機動戦士ガンダムSEEDASTRAY X INFINITY   作:ichika

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決戦にむけて・・・

noside

 

「・・・、そうか・・・、お前達には苦労を掛けてしまったな・・・。」

 

アメノミハシラの一室、織斑一夏の自室にて、彼の恋人であるセシリアとシャルロットは彼が用意した紅茶に口を付けていた。

 

ちなみに、セシリアの膝の上には一夏のペットロボであるハロがチョコンと乗っかっており、何処となく嬉しそうに耳をパタつかせていた。

 

先程まで、彼等が死に別れてからそれぞれ辿ってきた出来事を話し合い、これからについての話し合いが持たれていたのだ。

 

彼女達は当然の如く彼に着いて行きたいと答えたし、彼も彼女達に傍にいて欲しいと望んでいた為、彼の口添えで彼女達はアメノミハシラに仕える事となる予定だ。

 

「良いのです、一夏様・・・、それに・・・。」

 

「それに、多分あれは僕達の過去の罪のせいだよ・・・、だから・・・。」

 

「仕方無い、か・・・。」

 

『シャーネーナ、シャーネーナ。』

 

セシリアとシャルロットの言葉に、一夏は何処か自嘲するかの様に笑った。

 

贖罪、言われてみればそんな気がしなくも無かったが、まさかその通りだとは思ってもみなかったのだろう。

 

彼等にとっては、愛しき者と寄り添えない事は死ぬよりも、肉体を傷つけ続けられる事よりも辛く、苦しい事なのだ、それを身を持って、彼等は経験したのだ。

 

「だけど、これで良く分かったんだよ・・・、俺はお前達がいなけりゃダメダメなんだってな、ホント、辛かったさ・・・。」

 

そして、依存度が高かった一夏は、心底安心した、嬉しかったと言わんばかりに表情を綻ばせ、ベッドに腰掛けながらも話していた。

 

「それにしても、懐かしいね・・・、前の世界での僕達の部屋でのやり取りみたいだね。」

 

「そういえば・・・、ふふっ、本当に懐かしい・・・。」

 

そんな中、シャルロットは以前と同じ雰囲気の中にいる事を懐かしむ様な言葉を発し、それに気づいたセシリアも、何処か懐かしげに微笑んでいた。

 

二度と巡り合うと思っていた雰囲気の中に包まれているのだ、彼等で無くともセンチメンタルな気分になるだろう。

 

「そうだな・・・、凄く懐かしい、夢でも見ている気分だ、こうして、お前達にも再び会う事が出来た、それが何よりも嬉しいよ。」

 

紅茶を啜り、以前では浮かべる事すら稀だった穏やかな笑みを、その端正な顔に湛えながらも、彼は愛しき者達を見ていた。

 

嘗ての様な傲慢なまでの強さは無く、そこにはただ、一人の男としての優しげな表情だけがあった。

 

「そういえば、ジャンク屋の所に行かなくていいのか?MSの装備を造ってるんだろ?手伝わないのか?」

 

そんな中、彼は思い出したかの様に彼女達に問うた。

 

自分の傍にいてくれる事は嬉しいが、彼女達にも新しい仲間がいる、まずはそちらを優先してくれても良いとでも言っているのだろうか・・・?

 

「そうですわね・・・、そろそろ、プレアさんも帰ってくる事でしょうし・・・。」

 

「うん、僕達が迎えてあげないと、だよね・・・?」

 

言われてみて、どれだけの時間が経っているのかを思い出したのだろう、彼女達はテーブルにティーカップを置き、少々後ろ髪を引かれる様な思いを滲ませながらも席を立った。

 

弟分であるプレアの事は確かに心配であったし、戻って来たのならば迎えてやりたいと思う気持ちは彼女達の心にはある。

 

だが、それ以上に愛しき男の存在が、僅かな間でも傍を離れていると消えていなくなってしまうかもしれないといった恐怖心もあり、中々踏ん切りがつかないのだろう。

 

「心配するな、俺はここにいるよ、お前達が帰って来れる場所に俺はなる、だから、今はお前達がやるべき事をやれば良いんだよ。」

 

