機動戦士ガンダムSEEDASTRAY X INFINITY 作:ichika
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C.E.71年10月
地球上に存在する、とある屋敷の広間に二人の男の姿があった。
一人は先日、アメノミハシラを取材に訪れたジャーナリスト、ジェス・リブルと、もう一人は彼のクライアントであるサー・マティアスである。
アメノミハシラ攻防戦から既に半月以上が経過した今日、ジェスは新たな取材の仕事のためにマティアスに呼び出されたのだ。
「で・・・、俺はこのポイントで何を撮ってくればいいんだ?」
手渡された紙切れに記されていた座標ポイントを眺めながらも、彼はその場所にあるターゲットについて説明を求めていた。
仕事をするにしても、まずは情報が必須になってくるのだ、行先にあるモノの概要は知っておきたいのだろう。
「今回のターゲットはザフトの巨大兵器よ、危険な取材になるでしょうけど、これが成功すればいいスクープになるわよ?」
自分の質問に返された答えに、ジェスは一瞬だけ驚いた様な表情を見せるが、すぐさま考え込むような表情を見せた。
「あら?不服かしら?スクープが欲しくないの?」
そんな彼の様子に気づいたのだろう、マティアスは探る様に尋ねていた。
尤も、彼にもわかっているのだ、ジェスがこの取材に不満を持っている訳ではないと・・・。
「違うんだよマティアス、俺はスクープが欲しい訳じゃ無いんだ!この目で見た事を、そのまま世界に伝えたいんだ!」
「あら、ご立派な事ね、そういう所好きよ。」
拳を握り締め、自分の思いを語るジェスに対し、マティアスは微笑みながらもある種の心地よさを味わっていた。
自分の信念を持ち、それに従って行動を起こす、そんなジェスのひたむきな姿が、彼にとっては心地よいのだろう。
「この仕事は人の為になるわよ、勿論、成功すればの話だけどね・・・?」
「分かったよ、引き受ける、準備が出来たら教えてくれ。」
マティアスの言葉を受け、この依頼を引き受ける事を決めたジェスは、自分の準備をするために席を立った。
食料の用意やカメラの点検、他にも色々とやらねばならない事は多いのだから・・・。
「えぇ、準備が出来たらまた連絡するわ。」
「あぁ、頼むよ。」
部屋から出て行こうとするジェスに声をかけ、彼が出て行った事を確認すると、マティアスは別室で待機していた誰かを呼び付けた。
「アイツは引き受けた様だな?」
扉を開け、部屋に入ってきたのは、癖のある金髪をややオールバック気味に後ろへ纏めた、黒い髭を生やした男性だった。
先程まで部屋にいたジェスとは対照的に、ピシッとスーツを着こなした、まさに伊達男と呼ぶべき風体だった。
「えぇ、ジェスに気付かれない様に護衛をよろしくね、マディガン?」
「分かってるよ、しかし、食えないオカマだな、アイツをけしかけるなんてな?」
マティアスの言葉に頷きつつも、マディガンと呼ばれた男性はからかう様に笑っていた。
「まぁっ!失礼ね、それが紳士にかける言葉なのかしら!?」
「ハッハッハッ、怒るなよ、金は貰ってるんだ、仕事はキッチリ引き受けるよ。」
マティアスの言葉を受け流しつつ、男性は悪気は無かったとばかりに笑い、手を振っていた。
「まったく、デリカシーが無いんだから・・・、それでも紳士なのかしら?」
「悪かった、俺も行くとするよ、準備があるんでね。」
彼の愚痴に平謝りしつつも、男性は身を翻し、部屋から出て行こうとしていた。
恐らくは、護衛の為に使用する機体の調整に出向くのだろう。
「まったく・・・、頼んだわよ。」
呆れながらも言葉を投げ掛けたマティアスに、男性は肩越しに頷き、部屋を出て行った。
独り残ったマティアスは、ため息を一つ吐いた後、思考を巡らせる様に瞳を閉じた。
「(さぁ、この難しい依頼、貴方はどう切り抜けるのかしら、楽しみにしているわよ、ジェス。)」
小さく笑みながらも、彼はこれから先の事を想っていた。
新たな火種の存在を知っているかの様に・・・。
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『発進します、座席に座り、シートベルトを締めてください。』
マティアスとの面会から数日後、ジェスは宇宙へ上がるために、マティアスが手配したシャトルに乗り込んでいた。
彼専用のレイスタも積まれており、近辺宙域まで運んで貰った後に、単独で取材を行うのが、ジェスが考えている筋道だった。
