋が、私の城に何の用だ?」
女性、ロンド・ミナ・サハクは何処か探るような口調ながらも、一行のリーダー格であるロウに尋ねていた、
「よぉ、久し振り、実はここの設備、ちょいとばかり貸して欲しいんだよ。」
「なんだと?」
彼女に気付いたロウは、前置きも無しに自分の要件をストレートに伝えていたが、当のロンド・ミナは、彼の意図を把握しきれずに表情を険しいモノへと変えた。
そんな彼女に、彼は自分の懐からメモリーディスクを取り出し、彼女に見せながらも近づいてゆく。
「ちょいと厄介なものなんでね、ここでしか造れないんだよ。」
彼が危険物を取り出したと思ったのだろう、彼女の傍に控えていた近衛が腰に着けていたホルスターより拳銃を抜こうとするが、ミナはそれを制し、彼に問うた。
「ほう・・・?それに協力して私に何のメリットがある?それを明確にしてもらいたいものだ。」
メリットを明確にされなければ、彼女でなくとも協力はしたくないだろう。
何せ、相手は敵対関係に無いにしろ、味方でもない男だ、協力するにはそれなりの見返りが必要となってくる。
それは、彼女の目の前に立つジャンク屋の男も理解しているだろう、故に彼女はそう問うたのだ。
「何もないさ。」
「何?」
だが、当のロウは何の臆面も無くメリットは何一つ無いと言い切った。
それが理解できなかったミナは、拍子抜けした様に一瞬だけ表情を崩したが、すぐさま彼を睨む様な目つきを作った。
「造ったモノは俺達で使う、データも残さない、ここでの事も公表しないでくれ。」
「フッ・・・、つまらんな、何をしに来たかと興味を持ったが、所詮は無知で無謀な人間でしかないのか・・・、お前のような者に関わり、ギナが死んだとは・・・、許せんな・・・!!」
彼の答えに、当初は見下す様な、そして馬鹿にする様な口調を取っていたミナだが、彼に関わったせいで死んだ自身の弟の事を思い出し、彼を殺気の籠った目で睨みつけていた。
そんな彼女から危険を感じ取ったのだろうか、ロウの傍に控えていたセシリアとシャルロットが動き、彼を庇おうとしていた。
だが、そんな彼女達の事など目に映っていないのか、ロウは眼下に広がるファクトリーの様子を眺めていた。
「ギナって奴は知らねぇけど、やっぱりここは良い現場だな、熱気があるし、皆目が輝いてるぜ。」
「なんだと?」
彼の思わぬ言葉に、ミナはまたしても小さな驚愕をその美しく整った顔に浮かべていた。
それもそうだ、彼の質問の意図が見えないため、どう反応すべきか分からないのだから・・・。
「いろんなファクトリーを見てきたけど、設備だけじゃなくて働いてる奴もここが一番だ、あんた、俺が前に言った事、覚えてくれてたんだな、いい人だな。」
「いい人?どういう事だ?」
ロウが自分をギナだと勘違いしている事は分かったが、彼が言ういい人とは何なのか、それが分からなかったミナは、目を丸くしながらも彼に尋ねていた。
「責任者が良くなきゃ、良い現場にはならないって事さ、だからだよ。」
「そういう事か・・・、ここの人間は地上で焼け出されたオーブの民だ、彼等は私を、サハク家を頼ってここに来たのだ、私には彼等を護り、オーブと言う国を護る義務がある、ただそれだけだ。」
彼の言葉の真意を理解したのだろう、彼女は自身の義務とも、責任とも呼べる事を語り始めた。
彼女とて、元はオーブの五大氏族の出身だ、苦しむ自国の民を見捨てられはしなかったのだ。
そんな時だった、ファクトリー内に突如として音楽が鳴り響く。
それは、ワーグナーの楽曲、『タンホイザー』であった。
「これは、ワーグナーですか・・・?でも、何が・・・?」
かつての世界では貴族の出であったセシリアは、作曲者の名を口にしながらも何があったのかと尋ねていた。
まさかただのBGMというわけではあるまい、彼女はそう思っていた様だ。
「敵だ、ここには力がある、それを狙う者は多い、だが、このアメノミハシラは落ちぬ、私の信の置ける者が今戦ってくれている、彼は強い。」
