機動戦士ガンダムSEEDASTRAY X INFINITY   作:ichika

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私の英雄

noside

 

C.E.71年十二月上旬、地球、オーストラリア大陸に存在するザフト軍の基地、カーペンタリアに、それは降り立った。

 

ジンを彷彿とさせるアンテナを持ちながらも、これまでのザフトMSとは異なったデザインを持った、独特の機体だった。

 

それを見るのが初めてだったのだろう、周囲の兵士達は、皆一様に驚愕の表情を浮かべながらもその機体を注視していた。

 

『こちら管制室、X999A、搬送機の準備が完了した、そのまま進んでくれ。』

 

「こちらX999A、了解、これより搬送機に向かう。」

 

管制室からの通信に答えつつ、X999と呼ばれた機体のパイロットの男は直ぐ近くにある輸送機に向けて機体を移動させた。

 

ゆっくりとだが、一歩一歩確かめるような動きであり、何かを試している様な雰囲気すら窺えた。

 

「バランサーの調子がイマイチだな・・・、移動中にOSを見ておくか。」

 

機体の問題点を見抜きながらも、彼は自分自身の癖に苦笑していた。

 

自分はこれほどまでに仕事人間だったか、その表情からはこの言葉が当て嵌まるだろう。

 

「南米、か・・・、何か有りそうだな・・・。」

 

頭を振って表情を引き締めながらも、彼は得体の知れない胸騒ぎを覚えた。

 

第六感的な何かなのだろうが、それが分かるのは彼しかいなかった。

 

そうしている間にも、機体は搬送機の格納庫に入り、搬送機は離陸すべく隔壁を下し、滑走路を移動し始めた。

 

その光景をコックピットから眺める彼はまだ、この旅路が、彼の運命を大きく変えるものになるとは知らなかった・・・。

 

sideout

 

noside

 

「おい、ジェス。」

 

同じ月のある日、仮設基地近くにある格納庫にやって来たエドは、格納庫に置かれてあるアウトフレームの前で困惑した様に佇むジェスを見つけ、声をかけた。

 

だが、肝心の彼は何か困惑した様な表情をし、エドに気付いていないのだろう、機体の頭部を見つめたまま微動だにしなかった。

 

どうしたものかと辺りを見渡すと、ストライクの前で何やら神妙な面持ちをしている一夏と、そんな彼をどうしたのだろうかとばかりの表情で見つめるセシリアとシャルロットの姿があった。

 

「そっちもそっちでどうしたよ、ってか、ここでいったい何があったんだ?」

 

この三人の方が答えが期待出来ると判断したのだろう、エドは彼らに歩み寄りながらも何があったのかと尋ねていた。

 

「あら、エドさん・・・、一夏様が・・・。」

 

「ん・・・?あぁ・・・、エドか、どうした・・・?」

 

先に彼に気付いたセシリアの声を聴いて、ようやくエドに気が付いたのだろう、一夏は心ここに在らずという様な声で尋ねていた。

 

「どうしたもなにも、ジェスもお前もどうしたんだ?話しかけても、近づいても気付かないって・・・?」

 

ジェスの様子は気になるが、今は取り敢えず目の前の彼の事が気になったエドは、詳しく聞きたいとばかりに尋ね返していた。

 

ジェス達が南米に来てから既に一週間以上が経っているのだが、ジェスは兎も角、一夏がここまで殺気立つ所を見た事は無かったのだ、気にならないといえば嘘になるだろう。

 

「ジェスの方はアウトフレームの機能追加をジャンク屋の人間がやってるらしいが、俺のは違う・・・。」

 

「なるほどな・・・、で、お前のはなんなんだ?」

 

最初に知りたがったジェスの問題は彼の言葉によって半ば解決されたが、次の一夏自身の問題が気がかりだった彼は、何を感じているのかを知るために彼に問いかけていた。

 

「何かを・・・、強烈な何かを持った誰かが、俺達の近くに来ている・・・、そんな感じがするんだ。」

 

「誰か、だと・・・?」

 