だが、そうそう上手く行く訳が無い事は、彼自身が一番分かっている事だった、何せ、今回の撮影対象はザフトの大量破壊兵器なのだ、軍備も多数配備されていると見て妥当だろう。
当然、細心の注意は払う積りだが、そんな所に行き、もし見つかりでもしたら間違いなく命はないだろう事だけは確かであった。
「さて、と・・・、引き受けたのはいいけど、大丈夫なのか・・・?」
離陸たシャトルの船窓の外を流れる景色を眺めながらも、ジェスは今回の依頼の危険度にため息を吐いていた。
不確定ではあるが、何者かがその宙域に集まっているという情報もあり、果たしてこのまま行っても良いのかという思いが彼の中で渦巻いていた。
「せめて誰かを護衛に付ける位しても良いだろうに・・・、マティアスの野郎・・・。」
自分一人では間違いなく宇宙の藻屑になるかも知れない、そう考えれば考えれば考えるほど胃がキリキリと痛むが、それを押し殺して彼は目を閉じた。
せめて、個人的に傭兵でも雇いたい所だが、そう言った出費は彼の自己負担になるため、あまり気が乗らないのだが、ここはそんな贅沢を言っている場合では無いだろう。
それに、彼には馴染みの傭兵はいないため、こんな危険な依頼を進んで引き受ける様な物好きは先ずいないだろう事が直ぐに想像できた。
頭を抱えそうになった、まさにその時だった、こんな無茶な依頼を頼める人物がいる事を思い出した。
「そうだっ・・・!アイツが・・・、一夏がいるじゃないか!」
そう、つい一週間ほど前に天空の城で対面し、取材もしたMS乗り、アメノミハシラの織斑一夏だった。
彼はアメノミハシラのエースを名乗るに相応しい腕と、それに見合う性能を持ったMSに乗っている、護衛してもらうには十分すぎる戦力と言えるだろう。
しかし、ひとつ問題があるとすれば、彼の立場だ。
ロンド・ミナ・サハクの子飼いであるが故に、彼女の許可が下りなければ彼も動けないのだ。
「何かあれば寄ってくれって言ってたし、少し甘えてみるのもアリ、だな・・・!」
だが、ジェスは一夏が義理堅いと知っているため、彼に頼る事にしたようだ。
「(頼むぜ一夏、俺に力を貸してくれ!)」
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side一夏
十一月に入り、暫く経った今日この頃、俺はアメノミハシラの格納庫で整備士に混じって機体の整備に精を出していた。
戦後のゴタゴタで世界が不安定な時期とは言えど、アメノミハシラは、いや、主であるロンド・ミナが行動を起こさない為に俺達の仕事も無くて暇なんだ。
だから、やる事と言えばこうやって整備士達の手伝いをするか、模擬戦を行うか、若しくはプライベートに時間を割くかのいずれかに限られてしまう。
娯楽が、いや、俺個人の趣味がもう少しあれば退屈など紛れるだろうが、生憎、すぐには思いつかなかったためにそれは断念している。
ま、嫁さん二人に時間を使うってのもアリだろうが、彼女達もこういった作業を何となく楽しんでいる節があるため、俺がどうこう言える問題でも無いんだよな。
てな訳で、俺は整備中のストライクのコックピットに潜り込み、ハロが収まるためのポッドを、操縦の支障とならない場所に増設する作業に勤しんでいた。
なんでも、ハロは擬似人格教育成長型自律支援コンピュータを内蔵していたため、経験を積ませれば俺の操縦のサポートは勿論、ハロ単体で機体を制御する事も可能と言う代物だった。
基礎を作っていたのはジャックと俺だったが、ハロを完成させた時は俺もジャックも完全に酔っ払っていた為にどういう風に完成させたのか全く記憶に残ってなかったんだ。
そのために、ハロを複製量産する事はおろか、もし破損や故障が起きた際に修復ができないという状況に陥ってしまっていた。
ホント、なにやってんだろうなぁ、俺・・・。
それはともかく、大まかな弄り方はジャックに教えて貰っていたし、ハロ専用のポッドも彼に造って貰っておいた。
なので、後は緩んだ場所とかが無いか確認するだけなのだが、これが案外難しいんだな。
「セシリア、スパナ取ってくれ、ここ緩んでる。」
「かしこまりましたわ。」
コックピットの外、つまりはリフトにいたセシリアからの返答があり、すぐにスパナが手渡された。
「ありがとな、休ませてやれなくて悪いな、あと一時間しない内に見送りに行くんだろ?」
手伝ってくれるのは純粋にありがたいが、流石に用事前に手伝わせるのは気が引ける。
そろそろ休んでもらうとしようか?
