機動戦士ガンダムSEEDASTRAY X INFINITY 作:ichika
side一夏
エドが宇宙から帰還した二日後、南米軍第33仮設野営基地に二組の来客があった。
一組は黄色に塗装されたレイスタから降りてきた、筋骨隆々の男性と、如何にもトロ臭そうなソバカス姉ちゃんだった。
「アンタは、まさか・・・、≪拳神≫バリー・ホー・・・?」
「あぁ、如何にもその通りだ。」
エドの呟きに、彼と向かい合ったバリーは頷きながらも彼を鋭い目で見た後、俺を一瞥して僅かに驚いた様な表情を作った。
どうやら、嘗ての俺との記憶の残滓が僅かに受け継がれたのだろうか・・・?
「お前・・・、織斑一夏、か・・・?」
「あぁ、久し振りだな、バリー。」
俺の方へと歩み寄りながらも、何処か確認する様に尋ねてくる彼の声は何処か震えており、俺との何かを強く感じている様にも思えた。
「何だ?一夏とバリー・ホーは知り合いなのか?」
俺達の関係性に何かを感じたのだろうか、ジェスが俺に尋ねてきた。
俺とバリーは、嘗ての世界で師弟関係にあり、俺はバリーから様々な拳法を学び、それらをISにフィードバックさせる事で力を着けると言った関係であり、それこそ、それなりに強い関係性である事は間違いはないだろう。
しかし、どう答えて良いものか・・・。
嘗ての世界での繋がりを説明しても、ジェスはおろか、他の誰も信じてはくれないだろう。
「まぁ・・・、少し、な・・・。」
だから、こう曖昧に答える事しか、今の俺には出来なかった。
「一夏との関係は察して欲しい、だが、俺はどうやら戦いからは逃れられんようだ、このまま逃げられるとも思えない。」
俺の思いを、迷いを汲み取ってくれたのだろうか、彼は話を逸らす様にこれからの戦いにどう向き合うかと話していた。
戦いからは逃げられない、ならばどう向き合っていくか、それが大切になってくるのだろうか、今の俺には到底出来ない事だろう、な・・・。
「なら、俺に、いや、この南米に力を貸してくれないか?」
そんな時だった、俺達の背後からエドが顔を出し、戦争への協力を依頼していた。
どうやら、少しでも戦力を増強し、名のあるパイロットを引き入れる事での戦意高揚も狙っているんだろう。
指揮官としては、味方のためを思ってくれるいい人だよ、彼は。
「≪切り裂きエド≫・・・、貴方とはヤキンの宙域では敵同士だった、今でもそれは忘れてはいない。」
「・・・。」
バリーの鋭い視線に、エドは何も言わずに彼から目を逸らさなかった。
それは、敵だった者への礼儀なのか、それとも、かつての所業から逃げないという覚悟か・・・。
どちらにせよ、エドはバリーに対して本気で向き合おうとしている事だけは伝わってきた。
「・・・、だが、それも既に過去の事、貴方自身への恨みは無い、これも拳の導き、俺も南米のために戦おう。」
「あぁ、よろしく頼むぜ。」
彼のその心意気に打たれたのだろうか、バリーは表情を緩め、エドと共に戦う事を受け入れたようだ。
それに感激したのだろう、エドは差し出された彼の手を取り、感謝の意を表していた。
「≪切り裂きエド≫に≪白鯨≫、それに≪拳神≫まで加わったとなると、この戦いの勝ちは決まりだねぇ!」
「おぉ!二つ名持ちが三人も!これは良い画になる!!」
南米軍に勢いが付くと、ジェーンは喜びながらもエドに寄り添い、ジェスはこの光景に興奮しているのだろうか、一心不乱にシャッターを切っていた。
しかし、そう楽観視しても良い状況なのだろうか・・・。
何せ、もう一人の客人がそれを伝えに来てくれたのだから・・・。
「そうとも限らんぜ、連合はまだ、兵を投入してくるさ。」
「げっ・・・!アンタは・・・!?」
話が終わるまで待っていたのだろう、ジェスの背後から上質なスーツを身に纏った伊達男が姿を現した。
確か、彼はサー・マティアスの所で会ったっけな・・・?
