機動戦士ガンダムSEEDASTRAY X INFINITY 作:ichika
sideセシリア
アメノミハシラを出てから実に数時間と言ったところでしょうか、私達は目的の宙域に辿り着こうとしていました。
道中ではそれなりにお話しが出来ましたわね、ジェスさんの質問にお答えしたり、一夏様との馴れ初めやプライベートの事など、途中より惚け話しかしていない様な気もしますが、充実した時間であった事は確かでした。
ですが、それを思い返す事は後に致しましょう、今はやらねばならぬ事があるのです。
『セシリア、シャル、聞こえてるか?』
そんな事を考えていると、ストライクとの通信回線が開かれ、一夏様の声が聞こえて参りました。
私とシャルさんを指名したという事ですので、何をするべきかは直ぐに理解できました。
「はい、聞こえておりますわ。」
『コンタクトを取ってくれ、でしょ?一夏の考える事なら僕達が一番分かってるからね。』
あらら、シャルさんにセリフを盗られてしまいましたわね、まぁ、気にする程の事では無いのですが。
『流石だな、頼んだぞ?』
私達の言葉を可笑しく思われたのでしょうか、声のトーンが何時もより揺らいでいるのが分かります。
ふふっ、やはり、こういう時間は愛しいモノですわね。
「お任せくださいませ、私は劾さん達にコンタクトを取ってみますわ。」
一夏様との通信を切り、私は以前に教えて頂いたチャンネルに合わせ、通信回線を開きました。
「こちらアメノミハシラ、セシリア・オルコットです、サーペント・テールの皆さん、応答を願います。」
直ぐに呼びかけに応じてくれるとは思っておりません、少し待つと致しましょう。
そう考えた私の視界には、虚空に佇む一隻の船の姿が映っていました。
その船は、ジャンク屋組合所属のジャンク船、リ・ホーム。
シャルさんがその命を救われ、私も御世話になった船・・・。
その船を見ると、どうしようもない私とシャルさんを姉と呼んで下さった、もうこの世にいない弟の事を思い出し、今でも胸が締め付けられる様な感覚を覚えます。
ですが、それを乗り越えねばと、最近は思える様になりましたの。
私には一夏様とシャルさんが共にいて下さいます、だからこそ、私達は三人で支え合って生きて行くのです、そのためには、この胸の痛みも受け入れませんと、ね・・・。
『こちらサーペント・テールの叢雲 劾だ、良く来たな、セシリア。』
そんな事を考えていますと、劾さんからの通信が入ってきました。
どうやら、ブルーフレームで周辺警護に出ていた様です、すぐに機体がこちらに近付いて来られました。
「お久しゅうございます、劾さん、今日はロウさん達の御見送りと、とある御方の警護で参りましたの。」
『そうか、お前達の推薦ならば怪しいヤツではないのだろう、着いて来い、ロウに取り次ごう。』
私が説明いたしますと、劾さんは頷きながらも機体を反転させ、リ・ホームへと進んで行きました。
どうやら、詳しく調べると言う事はしないおつもりなのでしょう。
「かしこまりましたわ、一夏様、進入許可が下りましたわ、このまま進んでくださいな。」
劾さんに返答しつつ、私はストライクに通信を入れ、許可が下りた事を報告、一夏様達の先導を開始しました。
『了解した、ジェス、着いてこいよ。』
通信が切れると同時に、ストライクとバスター、そしてジェスさんが乗っているレイスタが私の後を追い、船へと向かっていました。
さて、後は自分のやるべき事をやるだけですわね。
あぁ、忘れる所でしたわね、妹達との再会を、ね・・・♪
sideout
noside
「ロウ・ギュール、久し振りだな。」
ジャンク船、リ・ホームに着艦した四人は機体から降り、出迎えの為に格納庫にやって来ていたロウ・ギュールやサーペント・テールの面々と対面し、ジェス以外の者達は其々に再会を喜んでいた。
そんな彼等を横目に、一夏はジャンク屋、ロウ・ギュールに歩み寄りながらも握手の為に右手を差し出していた。
