機動戦士ガンダムSEEDASTRAY X INFINITY 作:ichika
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「南米・・・?切り裂き・・・、エド・・・?」
「あら?どうかしたのかしら?」
自分が告げた行き先を聞いたジェスが固まった事を受け、マティアスは何処かからかう様な笑みを浮かべながらも彼に問うた。
まさか怖気づいた訳ではあるまい、ジェスの表情からは恐怖など何一つ見受けられなかったのだから。
「あ、いや、何でもない・・・、ある人が予測した場所だったんだ・・・。」
驚愕から立ち直ったジェスは、自分が固まっていた理由を話した。
「ある人?それは誰の事なのかしら?」
ジェスにそれを示唆した人物に思い当たる節が無かったのだろう、マティアスは怪訝の表情を浮かべながらも問いかけていた。
「それは・・・。」
「そこから先は俺が説明させて頂きたい、サー・マティアス。」
ジェスの言葉を遮る様に発せられた声に、一同は扉の方へと振り返った。
そこには、独特なデザインをしたダークパープルを基調とした制服に袖を通した青年が立っており、彼等を真っ直ぐ見据えながらも彼等に近付いて行くようにゆっくりと歩いていた。
「あら?貴方は?」
「初めまして、サー・マティアス、俺の名は織斑一夏、アメノミハシラのロンド・ミナ・サハクの配下です、以後お見知り置きを。」
自分の名を尋ねるマティアスに答える様に、一夏は彼の前まで歩み寄り、膝を付いて頭を垂れた。
それが彼なりの義の通し方なのかは分からぬが、敵対する意思は無いと示すには最善の方法なのだろう。
「オーブの五大氏族のサハク家かしら?そんな大物の使いが何の用?というより、何故この場所が分かったのかしら?」
何故五大氏族の使いがいるのか理解できなかったのだろう、マティアスは怪訝の表情を浮かべながらも彼に尋ねていた。
「以前、そこにいるジェスにアメノミハシラでお会いしまして、此度のジェネシスαの件も、自分がジェスの護衛を務めましたので、ご挨拶とご報告を兼ねてお伺い致しました。」
「なるほど、貴方があのストライクのパイロットなのね、映像を見せて貰ったわ。」
一夏からの説明に納得する部分が有ったのだろう、マティアスは何処か納得した様な笑みを浮かべながらも彼の続く言葉を待っていた。
「恐縮でございます、では、本題に移らせて頂きたく存じます、お聞き受け願えますか?」
「えぇ、構わないわよ、何故貴方がここに来たのか、その理由を、ね?」
常々気になっていたのだろう、一夏がわざわざ自分の所まで来た理由が・・・。
「次の南米への取材に、護衛として参加させて頂けないでしょうか?もちろん、自分はMSを持っていますので、機体の手配は必要ありません。」
顔を上げ、マティアスの瞳を真っ直ぐ見据えた彼の目に、冗談めいた色は、全く窺う事は出来なかった。
それを察したのだろう、マティアスは浮かべていた笑みを消し、彼に疑問を投げかけた。
「あら?どうしてアメノミハシラのエース君が彼の護衛をしようだなんて、一体どういう風の吹き回しなのかしら?」
「ハッ、それには訳がありまして・・・。」
彼の問いに答えるべく、一夏はここに至る経緯を語り始めた。
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「ジェス・リブルを連れて、何処へ行っていたのだ、一夏?」
ジェネシスαから帰投した一夏達を待ち受けていたのは、一夏の直属の主、ロンド・ミナ・サハクの何処かからかう様な笑みだった。
何処へ行っていたなど知っている様だったが、何故ジェスが行動を共にしているのか疑問に思ったのだろう。
