機動戦士ガンダムSEEDASTRAY X INFINITY   作:ichika

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南米の英雄 後編

noside

 

ジェス達インタビュアー一行は、南米軍の兵士に案内され、とある部屋の前までやって来た。

 

その部屋にこそ、前大戦において、数多くのザフト兵を薙ぎ倒し、僅かな期間でトップエースと呼ばれるまで至った男が待っているのだ。

 

誰も彼と対峙した事は無かったが、その戦果や二つ名から、かなり陰湿で残忍な性格の持ち主なのかもしれないと考えている彼らの顔には、緊張の色が濃く滲み出ていた。

 

何せ、失言でもしようものなら命はないかもしれぬのだから・・・。

 

「どうぞ中へ。」

 

案内役の兵士がドアを開けると同時に、ジェスとベルは息をのみ、部屋の中を覗き込んだ。

 

「よぉ!こんなトコまでよく来たな!まぁ、自分の部屋だと思って寛いでくれよ。」

 

そんな彼等を出迎えたのは、とても陽気な男の声だった。

 

一瞬何が起きたのか分からなかった二人は硬直するが、その人物が取材対象であった事に気付き、再度目を丸くしていた。

 

改めてへやを覗くと、ハンバーガーを片手に手を振る、ソファに腰掛けた褐色黒髪の男が彼等を出迎えた。

 

そう、彼こそが≪切り裂きエド≫の二つ名で呼ばれる元連合のトップエース、エドワード・ハレルソンだったのだ。

 

「まぁ、立ち話も何だし、適当に座ってくれよ。」

 

「「はい。」」

 

ソファーに腰掛けるよう勧める彼の申し出に頷きつつ、二人はエドと向かい合う様にソファーに腰掛け、それぞれの取材道具を取り出した。

 

その際、ジェスは『8』を自分とベルの間に置き、録画モードでスタンバイさせていた。

 

「それにしても・・・、綺麗な嬢ちゃんと・・・。」

 

「まぁ♪」

 

綺麗な女性と言われて嬉しいのか、ベルは表情を綻ばせていた。

 

綺麗と言われ、悪い気になる女性はまずもっていないだろうが、彼女もその例に漏れなかったようだ。

 

「汚い兄ちゃん・・・。」

 

「す、すみません・・・。」

 

そんな彼女とは対照的に、長い時間をかけてここまでやって来たジェスは、着の身着のままであったために、何処か申し訳なさそうな表情を浮かべていた。

 

彼とて理解しているのだ、クライアントを前にしてみすぼらしい恰好は無礼であると・・・。

 

「・・・っと、絶世の美女二人を侍らせた色男、か?」

 

そんな彼等を順に眺めたエドは、二人とは違い、壁際で待機している一夏達三人を眺めた。

 

絶世の美女と称されたセシリアとシャルロットは、悪い気はしないとばかりに微笑みながらも一夏にもたれ掛り、彼もそれに応じて二人とより密着した様な体勢になった。

 

彼等の表情は幸せその物と言うべきであり、お互いの想いの深さを垣間見せていた。

 

「ったく、見せ付けやがって・・・、妬けちまうだろうが、ま、女は綺麗じゃないと困るが、男は汚かろうが何だろうが構いやしない、俺も人の事言えたカッコじゃないからな。」

 

そんな三人の様子をからかう様に笑いながらも、彼は自虐なのか何なのか分からぬジョークをかまし、声を上げて笑っていた。

 

(『これが≪切り裂きエド≫と呼ばれた男・・・?』)

 

そんな彼の姿を見たジェスやベルナデット、そしてセシリアとシャルロットは狐につままれたかの様に目を丸くしていた。

 

まさか、連合のトップエースで≪切り裂き≫という、陰惨なイメージが付き纏う二つ名を持った男が、これほどまでに高らかに声を上げて笑っているとは思わなかったのだろう。

 