ジェスは彼に良い印象を持っていないのだろう、思いっきり表情を顰めながらも彼を睨んでいた。
「俺はカイト・マディガン、この野次馬の御守り一号さ。」
「なんだよ、御守りって・・・!?」
しかも一号って・・・、まぁ、俺達が一号って事もなかったんだろうが・・・。
「なんだよ、ジェネシスαでも助けてやったじゃねぇか、ちょっとは感謝してくれてもいいだろ?」
「うっ・・・!」
痛い所を突かれたという風に、ジェスは表情をしかめ、意地でも言いたくないのと言わなければなんかアレだしと言う様な色がせめぎ合っていた。
ホント、コイツは見てて飽きないよ、いろんな意味でな。
「アンタがあの時のジンのパイロットなのか・・・?」
「ん?あぁ、あの時のストライクのパイロットか、そうだ、あの機体は俺が動かしていたのさ。」
俺の問いに答えながらも、カイトは何処か値踏みするかのように俺を見ていた。
まぁ、これぐらいの視線なら慣れている、何せ、もっと酷い時は完全な物扱いだったヤツもあったしなぁ。
それはともかく、あの時は俺の代わりにジェスを護ってくれたようなもんだ、頭下げといても良い相手なのは確かだ。
「あの時は助かった、改めて礼を言う、俺だけではジェスを護り切れてたか怪しかったからな。」
「仕事だったからな、気にするなよ、で、何時まで正体を隠しておくんだ?アメノミハシラのトップガン?」
「なっ・・・!?」
唐突に放たれた彼の言葉に、エドとジェーン、そしてバリーは本当かと言う風に俺達を見ていた。
そういえば、俺達がどこの所属だとか、話した事なかったっけなぁ・・・。
「アメノミハシラって・・・、あのロンド・サハクの城か・・・!?」
エドが何処か勘弁してくれと言うように俺に尋ねてくるがアメノミハシラに一体どんなアレコレがあったんだろうか・・・。
「あぁ、身分を隠していたみたいで悪かった、ちょっとした理由でこの地に出向いたんだ、アメノミハシラとして、この戦争をどうこうしようって気はない・・・。」
それはミナも考えている事だろう、無暗に戦場にアメノミハシラとして介入すれば、余計な敵を作ってしまう事になるからな。
そう、コートニーと会うまでならそうであって欲しかったんだけどなぁ・・・、相変わらず、俺の考えなしに動く癖は治らないか・・・。
「・・・、つもりだったんだけどなぁ、この前、連合の大部隊と交戦しちまったし、俺も間違いなくエネミー認定されてるだろうしなぁ・・・。」
「「・・・。」」
苦笑しながら頭を掻く俺を、セシリアとシャルは何処か残念なモノを見るような目で見ていた。
いや、うん・・・、君らほったらかしにして悪かったとは思ってるけど、そんな顔しなくていいじゃない?一応君らの夫だから、君らの事が本当に一番だから・・・。
「なら、一夏達も南米に力を貸してくれ、アメノミハシラの人間じゃなくて、ジェス・リブルの護衛でここに来た織斑一夏、セシリア・オルコット、シャルロット・デュノアとしてさ?」
そんな俺に、いや、俺達にエドは助力を求めるように参加しないかと尋ねてきた。