「大丈夫ですわ、一夏様と御一緒させて頂けるなら、私はへっちゃらですわ。」
「それに、こうやって過ごす時間も、僕は好きだな。」
大丈夫と言うセシリアの言葉に続ける様に、コックピットまでやって来たシャルが構わないと言う風に話していた。
気を遣わせてしまったか・・・?
そう考えてしまうと何処か申し訳ないよな・・・。
「すまん、だが、無理はしないでくれよ?」
「はい、勿論ですわ。」
「大丈夫だって、僕達は一夏がいてくれればそれで良いんだから。」
俺の心配し過ぎているとも取れる言葉を、彼女達は笑いながらも頷いてくれた。
やれやれ、俺の嫁さん達は俺が思ってた以上にタフみたいだ。
ついこの前まで、弟分を亡くして喪に服してたっていうのによ・・・。
だが、その強さのお陰で俺も救われてると考えたら、申し訳ないやらありがたいやらで少し居心地が悪いな。
まぁ、悪い気はしないが・・・。
「さて、作業が一段落したら見送りに行くぞ、俺も恩人に礼ぐらい言わなきゃな。」
呆けてる暇はない、何せこれから用事があるんだ、遅刻なんてみっともない真似など出来る筈が無いんだからな。
そう思いながらも、俺はシートに座り、キーボードを取り出しながらも、ハロが入る事で変動するOSのパラメーターの調整に入った、まさにその時だった。
コックピットに通信が入り、ウインドウにソキウスの顔が映し出された。
「どうしたんだソキウス、何かあったのか?」
『はい、アメノミハシラに接近してくるMSがあります、数は一機、こちらに通信を送ってきていますが、いかがしましょうか?』
「なんだと?」
敵か?いや、それにしては数が少なすぎるし、何よりわざわざコンタクトを求める必要性が何一つない。
だとすればこちらに寄港したいと言う事なのだろうが、目的も分からぬヤツを招き入れてはこちらが危険にさらされてしまうのがオチだ。
『間もなく目視できる距離に入ります、映像を回しましょうか?』
「頼む。」
何事にもまずは情報収集が肝心だ、そこから判断する材料があっても良いだろうしな。
外部の映像がウインドウに映し出され、こちらに接近する一機のMSの姿が確認できた。
それはM1シリーズに通じる輪郭を持っていたが、背面のスラスターや保持しているガンカメラと言った、原型機とは明らかに異なる部分も多く見て取れた。
しかも、その機体は見覚えがある、その乗ってる人間もだ。
「報道仕様のレイスタ・・・、ジェスか・・・?」
あの特徴的なガンカメラ、見紛う筈がない。
ジェスのMS、レイスタだが、一体何をしに来たんだ?