「久し振りだな一夏、元気そうで何よりだぜ。」
差し出された手を握りながらも、ロウは知り合いとの再会を喜ぶ様な素振りを見せつつも、一夏の隣に立つジェスを見た。
「ところで、その兄ちゃんは誰だ?」
「紹介が遅れたな、こちらはフリージャーナリストのジェス・リブル、ザフトの巨大兵器の取材に来たんだと。」
交わされていた握手を解きつつ、一夏は自身の背後に控えていたジェスを前に立たせつつ紹介していた。
「ジェス・リブルだ、ジェスって呼んでくれ。」
「俺はロウ・ギュール、ジャンク屋だ、よろしくな。」
少々警戒しているのだろうか、ジェスの口調は固く、一定の距離を置こうとするかの様な態度だった。
それを見てか、ロウと一夏は顔を見合わせて苦笑しつつも、今はそんな時では無いと互いに頷き合っていた。
「ロウ、早速で悪いが・・・。」
「分かってるさ、ジェスとか言う兄ちゃんにアレを見せてやってくれ、だろ?」
自分の言葉の先を予想し、すぐさま行動に移すロウの言葉に頷き、一夏はジェスに向き直った。
そんな彼等の間で交わされた何かが理解できなかったのだろう、彼は目を丸くするだけでどういう訳かと尋ねる事すら出来なかった。
『やぁ、一夏、久し振りだね。』
「うわっ!?」
そんなジェスのすぐ隣に、ホログラム体であるジョージが現れた。
唐突な出現に驚き、彼は大きく仰け反り、数歩後ろに下がりながらも胸を押さえていた。
心臓に悪すぎる、そう思っているのだろうか・・・。
「久し振りだなジョージ、此処にアレを映し出せるか?」
『もちろんだとも!』
そんな彼の背を、大丈夫だと言う風に軽く叩き、一夏はジョージにとある事を依頼し、彼もそれを快諾していた。
ジョージが手を広げると、何処かの映像が空中に投影される。
その光景に再度驚いたのか、ジェスは大きく目を見開きながらも、何が起こるのかと映像を注視していた。
そんな彼の目の前で、モニターの中の一点がさざ波を打った様に揺らめき、何か巨大な物体がその輪郭を現してゆく。
「・・・っ!?」
徐々にハッキリとした姿になってゆくそれを見たジェスは、声にならぬ声を上げ、瞳が落ちそうなほどに目を見開いていた。
彼が驚くのも無理はない、それは、人類を破滅の一歩手前まで追いやった悪魔の兵器だったのだから・・・。
「こっ・・・、コイツは最終決戦で使われた、ジェネシス・・・!?」
ジェネシス。
ザフトが第二次ヤキン・ドゥーエ攻防戦で使用した大量殺戮兵器である。
内部で核爆発を起こし、発生したガンマ線をミラーに収束、それを目標目がけて照射する。
その威力は凄まじく、理論上では、地表に直撃すれば、たった一射分の強烈なガンマ線により、着弾地点はおろか、気象変動などを引き起こし、地表の約80%もの生物を死に至らしめる、まさに直径十㎞クラスの小惑星が激突した際と同規模の被害を齎すのだ。
幸い、それは未然に防がれたものの、もし地球に撃たれてしまっていればと想像すると、あまりにも恐ろしい結末を迎えていた事だけは想像に難くない。
「・・・の、バリエーションだ、多分こっちの方が先に作られたんだろうけどな、今は俺達が拾ったからな。」
驚愕と共に零れたジェスの呟きに、ロウは補足するように話した。
彼が目を凝らすと、ジェネシスのあちらこちらにジャンク屋組合所有である事を示すマーキングが施されている事が確認できた。
何かの準備をしているのだろうか、ゆっくりとミラーが動いている事も確認できる。
「ザフトの巨大兵器・・・、本当にあったのか・・・、っ!?」
暫し呆然としていたジェスだが、何かに気付いたのだろうか、唐突にロウに詰め寄ろうとしていた。
「アンタ!これを使って何をするつもりなんだ!?」
「うるさい兄ちゃんだな・・・、俺はこれを本来の目的のために使うつもりさ。」
一夏に羽交い絞めにされながらも騒ぐジェスに、ロウは困った様な表情を見せながらも説明を続けた。
「本来の目的・・・?」