『イインダ、イインダ。』

 

そんな彼女達に笑いかけながらも、彼は自分はここにいる、何処にもいかないと告げていた。

 

彼とて、セシリアとシャルロットには傍にいて欲しいに違いは無いが、今は自分だけに二人を縛り付ける訳にはいかないと考えたのだろう、その言葉からある意味でケジメを着けて来いと言った様な感触すら伺う事が出来た。

 

「はい・・・!」

 

「分かったよ一夏、約束だよ?」

 

「あぁ、約束だ、行ってこい。」

 

心得たと笑い、部屋を出て行く彼女達を見送った後、彼はベッドに倒れこんだ。

 

『イチカ、ダイジョウブカ?』

 

急に倒れこんだ彼を心配したのだろうか、ハロが声をかけた。

 

「心配するなよハロ、安心して眠くなっただけさ、少しだけ眠らせてくれ・・・。」

 

心配そうに自身を覗き込むハロの頭を撫で、彼は瞳を閉じた。

 

どうやら、今の今まで気負っていたものが降りたために、これまで抑え込まれていた疲労や眠気が一気に押し寄せて来たのだろう、いくら彼でも、こればかりは抗い様も無く、素直に眠る事にしたようだ。

 

「(セシリア・・・、シャル・・・、ありがとな、俺はこれからはお前達のために・・・。)」

 

愛しき女達の事を思い浮かべながらも、彼は久方振りに訪れた、優しき眠りに意識を手放したのであった・・・。

 

sideout

 

noside

 

「プレア!」

 

ドレッドノートが置かれている格納庫に入ったシャルロットは、目的の人物が機体の前で何かの調整をしている姿を発見し、彼の名を呼びながらも駆け寄った。

 

「シャルロットさん!ただいま帰りました、ご心配をお掛けしましたよね・・・?」

 

彼女の姿を見つけたプレアは表情を輝かせるも、彼女に心配を掛けたと思っているのだろうか、すぐにその表情が曇った。

 

「ううん、セシリアからも事情を聴いてたし、絶対に帰ってくるって信じてたからね、大丈夫だよ。」

 

そんな彼の表情を見たシャルロットは、彼を安心させるために大丈夫だと微笑んでいた。

 

そこには慈愛の表情で満ち溢れており、彼女の想いを窺い知る事が出来る。

 

「お帰りなさいませ、プレアさん、よくぞ御無事で戻って来られましたわね。」

 

「セシリアさん、ただいま、です。」

 

シャルロットより少し遅れて格納庫に入ったセシリアも彼と対面し、その帰還を喜ぶ様な笑みを、その麗しき顔に湛えていた。

 

プレアも、セシリアには背を押して貰う事が多かった為だろうか、穏やかな表情で戻った事を報告していた。

 

その三人の間にあるのは、ある意味で姉弟の様な雰囲気であり、何も言わずともそこにある絆が見えている様でもあった。

 

「Xアストレイ・・・、これから戦いに行くんだね・・・?」

 

そんな中、プレアの背後に立つMS、Xアストレイの姿に気付いたシャルロットは笑みを消し、真剣その物と言った表情で彼に問うた。

 

彼女の雰囲気を受け、彼も笑みを消し、決意の籠った目をセシリアとシャルロットに向けていた。

 

もう心は決まった、後は悔いの無い様に戦うだけだと言わんばかりに・・・。

 

「はい、戦いに行きます、カナードさんを救うために、僕という存在を彼に告げるためにも・・・。」

 

カナードを救うため、彼はそう言うが、セシリアにはその言葉に裏がある様な気がしてならなかった。

 

出会った頃から感じてはいた事だが、プレアは何か重要な事を自分達に隠している様な気がしてならなかったのだ。

 

それが何なのかは敢えて聞く事は無かったが、どうしようも無く引っかかる事があったのだ。

 

「プレアさん・・・、まさか貴方、この戦いで死ぬ御積りですか・・・?」

 

「・・・っ。」

 