彼の要領を得ない言葉に首を傾げながらも、エドは辺りを見渡したが、特に普段と変わった様子は見受けられなかった。

 

強いて挙げるならば、ジェスが自分の機体を弄られている事で少々難しい顔をしているぐらいだったが、ジャンク屋相手に、一夏がそれ程の感覚を見出す事も無いだろうと、エドは意識を目の前の三人へと戻した。

 

「それが・・・、僕達は何も感じないから、一体何の事かさっぱりで・・・。」

 

「一夏様が感じられる程の強い気なら、私が感じない訳が無いのですが、一体なんなのでしょう・・・。」

 

シャルロットの言葉に続けながらも、セシリアも自分が感じない何かを感じる一夏の感覚を信じ切れずにいたのだろう。

 

「ふぅん・・・、そりゃぁ・・・、悪いが、俺にもサッパリだ。」

 

その感覚に、自分が感じた事のあるすべての感覚と照らし合わせたが、正体を掴み切る事は出来なかったため、何も知らないと答えた。

 

「すまん・・・、だが、どうしても気になるんだ・・・、少し辺りを見てくるよ。」

 

一言断りを入れるや否や、彼はストライクのコックピットから降りてきたラダーに掴まり、上昇を始めた。

 

「えっ!?一夏・・・!?」

 

「わ、私達も・・・!!」

 

そんな夫の唐突な行動に驚いたのだろう、シャルロットは声を上げ、セシリアは自分も付いて行こうと機体へと走ろうとしていたが、それを一夏が制していた。

 

「セシリアとシャルはジェスの傍を離れるな、敵襲があったらエドの迷惑になるだろ、護ってやってくれ。」

 

自分達三人が一気にここから離れれば、誰がジェスを護衛するのだと言い残した後、彼はコックピットへと潜り込み、機体を手早く起動させ、彼女達を踏み潰さぬ様に気を付けながらも格納庫の外へと向かい、スラスターを吹かしてジャングルの方へと飛んで行ってしまった。

 

「うわっ・・・!?な、なんだぁ・・・!?」

 

スラスターの推力による突風で、ストライクが出て行った事に漸く気付いたのだろう、ジェスが素っ頓狂な声を上げながらも辺りを見渡していた。

 

どうやら、自分の世界からようやく戻って来たのだろう。

 

「一夏がちょっとした用事で出てったのさ、で、アウトフレームの様子はどうなんだ?」

 

「あっ、あぁ、いきなりジャンク屋の人が来たと思ったらいきなり機体を弄ってて・・・。」

 

『心配いらない、装備の追加だ。』

 

ジェスの困惑に答える様に、『8』が装備の追加だと答えた。

 

だが、それに一番驚いたのは、他でもないジェス自身だった。

なにせ、彼はジャーナリストではあるが、所詮は民間人、武器を携帯する事は許されていない。

 

「おーい!武装とかやめてくれよ!こっちは民間なんだから!!」

 

「あーい、もうちょっとで出来るんで待っててくださいね~。」

 

余計な戦闘に巻き込まれるのは御免だとばかりの彼の心情を知ってか知らずか、アウトフレームのバックパックで作業をしている女性の真の抜けた様な声が聞こえてきた。

 

作業中とは思えない何とも緊張感の無いその声に、ジェスはおろか、エドや近くに来ていたセシリアとシャルロットすらも脱力しそうになっていた。

 

「あ、大体出来たので確認してくださ~い。」

 

「まったく・・・、本当に出来てるんだろうな・・・。」

 

如何にも不安だと言う様にボヤキながらも、ジェスはエドと共に機体のバックパックまで上ると・・・。

 

「どうですか~?」

 

「な、なんじゃこりゃぁ!?」

 

そこにあったあるモノを見て、ジェスは某刑事ばりの声で叫んだ。

 

人一人が足を伸ばしても楽に入れそうな大きさの四角形の箱に湯が張られているのだ、考えなくても分かるだろう。

 

そう、それはMSに本来ある筈もない設備であり、本当に必要なのかと疑いたくなるものだった。

 

「お風呂で~す♪これで長期の取材も安心ですよぉ~。」

 

