機動戦士ガンダムSEEDASTRAY X INFINITY   作:ichika

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青天の霹靂

noside

 

ジャングルで遭難し、運悪く戦場に入ってしまったユンと、彼女に退避を促すがっしりとした体躯の男性の眼前で繰り広げられる二機のMSの戦闘は苛烈を極めていた。

 

どちらも、苛烈な攻撃を繰り出し、まるで申し合わせたかの様に華麗に回避していく。

 

それは一見、MSで行われている演舞の様にも見て取れたが、時折バイタルエリアを掠める様な攻撃もあり、双方とも本気で相手に向き合っている事が伝わってきた。

 

「あの二機のパイロット達・・・、どちらも只者ではないな・・・。」

 

そのあまりにも苛烈な戦闘に、黒髪の男性はしみじみと呟きながらも、あまりの状況の悪さにどうすべきかと頭を悩ませていた。

 

このまま気付かずに見過ごしてくれれば一番ありがたいが、こうも近くまで来てしまったのだ、気付かれるのも時間の問題だろう。

 

そして、二機とも彼等の方に来られては、作業用MSのレイスタでは太刀打ちできない所か、ものの数秒で灰に還される恐れもあった。

 

「まだ気付かれてはいない、早くここから離れろ!」

 

だが、ここでじっとしている訳にもいかない、一刻も早く立ち去り、脱兎の如く逃げる事が先決だと、彼は隣でフリーズしているユンに転進を促した。

 

だが、彼女は呆然としており、彼の言葉が届いていないようだった。

 

「おい!聞こえてないのか!逃げろ!!」

 

「はひゃぁ!?わ、わかりましたぁ!!」

 

彼女の体を揺さぶると、ユンはやっと状況を呑み込めたらしく、青くなりながらもどこに行くべきかと辺りを見渡していた。

 

だが、そんな彼らに気付いたのだろうか、二機のMSが突如として戦闘を止め、ゆっくりと彼等の方へと向き直った。

 

「しまった・・・、遅かったか・・・!」

 

「はわわわ・・・!どどど、どうしましょ~!?」

 

気付かれてしまった事にパニックになるユンを宥めながらも、彼は歯噛みした。

 

ここで背を向ければ間違いなくどちらかに撃ち抜かれて御陀仏だ、手があるとすればひとつだけ、反対側に見える獣道に何とかして逃げ込む事ぐらいだった。

 

自分は戦いからは逃れられないか・・・、そう苦笑しながらも、彼はある方法で突破する事にしたようだ。

 

「操縦を代われ、ここを切り抜ける!」

 

「ふぇぇ~!?逃げ切れるんですか~?」

 

言われるがままにシートを譲りながらも機体のコックピットに戻った彼女は、彼にどうするのかと尋ねていた。

 

「ASTRAYタイプのOSか、装備は、足に固定用のクローがある、これならばやれる・・・!捕まっていろ!!」

 

彼女の問いなど耳に入っていないのだろうか、彼は一瞬で機体の特徴を掴みながらも、逃げ切れる事を確信していた。

 

大きく息を吐き、カッと目を見開きながらも彼は操縦桿を動かし、機体を操作した。

 

その動きをトレースし、レイスタはまるで拳法の型をするかのような動きを見せた。

 

「俺の名はバリー・ホー、元クサナギのMSパイロットだ!」

 

「あのクサナギに乗ってたんですかぁ!?私は乗り損ねたのに!」

 

男性、バリー・ホーは彼女の驚愕など知った事かとばかりに機体に取り付けられていた工具が入ったアタッチメントを全てパージし、目の前の二機に向けて走り出した。

 

そんな彼の行動を敵対行動だと見たのだろうか、モノアイを持った黄色の機体がトマホークを振りかぶりながらも彼らに向けて突っ込んできた。

 

その振りかぶった腕を、バリーは右足を蹴り上げながらも展開した脚部クローで捕縛した。

 

そのままの状態でスラスターを吹かし、飛び上がりながらもモノアイの機体の体制を崩させた直後、クローを離し、勢いを付けた蹴りを背面へと叩き込んだ。

 