「おっと、時間が無いんだった、二人いっぺんにで良いよな?」

 

「えぇ・・・。」

 

「勿論!」

 

インタビューが待っている事を思い出したエドは、気を取り直すかのように手を叩き、目の前に座るジェスとベルに対し、同時にインタビューを行って良いかと尋ねていた。

 

それを断るわけにもいかない二人は、それぞれの想いを滲ませながらも頷いていた。

 

「(何よ・・・、全然イメージが違うじゃない・・・、前大戦でコーディネィターを苦しめ、今はたった一人で連合に叛旗を翻したパイロットが、こんなにも軽薄な男だったなんて・・・、そんなのダメよ・・・!彼には〈英雄〉であって貰わないと・・・、人々の目を引くニュースにならないわ!)」

 

戦略や政治的思惑を尋ねるが、エドは軽妙に笑いながらもジョークを交えて質問に答えていた。

 

そんな彼の態度に、ジャーナリストであると同時に、不特定多数の人々に情報を届ける報道を、それもプロパガンダを行うに等しいキャスターとしての面も持ったベルは、失望とも、落胆とも取れる感情を持て余していた。

 

情報を伝える事は勿論彼女の仕事だが、そのためにはまず、何よりも人々の目に留まる様な華々しさや、現実離れした事柄を求めなければならない。

 

そうでもしなければ、喩え報道したとしてもただ日常の中に流れる音と同じ様に、それは流されて消えて行ってしまうのだ。

 

それだけに、たった一人で戦う男の姿が、世間が描く英雄像とかけ離れすぎていては何の意味も無い、そう断じた様だ。

 

だが・・・。

 

「(なんだよ・・・、全然イメージが違うじゃないか・・・!≪切り裂きエド≫がこんなにも面白い男だったなんて・・・!これだよ・・・、これだから取材はやめられないんだ・・・!!この事を、世界中の皆に教えてやりてぇ!!)」

 

ベルが取材を行う隣でカメラのシャッターを切り続けるジェスは、自身の胸の高鳴りを堪えるのに必死だった。

 

彼にとってのジャーナリズムは、そこで起こった事をそのまま世界に広める事にあり、そこの人間に対し、人々が注目するか否かなど考えていない。

 

ただ愚直に、そこでの体験を、出会った人物のあるがままを伝える事が、彼自身の使命だと考えているのだ。

 

同じジャーナリストでも、利益や政治的思惑があるのと無いのとでは、伝える内容にも大きな差がある事を、この二人は端的に表していたのだった。

 

どちらも報道の形として成り立っている物だからこそ、思惑の違いが浮き彫りになっているのだろうが、彼等はまだ、それには気付いていなかった・・・。

 

sideout

 

side一夏

 

「・・・、質問は以上です、貴重なお時間をありがとうございました。」

 

「お嬢ちゃんが戦略とか政治とか、小難しい事ばっかり聞くから肩が凝っちまったぜ、俺は、そういう細かい事は苦手なんだよ。」

 

ルルー女史の質問が終わった直後、エドは勘弁してくれと言う様に肩を回していた。

 

まぁ、あんだけ質問攻めにされれば良い気にもならんだろう、俺も経験があるからよく分かる。

 

しかし、何故だジェス、何故一言も質問しないんだ?

これじゃぁ、来た意味があまり無いんじゃないのか・・・?

 

「そっちの兄ちゃんは一言も喋らなかったな、何か聞かなくても良いのかい?」

 

エドもそう感じたのだろうか、彼に対して何か聞かないのかと尋ねていた。

 

ジェス、何か聞いとけ、お前もエドの事を知りたいんじゃなかったのか・・・?

 

「う~ん・・・、あっ!」

 

おっ、何か思いついたみたいだな、だけど、流石に失礼な事は聞くなよ?

 

「好きな女性のタイプは!?」

 

って!!それ俺にも聞いてた質問じゃねーか!