「誘ってくれるのは嬉しいが、良いのか?エド達が良くても、俺達余所者を南米軍が受け入れてくれるかなんて分からないぞ?」
そりゃ、いきなりやってきた余所者が仲間と言われても受け入れられんだろうし、何より、そんな奴と戦う事が出来るか不安だろうな。
「大丈夫さ、南米軍の皆は大西洋連邦と戦ってるみたいなもんさ、じゃなきゃ、私も受け入れて貰ってないさ。」
「ジェーン・・・。」
「そうだ、俺を受け入れてくれたんだ、拳に誓い、共に戦おう。」
「バリー・・・。」
余所者でも受け入れてくれると、信念を共に、志を共に抱けるのならばどこの人間だろうと関係ない。
そうか・・・、だから、南米は戦ってこれたのか・・・。
そりゃそうか、どこの人間だ、どこの人種だとか言ってたら纏まる物も纏まらんしな。
「セシリア、シャル・・・、悪いが・・・。」
二人には申し訳ないのだが、この現状を目の当たりにして何もしないままってのは、俺の中にある何かが許さないんだ。
勿論、実戦でのデータを録れるっていう打算も無い訳じゃないけどな。
「もう・・・、私達の旦那様は仕方がありませんわね・・・。」
「エド達と一緒に戦いたいんでしょ?雰囲気で分かっちゃうよ。」
そんな俺に、セシリアはタメ息を吐きながら、シャルは何処か諦めた様に笑っていた。
なんか、俺ってここ最近、二人に迷惑ばっかり掛けてる気がするなぁ・・・、申し訳ない限りだよ、ホント・・・。
「私達も、このまま見て見ぬフリをするのは不義にも程がありましてよ?」
「折角マディガンさんが来てくれたんだし、ジェスの護衛はお願いしてもいいんじゃないかな?」
「えっ・・・?」
シャルの言葉に、ジェスの表情が硬くなった。
いや、うん、今の発言は流石にどうかと思うぞ、シャル・・・。
「良い女達だな、羨ましいぜこの色男。」
「分かってくれるか?アンタとは仲良くなれそうだ。」
何処かキラキラした目で俺の嫁さん二人を見るカイトの言葉に同意し、俺も頷いておいた。
この二人の魅力が伝ってるんなら、俺としても嬉しい限りだよ。
それは兎も角、二人がここまで言ってくれるなら、応えなければ男が廃ると言うものだ、腹を括るとしよう。
「ごめんな、二人とも・・・、エド、俺達三人の力、この戦いのために使わせてくれないか?」
「勿論だ、よろしく頼むぜ!」
「助っ人が更に三人も加わって、此奴は勝ちも決まったもんだ!」
「だといいがな、この次の相手は強敵だぞ。」
勝ちは決まったとばかりに笑うジェーンを窘める様に、カイトは自分が持ってきた情報を話し始めた。
「次の敵はレナ・イメリア、≪乱れ桜≫の異名を持つエド達の教官さ、その技量はコーディネィターさえも凌ぐと言われてる。」
≪乱れ桜≫か・・・、やけに雅な通りなじゃないか・・・、だが、エド達の教官という事ならば、その技量は正しく本物だろう。
「やけに詳しいな、何でそこまで知ってるんだ?」
「俺は強い女が好みなんだよ。」
「へぇ、そうだったのか?」
「勿論、か弱い女性も大歓迎だ。」
「ただの女好きじゃねぇか!!」
なんだかんだ言いながら、この二人って実はナイスコンビなんじゃないか?