彼女の問いに答える様に、ロンド・ミナは心強い協力者がいる事を明かし、彼も彼女が護ろうとしている存在を護っているのだと語った。
「地上は既に大西洋連邦の支配下にある、私にはここを守り抜き、オーブという国の解体を防がねばならん、此処を失えばオーブの民は拠り所を失うのだからな。」
自分は第二のオーブの首長としてこのアメノミハシラを守り抜き、オーブの民を護る必要があると答える彼女の言葉に、ロウは頷きながらも彼女をまっすぐ見据えていた。
その瞳は、ただあるがままを見据えている様でもあり、ミナは彼の言葉を待った。
「政治的な事はよく分からないけどよ、国ってのは人の集まりの事だろ?ここの連中なら何処へ行ったってアンタの国の民としてやっていけるさ、場所は問題じゃない、そうだろ?」
「ふむ・・・。」
国は場所の事では無く、人間同士の集まりの事を言うのだと語るロウに、彼女は頭を叩かれた様な衝撃を受けた。
確かに、国とは元々、多くの人と人が集まり、外敵や敵国から身を護るための物だ、そこに場所、領土などは含まれていない、ただ人と人との繋がりを国と呼んでいたのだ。
そんなミナに、彼は自分が語った事を示す様に、自身の周囲にいた仲間達を見渡し、再び彼女の目を見た。
「俺達ジャンク屋組合だってそうだ、俺達の組織に決まった場所なんてない、皆バラバラさ、だけど皆ジャンク屋の商売に誇りを持ってる、だからこそどんな状況だとしても仲間ならすぐに分かり合える、相手の気持ちを理解できるんだ、初めて会う奴だって同じ気持ちを、目標を持った仲間だからな、バラバラでもジャンク屋組合の一員だって胸を張って言えるんだ。」
「なるほど・・・、国とは民の事であり、場所の事ではない・・・、か・・・。」
彼の語った内容は、これまで彼女が抱いていた野望、世界支配の考え方と180度異なっていた。
力で国土を広げ、権力者に支配された場所を国と呼ぶのではなく、同じ志を持つ者同士が寄り添い、分かり合い、手を取り合って生きていく事こそが国と言う存在なのだと・・・。
「(なるほど・・・、この男だからこそ、ギナは死ぬべくして死んだのだな・・・、私は・・・、私がやるべき事は・・・。)」
自分がこれまでしてきた事を間違いだとは思わない、だが、方向が間違っていたのだと、彼女は気付いていた。
やって来た事をこのまま続け、正しい方向へと修正するには時間が掛かるだろう、だが、彼女にはそれを実現するための道筋が、霧が晴れたかの様に見渡す事が出来ていた。
「良いだろう、自由に使うがよい。」
その礼と言わんばかりに、彼女は背を向けつつも設備の使用許可を出していた。
「おぉっ!ありがてぇ、あっ!!悪いが今は持ち合わせが無いんだ・・・、後払いでもいいか?」
「気にするな、もう貰っている。」
彼女の言葉に、ロウは訳が分からないと言った様な表情を浮かべるが、それよりもまず先にやる事があると自身に言い聞かせ、拳を握り締めた。
「よっしゃ!いっちょやるか!けど、その前にやる事があったな、風花、劾と連絡取れるか?」
「えっ?出来るけど急にどうしたの?」
ロウの言葉の真意が理解できなかったのだろう、風花はキョトンとした表情を浮かべながらも彼に尋ね返していた。
「アイツを呼び戻そう、この装備を使えるのはアイツしかいない、だろ?」
「うん!分かった!すぐに連絡するね!!」
呼び戻す相手は一人しかいない、今はここにいない彼女達の仲間、プレアの事だった。
此処に来たのも、彼に新たな力を託すためであり、それには何よりも彼の帰還が必要となってくるのだ。
「よぉし、宇宙一のジャンク屋の腕前、披露してやるぜ!!」
彼は拳を突き上げ、気合十分と言った風に叫んでいた。
そんな彼に触発されたのか、彼の周囲にいた面々は苦笑しつつも彼に倣って拳を突き上げ、揃って作業区画へと歩いて行った。
ただ二人を除いて・・・。
sideout
次回予告
愛した者と愛されし者、再び巡り会えた奇跡が、彼らの心を震わせる・・・。
次回機動戦士ガンダムSEEDASTRAY X INFINITY
世界一のくちづけを
お楽しみに~。