機動戦士ガンダムSEEDASTRAY X INFINITY 作:ichika
sideセシリア
「はぁぁっ!!」
海中でのMS戦はまさに苛烈という以外に言葉が見つかりませんでした。
周りには何十という数のディープフォビドゥンの部隊が、ジェーンさんと私のフォビドゥンブルーに攻撃を仕掛けてきます。
私の機体は既にトライデントが折られ、今は魚雷を撃ちかけながらも敵から武器を奪う事で何とか戦えている状態です。
ジェーンさんの機体は、集中的に狙われている事もあってか、片足が破壊されていました。
今もまた、無謀にも向かってくる敵をトライデントで突き刺し、別の機体に向けて放り投げながらも、狙い撃ちされぬ様に機体を動かし続けます。
『セシリア!!大丈夫かい!?』
「なんとか・・・!ですが、このままでは・・・!!」
このままでは、何れは海の藻屑と消えてしまうやもしれません・・・!
何とかせねばなりませんが、援軍はもちろん見込めませんし、なにより連合の増援がどれほどの数が来るのかも分からない中では、迂闊に後退などできません。
焦りが募っていく中で、それは唐突に始まりました。
『PBSのベルナデット・ルルーです、我々の得た情報によりますと、終戦条約の骨子が纏まり、採決に向けて動いている様です。』
「ベルさんのニュース・・・!オールハンド通信で・・・!?」
条約の骨子が纏まった・・・!?ヤキンまでのあの戦争の・・・!
と言う事は・・・!!
『この条約には、兵器の保有量や戦犯の処分など、様々な処遇が盛り込まれており、中でも、領土の問題も、70年2月10日時点に戻されます。』
「そんな・・・!!それでは・・・、この戦争は・・・!!」
『ですから、このまま戦争を続けても、何の意味もありません。』
『意味が無いだって・・!?ザフトの女が勝手な事を・・・!!エドの戦いをみすみす無意味にして堪るか!!』
ジェーンさんの憤りが籠められた声を聞きながらも、私も内心で憤りを抑えきる事は出来ませんでした。
この放送は中道と言えば中道なのでしょうが、この報道が真実であるならば、戦果が勝ち取れないも同然、私達はそうでなくとも、他の兵の方々にとっては士気に関わる重大な問題・・・!
士気が高かったためにやっと支える事の出来ていた戦線が、このままではもう間もなく瓦解してしまい、南米の独立は出来ません。
ですが、陸にいない私がどうする事も出来ません、私も、今は自分の敵で手一杯なのですから・・・!!
『ここで、《切り裂きエド》に関する情報が入っています、現場に居合わせたフリージャーナリスト、ジェス・リブル氏がお伝えします。』
ジェスさん・・・!エドさんに何がありましたの・・・!?
『ジャーナリストのジェス・リブルです、本日、連合軍のレナ・イメリアと交戦したエドはこれを打ち破ったものの、瀕死の重傷を負いました!!』
「そんな・・・!!」
『エド・・・!そんな・・・!ウソだっ・・・!!』
そんな・・・!エドさんが死にかけているなんて・・・っ!!
なぜそれを敵にまで伝える様な真似をするのです、ジェスさん・・・!!
彼の言葉に、エドさんが倒れたと言う事実に勢いづいたのでしょう、ディープフォビドゥンの勢いが先程にも増して激しくなり、私達に向けて襲い掛かって来ます。
『現在、懸命の治療が行われていますが今だに昏睡状態が続いています、それと同時に、皆さんには聞いてほしい事があります!!』
何を伝えようと言うのですか、ジェスさん・・・!!
旗色が悪くなる一方で、更にエドさんの事で何かあるのですか・・・!?
貴方と言う方は、真実を伝える為なら誰を絶望させても構わないと・・・!?
『現在、南米では戦闘が続いています、彼等は政治的手段によって、この戦いから意味を奪い去りました、しかし何故、彼等はまだ戦い続けようとしているのでしょうか!?それは、彼等が支配者で在ろうとしているからです!!』
「そんな事、言われずとも・・・!!」
改めて示さずとも、この戦いが起こっている事を見れば、連合が権力保持の為に動いている事など明白でしょう・・・!
『ですが、この放送を聞いている皆さんにエドの言葉を伝えたいんです、彼は嘗て言っていました、『俺は一人でも敵と戦える事を示そうとしているだけ』だと、南米の人々がそれに気付き、立ち上がってくれればいいと・・・!!』
「・・・っ!!」
その言葉は、カイトさんに指摘された事を否定するために仰られた言葉・・・!