そんな彼の驚愕に答える様に、そばかす顔のジャンク屋の女性、ユン・セファンはどんなモンだいとばかりに笑いながらも説明していた。

 

「いや、見りゃ分かるけど、これは・・・。」

 

あまりの事に驚いて、というよりは若干引いているのだろう、エドは引き攣った表情で呟いていた。

 

「これがお風呂のマニュアルです、あ、それと機体のバッテリーがレッドゾーンになるとお湯がぬるくなりますが、お風呂優先にもできますがどうします~?」

 

「・・・、そのままで良いよ・・・。」

 

彼女の説明に、そういう事を聞きたいんじゃないと思いながらも、流石に移動や取材に支障が出ない様な設定のままで良い事を伝えるため、ジェスは疲れたと言わんばかりの声色で答えていた。

 

「分かりましたぁ~♪それじゃぁ、何かあったらまたお呼びつけくださいね~。」

 

彼の返答を受けて、彼女は満面の笑みを浮かべると、アウトフレームの傍に置かれていたレイスタの個人カスタムに乗り込み、器用に手を振りながらも森林の方へと消えて行った。

 

「なんかトロ臭そうな姉ちゃんだったけど、本当に大丈夫なのか・・・?」

 

彼女のレイスタが見えなくなったと同時に、エドがタメ息を吐きながらも独り呟いていた。

 

如何にジャンク屋とは言えど、あそこまでのほほんとした人物を見た事が無かったのだろう。

 

『彼女はあれでもレイスタの開発者なんだぞ!』

 

「えぇっ!?あのレイスタの・・・!?」

 

人を見かけで判断するなとばかりの『8』の表示に、ジェスは驚いた様に声を上げていた。

 

自身も使っていた事があるレイスタを開発した人物だとは、夢にも思わなかったのだろう、彼の表情からはしまったと言わんばかりの表情が見て取れた。

 

「人は見かけによらねぇなぁ、で、早速試してみろよ、正真正銘の一番風呂だぜ。」

 

「そうだなぁ~、文句は入ってみてからでも遅くないかぁ。」

 

感心した様に呟きながらも、エドはジェスに対して風呂に入っておけとばかりに声をかけていた。

 

それに頷き、ジェスは早速入浴してやろうと言わんばかりに服を脱ぎ始めようとした。

 

まさにその時だった、格納庫内に警報の音が響き渡った。

 

「敵襲、ですか・・・!?」

 

あまりにも唐突な警報に、セシリアは表情を硬くしながらも、シャルロットと瞬時にアイコンタクトを交わし、自分達の乗機へと急いだ。

 

「あぁ、どうやら、仕掛けた網に連合が掛かってくれたみたいだ・・・、出撃するぞ。」

 

何が起こっているのかを説明しつつ、エドは表情を硬くしながらもソードカラミティへと走った。

 

だが、その表情には緊張だけではなく、何か別の色が混ざっている様にも見て取れた。

 

「お、おい、エド?俺も行くよ!!待ってくれーっ!!」

 

風呂に入ろうと、もう少しでズボンまで脱ぎ掛けていたジェスは、慌てて身嗜みを整え、彼らの後を追った。

 

せっかく他の報道陣がいない中での単独取材だ、これほどまでに無いチャンスに違いないだろう。

 

だが、この時の彼はまだ気付いていなかった。

エドが抱える、その想いに・・・。

 

sideout

 

sideシャルロット

 

レイダーに乗り込み、エドさんとジェスに付いて海岸沿いの崖までやって来た僕達は、その場で何かが来るまで待機することになった。

 

だけど、辺りは濃い霧に包まれていて、見渡そうにも霞んでよく見えないっていうのが実情だった。

 

と言うより、この霧はなんなんだろうか・・・?