まぁ、凸凹コンビは最初はこんなもんだろうな。
「レナが強いのは良く知ってるさ、何せ私でも勝てなかったんだ。」
≪白鯨≫が勝てなかった相手となると、相当ヤバい相手なのは確かなんだろうな。
そんな相手がこれから来るとなると、流石に気が滅入るな。
だが、本当の問題はそこじゃない筈だ。
そんな事を指摘する為だけにわざわざこんな所に来ないだろう、もっと大事な事がある筈だ。
「それだけじゃない、ここの兵士はエドに頼り過ぎてる、エドがやられればすぐに瓦解するだろうぜ。」
彼のその発言に、その場の空気が凍りついたのを感じた。
俺も薄々は感じていた事だが、口にしてはいけない内容だろうに・・・。
「なんて事を言うんだ!!」
「事実だろ、それに、ここにいる人間なら分かっているだろうぜ。」
あぁ、その通りだ、俺もセシリアも、シャルも気付いていたさ。
確かにエドは強いが、自分に全てを背負い込もうとしている所が危うさだ、それをフォローできる人間がジェーン以外にいないと言うのも、大きな問題の一つだ。
「いいや、俺はそうは思わないぜ。」
「ほう?なんでだ?」
カイトが言った言葉を否定し、エドは笑いながらも持論を語ろうとしていた。
彼の真意が聞きたかったのだろうか、カイトは薄く笑いながらも言葉の続きを待っていた。
「連合は強力で強大だ、普通なら独りで戦うなんて馬鹿げた事なんてやろうとすら思わないだろう、だけど、俺はただ、目的を抱けたのなら、どんなに強大な相手にも立ち向かえる事を証明しているだけさ、それが伝わったら、俺はもう必要ない、皆がそれぞれに戦っていけるからな。」
なるほど、彼は自分が先頭に立って戦って行く事でその後に続く人々に戦い方を、生きざまを示しているのか。
だから、自分が倒れても、その志を引き継いでくれる人がいるからこそ戦えるのか・・・。
俺には、昔の俺には考え付かない事だったろうな、独りだった俺には、な・・・。
「俺も、この南米での貴方の戦いをニュースで見て、その想いが伝わってきたからこそ、共に戦いたいと思った。」
彼の言葉に頷きながらも、バリーは自分が影響を受けたというニュースについて語っていた。
やはり、誰かの心を動かすのが報道の、ジャーナリストの神髄なのか・・・、ジェス、お前のやってる事の本当の意味が、俺にも漸く分かった気がするぜ。
「あぁ、こうやって人は繋がっていける、想いを共有出来る、だからこそ戦っていけるんだ。」
「そうさ、まぁ、エドが負ける訳ないけどね。」
「そうさ、俺は英雄だからな。」
自分に寄りかかりながらも話すジェーンの言葉に頷きながらも、エドは自分は独りでは無いと強く感じている様だった。
英雄も所詮は人間、か・・・、俺が考えていた事とはまるで違うな・・・。
それだけに、俺がどれほど急ぎすぎていたのか、本当に思い知らされた気分だよ・・・。
「くぅ・・・!なんて痺れる言葉なんだ・・・!!決めたっ!!俺はこれからもエドを追い続けて、その一瞬を取り続けてみせるぜ!!」
そんな彼の言葉に感激したのだろうか、ジェスは表情を輝かせながらもエドを見ていた。
コイツも、どんだけ感化されやすいんだかな・・・。
「あぁ、これからも良い画を頼むぞ、ジェス!」
「あぁ!!」
エドの言葉に興奮しながらも頷き、ジェスは今にも走り出しそうな勢いでいた。
「おいおい・・・、あまりコイツを焚き付けないでくれよ、俺達の仕事が増えちまうだろうが。」
「だったらほっといてくれよ!」
「ははは、ちがいねぇや。」
「なんでエドまで・・・!?」
呆れるように言うカイトの言葉と、その言葉が間違いないという風に笑うエドの言葉に、彼は声を上げていた。
うん、ジェス、やっぱりお前、素直な分弄りやすいんだな・・・。
まぁ、それはさておき・・・。
「ま、そういう訳だ、俺達が共に手を携えられれば、負けはしない、だろ?」
まだ騒いでいるジェスを尻目に、エドは俺達を順に見ながらも問いかけてきた。
どうやら、仲間としての同意を求めているんだろう、そんな色が伝わってくるよ。