あまりに強烈な蹴りだったのだろう、黄色の機体はそのまま地に倒れてしまうが、彼の攻撃はまだ終わってはいなかった。

 

その蹴りの反動を利用した彼は、レイスタを宙返りさせがらも体制を整え、あまりの事態に硬直していた白い機体の胴体にとび蹴りを食らわせ、地面へと倒した。

 

バリーは元々、無重力における拳法を極めんと修行を積んでいたが、偶々地球に降りていた際に連合のオーブ侵攻に巻き込まれ、以後MSパイロットとして活躍することになり、彼が修めてきた拳法を機体が完全にフィードバックできる程になっただけであり、これぐらいは朝飯前なのであろう。

 

まさに華麗の一言に尽きるその蹴りの応酬だったが、今の目的は撃破ではなく逃走だ、二機が起き上がる前に、彼は全速力で機体を走らせ、ジャングルへと逃げ込んだ。

 

「に、逃げられるんですかぁ~!?」

 

「この機体でこれ以上やり合ったら間違いなく死んでいた、今は逃げる事だけを考えろ!」

 

あまりに激しいアクロバティックの連続にグロッキーになっているユンの言葉に答えながらも、彼は少しだけ後方を振り返りながらも奇妙な感覚を拭い去れないでいた。

 

「(あの白い機体のパイロット・・・、どこかで・・・?)」

 

どこかで会った事がある相手かもしれないと、バリーは感じていたが、今は確認をしている暇ではないと、安全な場所まで機体を急がせた。

 

心の何処かで燻る念を隠すようにしながらも・・・。

 

sideout

 

sideコートニー

 

「くそっ・・・!なんだあのMS・・・!?拳法で俺達をいなしたのか・・・!?」

 

ザクを立ち上がらせながらも、俺は先程の機体に対して少々悪態をついた。

 

致し方あるまい、何せ、これまでに無いほど興奮した戦いに水を差され、このMSの姿を見られてしまった上に逃走を許してしまった、情けない事この上ないな・・・。

 

だが、もう熱もすっかり冷めてしまった、これ以上の戦いは機体への負荷を大きくするだけだろうし、ここら辺で撤退しておくとしようか。

 

「一夏、立てるか?」

 

すぐ傍で倒れていたストライクに手を貸しつつ、パイロットである一夏に声をかけた。

まさかやられてはいないだろうが、あんな強烈な蹴りを喰らったんだ、気分が悪くなっているだろう。

 

『俺は何ともない、だが、ストライクのバッテリーが心許無いな、補給を頼めないか?』

 

「お前、案外図々しいな。」

 

敵か味方かも分からない様な奴に、それもザフトを散々苦しめたストライクに乗ってるお前にザフトの人間がどういう感情を抱くのか分かっていないのだろうか・・・?

 

いや、この男はそこまで愚鈍ではない、寧ろ、大胆不敵で、そして計算高い奴だ、何となく理解できる。

 

『ザフトに初披露するこのI.W.S.P.のデータをこの模擬戦で譲ったんだ、安いもんだろ?』

 

痛い所を突いて来る男だ・・・、確かに、こんなストライカーはこれまで見た事が無かったし、大体の戦闘データも録れた、兵器開発者としてはこれ以上ない収穫だろうが、な・・・。

 

『良いじゃない、コートニー、彼は敵対しないわ、私が保証する。』

 

どうするべきか悩んでいた時だった、VTOLからこの試験稼働の様子を録っていたジャーナリスト、ベルナデット・ルルーの声が通信機から届いた。

 

『ルルー女史?何故貴女が?』

 

『インタビュー以来ね、織斑一夏、さっきの戦闘は見事だったわ、まさかコートニーと張り合えるパイロットだったなんて思いもしなかったわ。』

 

どうやら、ルルー女史と一夏は顔見知りの様だな、恐らくはこの前の≪切り裂きエド≫との面会の際に出会ったのだろうな・・・。

 

『それと・・・、コートニーも貴方も、どうして堅苦しい呼び方なのよ、ベルで良いわよ、と言うより、そう呼びなさいよ。』

 