 

『この霧はガルーアと言ってな、この時期の南米大陸の名物さ、南極で冷やされた海流がこっちで暖められて発生するんだよ、これに紛れれば、姿を隠したまま上陸できるって事さ。」

 

『これに紛れて連合が上陸するのか?まるで、敵の手口を最初っから読んでたみたいだな。』

 

エドさんの説明に感心しながらも、ジェスは彼がまるで敵の手口を読み、それを迎え撃つためにここまで来た事について尋ねていた。

 

確かに、元々所属していた組織が相手で、このルートを通って侵攻してくる可能性がある人と交流があったとは思うけど、どうしてここでその人が来るって感じたんだろうか・・・?

 

『アイツなら間違いなくそうする、アイツの事なら、俺はなんだって知ってるから、な・・・。』

 

『エドさん・・・?』

 

エドさんの声色の変化を、僕とセシリアは聞き逃さなかった。

 

それはまるで、本当は戦いたくない誰かと戦おうとしている様な・・・。

 

『それはそうと、ジェスは基地で風呂でも入ってろよ、こんな濃霧じゃ良い画なんて取れないぞ?』

 

それを悟られない様にするためなんだろうか、エドさんは声色を何時もの調子に戻して、ジェスに声を掛けていた。

 

濃霧じゃ良い画なんて撮れないから、というよりは、この戦いを見ないでくれと言う様な口振りだった。

 

やっぱり、かなり深い仲の人だったんだろうね・・・、僕で言うと、セシリアと、若しくは一夏と戦わなくちゃいけなくなるって所なのかな・・・?

 

『た、確かに・・・!だけど、諦めなかったら何とかなる!それに、ベルの鼻を明かしてやらないとやらないとな!!』

 

ジェスは彼の思いに気づかなかったんだろうか、もしくは、自分がやろうとしてる事に目がいって気付けなかったのか、取材を続行すると意気込んでいた。

 

本当は僕達が何とか言って引き下がらせるべきなんだろうけど、理由が弱すぎるから引き留められないんだよね・・・。

 

『・・・、好きにしろ、だが、くれぐれも戦闘の邪魔だけはしないでくれよ?』

 

彼の姿勢に折れたんだろう、エドさんはタメ息を一つ吐きながらも許可を出していた。

 

それじゃあ、僕達も覚悟を決めるしかないね・・・、何かあれば、止めに入らないと・・・。

 

『勿論だ!『8』、シューティングコート展開だ!』

 

彼の言葉に頷きながらも、ジェスはアウトフレームに実装された新たな機能を展開した。

 

それはバックパック上部が動き、そこから何か白い垂れ幕みたいなものが下りてきて、カメラを覆わないようにしながらもアウトフレームの全身を覆い隠した。

 

「これがアウトフレームの新機能・・・?」

 

『ほぉ!そんな変形も出来るのか!』

 

『ステルスとまではいかないけど、これで少しは見付かり辛いだろ。』

 

見付かり辛いとか、そういう問題じゃなくて・・・、まぁ、言っても聞いてもらえないのは何となく分かるから何も言わないけどさ・・・。

 

僕がタメ息を吐いている間に、アウトフレームが僕達の傍まで戻ってきながらカメラを構え、ソードカラミティの背を撮っていた。

 

僕達はジェスの両サイドに控え、攻撃が飛んで来ないように警戒に入った。

 

それが始まって数分もしない内に、ソードカラミティがシュベルト・ゲベールを引き抜き、海中から飛び出してきた何かと切り結んだ。

 

それは、甲羅の様なリフターを背負った水色の機体、フォビドゥンブルーであり、エースパイロット機である事を示す白い鯨のパーソナルマークが入っていた。

 

『やはり来たか、白鯨・・・、ジェーン!』

 

『まさかアンタが出迎えてくれるなんてね、エド!!』

 

わざと開いておいた音声回線から、エドと、フォビドゥンブルーのパイロットの女性の声が聞こえてくる。

 

やっぱり、顔見知りどころの話じゃないみたいだね・・・、あの女性〈ヒト〉、声色が揺らいでる・・・。

 

 

『分かるさ、お前がやる事は、なんでもな・・・!!』

 

拮抗状態から離れ、エドはシュベルト・ゲベールのレーザーを入れ、切り付けるけど、彼女はそれを見越して左側のシールドで防御した。

 

ゲシュマイディッヒ・パンツァーの効力でレーザーが拡散されているんだろう、辺りに火花が散った。

 

『私はアンタが裏切るなんて、思ってもみなかったよ!!』

 

『やはり・・・!レーザーでは切れませんわね・・・!』

 

エドさんがジェーンと呼んだ女性の、怒りに満ちた声と、セシリアの歯噛みする様な声が届くけど、僕の意識は別にあった。

 

ジェーンさんのあの怒り方は・・・、まさか・・・?