 

ジェスがそれを口にした瞬間、両隣にいたセシリアとシャル、そして、ジェスの隣にいたルルー女史がズッコケていた。

 

正直、俺もこれだけは言いたい、お前にはそれしか質問はねぇのか!!

 

「ふっ・・・、ふふっ・・・、はーっはっはっ!!お前っ、面白いな!そんなインタビューをしてきたのはお前が初めてだよ!!」

 

「ど、どうも・・・!」

 

ところが、エドはそんな彼がお気に召した様だった、ここに来て最大の笑い声をあげ、身を乗り出してジェスの肩を叩いていた。

 

けったいな質問をして、どやされないかヒヤヒヤさせられたぜ。

 

「良いぜ、答えるよ、その質問を前にしてきた奴だよ、俺の胸に飛び込んで来てくれるソイツが、俺の中じゃ最高の女なのさ、そこにいる美人な御嬢ちゃん方よりも、な。」

 

「へぇ・・・、そりゃ、良い女性なんですね。」

 

あのトップエースにそこまで言わせるんだったら、確かにいい女なんだろうな。

 

まぁ、俺の嫁さん二人には敵わんさ。

 

そう思った矢先、耳を劈くけたたましい警報が俺達の耳に届いた。

 

「隊長!連合軍の攻撃部隊がこの基地に向かって来ています!!」

 

ドアを蹴破る様な勢いで南米軍の兵士が俺達がいる部屋に入り、隊長であるエドに近付きながらも状況を報告していた。

 

やはり、か・・・。

全く、面倒な時にお出ましとは、連合も空気が読めないのかよ。

 

「どうやら、此処に俺がいると嗅ぎ付けられたらしい、お前らは早く逃げろ!」

 

此方に接近して来ている敵の数が書かれているであろう書類を読みながらも、彼は俺達に退散する様に促していた。

 

「エド、アンタは逃げないのか!?」

 

退散しようとするプラント報道陣を尻目に、ジェスはエドに問いかけていた。

 

「逃げたいねぇ、逃げるってのは一番楽に戦いに勝てる方法だからなぁ、だけど、今は逃げられない、何せ、背負い込んでるモノが大きすぎるからな、逃げきれないんだよ。」

 

ジェスの言葉を鼻で笑い、エドはこのまま応戦に出る様だ。

 

何かを背負う、か・・・。

 

俺も昔は似た様な事をやってたっけ・・・。

 

だけど、エドの目には、昔の俺には無かった光が宿っている、爛々と輝く、熱い想いが・・・。

 

「分かった、俺も逃げない!アンタの取材の為にここに来たんだからな!」

 

「そうかい、好きにしな、だが、命は粗末にするんじゃないぞ!」

 

「勿論だ!!」

 

俺が過去に想いを馳せている内にも話は進み、ジェスはエドの戦闘風景を撮影するようだ。

 

ったく、流れ弾に当たっちまったらどうするつもりなんだか。

 

「あっ・・・!私達も・・・!!」

 

彼に後れを取る訳にはいかないとでも思ったのだろうか、ルルー女史達も彼等の後を追う様に部屋から出て行ってしまった。

 

「一夏様、私達も参りましょう?」

 

「僕達の任務はジェスの護衛だけど、流石に生身のまま戦場に出る人を護らない訳にはいかないよね?」

 

おいおい・・・、セシリアとシャルまで、何に感化されちまったんだ・・・?

 

だがまぁ、このままジェスだけ出すのもマズイ、か・・・。

 

「そうだな、行こうか。」

 

俺が護ってやらないとな、あの野次馬さんを、な・・・?