そうでしたわね・・・!今、この時こそ、あの言葉が、あの想いが必要な時・・・!!
焦りに曇った目では見通せない、輝かしい想いを・・・!!
『エドは凶弾に倒れました・・・!だけど、≪エド≫は皆さんの中にいる・・・!!≪南米の英雄≫は、今も貴方方と戦っている!!俺はそう信じています!!』
『そうだよ・・・!その通りさ、ジェス!!私達はエドと一緒さ!!』
「はいっ!!」
私達は南米の旗の下に集った、同じ志を持って戦っているのです!
だから、エドさんが倒れたとしても戦える、戦わなくてはならないのです!!
『えぇい!!≪白鯨≫と≪天空聖女≫を嘗めるなよぉっ!!』
「この戦い・・・!!勝って終わりたいのです!!」
向かってくる敵のフォビドゥン系列機を相手取りながらも、私達はそれぞれを庇う様に入り乱れます。
こうする事で狙いを分散できますし、何より攪乱戦法も採れますからね・・・!!
しかし、こちらは数で圧倒的に負けています、そのために、幾ら策を練ろうと、物量で押し切られる事も起こりうるのです。
痺れを切らしたのでしょう、周囲にいるディープフォビドゥンから一斉に魚雷が撃ち掛けられます。
「このっ・・・!!」
運悪くと言うべきでしょうか、私の方へと魚雷が殺到してきました。
『セシリア!!避けな!!』
ジェーンさんが回避を促してきますが、あまりにも数が多すぎて、回避する事も敵わなそうです。
避け切れない・・・!!
次に来る衝撃を堪える為に身を強張らせた直後、何処からか飛来したフォノンメーザーと魚雷が、私に迫って来ていたミサイルを撃破してゆきます。
「助かった・・・!?一体誰が・・・!?」
メーザーや魚雷がやってきた方に目を向けると、エイの様な上半身を持ったMS、グーンの部隊がディープフォビドゥンの部隊に次々と攻撃を仕掛ける光景が目に飛び込んできました。
「ザフトが・・・?何故・・・?」
この戦争に不介入を決め込んでいた筈のザフトが、何故こんな事を・・・?
訳が分からずに混乱する私の耳に、通信機から別の女性の声が飛び込んできます。
『連合軍は直ちに兵を引け!!我々ザフトは国際法に照らし合わせ、攻撃を受けている南米軍を支援する!!』
なるほど・・・、国境線が開戦前に戻るという事は、連合は他国を侵犯している様なもの、ザフトがそれを支援するのは何も不自然はないという事ですか・・・。
ですが、これで連合は二つの勢力を相手取る事になり、不利なのは目に見えています、もう間もなく、戦闘を停止する事でしょう・・・。
「これで・・・、戦争が終わるのですね・・・。」
周囲からの攻撃が無いことを認めた私は、大きくタメ息を吐きながらもシートの沈み込みました。
戦いが終わった事に安堵しながらも・・・。
sideout
sideシャルロット
「もういい加減に・・・!!意味の無い戦いを止めないか!!」
弾薬が尽きたレイダーをMS形態にし、倒したダガーから奪ったビームライフルやマシンガンを撃ちかけながらも、僕はバリーさんの援護を続けていた。
エネルギー兵装を使ってはいなかったから、まだ機体は動かせるけど、問題は僕達の体力だ。
戦闘がこれ以上長引いてしまうと、もうこの戦線を維持できる自信がない。
でも、一歩も退いて堪るものか、僕は戦う、南米が勝つために!!
『ちぃっ!!』
「バリーさん!!」
多くのダガーを相手取っていたバリーさんだったけど、多勢に無勢だったのか、左腕が切り落とされ、右肩にはシュベルト・ゲベールが食い込んでいた。
見て分かる、もうその機体は戦えないって・・・!
「バリーさん!!後退してください!!僕が何とかします!!」
彼を死なせる訳にはいかないし、まだ僕は戦える。
だから、バリーさんには逃げてもらわないと・・・!!
『いや・・・!こうなったらっ!!』
こうなってはって・・・!どうするつもりなんだろうか・・・?
って!そんな場合じゃないよ!!後ろからまだ斬りかかってくるダガーがいるんだから!!