そんな彼女の言葉に、プレアは見抜かれたと言わんばかりに肩を震わせた。

 

だが、何れはばれると思っていたのだろう、何せ、セシリアにも彼と同じ能力が備わっていたのだから・・・。

 

「セシリア・・・?死ぬ積りってどういう事なのさ・・・?」

 

彼女の言葉の意味が理解できなかったのだろう、シャルロットは驚いた様に目を見開き、セシリアとプレアを引き攣った様な表情で見ていた。

 

気付いていなかったのだろう、彼に隠された真実を、そして、残酷な現実を・・・。

 

「私だって信じたくありません・・・、ですが、この胸騒ぎだけは・・・、否定できませんわ・・・。」

 

彼女の驚愕に答える様に、セシリアは僅かに悲しげな表情を浮かべ、プレアの方に向き直った。

 

話せる物なら、自分達に聞かせてくれと言う、声なき言葉が彼女の表情から語られていた。

 

「・・・、分かりました、僕の運命を、宿命をお話します、聞いてください・・・。」

 

彼女の、全てを受け入れると言う様な雰囲気を悟ったのだろう、プレアは目を細め、覚悟を決めた様に口を開いた。

 

「僕がドラグーンを扱える理由が、空間認識能力に依る物だという事は、お二人も御存知だと思います、セシリアさんにもその閃きを感じますから・・・。」

 

「私の物は後天的に開花したと言うべきですが、プレアさんの物は先天的と言う訳ですわね。」

 

プレアの言葉に補足する様に、セシリアは自分の能力と彼の能力の違いを語った。

 

元々、彼女は嘗ての世界ではドラグーンの近縁種たる装備を使用しており、ある時にドラグーンを扱う様になってから、空間認識能力が開花したという存在だ。

 

そこに関わってくるのが織斑一夏という男の存在であるが、今は関係の無い事だった。

 

だが、彼女が気付いている通り、プレアはある時を境に使える様になった訳では無く、先天的、つまりは生まれ持って高度な空間認識能力を持っているのだ。

 

一見して些細な違いにも見えるだろうが、この話においては大きなキーワードに成り得る話なのだ。

 

「はい、ですが、僕は両親からこの力を受け継いだ訳ではありません、そもそも、顔も知らないんです・・・。」

 

「えっ・・・?」

 

両親の顔を知らないと言う彼の言葉を理解できなかったシャルロットは、思わず声を漏らしていた。

 

死に別れたとは言え、彼女は両親の顔を憶えている、寧ろ、彼女の人生の分岐路に多くの影響を与えている人物達だ、忘れられる訳が無かった。

 

親の影響を良くも悪くも受けない子はいない、それなのに、プレアは両親の事を知らないと答えたのだ、それが何故なのかが分からなかったのだろう。

 

言葉を続けようにも話す事が苦痛なのだろうか、彼は苦悶の表情を浮かべながらも胸元の首飾りを握り締めた。

 

まるで、何かに縋る様に、誰かに助けを求めている様にも見えた。

 

「僕は・・・、僕は意図的に生み出された存在・・・、クローンなんです・・・。」

 

「・・・っ!?」

 

クローン、その言葉にシャルロットは口元を押さえていた。

 

言葉としては聞いた事のある言葉だったが、信じたくない事実でもあったのだろう、その表情からは嘘であって欲しいと言わんばかりの色が見て取れた。

 

「この力を欲した連合が・・・、ガンバレルを使用できる人間を量産するべく生み出された存在・・・、それが僕なんです・・・生まれてから、僕はずっと戦う為だけに訓練されてきました・・・。」

 

ガンバレル等の独立稼働する兵装を自在に操れる程の高度な空間認識能力を持つパイロットは極めてその数が少ない上に、戦争ともなれば損耗や戦死によって更に数は減る。

 

これでは何時まで経ってもザフトに抗し切る事は叶わず、ジリ貧と言うべき状態に陥る事は明白だった。

 

そこで、連合軍上層部は空間認識能力を有するパイロットの数を確保するための策に出た。

 