「ジェスの仕事先が俺達が出向いていた場所と同じだったんだ、護衛も兼ねて同行してもらった、別にどうこうした訳じゃないさ。」
別に自分は何もしていないと言う様に説明した後、彼はそれにと言葉を続けた。
「ジェスに死なれたら、俺もアンタも寝覚めが悪かろう?」
「そうだな、御勤め御苦労と労うべきか?」
問い掛ける様に笑う一夏の言葉に、ミナはその通りだと笑いながらも答えていた。
それを聞いたジェスは縁起でもないと顔を顰めたが、既に過ぎた事だ、何を言っても自分が護られた立場だと分かっていたし、何も言う気は起きなかった様だ。
「ところで、ジェスさん、補給が済んだ後は如何される御積りですか?」
そんな彼等の事を微笑ましく思いながらも傍観していたセシリアがジェスに近付き、この後はどうするのかと尋ねていた。
「あぁ、補給だけさせて貰ったら、直ぐに地球に降りるよ、この件をマティアスに報告しないといけないし、仕事があるかもしれないしさ。」
「そっか・・・、ジェスも大変なんだね・・・。」
まだ仕事が待っているというジェスの言葉に、それを聞いていたシャルロットは驚嘆したように呟いていた。
自分達も訓練や雑務等でそれなりに忙しい毎日を送っているが、彼は毎日が修羅場の様子を間近から撮り続けている様なものだ、過酷さは自分達以上のものがあるかも知れぬと感じたのだろう。
「ジェス・リブル、今、マティアスと言ったか・・・?」
一夏と話をしていたミナが驚いた様にジェスを注視し、彼が語った人物の名を詳しく尋ねた。
どうやら、その名に心当たりが有るのだろうか・・・。
「あ、はい、俺のクライアントはサー・マティアスですが、どうしたんですか?」
ミナの問いの真意が分からなかったのだろう、ジェスは困惑したような表情を見せながらも、彼女の言葉を待った。
「やはり、あのサー・マティアスか・・・、途轍もない大物だな・・・。」
「ミナさん・・・?マティアスとはどの様な方なのですか?」
一人で納得している様なミナに説明を求める様に、セシリアがおずおずと尋ねていた。
そんな彼女の後ろでは、シャルロットも気になると言わんばかりの表情をしていたため、ミナは自分が知る限りの情報を語り始めた。
「サー・マティアス、裏社会において、彼以上の情報収集能力を持つ者はいないとまで言われる男だ、その腕はルキーニをも凌ぐと言われているが、その人となりを、過去をすべて知る者はいない・・・、そんな人物がジェス・リブルの雇い主だったとはな・・・。」
「そんな人が・・・?」
彼女の説明に、セシリアとシャルロットは、驚愕の表情でジェスを注視していた。
それと同時に思った事だろう、この世界にはどれほどの規格外な人物達がいるのか、と。
彼女達がこれまで出会った劾やロウ、カナードやプレア、そしてミナにしても、自分達が知る以上の力、能力を持っていたが、それを上回る名声を持つ者の存在がにわかに信じられないのだろう。
「これは我々としても、対応を考えねばな・・・、一夏。」
「あいよ、なんだ?」
暫し考え込む様な表情を見せた後、ミナは傍らでドリンクボトルに口を着けていた一夏を呼び、彼が口を離すと同時に言葉を紡いだ。
「ジェス・リブルに付いて地球に降り、次の取材地への護衛同行の許可をサー・マティアスに貰って来い。」
「「えぇっ!!?」」
彼女の指示に驚いたのは当の一夏ではなく、彼の恋人であるセシリアとシャルロットであった。
だが、彼女達の反応は当然と言えるだろう、もし一夏だけが地球に降りるとしたら、また何か月離れ離れになってしまうか分かった物ではない故に驚愕と非難を籠めた叫びをあげたのだ。
「なんでお前達が驚くんだ・・・、ただの挨拶回りだろ?アメノミハシラはサー・マティアスに敵対しないってアピールするためのな?」
「それは・・・。」