「バリーさん!!避けて!!」
僕が警告を飛ばして間もなく、彼の機体は右側を切り裂かれた。
だけど、その瞬間、彼はコックピットから飛び出し、そのダガーのヘッドバイザーを蹴り破った。
「えぇぇぇぇぇぇっ!!?」
なんで人間がMSを破壊できるのさぁ!?
しかもなんで華麗に着地しちゃってるのさ!?18m以上あったよね!?
更に、その直後にどこからか弾丸が飛んできて、彼の右肩を撃ち抜いた。
見れば、一機の105ダガーの爪先に装備されているアンチマテリアルライフルに撃ち抜かれているみたい。
って言うか、それをあれを生身で喰らって耐えれてるって、どういう事なの・・・!?
「人間じゃない!!あの人絶対に人間じゃねぇ!!」
自分の言葉とは思えない言葉が口を突いて出たけど、今の僕には全く気付かなかった。
だけど、そうも言っていられる状況じゃないのは分かってる、幾らバリーさんでもこの状況は絶体絶命だ。
なら、彼を護るのはまだ戦える僕の役目だ・・・!!
そう思った時だった、彼を撃ったダガーが何処からか飛んで来た銃弾に撃ち抜かれ、地に倒れ伏した。
その方向に目を向けると、そこにはガトリング砲に変形させたタクティカルアームズを構えた青いガンダムと、その隣に立つジンのカスタム機の姿があった。
あれは・・・!あの機体は・・・!!
『こちらサーペント・テールの叢雲 劾、このジャングルの中にある村の守備の任務に就いている、即刻この近辺での戦闘を停止せよ。』
「劾さん!イライジャ!」
まさか、サーペント・テールがこの南米にいるとは思っても見なかったけど、これは正に僥倖だね!
そんな彼等に、警告を無視したダガーL達が向かって行くけど、タクティカルアームズをソードフォームに戻したブルーフレームはあまりにも美しい斬撃で敵を切り裂いていた。
見てるだけなんて出来ないね、僕も戦わないと!!
「劾さん!僕も援護します!!」
前に教えて貰っていた回線を開きながらも、僕は拾い上げたシュベルト・ゲベールを振るい、手近なダガーを行動不能にしてゆく。
『その声は、シャルロットか!』
『南米に降りていたのか、セシリアと一夏はどうした?』
驚いた様なイライジャの声と、優しげな劾さんの声が聞こえてきた。
名前、憶えて貰ってるみたいで良かったよ。
「二人とも南米にいます、後で皆と会いましょう!」
『そうだな、風花にも会ってやってくれ。』
終わった後の事を話しながらも、僕達は向かってくる連合の機体を倒し続けて行く。
もう少しだ、敵の気勢をそぐ事が出来れば、すぐにでも戦いは終わる。
だから、僕は戦い続ける、やっと見つけられた、仲間達と共に・・・!!
sideout
side一夏
「ジェス・・・!お前って奴は!!」
ストライクのコックピットの中で、ジェスが行った放送を聞いていた俺は、その放送の真意に触れていた。
南米はエドが倒れれば、すぐさま心が折れてしまうと指摘されていた点を、彼なりの言葉で、エドの想いを伝える事で払拭し、南米軍の心を奮い立たせた。
そうだ、プロパガンダと取られようとも、報道はこうやって人々を奮い立たせる事も出来るのだ、それに気付いた彼なりの答えなのだろう。
そのお陰で、俺の隊の士気は更に上がっており、劣勢を覆すには至らないが、それでもギリギリの状況でも戦えている。
「キース!!援護を!!」
『はい!!』
キースに敵から奪ったライフルを投げ渡しながらも、俺は迫ってくるダガーを左手で握っていた対艦刀で切り裂き、その流れで背後にいたダガーに対艦刀を投擲、串刺しにして沈黙させた。
だが、その直後、敵のダガーが撃ったドッペルホルンが運悪く左腕に着弾、対艦刀を弾き飛ばされ、ストライクも大きく体制を崩されてしまった。
「うわっ・・・!!しまった・・・!!」
『隊長!!』
大きく体制を崩した俺に、敵のダガーがライフルを向ける事が知覚できたが、機体のバランスを立て直すのが精一杯で、回避はとてもじゃないが出来そうにも無かった。
危機を回避しようとしているのだろうか、周りの時の流れが随分と遅く見える。
くそっ・・・!こんなところで・・・!こんなところで終わってたまるか・・・!!