それは、既に連合軍に在籍していたメビウス・ゼロのパイロット達の遺伝子情報を基に、彼等のクローンを製作を試みたのだ。

 

遺伝子操作が可能なこの世界だ、クローンなど創ろうと思えば直ぐにでも取り掛かれる、ある意味で理には適っているが、非人道的であると言わざるを得なかった。

 

そうして生み出されたの存在の一つが、今彼女達の目に前にいる少年、プレア・レヴェリーであったのだ。

 

生まれながらに戦う事を宿命付けられ、人間としてでは無く、ガンバレルを持つ兵器を動かす為の部品として扱われ続けてきたのだ。

 

「ですが・・・、その計画にも予想外の欠陥がありました・・・、クローニングが完全では無かったのです・・・。」

 

プレアに課せられた宿命は戦う事だけでは無かった。

 

彼に課せられたもう一つの宿命は、彼自身の寿命の短さだった。

 

彼の基となった人物からの能力のコピーは、それなりの精度を誇っていた、だが、それと同時に欠陥も判明した。

 

それは、テロメアと言う細胞の中にある遺伝子情報を司る物が、基となった人物の物そのままにコピーされてしまったのだ。

 

テロメアは人間が老化するに連れて徐々に削り取られていく物であり、細胞を調べればその人物の年齢が分かるのも、テロメアが克明に肉体年齢を示しているからなのだ。

 

つまり、クローンの基となった人物の年齢が二十歳だったとした場合、生まれてくるクローンはそのテロメアの情報を基に創られているため、赤子として生まれた瞬間から、既に二十年生きている人間と認識されてしまうのだ。

 

だが、問題はそこでは無かった、なにせ、頭数だけを揃えるのならば寿命など気にしている暇は無い、連合はそれを知って尚、クローンを使用するべく動いていた。

 

「僕に・・・、僕以外にも表れた症状・・・、この能力を使う度に細胞が次々に壊死していくんです。」

 

そう、彼等の最大の欠陥がそこにはあった。

 

能力を使う度に細胞が壊れ、その機能を停止し、そう長く生きられないと言う結果が示された。

 

それと同時に、身体の不調や異常、そして死と言った事例が次々に持ち上がったため、クローン計画は頓挫、実験体である彼等も殺処分される事となったのだ。

 

「殺される運命から逃れる為に、僕は施設を脱走して、オーブの近くまで逃げました・・・、そこで、導師様に拾って頂いたんです・・・、これが、僕のこれまで、です・・・。」

 

語り終えると同時に、彼は少し疲れた様に息を吐いた。

 

それもそうだろう、自身に課せられた呪いを、宿命をペラペラと話せる人間などいない、何せ、自分がそういう存在だと今一度突き付けられるのだから・・・。

 

「多分・・・、次の戦いで僕は力を使い果たすでしょう、でも、僕が戦わないとダメなんです、カナードさんも、僕と同じ境遇で生まれてきたんです、だから・・・。」

 

「だから、なんだって言うのさ・・・!」

 

自分が戦わなければならないと語るプレアの言葉を遮る様に、シャルロットは彼の肩を掴みながらも叫んだ。

 

その瞳には涙の雫が溜まっており、今にも零れ落ちそうになっていた。

 

「プレアが戦う必要なんて無いじゃないか・・・!命があと僅かしかなくても、生きなくちゃダメだよ・・・!」

 

「シャルロットさん・・・。」

 

戦ってはいけないと引き留める彼女の想いを、出会ってからずっと自分の事を心配してくれた人の優しさに今一度触れ、彼の心は温かい想いに満たされてゆく。

 

だが、それとて、プレアを戦わせない理由には成り得なかった。

 

「ありがとうございます・・・、でも、僕は行きます、やっと、自分の命の意味を見出せたんです、それを伝える為にも、僕は行きます!」

 

兵器として生み出された自分でも、こんなにも想ってくれる仲間が出来た、だからこそ、独り、自分の殻に籠り続け、他者からの想いを拒絶している男に、それを届けたいのだ。

 

たとえ、それが最後の命の輝きになったとしても、それでも行こうとしているのだ。

 