「そう、だけど・・・。」
彼女達の反応の真意に気付いていた一夏は苦笑しながらも説明しつつ、何処か嬉しそうに微笑んでいた。
自分が心の底から愛している彼女達が、彼と離れる事を嫌がっているのだ、男の身分としてはこれほど無い幸せでもあるのだろう。
「だが・・・、行先によっては俺だけ手に負えんかもしれないな・・・、そこん所どうだい、ミナ?」
「それも一理あるが・・・、お前達はこういう時に限って妙な知恵を発揮するのだな・・・。」
一夏の問いに納得の表情を見せながらも、ミナは彼の真意を見抜いていた。
自分一人では手に余ると言いつつ、その本意はセシリアとシャルロットも同行させようとしているのだ、それに気付けば苦笑したくもなるだろう。
「まぁよい、ウェイドマン整備士長に地上用の機体の調整を依頼しておけ、デュエルとバスターは地上では何かと不便だからな。」
今だ不満げな表情を浮かべているセシリア達に向き直りながらも、ミナは機体の用意を命じた。
それは他でもなく、彼女達の動向を許可したに他ならなかった。
「はい!」
「でも、なんでバスターじゃダメなんですか?調整次第じゃ地上でも十分に戦えますよ?」
セシリアは彼女の言葉に表情を輝かせながらも礼を述べていたが、何故自分の愛機を持って行ってはならないのか理解できなかったシャルロットは首を傾げ、ミナに問うた。
「地球じゃ重力が有るからな、I.W.S.P.装備のストライクなら兎も角、デュエルとバスターはサブフライトシステムが無いと飛べんだろ?」
彼女の疑問に答えるように、一夏はデュエルを指さしながらも答えていた。
彼の言葉通り、大出力スラスターを搭載しているストライカーを装備しているストライクならば、短時間ながらも滑空は可能であろう。
だが、デュエルとバスターはその機体構造上、大型のスラスターを装備していないため、出来てもジャンプ程度の跳躍だ、正直言って空戦や移動には大きな制限が掛かっている。
「それだけではない、恐らく次の戦場は、バスターにとっては鬼門だ。」
「どういう意味ですか?」
バスターでは役に立たないという様な主の言葉に、メインパイロットであるシャルロットはその美しい顔にありありと苛立ちの色を浮かべていた。
誰でも、自分の愛機を貶されて快く思わないだろうが、ミナの言葉には別の意味があったのだ。
「私がサー・マティアスであるならば、次にジェス・リブルに行かせる場所は、南米だ。」
「南米・・・?」
自分を見ながらも行先を予想する彼女の言葉に、彼は何故南米なのかと尋ねたそうな表情を浮かべていた。
それもその筈だ、彼は依頼された場所に飛び、そこの現状を撮影する事が仕事ではあるが、何か根拠がなければ素直に行く気が起きないのだろう。
「≪切り裂きエド≫と呼ばれる連合のトップエースが、連合を脱走し、南アメリカ合衆国の独立戦争に加担している、サー・マティアスなら、この様な大事を見逃す筈も無かろう。」
「連合のエースパイロットが、ですか・・・?」
トップエースと呼ばれたパイロットが脱走した事が理解できなかったセシリアは、僅かに驚いた様な表情を見せながらも彼女に尋ねていた。
それもその筈だ、地球連合軍の中でそれほどのパイロットまで上り詰められれば、将官は不可能でもそれなりの部隊を任される左官には成れたのだ、何故その可能性を捨ててしまったのか、彼女には理解できなかったのだ。
「もっとも、その理由は本人に直接会えば判るだろう、話を戻すぞ。」
話が逸れた事に気付いたミナは軽く咳払いし、何故バスターが使えぬのかという答えを語り始めた。
「今や地球は温暖化の影響が如実に現れている、だが、都市や工場区域の拡大によって酸素を供給する場所が削られている、故に南米のアマゾンは地上の酸素供給には欠かせぬ地域でもある、そんな場所でバスターの様な大火力MSを使えば、掛け替えのない森林地帯が忽ち焼失してしまうのだ。」