「通信回線を開け、俺がコンタクトを取る。」
『了解しました。』
『こちらジャーナリストのジェス・リブル!織斑一夏!応答してくれ!!』
俺の指示にソキウスが頷いた直後、レイスタとの通信回線が開かれた。
この声は間違えようが無い、暑苦しいが嫌いになれない声だな・・・。
「こちら織斑一夏、ジェス、聞こえてるか?」
『一夏ぁ!話があるんだ!聞いてくれないか!?』
喧しい声だ、頭の奥に響いてきそうだな。
だが、自分の想いに何処までもひたむきなジェスを、俺は煩わしいとは全く思えなかった。
「分かった、要件を聞こう、34番ゲートから入港してくれ、向かい合って話をしたい。」
『ありがたい!待っててくれよ!』
俺の指示に返した直後、ジェスからの通信は切れた。
さてと、大方予想がつくが、何かしら大きな依頼が入ったのだろう、それも単独での取材では手が余る程の・・・。
「やれやれ、また来てくれとは言ったが、こうも早いか・・・。」
少し愚痴っぽい言葉が零れたが、別に嫌って訳じゃない、寧ろやる事ができてありがたい位だ。
「嫌々じゃなさそうだね?」
それを見透かしたのだろう、シャルが悪戯っぽく笑いながらも俺に尋ねてきた。
「まぁな、さてと、ジェスを迎えるとしよう、セシリアとシャルは見送りの準備をしていてくれ。」
「かしこまりましたわ。」
「一夏も遅れないでね?」
二人は俺の言葉に頷いた後、パイロットスーツに着替える為に踵を返して格納庫の出入り口まで歩いて行った。
さて、俺も自分の用事を済ませるとしようか。
ジェスがどんな目的でここに来たのかは、本人に会って直接確かめるとしよう。
彼流に言うなれば、自分で見て、考えると言ったところか?
冗談交じりに考えつつも、俺はM1Aのコックピットから降り、彼に会うべく歩みを進めた・・・。
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「悪いな一夏!いきなり押しかけて。」
来客用のMS格納庫に着いたレイスタから降りたジェスは、この城のパイロットである織斑一夏に歩み寄り、再会を喜ぶように右手を差し出していた。
「気にするなよ、何かあれば寄ってくれと言ったのは俺なんだ、頼りにしてくれて嬉しいよ。」
一夏は気にするなとばかりに笑い、差し出された手を握り返した。
その雰囲気は、まるで友人同士と言うべき和やかな物であり、これが二度目の対面とは思えなかった。
「それで、何かヤバい仕事でも請け負ったのか?」
手短に済ませるつもりなのか、一夏は事の本題を尋ねる様に切り出しながらもジェスの様子を窺っていた。
「まぁ、な・・・、此処に行けって言われたんだ。」
彼の問いに頷き、ジェスは懐から何かが書かれた紙切れを取り出し、一夏に手渡していた。
それを受け取った一夏は、じっくりと確認する様に目を通し、僅かに驚く様に目を見開いていた。
「ジェス、この宙域に何があるんだ?」
「俺が聞いた話だとザフトの大量破壊兵器があるって聞いたけど・・・、急にどうしたんだ?」
彼の表情に驚愕の色が窺えた事に疑問を抱いたのだろう、ジェスは訝しむ様な表情をしながらも彼に問うた。
「いや、偶然と言うべきだが、俺とセシリアとシャルの三人で、この宙域に行く用事があるんだ。」
「用事ってまさか・・・、戦いにか・・・!?」
一夏の言葉に、ジェスは目を見開いて叫ぶ様に尋ねていた。
彼も予想していたが、大量破壊兵器という超極秘扱いの代物には間違いなく護衛やそれに相当する部隊が配備されていると見て良いだろう。
遠巻きから姿を撮影している際に見つかるならば、逃げる事に全力を尽くせば良いためにそれほど大きな戦力は必要ない、寧ろ、大部隊は隠密行動には向いていない。
だが、攻め込むのだとすれば、流石に小隊規模の戦力では無謀も良い所だ。