 

sideout

 

noside

 

「エドワード・ハレルソン、ソードカラミティ、出るぜ!!」

 

格納庫のシャッターが開くと同時に、≪切り裂きエド≫が搭乗したソードカラミティが南米の大地に立った。

 

ソードカラミティ

GAT-Ⅹ133

 

前大戦後期に開発されたカラミティを近接戦闘主体の機体へと改修した姿。

 

エドがこれまで使用してきたMSの中では4機目に位置する機体ながらも、ヤキン・ドゥーエ宙域の最終戦では数多のザフトMS群を切り裂き、連合の侵攻部隊の中核を担った。

 

その機体は、今度は彼の祖国である南米を護るために、嘗ての軍を迎え撃つ。

 

基地の縁、、詰りはジェスが登ってきた崖ギリギリに陣取った直後、彼に向けて迫ってくる三機の飛行物の姿が確認できた。

 

「ちっ、GAT-333 レイダーか、俺が元飛行機乗りだと知ってて嫌味のつもりかよ。」

 

その姿を認めたエドは、表情を顰めながらも吐き捨てていた。

 

そう、彼はMSに乗るまではMAのパイロットであり、自身が持つ異名も、MA時代についた名なのだ。

 

つまり、そんな彼相手にレイダーを差し向けたという事は、戦闘機乗りを戦闘機型のMSで討ち取るという、ある意味皮肉めいた何かが見え隠れしているのだろうか・・・。

 

「相手は飛行型だ・・・、どう戦う、エド!」

 

ソードカラミティから少し離れたポイントには、カメラを構えてシャッターチャンスを窺うジェスのアウトフレームの姿と、その足元にはジープに乗ったベル等、ザフトの報道陣がカメラを回しており、そんな彼等を護るように、周囲を一夏達、アメノミハシラMS部隊が立っていた。

 

折角の英雄の戦闘が間近で見られるのだ、これ以上の機会はそうないのだから・・・。

 

そんな彼等の目の前で、三機いるレイダーの内、二機が搭載していたミサイルをソードカラミティに向けて発射した。

 

「はっ!俺はソイツのテストパイロットだったんだぜ、癖はよーく知ってるさ!!」

 

だが、エドはシュベルト・ゲベールを一本だけ抜刀、飛んでくるミサイルの弾頭のみを器用に切り落としていた。

 

いとも簡単に遣って退けているが、並大抵の業ではなく、正に、機体を自分のモノにしていないと出来ないだろう事は、これを見ている全員が分かっていた。

 

ミサイルを全ていなした瞬間、彼は左肩のマイダス・メッサーを引き抜きながらも投擲、一機のレイダーの下部副翼プラットホームを切断するが、そのレイダーは機体主翼に装備してあったマシンガンを撃ちかけながらも彼に迫った。

 

「テメェは新兵か、狙いが甘い!!」

 

だが、その間を縫う様にソードカラミティが飛び上がり、二本のシュベルト・ゲベールで両翼を切断した。

 

「その機体で飛び上がってはダメだ!!的になるぞ!!」

 

飛び上がってしまったソードカラミティの姿に、ジェスは声を上げていた。

 

レイダーとは違い、エドの機体は大気圏内での自由飛行ができない、その為、一度飛び上がってしまうと、空戦型の恰好の的になってしまうだけだった。

 

それを証明するかのように、地面に着地しようと落下するソードカラミティにもう一機のレイダーが機銃を撃ち掛けながらも迫ってゆく。

 

幸い、乗り手の力量が然程高く無いようで、直撃する事は無かったが、それでも何発かの銃弾が機体を掠めた。

 

「「エド!!」」

 

彼がやられると思ったのだろう、ジェスとベルは全く同じタイミングで彼の名を叫んだ。

 

「引っ掛かったな、そう来てくれるのを待ってたぜ!!」

 

だが、エドはまったくの余裕の表情でそう言い放ち、左腕のパンツァー・アイゼンを射出、向かってくるレイダーの顔面を掴み、自身の方へと引き寄せながらもシュベルト・ゲベールを構える。

 

まさかそう来るとは思わなかったのだろう、レイダーは崩れた体制を立て直すためにMA形態からMS形態へと変更するが、それはまさに、隙でしかなかった。

 