ロウの言葉の意味を測り兼ねたのだろう、ジェスは暴れる事をやめ、何処か訝しむ様な表情を見せていた。
本来の目的とは何なのか、ジェネシスを大量殺戮兵器としてしか知らない彼は、それ以外の可能性を見出せなかったのだろうか・・・。
「そうだ、宇宙船を外宇宙に押し出す加速器としてな!」
「なんだって・・・!?」
ロウの自信満々な答えに、ジェスは我が耳を疑っていた。
加速器とは何なのか、それが分からなかったのだろう。
ジェネシスは元々、それぞれ存在する波形の中でも一番遠くまで届くガンマ線の性質を利用し、帆を張った宇宙船に風に見立てたガンマ線を照射、推進剤を使用せずに加速するためのスターターの様な装置に過ぎなかった。
このシステムは、大いなる星の海原へと人類を旅立たせるという、探究心を、夢を実現するための装置であったが、それを兵器としてしまうあたり、人間の愚かさを象徴している気もするが、ここにいる彼等にはそんな事などどうでも良かった。
「まずは火星あたりに行こうと思ってる、大分昔に火星圏に移住した奴らがいるだろうしな。」
「はっ!何寝言言ってんだよアンタ、そんなの無理に決まってるだろ。」
そんなロウの言葉を、ジェスは鼻で笑っていた。
理論上は可能と言うだけで、それを実際に成した者はいない、それに加え、火星に辿り着けるかも怪しいのだ、彼にとってはそんなバカげた事をやろうとする意味は無いとでも感じたのだろうか・・・。
「なんで無理だって思うんだ?」
「えっ?それは・・・、常識的に考えて・・・。」
だが、ロウという男はそう考えなかった。
真っ直ぐな瞳で、ジェスの目を覗き込みながらもどうして無理なのかを尋ねていた。
そんな彼の言葉に困惑しながらも、ジェスは常識的に考えて出来る訳がないと口にしていたが、ロウの言葉の凄みに呑まれてしまったのか、嘲る様な色は既に消え失せていた。
「誰もこんな方法で火星に行ったことなんてないんだ、常識なんて意味ないぜ!それに、常識なんて枠に囚われてたら、面白くも何ともないじゃないか!」
「・・・っ!!」
その言葉にジェスは頭を叩かれた様な衝撃を受けた。
常識など何の意味も無い、誰もやった事がないのならば自分がその第一番になれば良いと、ロウはそう言い切ったのだ、それは彼の理解を遥かに超えるものだったのだから。
ロウがそう告げた直後、彼等と少し離れた場所で会話を弾ませていたセシリアとシャルロットが、劾と共に近づいてきた。
「ロウ、ルキーニから連絡が入った、ザフトが迫って来ているそうだ。」
「分かった、頼むぜ劾、俺はもう少しやらなきゃいけない事があるからな。」
「問題無い、お前の頼みだ。」
迎撃に出る積りなのだろう、彼はロウの言葉に頷きながらも、愛機であるブルーフレームへと向かって行った。
「一夏様、私達も迎撃に参りますわ。」
「恩返しのつもりでね。」
今だジェスを羽交い絞めにしたままの一夏に、セシリアとシャルロットが近付きながらも、迎撃に出る旨を伝えていた。
それは恐らく、ロウや劾に対する恩返しの一つと考えているのだろう、彼女達の瞳にはそういった色が見て取れた。
「分かった、俺はジェスの護衛に残るよ、お前達も気を付けてくれよ?」
「はい♪」
「勿論だよ、行ってくるね。」
彼女達の言葉に頷きながらも、愛する二人の無事を願い、一夏は二人を送り出す。
セシリアとシャルロットが恩返しをしたいと言っているのだ、彼に止める理由も、止める積りも無かったからだ。
「さってと、仕上げをやっちまうか!」
彼女達を見送り、ロウは発進準備の残りを終わらせるべく、レッドフレームの方へと向かって行く。
皆それぞれが、己がすべき事の為に動く中、ジェスは自分の胸が熱くなってゆくのを感じていた。
「(この男・・・、本気で火星に行こうとしてるのか・・・?馬鹿げてる、馬鹿げてるのに・・・、チクショウ・・・!なんでこうもワクワクしてるんだ・・・!?)」