「『えっ?』」

 

そんな所まで一緒なのか・・・、つくづく悪縁がありそうだな・・・。

 

『分かったよベル、それよりも早く補給させてくれ、バッテリーがレッドゾーンに入っちまった。』

 

『はいはい、案内するから付いて来て、それとコートニー、試験は終了よ、監視所まで撤退するわ。』

 

「了解、一夏、逸れても責任は取らないからな?」

 

『分かってるって、気を付けるさ。』

 

本当に分かっているのかは疑問だが、指令を受けた以上、案内しないわけにもいかないな・・・。

 

やれやれとタメ息を吐き、ストライクを先導するために、俺は機体を動かした。

 

だが、この時の俺はまだ気づいていなかった。

 

一夏との出会いが、俺の運命を大きく変える事になると・・・。

 

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「大陸をミサイル攻撃するだって!?」

 

南アメリカ軍第33仮設野営基地に、エドの驚愕の言葉が木霊した。

 

海岸沿いでの戦闘後、ジェーンを連れてこの基地に戻った彼等は、彼女から齎された情報に愕然としていた。

 

「連合は本気だよ、私とレナ、そしてモーガンがアンタの討伐に失敗したら、南米に向けてミサイルが降り注ぐ手筈になっている。」

 

三人のエースによるエドの抹殺に失敗した場合、連合はエドだけではなく、南米そのものを焼き払うべく無数のミサイルで攻撃を行うという、まさに狂気の沙汰である作戦という以外、何も言えないものだった。

 

その情報を伝えたジェーンは、エドの口利きもあって南米軍に迎え入れられ、これからは主に海軍方面で戦力になる事を約束していた。

 

「そんな馬鹿な事を・・・!」

 

「無茶苦茶ですわ・・・!これでは一般人の皆さんにどれほどの被害が出る事か・・・!」

 

彼等の話を聞いていたシャルロットとセシリアは驚愕しながらも自分達の耳を疑っていた。

 

自分達でさえ一般人に直接被害が出る様な真似はした事が無かったため、勝つためならば非戦闘員すら抹殺するというその狂気に、自分達とは違う恐怖を見たのだろう。

 

「い、いくら連合でもそんな事は・・・。」

 

「いや、プラントに核を撃ち込んだ連中だ、いざとなれば形振り構わずに攻撃してくる、勝つためにな・・・。」

 

そんな狂気の攻撃をしてこないよな?と尋ねる様なジェスの言葉を、エドは有り得るという言葉で否定していた。

 

そこに所属していたため、彼は誰よりも連合の事情を分かっているのだから・・・。

 

「このままじゃあ、二人を倒したところでこの国に被害が出るばっかりだよ、どうすんだい?」

 

「・・・。」

 

早く対処法を考えた方が良いと言う風に話すジェーンの言葉を受け、彼は暫しの間考え込むような表情を見せ、何かを思い付いた様に口を開いた。

 

「後顧の憂いを断つためにも、スッキリさせてから二人と戦おう。」

 

「何か方法があるんですか?」

 

奥の手があるとばかりなエドの言葉に、シャルロットはその手段が気になったのだろう、一体どの様なものなのかと伺いを立てていた。

 

「パナマ宇宙港からレイダーで一旦宇宙に出て、宇宙からミサイル基地を強襲する、一度やった事がある方法だ、何とかしてみるさ。」

 

「やられる前にやるって訳だ、八・八作戦の再現だな。」

 

「なんて大胆な方法ですの・・・?御身体が危ないのでは・・・?」

 

エドがかつて行った時の作戦を思い出したジェーンは納得の言った様な表情をしていたが、常識の斜め上の運用を行う事に、セシリアは表情を引き攣らせていた。

 

まぁ、宇宙に上がってすぐに降下と言う、人体にあまりに優しくない方法なのだ、正直言ってなるべく避けたい方法なのは確かだった。

 

「なぁに、フル装備での行軍よりは楽さ、俺はすぐに準備に入る、ここの護りは任せたぞ、ジェーン。」

 