その間にレイダーとの距離を詰めたソードカラミティはシュベルト・ゲベールを一閃、避ける事すら出来ないレイダーを真っ二つに切り裂いた。

 

「つ、強い・・・!これが≪切り裂きエド≫・・・!!」

 

レイダーのコックピットでその光景をまざまざと見せつけられたシャルロットは、エドの強さに舌を巻いていた。

 

ロンド・ミナレベルとまではいかないが、それでも、トップエースの名に恥じぬその力に戦慄したのだろうか・・・。

 

「撤退するのか、良い判断だ。」

 

残った最後のレイダーは、最早勝機は無しと見たのだろう、彼には目もくれず撤退していく様に見えた。

 

だが、そのレイダーは後方にミサイルを発射、ソードカラミティが立つ足場を攻撃した。

 

「なにっ!?まさかっ・・・!!」

 

その攻撃の意図に初めに気付いたのは、ストライクに乗っている一夏だった。

 

ミサイルが着弾した地点を皮切りに、崖が崩れ始めたのだ。

 

「うわっとぉっ!?」

 

逃げそびれたエドは足を取られ、崩落する岩石と共に崖の下へと落ちてゆこうとしていた。

 

「エドっ!!落とさせるかぁっ!!」

 

それを見た一夏達が助けに行こうと動こうとするが、それよりも早くジェスのアウトフレームがバックパックを排除、崖のギリギリまで駆け出していた。

 

「掴まれ、エド!!」

 

背後のサブアームが二本のアーマーシュナイダーを引き抜き、比較的無事な地面へと固定具代わりに突き刺し、腰部のワイヤーをソードカラミティに向けて投げ伸ばした。

 

それを見ていたのだろう、ソードカラミティは体勢を立て直し、シュベルト・ゲベールのレーザーを切りながらもワイヤーをキャッチした。

 

「大丈夫か!?今引き上げるぞ!!」

 

しっかりと掴まった事を認めたジェスはエドに声を掛けつつ、ゆっくりとソードカラミティを引き上げてゆく。

 

「コイツは驚いたぜ!!お前のMS、最高に良いマシンじゃないか!なんて名前だ?」

 

自由落下する自分の機体を引き上げて尚、平然としていられるジェスの機体にそそられたのだろう、エドは感嘆したような声を上げながらもジェスに尋ねていた。

 

「アストレイアウトフレーム!俺の頼れる相棒さ!!」

 

自分の機体を誇らしげに紹介しながらも、彼はエドを崖の上まで引き上げてゆく。

 

「取材対象に干渉するなんて、ね・・・、ジャーナリスト失格よ、ジェス・リブル。」

 

それを見ていたベルは彼の行動に目を丸くしながらも、ジャーナリストとしてあるまじき行為だと見ていた。

 

ジャーナリストはインタビューをし、そこにある事実を伝える事が使命ではあるが、取材対象を助ける事、深く関わりすぎる事はあってはならない、報道やジャーナリズムは、常に中道を往かねばならないのだから。

 

「だが、それがジェス・リブルという男だ、自分なりのジャーナリズムってモンを、アイツは持ってるんだ、そう言ってやるな。」

 

彼女の独白を聞き取っていたのだろう、ストライクから一夏がスピーカーモードを使って彼女に語りかけていた。

 

そういう規格外、破天荒な所も彼の本質、彼のジャーナリズムなのだと、彼は語っていた。

 

「そう、だけど、私には理解できないわね。」

 

「それで良いさ、俺もまだ、ハッキリとはわかんねぇからさ。」

 

彼の言葉にどうでもいいという風に返すベルの言葉に、一夏は笑いながらもこれからだなという風に呟いていたのであった・・・。

 

sideout

 

sideセシリア

 

その夜、私達は南米軍第33仮設野営基地のテントに集い、ベルさん等、プラントの報道がどの様なものかと確認しておりました。

 

映像には、連合軍のレイダーを一瞬で屠るソードカラミティの姿のみが映し出され、エドさんのインタビューの大半が削られておりました。

 

『―――以上が先ほど行われた戦闘の様子です。」

 

「あっ!?俺が助けた場面がないじゃないか!!アイツ、カットしやがったな・・・!」

 

「そりゃ、主役は俺だしな。」

 

あのぅ・・・、ジェスさん・・・?