それなのに、一夏はたった三機でその要塞に行くと言ったのだ、正気とは思えなかったのだろう。
「いや、知り合いの見送りだよ、まぁ、危険な任務になりそうな事は間違いないか・・・。」
ジェスの言葉を否定しつつも、彼は何処か思案するような表情を見せていた。
だが、それもすぐに消え去り、何かを決めた様な表情を見せた。
「ジェス、俺達に同行してくれ、行先が同じなんだから都合が良い。」
「良いのか?いや、それを頼むつもりで来たんだけどさ・・・?」
彼の脳内で起きた自己完結に付いて行けなかったジェスは困惑した様な表情と、何処か申し訳なさそうな表情を見せていた。
「気にするな、お前に協力すると約束したんだ、それに目的地も同じなんだ、俺達と一緒に来た方が安全だろ?」
そんな彼に対し、一夏は気にするなとばかりに笑い、軽くジェスの胸に拳を当てた。
「それに、助け合いも必要だと教えられたんでな、お前を助けるよ、ジェス。」
「すまない・・・、よろしく頼むよ。」
その笑みに安堵したのか、ジェスは深く頷きながらも礼を述べていた。
「了解した、先にレイスタに乗っておいてくれ、ストライクを起動させてくる。」
彼の言葉に頷き、一夏は準備の為に踵を返し、格納庫を出て行った。
「これで安心して仕事が出来るな・・・!よぉしっ!やってやるぞ!!」
喜びのあまりガッツポーズをしながらも、彼は自分のやるべき事のために気を引き締め、レイスタのコックピットへと戻っっていった。
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sideシャルロット
「シャルロット・デュノア、バスター、行きます!」
バスターに乗り込み、アメノミハシラから発進した僕とセシリアは、後から来るだろう一夏を待っていた。
お客さんが来てるって言ってたっけ?
もう少し遅く出ればよかったかな?着くまでにバッテリーが干上がっちゃうかもしれないね。
『少し早く出過ぎてしまいましたか・・・?』
一夏がまだ来ない事に戸惑っているのだろうか、通信機越しにセシリアの声が聞こえてくる。
彼を訪ねてるのは多分、この前アメノミハシラに取材しにきたジャーナリストのジェス・リブルだと思う、彼が直々に出迎えに行ったから間違いないだろう。
それにしても、一夏が直々に客人を出迎えるなんて滅多に無かったのに、一体どういった風の吹き回しなんだろうか?
彼に対しては何処か親し気と言う感じだし・・・。
別に束縛したいとかそういう感情は無いけど、なんて言えば良いんだろうね、よく分からないや。
そんな感情を持て余していると、ジェスが乗ったレイスタがアメノミハシラから出てきた。
「ジェス・リブル、こちらシャルロット、一夏はどうしたの?」
『えっと・・・、どっちだったっけ?ちゃんと話してなかったから覚えてないんだ・・・。』
僕が通信を入れると、困惑したジェスの声が聞こえてきた。
あー・・・、そういえば、ちゃんと自己紹介とかしてなかったね、悪い事しちゃったなぁ・・・。
「あ、いきなりゴメンね、僕はシャルロット・デュノア、一夏の左側にいた方だよ。」
映像通信を開き、ジェスのレイスタとコンタクトを取る。
顔も覚えて貰わないとダメだから、ヘルメットも脱いでの通信だ。
『では私も、セシリア・オルコットですわ、一夏様の右側に立つ女です、以後、お見知り置きを。』
『シャルロットにセシリアだな、俺はジェスって呼んでくれ、一夏とは仲良くさせてもらってるよ。』
むぅ、一夏と仲良くって・・・、何か妬けちゃうなぁ・・・。
昔の彼って、人を寄せ付けなかったから、僕とセシリアにだけ目を向けてくれてたから、その視線を独占できなくなった事に対するちっぽけな感覚なんだろうなぁ・・・。
あ、そうだった、今はそんな事考えてる暇じゃなかったよ、僕はもっと聞きたかった事が有ったじゃないか