仲間として受け入れてくれたのなら、応えねば無礼というもの、俺達は全くの同時に頷いて、これから共に戦っていくという意志を示した。
「あの~・・・。」
まさにその時だった。
この場に相応しくない、あまりにも気の抜けた声が俺達の耳に届いた。
振り向くと、そこにはソバカスの姉ちゃん、ユン・セファンが何処か困ったような表情をして立っていた。
そういえば、いたな、この人・・・、あまりにも重い話だったから、存在を忘れてたよ・・・。
で、どうしたんだろうか・・・。
「あのぉ~・・・、私はどっちに帰ればいいんでしょうかぁ~・・・?道に迷ってしまってぇ~・・・。」
『・・・。』
な、なんて空気の読めない人なんだとばかりに、全員がどうすべきかと困惑の表情を浮かべていた。
なんとまぁ、締まらないなぁ・・・。
sideout
noside
「こっちだ、付いて来てくれ。」
南米軍第12基地の格納庫の前に、≪切り裂きエド≫ことエドワード・ハレルソンに連れられた一夏がいた。
なんでも、エドが会わせたい者達がいると言う事で、一夏は彼の案内でここにやって来たのだ。
「まさか、よそ者の俺に部隊を預ける気か?」
エドの意図に合点がいったのだろう、一夏はまさかと言う風に尋ねていた。
その表情からは、まさか自分が南米軍の指揮官をやれと言うのかと言った驚愕が見て取れたが、エドはその通りだとばかりに口元を歪めた。
「おうよ、ガンダムタイプのワンオフ機に乗ったエースが隊長だと、兵の士気が上がるんでな、お前には悪いが頼むよ。」
「俺は広告塔かなんかか・・・?」
「まぁ、そうでもあるな。」
はははと笑うエドに、少しは否定しろとよと思う一夏ではあったが、自身がそういう立場にある事も分かっていた為にタメ息を吐くだけで何も言わなかった。
「ほら、一時とは言えど部下になる奴らが待ってるんだ、行くぞ。」
そんな彼を置いて、エドはさっさと格納庫の中へと足を踏み入れていた。
少しは自分にも考える時間を与えてくれてもいいんじゃないかと思いながらも、一夏は彼の後を追って格納庫に入って行った。
そこには、修復が現在も進行している二機の105ダガーと三機のダガーLがあり、それぞれがソードやドッペルホルンなどのストライカーを装備していた。
「これは・・・、ストライクの量産機の部隊か・・・?でも、どうしてこの機体が?こんな新型なんて、大西洋連邦も売らないだろ?」
だが、一夏は何故その機体が存在しているのかが分からなかったらしく、隣にいるエドに尋ねていた。
そう、105ダガーやダガーLは前大戦末期には完成し、実戦投入されている機体ではあるが、新型量産機である事には変わりなく、ストライクダガーに代わる戦力として配備が進められている。
そのため、必然的に旧式となったストライクダガーは南米等の独自MSが開発されていない地域へと売り払われており、一夏の知る限り、南米軍の主力機はストライクダガーで占められていた筈なのだが・・・。
「あぁ、この機体はな、ジャングルで転がってた残骸を寄せ集めて直したんだよ、ストライカーも使えるから、幾つか修繕してあるんだぜ?」
「ジャングルに・・・?あっ・・・。」
エドが語った内容に思い当たる節があったのだろう、彼は合点がいった様な表情をしていた。
何を隠そう、彼は数日前にジャングルでダガーL中心の連合の部隊と交戦し、ザフトのコートニー・ヒエロニムスと共に壊滅させていたのだ。
そこからパーツを集めて来たのかと、彼はここにある機体達のルーツにどこか納得している様でもあった。
「そういえばそんな事もあったなぁ・・・。」
「あれを全部片付けたんだろ?やっぱり、トップエースに恥じない戦果だな。」
「やめてくれ、あれの半分は俺の手柄じゃないさ。」
トップエースと言う呼ばれ方がこそばゆいのだろうか、彼は何処か苦笑しながらもエドと共に機体の傍まで歩みを進めた。