自分がこれまで考え付かなかった事を、誰もそう出来ると思わなかった事を、今この瞬間にやってみようとするロウの姿に、彼は強烈なトキメキを覚えた。
そうだ、自分が撮りたかった画は、出会い、取材してみたかった人物は彼の様な人間ではなかったか。
そう気付いた途端、彼は自分が先程口走った決めつけや嘲笑が、何処か恥ずかしく感じてきた。
ジャーナリストが偏見を持ってはならない、その時点で、在るがままの事象を歪めてしまっているからだ。
だからこそ、彼は自分はそうならぬ様にと心掛けていたつもりだったのだが、まだまだ、先入観にとらわれていたのだと痛感しているのだ。
「なに呆けてるんだ、ジェス?」
「一夏・・・。」
呆然といていたジェスの肩を叩き、一夏は彼の顔を覗き込んだ。
その表情からは、彼を心配していると言うよりも、こういう奴等もいるんだと告げる様な色が見て取れたため、ジェスはまたしても言いようのない感覚を覚えた。
「俺・・・、ジャーナリスト失格かもな・・・、先入観に囚われてたなんて・・・。」
「そうだな、だが、しょうがないさ、誰もやった事の無い事をやろうとしてるなんて、出来っこないって思うからな。」
意気消沈と言わんばかりのジェスの言葉を、一夏は慰めるでも突き放すでもなく、ただ、淡々と人間とはそういう物なのだと語った。
そんな事は彼にも分かっていた、だが、それ故に自分もまだまだ未熟なのかと打ちひしがれているのだろうか・・・。
「けどな、最初はそれでも良いじゃないか。」
「えっ・・・?」
そんな中、一夏が唐突に言った言葉に、ジェスは驚きながらも彼の顔を凝視した。
「誰だって今まで生きてきた中で見て来たものがあるし、その中から学んだ事だって山ほどあるんだ、最初っからあるがままを見るなんて出来っこないんだ、そう出来る人間に、俺は会った事は無いね。」
「あるがままを見る・・・。」
彼の言葉を脳内で反芻する様に、ジェスはしみじみと呟いていた。
あるがままを見る、言うのは簡単だが行うのはそれなりに難しく、そして忘れがちになってしまう事である。
だが、一夏はそれでも仕方ないと言う、これまでの経験で人は成り立っているのだと。
「だからさ、気付いた時からやればいい、俺なんて・・・、気付いていても出来なかった事が数え切れないぐらいあるし、その数だけ・・・、後悔してるさ。」
「一夏・・・?」
苦い思いがあるのだろうか、歯切れ悪く語る彼の言葉を、ジェスは妙な心地で聞いていた。
だが、それを、他人の過去を窺い知れる程人間は万能ではない、故に彼は、彼の言葉に込められた想いを、そして痛みを感じ取った。
「後悔してもいい、お前はまだやり直せるんだ、俺と違ってな・・・、だから、お前はお前の信念を貫け、それが正しい事なんだから。」
「そうか・・・、それしかないんだよな・・・。」
一夏の言葉に、ジェスは何とも言えぬ感覚を感じ取ったのだろう、少々詰まりながらも頷き、自分が見定めるべき方へと視線を向けたのであった。
sideout
sideシャルロット
ジェネシスαから出撃した僕とセシリア、そしてサーペント・テールの劾さんとイライジャは、スラスター光が目視できる距離まで接近してきたザフトのMS部隊と向かい合っていた。
その光の数からして、こちらに接近して来ているザフトの部隊は二個中隊以上の数だと予想できた。
『凄い数のMS隊だぞ・・・、やれるのか・・・?』
目の前に迫って来ていたMS部隊の数に気圧されているのか、イライジャは何処か不安そうに言葉を漏らしていた。
僕はいい意味でも悪い意味でも、こういった大軍を相手にするのは慣れてるから何時もと同じ様に戦えば良いんだけど、傭兵とは言ってもこういう大軍を相手にする事は滅多にないと思われる彼では、流石に気が引けるんだろうか・・・。
『問題ない、俺達四人ならやれる。』
そんな彼の不安を払拭する様に、劾さんが通信を入れてきた。
四人って事は、僕達も戦力として信頼されてるって事だよね?