怒る所はそこですか・・・?

 

本当ならば、エドさんのインタビューが削られた事を起こるべきではありませんか・・・?

 

どうしたものかと一夏様を見ますと、何も言うなと言わんばかりに首を横に振られておられました。

 

本当にそれで良いのでしょうか・・・?

 

『たった一人の兵士に苦戦する連合軍には、≪切り裂きエド≫を倒さない限り未来はないと断言出来るでしょう、以上、現地よりベルナデット・ルルーがお送り致しました。』

 

「なんだよ・・・、これ・・・、プラントをヨイショするだけのプロパガンダじゃないか!こんな放送をしたら、連合はアンタを狙ってくるぞ!!」

 

連合軍を挑発、若しくは貶すための放送だと感じられたのでしょう、ジェスさんはエドさんにこれではより一層戦いが厳しくなってしまうとばかりに尋ねられておりましたが、エドさんの表情は何処か満足そうでした。

 

何故、そんな表情をされるのでしょうか?

このままでは自分が狙われ続けると言うのに・・・?

 

「良いんだよ、南米は広いんだ、俺独りで護り切るなんて出来やしない、だから敵が俺を目指して来てくれる方が戦いやすい、あのお嬢ちゃんもそれが分かってて報道してくれたのさ。」

 

なるほど・・・、そういう事でしたか、全く気付きませんでしたわ・・・。

 

敵の目を自分に向けさせる事で他の南米軍の兵士達の負担を減らし、被害を少なくする。

全を救うには一番の方法ですわね。

 

ですが、本当にそれが正しいのか、今の私には分かりません。

 

かつて、私達は自分達が全ての業を背負えばよいとばかり考え、世界そのものを救おうとしました。

 

結果的に全は救われましたが、私達の事を想ってくれていた御方達の想いを顧みなかった事は、今更になって悔恨にも似た感情を抱かざるを得ないのです。

 

だからこそ、エドさんがなさろうとしている事を、素直に称える事が出来ないのです。

 

ですが、私には何も言う資格は御座いません、だからこそ、この憤りは胸の内に覆い隠す事に致しましょう・・・。

 

「気付かなかったよ・・・、俺、まだまだだな・・・。」

 

御自分がこの放送の真意を見抜けなかった事への不甲斐無さでからでしょうか、ジェスさんは悔しそうに俯いておられました。

 

気付けないのも無理は無いでしょう、いくら多面的にモノを見ようとしても、まずは自分の持つ物差しで見てしまう、それが人間と言う物なのですから。

 

ですが、教えられてからでも遅くは無いでしょう、何せ、気付けるだけ良いのですから・・・。

 

「気付いてくれただけ良いさ、ところで、お前達は何時までここにいる気なんだ?」

 

エドさんも私と同じ想いだったのでしょうか、別に構わないと言いながらも、私達の滞在期間について尋ねてこられました。

 

私達はジェスさんの護衛の為にここに参った訳ですから、彼の取材が終わればすぐにでも立ち去れるのですが・・・。

 

「俺はアンタの戦いを見届けるつもりだ!だから、少なくともこの戦争が終わるまではここにいさせてもらうぞ!!」

 

「「えぇー・・・。」」

 

その言葉を聞いた一夏様とシャルさんが、勘弁してくれと言わんばかりの表情で、小さくタメ息を漏らしていました。

 