「あぁ、ここはこの≪白鯨≫に任せな!護り切ってみせるさ。」

 

自身の恋人に、自分がいない間の国土防衛を依頼し、彼女はそれを快諾した。

 

「くっそ~!俺も付いて行きたいけど、アウトフレームじゃ宇宙には出られないしなぁ・・・!!」

 

エドの取材の為にここに来ていたジェスは、彼と彼について行きたいと思いはしたが、アウトフレームでは大気圏への再突入が出来ない為に動向を断念せざるを得ないため、それに対して悔しそうに拳を握り締めていた。

 

それを見ていたシャルロットは、自分が空戦機であるレイダーに乗っていた為に同行させられるのではと内心でヒヤヒヤしていたため、ホッと胸を撫で下ろしていた。

 

「ジェス、ミサイルが本当に飛んできたらお前の出番だ、何としても生きのこって、連合の非道を世界に伝えてくれ、人々の為にな。」

 

そんな彼の思いに気付いたのだろう、エドは心配いらないとばかりに微笑み、もしもの時があればお前の力が必要なのだと伝えていた。

 

「あぁ・・・!分かったぜ!気を付けてな!!」

 

自分にやるべき事がある、それにシビれたのだろうか、ジェスは強い意志を瞳に宿しながらも頷いていた。

 

彼の意志に満足したのだろう、エドは深く頷いた後、出撃準備の為に部屋を出て行った。

 

その直後、部屋に備え付けてあった通信機が着信音を発した。

 

「こちらジェーン・ヒューストン、どうした?」

 

通信機の向こう側の相手に呼びかけながらも、ジェーンは何事かと確認を取った。

 

『こちら織斑一夏、エドワード・ハレルソン、若しくはジェス・リブルに代わってほしい。』

 

「なに・・・?分かった、少し待て、ジェス、織斑一夏という奴からだ、知り合いか?」

 

一夏と名乗った男の言葉を不審に思いながらも、何かしらの要件があると感じ取ったのだろう、ジェーンはジェスに受話器をジェスに手渡していた。

 

彼女の言葉に、セシリアとシャルロットは自分の夫が何処に行ってしまったのか気が気でなかったのだろう、安堵した様な笑みを浮かべながらも互いに顔を見合わせていた。

 

「あぁ、セシリアとシャルロットの旦那だよ、俺の護衛に付いて来てくれたんだけど、どこに行ってたんだ?」

 

「お嬢ちゃん達の男?まぁ、エド以上にイイ男なんていないだろうけどね」

 

ジェスの言葉を聞きながらも、ジェーンはなるほどと言う様な表情を浮かべていたが、自分の恋人が一番だと言う様に挑発的な笑みを浮かべていた。

 

なんだかんだで、彼女もエドへの想いは深いのだろう。

 

「こちらジェス、どうしたんだ一夏?」

 

『ベルがお前に、いや、南米軍に伝えたい事があるらしい。』

 

受話器の向こうにいる一夏は、何か重要な要件があるらしい声色で彼に伝えていた。

挨拶も抜きに用件だけを話すと言う事は、相当急ぎの事なのだろうとジェスは察した。

 

「ベルも一緒って・・・、お前一体どこにいるんだよ?セシリアとシャルロットも心配してるぞ?」

 

自分の護衛は兎も角として、嫁さんをほったらかして何処に行っているんだと、ジェスは少々非難を籠めた質問を投げかけていた。

 

まぁ、一夏もその辺りの事は理解しているだろうし、アフターケアは欠かさないだろう。

 

『あぁ、今はザフトの中立地帯監視所にいるんだ。』

 

「はぁ!?なんだってぇ!?」

 

一夏が答えたまさかのポイントに、彼は驚愕のあまりに声を張り上げて叫んだ。

 

『耳元ででかい声を出すなよ・・・、まぁいい、エドか、話の分かる南米軍の誰かを連れて来い、ザフトから伝えたい事があるそうだ、俺も彼等といる、それじゃな。』

 

「あっ!?一夏・・・!?」

 