そういう事なら嬉しいね。
って、そんな余計な事考えてる暇なんてないよね、現に平然としてるけど狙撃タイプの機体がいたら、もう狙い撃たれていてもおかしくない距離なんだ、気を付けないと・・・。
『セシリア、シャルロット、援護は任せた、ビームには気を付けろ。』
『お任せくださいな。』
「了解しました、劾さんも気をつけてくださいね?」
僕達を心配してくれているんだろうか、劾さんから通信が入った。
まぁ、僕とセシリアが自分の意志で戦場に出たからって、僕達が死んだら一夏に合わせる顔が無いって思ってくれてるんだと思う。
劾さんもロウも、ミナさんも優しいからね、昔には無かった感情を向けられてるのが嬉しいな、なんてね・・・。
おっと、今はそんな事考えてる場合じゃなかったね、気を抜いたら、今度こそ本当に大好きな人達に会えなくなっちゃうんだ、気合入れないとね。
「さぁ、行くよバスター!」
ビームライフルとガンランチャーを超高インパルス砲形態に連結させ、全軍に先駆けて迫ってくる一機のゲイツに狙いを定め、トリガーを引いた。
高エネルギーの奔流は敵機に迫り、回避させる暇を与えずに頭部を破壊した。
うーん・・・、射撃の精度が少し落ちたかな・・・?
昔ならともかく、今はもう進んで殺そうとは思ってないけど、流石に落とす気で掛かったんだ、奪えたのが頭だけなのってどうなんだろうか・・・。
ううん、違うよね、今の僕が考えるべきなのは敵を倒す事よりも、友達を無事に送り出してあげる事なんだ、敵を落とせたとかなんて、今はどうだっていいんだ。
そう思い直した途端、ザフトのMS部隊が速度を更に上げ、僕達の方にビームやマシンガンを撃ち掛けながら向かってくるのが見えた。
どうやら、僕達を落とさないとジェネシスαを破壊できないと踏んだんだろうね、物量で勝ってる軍ならよく有りそうな力押しだね・・・。
でも、それは間違いなんだよね、何せ、こっちは最強の傭兵とその相棒、そして僕達がいるんだ、負ける気がしないね。
遠距離兵器を持っているバスターを先に落とすつもりなんだろう、こっちに数機のジンやシグーが向かってくるけど、セシリアのデュエルがビームライフルを撃ち掛けながらも迫り、左手に保持したビームサーベルですれ違いざまに二機のジンを切り裂いて行った。
劾さんとイライジャは僕達とは別方面の敵を引き付け、タクティカルアームズや手持ちのマシンガンで敵のMSを撃破していく様子が確認できた。
やっぱり、劾さんぐらいの力量があれば、どんな敵にも負けないんだろうね、僕達三人が向かって行っても勝てる自信が無いし・・・。
まぁ、味方になってくれてるなら、これ以上心強い人もいないだろうけどね!!
「まったく!証拠隠滅なんてくだらない事、やめにしてくれないかな!」
『あちらも仕事なのですよ、言っても止まりませんわ。』
ガンランチャーで迎撃しつつ悪態を吐くと、苦笑交じりの声でセシリアが突っ込みを入れてきた。
確かに、終戦協定をするにあたって、こんな大量殺戮兵器が残ってたらザフトが不利になるのは火を見るより明らかだ。
だからこそ、条約が締結される前に不都合な物は排除しておきたいのは分かるんだけどさ、よくもまぁ、二個中隊クラスで攻めて来れるよね。
そんな愚痴とも取れる事を考えながらも敵を攻撃していると、Nジャマーの影響で混線した通信からロレッタさんの戦況報告が聞こえてきた。
『ジェネシスαの反対側の宙域から新たなMS反応よ!』
やっぱり別働隊がいたんだ・・・!
劾さん達と正面からぶつかるだけだと消耗戦になるだけだからね、流石にもう一つ動かせる部隊を用意しておく事は当たり前だよね・・・。
『流石はルキーニ、正確な情報だ、高いだけはあるぜ、だが安心しな、もう手は打ってある、アイツならやってくれるさ。』
「アイツってまさか・・・?」
リードさんの口から発せられた言葉に、僕はある人物の姿を、そしてその愛機を思い出していた。
まさか、彼がここに来ているの・・・?
僕の勝手な想像かも知れないけど、もしそうなら・・・!