まぁ、私も本当はあまり乗り気ではないのですが、流石に移動時間よりも滞在時間が短いなどと言う事だけは嫌ですし・・・。

 

「あ、そうかよ・・・、これほど戦争が早く終わってほしいと思った事なんて無いぜ、全く・・・。」

 

エドさんも同じ御気持ちなのでしょう、頭を抱えてタメ息をひとつ、吐いておられました・・・。

 

私達が宇宙へと帰れるのは、いつになるのでしょう・・・。

 

そう思い、私もタメ息が出てしまいました・・・。

 

sideout

 

noside

 

北米大陸、カリフォルニアにある、大西洋連邦の基地のとある一室に、その人物達はいた。

 

「諸君達に集まって貰ったのは、他でもない、この男についての事だ。」

 

彼らの前に置かれていた席に腰掛けた初老の将官が、資料と思しきモノを手渡しながらも話を進めていた。

 

彼の目の前にいる三人は、それぞれに思う所があるのだろう、一概には形容しがたい表情を浮かべていた。

 

「諸君らもよく知る男だろうが、これ以上野放しにはできんのだ、乱れ桜、月下の狂犬、白鯨、諸君らの力で切り裂きエドを抹殺せよ!以上だ。」

 

彼らに向けて指令を下した将校は、席を立ち、その部屋を辞した。

 

「・・・、優秀なパイロットでしたのに・・・。」

 

彼が立ち去ったのを認めると、頬に桜の花弁の様な痣を持った女性が、どこか残念そうに呟いた。

 

彼女の名はレナ・イメリア、二つ名は≪乱れ桜≫。

元士官学校の教官であり、前大戦では数々の戦線で功名を挙げたパイロットである。

 

切り裂きエドこと、エドワード・ハレルソンとは、士官学校時代の教官と生徒の間柄であり、幾度となく顔を会わせた事があった。

 

「フン、昔からいい加減な奴さ、だが、アイツらしいと言えば、アイツらしいな。」

 

そんな彼女の言葉を鼻で笑いながらも、如何にも軍人であると言わんばかりの中年の男性が呆れたように肩を回していた。

 

彼の名はモーガン・シュバリエ、二つ名は≪月下の狂犬≫。

 

元々はユーラシアの戦車部隊を率いていたが、士官交換によって大西洋連邦へ移籍、その後はMS、105ダガーを駆って様々な戦場で多大な戦果を挙げており、エドとも、何度も共に戦った戦友と呼べる存在だった。

 

「そんな事なんてどうでもいい・・・、裏切者は赦さないわ、レナ、モーガン、エドは私が討ち取ってやる!!」

 

そんな彼らの言葉を聞いていた金髪の女性は、憤怒に染まった表情で立ち上がり、彼等に宣言するように言い放った後、部屋を辞した。

 

「≪白鯨≫、ジェーン・ヒューストン・・・、一番辛いのは彼女でしょうに・・・、よろしいのですか?」

 

そんな彼女の背を見ながらも、レナはどこか心苦しそうにモーガンに尋ねていた。

 

彼女は知っているのだ、エドとジェーンの、本当の間柄を・・・。

 

「任務に私情を持ち込まない、それが軍人だ、命令ならやるしかないだろうよ。」

 

そんなレナの言葉を大した事では無いとばかりに切り捨てながらも、モーガンはタメ息を吐いていた。

 

本当は彼女には殺せたくはないのだろうが、軍人たるもの、命令には逆らえないというジレンマに陥っているのだ。

 

そんな彼の思いを汲み取ったレナも、彼と同じ様にタメ息を吐きながらも、何かを憂うような表情を浮かべていた。

 

それが意味するものがどの様な物かは、彼女以外に知る者はなかった・・・。

 

sideout

 




次回予告

戦火に包まれる南米で、再会と出会いが彼等の運命を大きく変えて行く。

次回機動戦士ガンダムSEEDASTRAY X INFINITY

私の英雄

お楽しみに
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