要件を言うだけ言って切られた通信に、ジェスは頭痛がした様な錯覚を覚えた。

 

なんで一夏はこうもフリーダムなのだろうか、と・・・。

 

「どうしたんだい、ジェス?」

 

「・・・、一夏がザフトの基地まで来いってさ・・・、南米軍に通達したい事があるとか言ってたな・・・。」

 

「「「えっ!?」」」

 

ジェスが発した思わぬ言葉に、女性陣は驚愕に目を見開いていた。

 

何故南米軍寄りの彼がザフトと行動を共にしているのか、そして何故ザフトのメッセンジャーの様な真似をしているのか、情報があまりにも少なすぎて何が何だか分からないと言う事が本音だった。

 

「と、兎も角、指定された場所に行ってみたら分かるんじゃないかな?別段、拘束されてるって感じの声のトーンじゃなかったしさ。」

 

「そうだな、ザフトの思惑ってものが何なのか、ハッキリさせに行こうじゃないか。」

 

行ってみれば分かると言う彼の言葉に頷き、ジェーンは行くなら早く行くぞとばかりに、ジェスと共に部屋を出て行った。

 

裏表のない人だと苦笑しながらも、セシリアとシャルロットは一夏がどうしているのか気になっていたため、彼等を追い、自分達のMSの下へと向かった・・・。

 

sideout

 

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「なるほど・・・、I.W.S.P.・・・、確かに強力な武装だ、全局面に対応可能な武装類に高度なセンサー、そして飛翔能力を付与できるほどのスラスターが装備されているとはな・・・。」

 

ザフト中立地帯監視所の一角で補給を受けているストライクのコックピット内で、ザフトのテストパイロットであるコートニー・ヒエロニムスは開示されたデータに目を通しながらも、感嘆した様な言葉を呟いていた。

 

彼はMSに乗って戦闘を行う軍人では無く、MSやその装備を開発する機関に所属しており、扱い的には一般人であり、研究者であった。

 

今回はザフトからの依頼を受けたため、開発された新型MSのテストを行っていたに過ぎないのだ。

 

「だが、このストライカーはあまりにもアンバランスだな、これではX105が元々持っている運動性の高さを殺す事になってないか?」

 

『ご名答、バックパックの重量の増加のせいで後方にモーメントがずれてるんだ、お陰で、ストライクの良さが四分の三ぐらいに減っちまってる、これしか使えるストライカーが無かったのと、俺の適正に合わせて使ってるだけさ。』

 

自分の推測に答える一夏の通信機越しの言葉に、彼はやはりかと言った様な表情を浮かべていた。

 

初見では、一夏の操縦技術によって動かされていた時は、彼自身が昂ぶっていた事もあってこの問題点に気付けなかったが、冷静になってデータを取り合ったからこそ分かる、I.W.S.P.は、良くも悪くも発展途上にあるストライカーなのだと。

 

「で、そのザクの感想はどうなんだ?機密扱いの機体なんだ、貴重な意見を聞かせてくれよ?」

 

『バランスが良い事だけは認めるが、武装のリーチがイマイチだな、ブレードトマホークは良いんだが、折角核エンジン積んでるんならビーム主体でも良かったんじゃないか?』

 

ワーカホリックなのかなんなのか、彼は自分が操縦していた機体に別の人間が乗っている事を気にせずに、その機体の率直な感想を尋ねていた。

 

試作機故にそれほど出来が良い訳でも無いが、ザフトのGシリーズのデータを流用して開発されたのだ、それなりに高性能な事だけは確かな機体を、評価を求められた一夏は中途半端と評した。

 

『ストライクよりは強力な機体だろうけど、拡張性が悪いし、何より単体じゃ飛べないってのもなぁ・・・。』

 

「それは俺も思ったところだが、何せザフトのGシリーズはそれぞれ理由があって本国に無いんだ、お陰でデータが無いからフィードバックし難いんだ。」

 

予想していた指摘に御尤も言う様に頷きながらも、彼はそれを見抜いた一夏の能力に驚き、そして確信していた。

 