 

『裏切り者のエド・・・!モーガンにも、レナにも・・・、他の誰にも殺させはしない!!アンタは私が討つ!!』

 

怒りと悲しみが混ざったような怒声を吐きながらも、彼女はフォノンメーザーを発射したけど、所詮は音のビームだ、速度はそれほど速くないから、エドは難なく回避していた。

 

『やめろ、ジェーン!!分かってくれっ!!』

 

『分からないね!!アンタは全てを捨てて祖国を取った!!何故だ!?』

 

エドの言葉を怒声で返しつつも、ジェーンさんは魚雷をミサイル代わりに発射、エドはその弾頭だけを切り裂いて無効化していたけど、次の瞬間にはフォノンメーザーを撃ちかけていた。

 

『セシリア、シャルロット・・・、あの二人の感じ・・・、なんだと思う・・・?ただの知り合いとは思えないんだ・・・。』

 

彼らの言葉から何かを感じ取ったのか、ジェスは僕達に尋ねてきた。

 

やっと、だね・・・、エドさんがジェーンさんが来ると気付いてた、そう読んでいた時点で何か気付くべきだったとは思うけどなぁ・・・。

 

『えぇ・・・、シャルさんも感じておられるでしょうが・・・、あのお二人は恐らく・・・。』

 

セシリアもとっくに気付いていたみたいだね、あの二人の本当の関係に・・・。

 

『何故仲間を・・・!!何故私達を捨てた・・・!?』

 

セシリアの言葉を遮るように、ジェーンさんの怒声が僕達の耳を打った。

 

見れば、フォビドゥンブルーがトライデントでソードカラミティに格闘戦を挑んでいた。

 

エドさんは覚悟を決めきれていないのか、レーザーを切ったシュベルト・ゲベールでそれを何とか捌いていた。

 

『くそっ・・・!好きで捨てた訳じゃないさ・・・!けどな・・・、俺がいなければ、祖国の皆は・・・っ!!』

 

「エド、さん・・・!?」

 

いけない・・・!この血を吐くような叫びは・・・・!

 

大切な物でも捨てる時は捨てる覚悟をした人間の声だ・・・!!

 

分かるんだ・・・、分かるんだよ!僕も昔はそうだったから・・・っ!!

 

『シャルさん!これはっ・・・!!』

 

セシリアも気付いてしまったのだろう、焦ったような声で僕に問い掛けてくる。

 

止めたい、止めなきゃいけない・・・!!

 

これじゃ、エドさんは本当に英雄になってしまう、すべてを切り捨てた、人間を辞めた存在に・・・!!

 

何か止める方法はないの・・・!?

 

『・・・っ!!そうですわ・・・!ジェスさん、エドさんのインタビューを投影してください!!』

 

そんな時、何かを閃いたセシリアがジェスに向けて叫んでいた。

 

そうだよ・・・!あの二人が恋人同士なら、エドさんが言ってた最高の女は間違いなく・・・!!

 

『あぁ!?でも、どうして・・・!?』

 

「エドさんの最高の女は多分、彼女なんだよ・・・!あの二人の擦れ違いを一瞬でも止められたら、きっと・・・!!だから、お願いだよ・・・!!」

 

説明なんてしている暇なんてない、今すぐにでも辞めさせなきゃならないんだから・・・!!

 

『分からないけど・・・、戦いを止められるんなら・・・!!『8』再生を急いでくれ!!』

 

僕達の焦りが伝わったんだろう、ジェスは慌てながらも映像の投影準備に入った。

 

急いで、急いで・・・!ジェス!『8』・・・っ!!