「あっ・・・。」
ミナの指摘に、シャルロットは場所が場所なのだと気付いた様だ。
現に、南アメリカのアマゾン地帯は地上最大の森林地帯であり、連合、ザフト両軍から永世中立地帯と定められている事からも、森林の焼失は地球にとってだけではなく、そこで戦闘を行った国家にとっては支持率の低下を招き、戦争を続ける事が困難になるなど言った、政治的要因も絡んでくるのだ。
いくら私兵扱いとは言えども、アメノミハシラはオーブの一部には変わりない上、そこに所属するシャルロットが森林を焼けば、間違いなくオーブへの批判は高まり、一つの国として立ち直る事は更に困難となるのだ。
それが理解できたが故に、シャルロットは食い下がる事をやめ、自身の早計さを悔やむように俯いていた。
「そう言うことだ、シャルには申し訳無いけど、ここは堪えてくれ、また次の機会にバスターで降りれば良いじゃないか?」
「うん・・・、ごめんね・・・。」
悄気る彼女の肩を抱きながらも、一夏は優しく言葉を投げ掛け、シャルロットを慰めていた。
彼とて、大事な仕事に愛機以外の機体で行けと言われれば素直にyesとは答えられないという心情がよく分かっていた、故にフォローを欠かさなかったのだ。
「しかしなぁ、飛べる機体と言えばレイダーしかないんじゃ無いか?どうするんだ?」
アメノミハシラにある空戦能力を持ったMSがレイダー一機しかない事を知っていた彼は、もう一機用意するなら何を宛がえばよいのかとミナに尋ねていた。
彼の言う通り、彼はストライクに乗ればいいとして、セシリアとシャルロットは愛機を持って地上に降りれず、アメノミハシラに置いてあるMSを借りる以外に無いのだ。
しかし、アメノミハシラには空を飛べるMSがレイダーしか置かれておらず、もう一機は必然的に宙を飛べないMSに限られてくるのだ。
厳密に言えば、天ミナも大気圏内での飛行も可能だが、その外見故に目立つ上に、主の乗機を借りて行く訳にもいかないのだ、最初から頭数に入れない方が賢いと言う物だ。
「なに、調整次第でどうとでもなる、準備が完了し次第、地球に降下し、ジェス・リブルに同行しろ、実地のデータ集めにはちょうど良い機会だ。」
気にする事では無いと言いつつも、ミナは手を掲げ、一夏達に指令を下した。
どうやら、敵対するつもりはない意思表示と、大気圏内でのデータ取りが目的の様だ、彼女の口調からは良い機会が巡って来たとばかりの色が見て取れた。
「休む暇無し、か・・・、了解、すぐさま取り掛かろう。」
そんな彼女の思惑に気付いた彼は神妙に頷き、自分の機体へと向かって歩き始めた。
どうやら彼も彼で、良い訓練の機会とでも思ったのだろう事が見て取れた。
そんな二人のやり取りを見ていたセシリアとシャルロットも、機体の件を相談するためにジャックの下へと急いだ。
何せ、初の地球での任務だ、準備は疎かにはできないのだから・・・。
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「と、言う事がございまして、ロンド・ミナ・サハクがサー・マティアスに協力する事の証として、俺がここに使わされたと言う事でございます、勿論、それ以外の下心も抱えていると考えて頂いて構いません、事実、ミナもそう考えておりますので。」
アメノミハシラでのやり取りを語り終えた一夏は頭を垂れ、如何なる処遇がやってくるかとマティアスの言葉を待った。
「なるほど・・・、流石はロンド・ミナ・サハク、情報を入手するのが早いわね、まさかこういう形で貴方を接触させてくるなんて、ね?」
納得した様な表情を見せながらも、何処か値踏みするような目で、マティアスは彼を見ていた。