言葉に表せない感覚に突き動かされる様に、僕はバスターのスラスターを吹かし、ジェネシスαの反対側の宙域へと向かった。
僕がジェネシスαの反対側が確認できる場所まで来ると、星の瞬きと見紛う様な距離に、こっちに向かってくる敵機のスラスター光が瞬いているのが見えた。
もう間も無く射程距離になるけど、この距離だと当てる自信が無いなぁ。
でも、そんな事をする必要なんて無い、だって、僕以外にも味方はいるんだから。
機体のズーム機能を使用すると、先頭の一機が数発の銃弾を喰らって爆散するのが見て取れた。
この攻撃は間違いない、彼が好んで使った武器の銃弾だ・・・。
先手を撃たれた敵のMS部隊は、撃ってきた彼目掛けて銃弾を浴びせかけるが、その攻撃は光の壁に阻まれて四散した。
あの光はアルミューレ・リュミエール・・・。
やっぱり彼だ・・・。
『この程度の攻撃で、俺の、俺達のガンダムを・・・。』
スピーカーから、年若い青年の声が僕の耳に届いた。
透き通っているけども、何処までも自信に満ち満ちた声・・・。
煙が晴れ、そこには光の盾を左腕に広げたトリコロールのガンダムが、僕の弟が乗っていた機体が現れた。
特徴的だった背中のX字のドラグーンは撤廃され、今はギリシャ文字のΗに似たバックパックが装備されたドレッドノートだ。
『ドレッドノートイータを突破できると思うなよ!!』
ドレッドノートはパイロットであるカナード・パルスの言葉と共に動き、背中のバックパックをバスターモードへと変更、向かってくる敵に向け、核エンジンの恩恵を受けた超大火力ビームを撃ち掛けた。
回避しきれなかった数機のジンがそのエネルギーの奔流に呑み込まれ、漆黒の宇宙を爆発光で彩った。
だけど、まだまだ敵はいる、如何にスーパーコーディネィターであるカナードでも、数の面での劣勢は否めないだろう。
だから、彼にとっては不本意だろうけど、援護させてもらおうかな。
そんな事を考えつつも、僕はバスターの速度を上げながらも対装甲散弾砲を構え、ドレッドノートを狙おうとしていた敵機に向けて散弾を撃ち掛けた。
「カナード・パルス、こちらアメノミハシラのシャルロット・デュノア、援護するよ。」
『お前は、プレアの・・・!』
僕の接近に気付いたのだろう、彼は驚いた様な声を上げていた。
多分、プレアを死なせてしまった事に負い目を感じているんだろう、彼の声色からはそんな想いが感じ取れた。
「・・・、お前は俺を恨むか・・・?プレアを死なせた俺を・・・?』
「さぁ、どうだろうね、君を恨んでないと言えば嘘になるね。」
機体を背中合わせにし、周囲に展開する敵機を警戒しつつ、僕は言葉を発した。
プレアの命を縮める結果を生んだカナードを恨んでないと言えば、それは少なくとも嘘になってしまう。
それ自体は彼も分かっているだろう。
「だけど、恨んだ所でプレアはもういないんだ、だから、今を生きてる僕達がする事は、彼が望んだ事を、少しでも実現していく事じゃないかな?」
彼を殺す事でプレアが帰ってくるのなら、僕は喜んで昔の僕に戻って、カナードを殺しているだろう。
だけど、そんな事は有り得ない、夢や幻でしかない。
だったら、幻を追いかけるぐらいなら、今を、現実で彼が望んだ事を追いかける方が何倍も、何十倍も良い結果を生むだろう。
それに、憎み続けるのは疲れちゃうしね。
『プレアの想い、か・・・、そうだな、アイツの想いと共に、俺は在る!!』
僕が許したと思ったんだろうか、カナードは力強く頷き、ビームライフルを乱射しながらも敵機が犇めく方へと突っ込んで行った。
相変わらず、熱くなりやすいんだね。
「それで良いんだよ、カナード、君は僕みたいになっちゃダメだよ。」
全てを破壊して、友も仲間も失った、昔の僕みたいには、ね・・・。
だけど、今はその力を、友達の夢の為に使おうか。
それが出来る力なんだしね!!
そのために、僕はバスターのスロットルを開き、敵への攻撃を再開した・・・。
sideout
次回予告
旅立ちを見送るジェスは、ロウから特別な意味を持った機体を託される。
それは、彼の旅の始まりを告げる。
次回機動戦士ガンダムSEEDASTRAY X INFINITY
アウトフレーム
お楽しみに。