「でも・・・っ!!」

 

「シャルさん!!」

 

彼の決意を聞いて尚、食い下がろうとするシャルロットを止める様に、今の今まで言葉を発さなかったセシリアが一喝した。

 

何故止めると言わんばかりに、シャルロットは彼女の方を向くが、セシリアの表情が今にも泣き出しそうなモノであった事に気付いた。

 

そう、セシリアとて、プレアが命を投げ棄ててまで戦いに行く事は賛同しかねる、だが、それを止めれば、プレアが導き出した自分自身の答えを否定する事になる、そんな事はしてやりたくないのだ。

 

「プレアさんが出した答えなんです、私達は黙って受け入れてあげましょう、それが、私達の役目ですわ・・・。」

 

「・・・っ!!」

 

セシリアの言葉に堪え切れなくなったのだろう、シャルロットは大粒の涙をその瞳から零していた。

 

「行きなさい、プレア・レヴェリー、一人の友として、仲間として、そして一人の女として、私は貴方を応援いたしましょう・・・、ですから・・・。」

 

一人の人間として、彼を見送ると告げた彼女も、遂には堪え切れなくなったのだろう、言葉の途中より涙ぐみ、嗚咽を漏らしていた。

 

人の、それも自身の恋人と盟友の為以外に泣いたのは何時振りだろうか、考えても思い出せぬほど長く、人の為に流す涙を忘れていたのだから・・・。

 

 

「ありがとうございます、セシリアさん・・・、シャルロットさん・・・、お二人に出会えて本当に良かった・・・、こんなにも僕の事を想ってくれて・・・、最後に、一つだけ、良いですか・・・?」

 

「何でも、聞きますわよ・・・?」

 

プレアからの頼みだ、聞き逃せる筈もなく、二人は彼の言葉を待った。

 

「お二人の事を・・・、姉さんって・・・、呼んでも良いですか・・・?家族を知らない僕に、優しさをくれたお二人を・・・?」

 

「「・・・っ!」」

 

姉と呼ばれた事に、二人はいたたまれない気持ちになり、口元を抑える事で必死に声を泣き声を押し殺していた。

 

年下であり、何処か不安定な彼を心配していた故に、それを嬉しく想ってくれていた事が、彼女達への唯一の慰めにも思えたのだろう。

 

「はい、構いませんわよ・・・、ですから、また・・・、姉と呼んでくださいね・・・?」

 

「絶対に生きて帰って来るんだよ・・・?プレアは・・・、僕達の弟だから・・・っ。」

 

涙を湛えながらも、二人は微笑み、彼の頼みを受け入れた。

 

断る理由なんてない、そう思ったからだろう。

 

「それじゃあ、行ってきます、セシリア姉さん、シャルロット姉さん。」

 

二人に微笑み返しながらも、彼はドレッドノートのコックピットから降りてきたラダーに掴まり、コックピットへと消えていった。

 

それを瞬きすらせずに、一瞬一瞬を焼き付けようと、セシリアとシャルロットはジッと見送っていた。

 

最早、自分達が彼にしてやれる事は無い、後は彼の思うままにやらせてやるだけなのだと・・・。

 

ⅩアストレイのPS装甲が色づき、機体はMSハンガーを離れ、カタパルトの方へと歩いて行く。

 

時がやってきたのだ、これから彼は、死地に入るのだ。

 

格納庫に併設されたブースに入り、発進準備を進めているドレッドノートを見つめながらも、彼女達は指を組み、祈っていた。

 

どうか、彼の未来に光明がある様にと・・・。

 

『プレア・レヴェリー、Ⅹアストレイ、行きます!!』

 

発進を告げる彼の言葉と同時に、Ⅹアストレイは漆黒の宇宙へと飛び出していった。

 

「プレア・・・!プレアは・・・!?」

 

その直後だった、今の今までサーペント・テールに連絡を入れるために席を外していた風花がブースに駆け込んできた。

 

かなり急いで来たのだろう、肩で息をしながらも、彼女は必死の形相でプレアの事を探していた。

 