 

sideout

 

noside

 

「祖国にイイ女でもいたのか!?だからか・・・っ!?」

 

「・・・、ジェーンっ・・・。」

 

理由を教えろとばかりに叫ぶジェーンの言葉に、エドはただ、何も言えなかった。

 

今更弁明したところで分かってもらえるなど、そんな都合の良い事など、最初から考えていなかった。

 

二本のシュベルト・ゲベールで攻撃をすべて捌き、返す一閃でフォビドゥンブルーの左側のシールドを保持するアームを切断、体制を崩したフォビドゥンブルーを蹴り飛ばした。

 

「あの時・・・、私に言った言葉は嘘だったのか・・・!?」

 

「・・・。」

 

血を吐く様に問いかける彼女の声に、エドは答える事が出来なかった。

 

何を言っても、今の自分の言葉は彼女にとっては偽りにしか響かない、だから、本当の想いを伝えられないのだ、と・・・。

 

「あの言葉が嘘なら・・・、私は何を信じればいい・・・!?何を想えばいいんだ・・・!?」

 

何も答えない彼に怒りながらも、ジェーンは過ぎし日々を思い返していた。

 

自分の質問に答えながらも、自分を優しく抱き留めてくれた広い胸、重ねた肌の感触、その全てが暖かく、彼女を満たしていた。

 

それが偽りだと思いたくなかった、なのに、エドは自分を置いて行った、そのせいで、自分はその満たされていた時の想いを嘘だと感じてしまっている、彼への想いを嘘だと偽れたら、どれほど楽か・・・、彼女にはそれが出来なかった。

 

そうしてしまえば、自分が彼に対して抱いている想いを否定してしまうから、そんな事は嫌だから・・・。

 

「答えろ・・・!私の質問に答えろ!!エドォッ!!」

 

何か答えてほしかった、自分の気持ちに応えてほしかった。

 

それが叶わない今、もはやどうとでもなれとばかりに彼女は涙の滴を零しながらも、トライデントを構え、ソードカラミティに向けて突進してゆく。

 

それは、特攻にも近しい悲壮感すら纏って・・・。

 

「(今も、あの言葉に嘘はないぜ、ジェーン・・・!だけどな、連合を脱走した時に決めたんだ、誰が敵になっても、南米の英雄として戦い続けると!!)」

 

あの時聞かれた言葉に打たれ、自分は彼女に惚れた。

 

だが、それでも自分は脱走兵で、彼女は連合の刺客なのだ、もはやどうする事も出来なくなっていたのだ。

 

だからこそ、自分が出来る事は黙して戦う事、たったそれだけの事だった。

 

フォビドゥンブルーを迎え撃つため、彼は二本のシュベルト・ゲベールを重ね合わせ、敵を討ち取らんと振りかぶった。

 

互いの得物の間合いに入った、まさにその時、彼らに向けて光が浴びせかけられた。

 

「「っ・・・!?」」

 

別の誰かからの攻撃かと、彼らは攻撃が当たる一歩手前で機体を止まらせ、その光の発生源を確かめようとした。

 

『う~ん・・・、あっ!好きな女性のタイプは!?』

 

『ふっ・・・、ふふっ・・・、はーっはっはっはっ!お前っ、面白いな!そんなインタビューをしてきたのはお前が初めてだよ!!』

 

「これは・・・、前のインタビューの時の・・・?」

 

流れてきた音声と、濃霧をスクリーン代わりに投影された映像には、ジェスの質問に軽妙に答えるエドの姿が映し出されていた。

 

『いいぜ、答えるよ、その質問を前に俺にしてきた奴さ、俺の胸に飛び込んできてくれるソイツが、俺にとっては最高の女さ、そこにいる美人な御嬢ちゃん方よりもな。』

 

「エド・・・、あなた・・・!」

 

「ジェス、セシリア、シャルロット・・・、あいつ等か・・・。」

 

この映像を流している人物達が、先ほどまで自分と行動していた者達だと気付いたために、エドは表情を綻ばせた。

 

そして、同時に自分が早まった真似をしなくて済んだと、何処か安堵した様な表情も浮かべ、目の前にいる最高の女に意識を戻した。

 