それに気付いたのだろうか、機体の傍で整備士達と何やら話をしていた五人のパイロット達が彼等に向けて走り寄り、綺麗に横一列に整列、敬礼をしていた。
「御足労頂きまして、光栄であります!」
そんな彼等を代表する様に、リーダー格と思しき褐色の女性がエドに対して感激の言葉を投げかけていた。
「おう、ご苦労さん、今日はお前達に紹介したいヤツを連れて来たんだ。」
彼等に敬礼を返した後、彼は僅かに後ろに下がり、一夏を自分の前に出した。
「彼は織斑一夏、今日から南米に義勇兵として参加してもらい、この部隊の指揮を執ってもらう事となった。」
「織斑一夏だ、いきなり現れて指揮を執るとか言われて、思う所はあると思うが、俺も君達と共に南米を護る為に戦っていきたい、よろしく頼むよ。」
エドに紹介された一夏は自己紹介をしつつも、何処か申し訳なさそうに敬礼を返した。
彼の反応は尤もであると言えるだろう。
なにせ、いきなり現れた余所者が部隊長などと、従いたくても従えないのは当然の心理でもあるだろう。
「はっ!たった二機のMSで連合の大部隊を討ち果たしたと言う噂は常々聞き及んでおりました!お会いできて光栄であります、織斑卿!」
エドに勝るとも劣らぬ、鬼神の如き戦果を挙げたトップエースが目の前にいる事に感激したのだろうか、その女性は一夏に対して何処か興奮した様に敬礼していた。
彼女の両脇に控える他の隊員達も、一夏の事を畏怖と畏怖の念を籠めた瞳で見ており、まさに心強い味方が現れてくれたとでも思っているのだろうか・・・。
「申し遅れました、私は南米軍第56小隊所属のフィーネルシア・フェルミです、この105ダガーで、卿の下で戦わせて頂きます。」
「同じく、コージ・ジンクスであります。」
フィーネルシアの左隣に立つ日系人の青年は、どことなく無愛想な感じで礼をし、何も言わずに次の隊員へとバトンを回した。
「私はキース・チャップマンであります、天空からの導きに、心から感謝しております!」
そのコージの左側に控えていた眼鏡をかけた青年は、敬礼を返しながらも感激を伝えていた。
「アタシはミーナ・カーバイン、ヨロシクね、天空の英雄サン?」
フィーネルシアの右側に控えていた赤髪の女性は自分をアピールする様に挨拶を返していた。
その仕草は軍人とは程遠く、モデルか何かをやっているのではないかと勘違いする程だった。
「自分はネーヴェ・ヴァリーチェ、ヨロシク・・・。」
ミーナの隣に控えていた、少女と見紛う様な容姿をもった女性は、話すのは苦手とばかりにさっさと自己紹介をし、列から離れ、機体の下へと戻って行ってしまった。
「・・・、個性的なメンバーだな・・・、指揮のし甲斐がありそうだ。」
「申し訳ありません・・・。」
あまりのメンツに苦笑しているのだろうか、一夏は何処か皮肉交じりに呟き、その言葉にフィーネルシアは申し訳なさそうな表情をしていた。
彼女も、このアクの強いメンバーの扱いには苦労しているのであろう、そんな様子が伝わってくるような表情であった。
「気にしないでくれ、こういうのには慣れてるつもりだしな、よろしく頼むよ、フィーネルシア。」
だが、当の一夏はこれぐらい自然体でいてくれた方がやり易いとばかりに笑い、彼女に対して手を差し伸べていた。
「はい!こちらこそよろしくお願いします、一夏卿!」
そんな彼の表情に緊張が解れたのだろうか、フィーネルシアも微笑み返しながらも、差し出された手を握り返した。
「よし、それじゃあ、全員の機体の状況と得意分野を教えてくれ、作戦を立てるぞ。」
『了解!』
握手を解いた後、彼は隊員達に向けて指示を飛ばし、自分のやるべき事を果たそうと仕事人の顔つきに戻った。
それを受けた隊員達も、自分達がやるべき事、一夏に指示された事を熟すべく動き始めた。
全ては、南米が勝つために・・・。
sideout
次回予告
南米の地で行われる決戦を前にして、戦士達は己の出来る事を為そうとしていた。
次回機動戦士ガンダムSEEDASTRAY X INFINITY
決戦前夜
お楽しみに~