「風花さん・・・。」

 

「セシリア・・・!プレアは何処・・・?ねぇ、教えてよ・・・?」

 

セシリアの涙に濡れた表情から何があったのか悟ったのだろう、風花は恐る恐る彼の所在を尋ねていた。

 

いや、確認というべきだろう、彼女とて、もう既に何があったかなど分かっているのだから・・・。

 

「たった今、出撃されました・・・、最後の戦いへと・・・。」

 

「そんな・・・、アタシ、まだ何も・・・!」

 

プレアを見送る積りだったのだろう、彼女の表情からはある種の後悔の表情が窺えた。

 

それが、彼と会う最後のチャンスだったかも知れないのだ、それを逃してしまった事は悔やんでも悔やみ切れないのだろう。

 

そんな彼女を、セシリアとシャルロットは痛ましげな表情で見ていた。

 

そんな時だった・・・。

 

「追い駆けろよ、風花、伝えたい事があるんだろ?」

 

ブースに入ってきたロウが、プレアを追うべきだと彼女達につげていた。

 

「ロウ・・・?」

 

彼の言葉の真意が分からなかったのだろう、風花は怪訝の表情を浮かべながらも彼を見ていた。

 

それはセシリア達も同じだった、今更自分達に出来る事は無い、たとえ追い着いたとしても、既にハイぺリオンとの戦闘に入っている可能性すらある、そこに介入すればただの足手纏いになりかねないのだから。

 

「信じるんだ、プレアは必ず勝つって、その後に何があっても、それを受け入れる覚悟があるんなら、プレアの戦いを見届けてやるんだ。」

 

「ロウ・・・。」

 

彼の想いの勝利を信じ、因縁の対決を見届ける事が大切だと、彼は真っ直ぐな視線を彼女達に注いでいた。

 

それはまるで、風花がどうするかを試している様にも感じられた。

 

いや、実際試しているのかも知れない、何せ、彼はプレアの身体の事に薄らとながらも勘付いているのだから・・・。

 

「分かった・・・!このままじゃ嫌だもん・・・、何があってもプレアの戦いを見届ける、それがアタシのミッションだったもん!」

 

「そうだ、その意気だぜ風花、行って来いよ。」

 

自分がやるべき事を思い出し、改めて決意した風花は、宇宙服を取りに小型艇の方へと走って行った。

 

そのまま発艦するつもりなのだろうが、激戦区に小型艇で行くのは何かと心許無い。

 

「分かりました、私も参りますわ、私の任務ですもの。」

 

それに気付いたのだろう、セシリアは自身のヘルメットを取り、デュエルの方へと向かっていった。

 

風花を護る事が彼女の任務であると同時に、一人の人間として、プレアの最後の戦いを見届けようと心に決めたのだろう。

 

「シャルロット、お前はどうするんだ?行かなくていいんだな?」

 

盟友が動いても尚、如何するべきかと足を踏み出せずにいたシャルロットに、ロウは意地悪く問うた。

 

まるで、お前も行って来いと言う様に・・・。

 

「ロウも・・・、セシリアも皆意地悪だ・・・、そんな事言われたら・・・、僕も行かなくちゃいけないじゃないかっ!」

 

本当は自分が一番飛び出したくて如何しようも無かったのだろう、彼女はロウの横を通り抜け、自分の愛機の元へと向かっていった。

 

彼女にも迷いは無く、ある種の覚悟が見て取れた。

 

「ったく・・・、世話の焼ける奴等だぜ・・・、だけど、こんなに想われて・・・、お前は幸せ者だよな、プレア・・・?」

 

誰もいなくなったブース内で、ロウは薄く笑みながらも天井を見上げて目を閉じた。

 

それはまるで、誰かの死を悼み、流れ出そうになる涙を堪えている様でもあった・・・。

 

sideout

 




次回予告

誰がため、何の為に彼は行くのか、彼の想いの先にあるものとは・・・。

次回機動戦士ガンダムSEEDASTRAY X INFINITY

プレアの想い 前編

お楽しみに~
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