「何故・・・、何故私にも声をかけてくれなかった・・・、あなたの祖国を護るためなら、私だってその覚悟はあったのに・・・。」

 

どうして自分も一緒に連れて行ってくれなかったのかと、ジェーンは涙ながらに彼に問うた。

 

これほどまで自分を愛してくれているのなら、自分もそれに応えるために彼と共に戦うつもりでいたのだから・・・。

 

「これは俺の我儘なんだ、そんな事のために、お前を巻き込みたくは無かったんだ。」

 

だが、エドは彼女を愛しているからこそ、自分の我儘で傷つく事をさせたくなかった、だからこそ、自分だけが苦しめばいいと、独りでここまで来てしまったのだ。

 

しかし、彼はそれが大きな間違いだったと、すれ違ってしまった原因だと、後悔と共に感じさせられていた。

 

「あなたは私の英雄なんだ・・・、ずっと付いて行くって決めたんだ・・・、だから・・・、もう離れないさ・・・。」

 

「やれやれ、流石は俺が惚れた女だぜ、頑固なのも筋金入りだぜ・・・、だが、此処まで言い寄られて悪い気はしねぇさ。」

 

トライデントを捨て、自分の機体に寄り添ってくるフォビドゥンブルーをしっかりと掴みながらも、彼は感謝の念に包まれていた。

 

そして、早くここから出て、生身の愛しい女と抱き合いたいと、心の底から願ったのであった・・・。

 

sideout

 

sideセシリア

 

「さっきのは助かったぜジェス、改めて礼を言うよ。」

 

それぞれの機体から降りた私達は、何事も無かった事を喜びながらも機体の足元に集まりました。

 

エドさんはジェスさんの映像のお陰で助かったと、笑いながらも彼に礼を言われておりました。

 

「いや、俺は何もしてないよ、セシリアとシャルロットが先に気付いてくれなきゃ、俺も止められなかったからさ。」

 

私達に手柄を譲って下さるおつもりなのでしょうか、ジェスさんは自分は何もしていないと謙遜していらっしゃいました。

 

そのセリフを言わねばならないのは、寧ろ私達の方なのですが・・・。

 

何せ、私達は止めたいとは願えど、それを成すための手段を持ってはいませんでしたし、それに何より、大切な御方を喪ったと言う苦しみは、この身に染みて存じ上げております、だからこそ、何事も無かった、それだけで良いのです。

 

シャルさんも私と同じ心持だったのでしょう、自分は何もしていないと、微笑みながらも首を横に振っておられました。

 

お互い、喪う辛さを共有した身です、人形でなくなっても、そう言ったところは共感し合えるのです。

 

「そうか、二人にも礼を言うよ、あぁ、悪いけどなジェス、この事は報道しないでくれよ?気恥ずかしいからさ。」

 

あらあら、南米の英雄さんも、プライベートにもなると、それも女性とのアレコレはやはり秘密にしておきたいのしょう。

 

まぁ、私も芸能レポートを謳って、誰かの色恋沙汰に首を突っ込むのはいかがなものかと感じておりますし、これで良いのでしょう。

 

「良いさ、俺は自分の撮った絵で、誰かに想いを伝える事が出来た、それだけで満足さ!」

 

エドさんの頼みに快く答えながらも、ジェスさんは何処か満足げに頷いておられました。

 

どうやら、彼の信念である、誰かに自分が見た真実を伝える事が出来た事に満足し、それ以上を望まなかったのでしょう。

 

これほどまでに真っ直ぐ生きれると、眩しすぎて目を逸らしてしまいそうですわね・・・。

 

私が感心しておりますと、今まで口を噤んでいらっしゃったジェーンさんが唐突に口を開かれました。

 

「私からも礼は言うけどね、これで終わりじゃないよ、連合は南米の独立を決して認めやしない、だから、次々と刺客が送り込まれてくる、そう思っておいた方が良いよ。」

 