それもその筈だ、敵対関係に無い組織同士とは言えど、今まで何の接触も無かった組織同士だ、それぞれ何らかの思惑を抱えていて当然だ、警戒しているのが妥当と言うべきだろう。
「はっ、彼女とてアメノミハシラのトップ、これから先の事を鑑みれば、サーの御力が必要になってくると考えたのでしょう、自分は彼女に近い存在ゆえ、敵意が無いと示す為に遣わされたのであります。」
「そう・・・、じゃぁ、貴方をここで始末したら?」
「アメノミハシラ全軍を敵に回すとお考え頂きたい、もっとも、彼女は目指すべきモノのため、戦力を失うのを嫌い、今はなるべく戦いを避けているところではありますが・・・。」
自身の言葉に質問された言葉に、一夏は少々勘弁してほしいと言う表情を浮かべながらも、全面抗争になると答えていた。
もっとも、それはそうなっては欲しくないと言う色が窺える様な言葉であったが・・・。
「良いでしょう、私もアメノミハシラを敵に回すのは避けたいからね、ジェスの事、頼んだわよ。」
利害関係の一致か、それとも別の思惑か、マティアスは暫し考え込む様な表情を見せながらも、彼に同行を許可していた。
「はっ!この織斑一夏、必ずやジェスを護ってみせます。」
「えぇ、それじゃあジェス、これを持って早速南米に飛んでちょうだい。」
深々と頭を垂れる彼の姿勢に微笑み、一夏のすぐ傍に立っていたジェスを呼びつけた。
ほぼ蚊帳の外に置かれていた彼だったが、ハッと我に返り、マティアスが差し出したカードの様な物を受け取った。
「それは南アメリカ合衆国政府からの取材許可証よ、それがあれば≪切り裂きエド≫本人に取材が出来るわ。」
「南米政府からか?よくそんな許可が下りたな・・・。」
「あちらさんも宣伝したいんでしょ、自国の英雄ってモノをね?」
思いがけない物を渡された彼は感心した様な表情をしながらも、自身の雇い主であるマティアスを見ていた。
それと同時に思った事だろう、自分のクライアントは一体どれほどの脈を持っているのか、と。
「分かったよマティアス、すぐに準備する、けどな・・・!」
しかし、今はそんな事を気にしている場合ではないと感じたのだろう、ジェスは彼に対して頷きながらも、露骨に嫌そうな表情でカイトを見た。
「一夏がいてくれるんだ!アンタは来なくていいからな!!」
どうやら、先程の一件でカイトに対して、ジェスは相当な悪印象を抱いたようだ、一夏がいるから付いて来るなと叫んでいた。
「今回の仕事は俺が出る程じゃないさ、手間を掛けさせるなよ、野次馬ジャーナリストさんよ。」
「そうしろ!行こうぜ一夏!」
お前の事など気にしていないと言わんばかりのカイトの言葉に、ジェスは更に顔を顰めながらも部屋の外へと出て行った。
「相変わらず、自分の感情を素直に出せる面白い奴だな・・・、羨ましい限りだ・・・。」
他人から見れば、何とも感じが悪いとも取れる彼の態度だったが、それは自分の本音を隠せぬ故だと知っていた一夏は苦笑しながらも、誰に対しても自分に素直なジェスを純粋に好ましく思っていた。
それが、自分が失ってしまっているモノの一つだと気付いているのだから・・・。
「それでは行って参ります、サー・マティアス。」
「えぇ、あの野次馬さんの手綱、貴方に預けるわね、織斑一夏?」
マティアスの言葉に頷き、彼は先に出て行ってしまったジェスを追う様に部屋を後にした。
その様子を見送りながらも、カイトは彼等の姿が見えなくなった後、自分の雇い主に尋ねた。
「・・・、あぁは言ったが、あの男に任せていいのか?」
どうやら、一夏の事を、ひいては彼の思惑について思う所があるのだろう事が、カイトの表情からはうかがい知る事が出来た。
「さぁ?完全に信頼してる訳じゃ無いけど、ジェスがあそこまで信頼を寄せてるんですもの、彼に任せるしかないでしょう?」