「うん、よろしくねジェス、そう言えば、どうしてアメノミハシラに来たの?取材に来たって訳じゃなさそうだけど?」
つい一週間前に取材に来たばかりだし、こんなに早く顔を出す理由が分からなかったから、僕は彼に理由を尋ねてみた。
多分、それなりに重要な話だったんだろうし、僕達も知っておけば何かと手を貸せるかも知れないしね。
『あぁ、それがさ、これから取材に行く先がザフトの極秘兵器がある宙域なんだけどさ、俺一人じゃ流石にマズイって思ってさ、一夏に護衛を頼もうとしてここに来たんだよ。』
なるほど、確かに普通の傭兵に頼むより一夏や僕達に頼んだ方が安くつくし、何より、一夏とジェスはお互いにそれなりの仲だろうから気兼ねないよね。
そう考えたら、ジェスの行動は何一つ間違ってないんだよねぇ。
『なるほど、それで、一夏様は了承なされたのですか?』
話を聞いていたセシリアが通信に割り込み、一夏がどうするのかを尋ねていた。
行先も恐らく違うだろうし、一夏だけ付いて行く形になるんだろうけど、一応確認って所だね。
『あぁ、セシリア達と行先は同じみたいなんだ、アイツは戦いに行く訳じゃ無いって言ってたけどなぁ・・・。』
「『えっ・・・?』」
予想外の返答に、僕とセシリアは通信機越しにハモってしまった。
行先が同じってどういう事なんだろう?
僕達の行先はロウが見つけたっていう宇宙拠点だけど、ジェスが行こうとしているのはザフトの秘密基地、明らかに目的が違う様な気がするんだけどなぁ・・・?
『すまん、待たせてしまったな。』
訳が分からず、理由を尋ねようとした時だった、スピーカーから僕達の旦那様、一夏の声が聞こえてきた。
アメノミハシラの方を見てみると、I.W.S.P.を装備したストライクがこっちに向かって来ていた。
どうやら、彼も準備が出来たみたいだね。
「遅いよ~。」
『待ちくたびれましたのよ?』
『悪いな、準備に手間取ったんだ。』
僕とセシリアの言葉に、肩を竦めながらも答えつつ、彼はほんの少し笑っていた。
ホント、こういうやり取りって幸せだよね、どんな状況だったとしてもね♪
あぁ、そんな事考えてる暇じゃなかったね、今は聞かなくちゃいけない事があるんだった。
「ねぇ一夏、僕達とジェスの行先が同じって本当なの?」
『あぁ、ジェスに座標を教えて貰ったからな、間違いない。』
間違いない、か・・・、これでいよいよ分からなくなったなぁ・・・。
あれ・・・?待って・・・?
ロウが見つけた宇宙拠点が、元々ザフトの物だったって事なのかな?
そう考えれば彼の言ってる事も、僕達が考えてる事も間違いじゃなくなる。
なんだ、考えてみれば簡単な事だったね・・・。
『まぁ、行けば分かるさ、ザフトの大量破壊兵器がどんなものかってな・・・、行くぞ、時間が無い。』
そんな僕の気持ちを知ってか知らずか、彼はそう呟きつつもストライクを先行させた。
『あっ!待ってくれよ一夏!!』
置いて行かれると思ったんだろうね、ジェスは慌てて彼の後を追いかけて行く。
まぁ、付き合いがまだそれほど深い訳じゃないし、先に行かれるとそう感じちゃうのも無理ないかな。
『シャルさん、私達も参りましょう?』
そんな彼等の様子を笑いを堪えながら眺めていると、僕が止まったままなのを訝しんだのか、セシリアが通信を入れてきた。
あはは、ボーっとしすぎてたかな?何があるか分かんないし、気を引き締めないとね。
「うん、行こっか。」
盟友の言葉に頷き、僕はバスターを動かし、デュエルと肩を並べながらも彼等の後を追った・・・。
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次回予告
一夏達に連れられ、取材先に向かうジェスは、そこで自分のアストレイを抱く者達と巡り合う
次回機動戦士ガンダムSEEDASTRAY X INFINITY
新たな旅立ち 後編
お楽しみに