やはり、自分が感じていた感覚は間違いではなかったこと、そして彼がその感覚にふさわしい男であると・・・。

 

『コートニー、一夏、お客さんが来たわよ、こっちに合流して頂戴。』

 

そんな時だった、格納庫内に放送が入り、ベルが彼等を呼びつけていた。

どうやら、呼んでいたジェス達が到着したのだろう。

 

「了解。」

 

『やっとか、待ち草臥れたぞ。』

 

其々に呟きながらも、二人は機体からラダーを使って降り、格納庫の外に出た。

 

そこには、アウトフレームとフォビドゥンブルー、そしてレイダーの姿があり、パイロットと同乗者達が降りてくる所だった。

 

「ん・・・?あれはナンバー12・・・?」

 

彼等に近付きながらも、コートニーの目はアウトフレームに釘付けになっていた。

 

「どうしたんだコートニー?」

 

その怪訝の表情に気付いたのだろう、一夏は彼の顔を覗き込みながらも何があったのかと尋ねていた。

 

「いや・・・、俺の思い過ごしだろうが・・・、あの機体、ザフトのMSじゃないのか・・・?」

 

「おっ、流石は技術者だな、あの機体はジェネシスαで未完成のまま放置されていたらしい。」

 

「あそこに・・・?じゃあ、あの機体は本当に・・・?」

 

自分の疑念に答えるように、かの機体の出所を語る一夏の言葉を受け、コートニーはその疑念を確信へと変えつつあった。

 

だが、今は機体の詮索よりもやるべき事があると、彼はその結論を頭の片隅へと追い遣り、降りてきた者達の方にいるベルの方へと歩み寄って行く。

 

そんな彼の反応が気になったのだろうか、一夏は不思議そうな顔をしながらも彼の後を追った。

 

「久し振りねジェス、美女を三人も侍らせてやってくるなんて大スクープね、スターでも滅多にない事よ?」

 

「からかわないでくれよベル、それぞれの旦那達に俺が殺される。」

 

二人が近づいてゆくと、からかう様なベルの声と、勘弁してくれと言う様な、そして自分が大変な目にあう未来を予見し、震えているジェスの声が聞こえてきた。

 

ジェスの言う旦那達に合点がいかなかったのか、コートニーは怪訝の表情を浮かべながら首を傾げたが、その旦那達の片方に該当していた一夏は、ジェスに対してそんなに怯えずともと苦笑していた。

 

「と言うよりさ、まだ南米にいるなんて思っても見なかったよ、何やってるんだ?」

 

「新型機のテストの取材をしているのよ、地球に居たからって理由でね。」

 

「またプロパガンダか?売れっ子キャスターは忙しいな。」

 

目的であったエドへの取材が終わったはずの彼女が、何故まだ南米の地にいるのか疑問に思ったのだろう、彼は目的を問うた。

 

その問いに、隠しても無駄だと感じたのだろう、ベルは仕事の内容をほんの一部だけ語った。

 

別段、これと言った他意は無かったのだろうが、ジェスは彼女の言葉の端から何かを、それも一つの事に執着している様な自分に対しての嫌味を感じ取ったのだろうか、少々棘のある言葉で返していた。

 

ファーストコンタクトが良くない形であったため、この二人は今だ相容れ無いのだろう。

 

「力を示す事も、平和のためには必要なのよ・・・、でも、あの機体に積まれているモノが、本当に平和を齎すのか、私にはサッパリ分からないけど、ね・・・。」

 

その彼の言葉を受け、仕方のない事だと言いながらも、後半は声のトーンが少々低くなっていた。

 

彼女とて、前大戦を引き起こしてしまった災いが、今また使われている事に対して思う所があるのだろうか・・・。

 

「戦争を起こすのは兵器じゃない、人間だ。」

 

彼女の言葉を聞いていたコートニーが唐突に声を上げ、全員が驚いた様に彼を注視していた。

 

彼の表情からは憤りと、そして僅かな怒りが見て取れた。

 

「兵器に罪は無い、戦争だって、扱う人間が兵器に罪を着せているだけだろうに・・・。」

 