「そりゃ・・・、そうだがなぁ・・・。」
心配するなと笑うマティアスの言葉に、彼は今だ渋面を崩さなかった。
主が良しとしている以上、彼も従うしかないのだが、何か思う所があるのだろうか・・・。
「さては、ジェスのコト、心配してるわね?素直じゃないんだから?」
「お、おいおい、よしてくれよ、誰が心配なんかするかよ。」
からかう様に尋ねたマティアスの言葉を、彼は冗談は勘弁と言う風に答えていた。
「あらら、素直じゃないわねぇ、まぁ、見ていましょう、ジェスと彼が、アソコでどうなるのかを、ね?」
残念と言う風に軽妙に笑いながらも、その次の瞬間にはその笑みは冷たい物へと変わった7。
それは、これから先に起きる何かを知っているのか、それとも、別の何かなのかは、誰にも分からなかった・・・。
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南米大陸の山岳部と森林地帯の狭間にある開けた場所に、一人の女性がマイクを手に持ち、自身の目の前に置かれているカメラを見据えながらも佇んでいた。
よく周囲を見渡せば照明やレフ板、音響機材やヘアメイク担当と思しき者もチラホラと見受けられるため、何処かしらの撮影隊だと推察できた。
「C.E.71年11月、地球連合の一部であった南アメリカ合衆国が独立を宣言しました、これにより、独立を認めない地球連合との武力衝突が発生、戦争へと発展しました。」
女性の口から語られる内容から推察するに、彼女達は報道関係者であり、南米で起こっている戦争の取材をしに来ているようだ。
「元はと言えば昨年の大戦開始時に連合最大勢力である大西洋連邦が南アメリカ合衆国を武力で併合した事に端を発する問題ですが、同族同士での殺し合いを行うナチュラルが如何に野蛮で原始的な種族である事を証明する出来事であると言えるでしょう。」
その内容は、今起こっているありのままを語っている様にも聞こえたが、時折、ナチュラルを侮蔑する様な言葉も聞こえており、ある種、コーディネィターを、その国家であるプラントに対するプロパガンダの様でもあった。
「以上、現場よりベルナデット・ルルーがお送り致しました。」
「・・・、はいOKです!!お疲れ様でした!」
「お疲れ様。」
自分のレポートは終わったと言葉を切った彼女に、ちゃんと撮れたと伝える様に、カメラマンは手でOKサインを出し、それを見た彼女は自身のために用意されていた椅子に腰掛けた
それを認めたヘアメイク担当が彼女の背後に回り、髪型のセットを行っていた。
それをヘアメイクに任せた彼女は一息つく間もなく手帳を開き、何かを書き込んでいた。
恐らくは予定を確認しているだけではあるまい、彼女とてプロの報道関係者だ、自分の放送した内容での話し方、立ち振る舞いなどを振り返り、次に繋げるためのものなのだろう。
「ルルーさん、申請していた例のインタビュー、南米政府からの許可が下りましたよ。」
「ホントに!?」
そんな中、何かが書かれたボードを持った男性が彼女に近づき、申請していたインタビューの許可が下りたと告げていた。
その言葉に、ベルナデットは心底嬉しそうな反応を見せながらも頷いていた。
どうやら、この取材に何か特別な感情を抱いているのだろう、彼女からはそんな思いがにじみ出ていた。
「いよいよご対面ね、南米の英雄≪切り裂きエド≫と、ね。」
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次回予告
目的地に向かうジェス一行だったが、その道は長く、険しいものだった。
次回機動戦士ガンダムSEEDASTRAY X INFINITY
南米の英雄 中編
お楽しみに。