やはりそうですか・・・、たったこの一戦だけで戦いが終わる筈も有りませんし、エースが敗れたとなると、何が何でもその穴を埋める為に軍を送り込む、単純な事ではありませんか・・・。

 

しかし、私に出来る事は無いと言っても過言ではありません。

 

何せ、私達はここの人間ではありませんし、それに、ジェスさんの護衛と言う大きな任務も抱えております、だからこそ、私情で戦闘に介入すると言う事だけは在ってはなりませんし、一夏様が独断で動く事も、本当ならば私達が止めるべきなのですが・・・。

 

ですが、そうも言っていられなくなってきたのは事実ですわね・・・、一夏様、この状況を、貴方様はどうなされますか・・・?

 

心の内で、私は何処かに行ってしまわれた旦那様に向けて尋ねておりました。

 

まるで、心細さと不安を払拭してもらいたいかの様に・・・。

 

sideout

 

noside

 

「ひ~ん・・・、迷ってしまいましたぁ・・・、此処は何処ですかぁ~?」

 

その頃、ジャングルのとある場所にて、一人の女性が道に迷っていた。

 

彼女の名はユン・セファン、ジャンク屋組合所属の技術者で、現在彼女が搭乗している機体、レイスタの設計者でもある。

 

彼女は元々、オーブのモルゲンレーテで技術者として勤めいてたが、連合のオーブ侵攻に際して、極端なドジの連続で脱出船であるクサナギに乗り損ね、置き去りにされてしまったと言う何とも見っとも無い経歴を持っていた。

 

非情に優秀な人材である事は間違いないのだが、如何せんトラブルメイカー的側面も持つため、仲間内からも評価が分かれる人物ではあった。

 

そして、彼女は今回も例に漏れる事無く、遭難一歩手前の段階に差し掛かっていた。

 

「ふぇ~ん・・・、ほぇっ?この先にエネルギー反応ですかぁ~?」

 

泣きかけたところで、機体が何かの反応を掴んだのだろう、彼女に知らせる様にアラートを鳴らしていた。

 

それを聞いた彼女は、何があるのやらと機体を向かわせ、行く手を塞いでいた木々をかき分けた。

 

「ひぃっ・・・!?」

 

だが、その先にあった光景に、彼女は短い悲鳴を上げた。

 

彼女の目に飛び込んで来たのは、開けた大地に横たわる、何十機と言う数のダガーLの無残な姿だった。

 

「これはダガーLさん達・・・、ひどいですぅ~・・・。」

 

機体のコックピットから出た彼女は、目の前に広がるMS達の亡骸を見ながらも呟いていた。

 

よくよく残骸を見てみると、攻撃されたであろう弾痕や刀傷から黒煙が上がっているのが見て取れ、破壊されて間もないと言う事を物語っていた。

 

彼女とてジャンク屋、機械を扱う職についているだけあって、メカに対する思い入れはそれなりに強いのだ、この惨状に心を痛めないはずが無かった。

 

「早く逃げろ、此処は危険だ。」

 

「うひゃぁ!?」

 

そんな彼女の真隣に、突如として男性が現れた。

 

そのあまりにも唐突な登場に驚愕しているが、彼はそんな彼女を置き去りにここから撤退する様に語った。

 

「え、えぇ~・・・?危険ってどういう事なんですかぁ~・・・?」

 

彼が何者かなのかも気になる所だろうが、それよりもまず先に、ここがどうして危険なのか分からなかった彼女は理由を尋ねていた。

 

「あれが見えないか?」

 

彼女の問いに、彼は険しい表情を崩さないままに視線を前に向けた。

 

それに釣られ、ユンもその方向を見て、絶句した。

 

彼女の驚愕は当然の反応であると言えよう、何故ならば、そこでは、灰色のバックパックを背負った白の機体と、肩を黒く塗装された黄色の機体が、目まぐるしく機体を交錯させながら激しい戦いを繰り広げていたのだから・・・。

 

sideout




次回予告

歯車が噛み合うように引き合わされた二人は、南米の大地で刃を交える

次回機動戦士ガンダムSEEDASTRAY X INFINITY

運命の邂逅
お楽しみにー。
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