「そうだな・・・、お前の言う通りだ、コートニー・・・、何よりも業が深いのは、俺達人間、か・・・。」

 

彼の想いの一端に触れたのだろう、一夏は苦い表情を浮かべながらも彼を宥める様に呟いていた。

 

彼も、人間の業に背を向け、兵器に罪を着せて消し去った経験があった、それ故に思い知らされているのだろう、自分達人間の愚かさに・・・。

 

「紹介するわ、新型機のテストパイロットのコートニー・ヒエロニムスよ、さっき中立地帯で数十機のダガーLからなる連合軍の侵攻部隊と会敵して、偶々居合わせた一夏と協力して殲滅したパイロットよ。」

 

「なっ・・・!?連合の侵攻部隊だって・・・!?」

 

「しかも、それをたったの二機で殲滅したのか・・・!?」

 

ジェスは侵攻部隊の存在に、ジェーンはたった二機のMSがその大部隊を殲滅したと言う事実に驚愕していた。

 

「一夏・・・、僕達をほったらかしでなにやってるのさ!」

 

「御一人で行かれるなんて・・・、私達は気が気でありませんでしたのよ・・・?」

 

その話を聞いたシャルロットとセシリアは一夏に詰め寄りながらも、各々の想いを口にしていた。

 

まぁ、せめて戦うなら自分達も連れて行けと言いたいのだろう。

 

「すまない・・・、君たちをまた不安にさせてしまったな、今度から気を付けるよ。」

 

死地から戻り、再び愛しい女達に会えた事を喜んでいるのだろう、彼の表情は穏やかな物であり、幸福で満たされている様にも見えた。

 

「イチャ付くのは私への充て付けと捉えていいのね・・・?」

 

そんな彼等を見ていたベルは、米神をひくつかせていた。

 

まぁ、目の前で男女がイチャ付いていれば、相手がいない者は正直居た堪れない気分にもなるだろう。

 

「まぁいいわ・・・、話を戻すけど、先に攻撃を仕掛けてきたのは連合軍の方である事、その映像証拠があると言う事、そして、ザフトはこの戦争には介入しない事を伝えたかったの、呼びだしてしまって申し訳なかったわ。」

 

「いや・・・、ありがたい情報だった、感謝している、悪いのは別働隊を送り込んだ連合の上層部さ、私に全て任せると言っておきながら・・・、くそっ・・・!」

 

ベルの謝罪に気にするなと言いながらも、ジェーンは憎々しげに吐き捨てた。

 

自分は信頼されていなかったと言われたようなものだ、属していた組織からそのような仕打ちがあれば、彼女でなくともそう感じて然るべきだった。

 

「いや・・・!待てよ、おかしいぞ・・・!?」

 

そんな中、何かに気付いたジェスは青くなりながらも叫んだ。

 

その表情からは焦りの色が濃く見受けられており、大変な事に気付いてしまったのだろう。

 

「この大陸にミサイルを撃ち込むつもりなら、別働隊なんて必要ないじゃないか・・・!?それなのにどうして・・・!?」

 

「・・・っ!?じゃあ、ミサイル攻撃の話は・・・、罠だったのか・・・!?私はまんまと使われたって事か!エドを誘き出すために・・・!!」

 

彼の言葉に、今現在の状況の矛盾に気付かされた彼女は、愕然と空を見上げた。

 

奇しくも、遥か彼方へと向かう白い飛行機雲の様な跡がどんどん上へと向かって行くのが見て取れた。

 

それは、エドの乗るレイダーが宇宙へと上がるための物だと、ジェーンは気付いた。

 

この状況は、宇宙で何かがエドを待ち受けているとしか考えられないが、最早時既に遅し、彼は行ってしまった。

 

「エドが・・・、エドが危ないっ!!」

 

残された彼等が出来る事と言えば、ただ彼の無事を祈る事しかなかった・・・。

 

sideout

 




次回予告

灼熱の大気圏において、二人の英雄が凌ぎを削っていた。

次回機動戦士ガンダムSEEDASTRAY X INFINITY

月下の狂犬

お楽しみに~
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