そう思えども、今の俺に為す術はなく、ただ、撃ち抜かれる瞬間を待つだけだった。
敵の銃が火を噴く直前、そのダガーはどこからか飛来した弾丸に貫かれ、四散した。
「何っ・・・!?」
一体誰が・・・!?
そう思った時だった、モニターに上空から太陽光を背に受けて降りてくるモノアイの機体が映し出された。
あれは・・・!!
『無事か、一夏?』
「コートニー!助かったぜ!!」
まさか、ザフトが南米を助けに動くとは・・・、だが、そのお蔭で俺も命拾いしたんだ、素直に感謝しておこう。
『貸し一つだ、それで良いだろ?』
「あぁ、もちろんさ、だが、今は戦う!!」
そろそろエネルギーも心許無くなってきたところだ、一気に決めてやる。
ストライク本来の運動性を活かす為、俺はI.W.S.P.を排除、アーマーシュナイダーを逆手に構える。
「行くぞ、コートニー!!」
『OK!勝つぞ!!』
俺の合図と共に、俺達は展開する連合軍の部隊へと突っ込んで行く。
アーマーシュナイダーを手近なダガーに突き刺し、その隙に投げ飛ばしていた対艦刀を拾い上げ、迫ってくる敵を問答無用で切り飛ばす。
コートニーはその巧みな操縦テクニックで敵を寄せ付けず、両手に保持したブレードトマホークで切り伏せていた。
「やはり、流石だな!」
『そっちこそ!良い動きだ!!』
互いの腕に感嘆しながらも、俺達は敵に向かって行く。
俺は負けん、負けてたまるものか!
俺を信じて戦ってくれている南米の隊員達にも、助けてくれたコートニーに報いるためにも、俺は戦う。
勝ってこの戦いを終わって見せる!!
俺らしくもない感情とともに、刀を振るって敵を倒しながらも感じるものはあった。
勝ちたいがために戦い続けるって所は、変わらないんだってな・・・。
sideout
noside
それから間もなく、彼らがいるエリアでの戦闘は鎮静化した。
連合軍は、たった二機のMSによって次々と倒されてゆくのを目の当たりにし、戦意を喪失、次々と撤退していった。
「こんなものか・・・?」
「あぁ、周囲に敵の姿は確認できない、終わったんだよ・・・。」
軽くタメ息を吐くコートニーの言葉を肯定する様に、一夏は安堵した様に表情を緩めた。
長時間戦っていたせいもあったのだろうが、その表情には疲労の色が濃く滲み出ていた。
「隊長!我々は、南米は、勝ったんですね!!」
そんな中、漸く一夏達に追い付いたフィーネルシア達、ストライカーズの面々が、喜びを隠しきれない様子で彼に尋ねていた。
「あぁ、俺達の勝ちだ、形はどうあれ、南米は独立した、それを勝ちって言わずになんて言う?」
そんな彼等に、一夏はその通りだとばかりに笑い返し、自分達の勝利を確信させた。
その言葉が染み渡ったのだろう、彼の部下達は一斉に歓声を上げ、勝利を喜んでいた。
「隊長、か・・・、お前も大変なんだな。」
彼らしくもない姿を可笑しく思ったのだろうか、コートニーはからかう様な言葉をかけていた。
「からかわないでくれよ、自分でもこそばゆいんだからさ。」
そんな彼の言葉に、一夏は勘弁して欲しいと言うように肩を竦めていた。
自分でも柄ではないと思っていたのだろう、その仕草からは気疲れ等の色が見て取れた。
「隊長、これからどうされるんですか?」
そんな中、フィーネルシアが一夏達に歩み寄りながらもこれからどうするのかと尋ねていた。
そう、仮にも一夏は外の人間、この戦いに参加はしていたものの、それが終わればこの南米の地を去ってしまう事は明らかだった。
それが名残惜しいのだろう、せめて送別の儀ぐらいはしておきたいのだろうか・・・。
「そうだな、これからセシリアとシャルと合流するつもりだ、見付けるのは大変そうだが、何とかしてみるさ。」
「そうですか、でしたら、私も御二人に御挨拶をしなければなりませんね。」
「ははは、律儀だな、あの二人はそんな事されたら気を遣うんだけどな。」
彼女の言葉に返しながらも、彼は何処から探そうかと考えを巡らせた。
エドが倒れた今、彼を目指して集まる事は不可能であるし、他の場所を目指そうにも入れ違いになっては怖いと言うリスクが付いて回る。
だが、動かなければ見つけられないのまた事実、そのため、彼は探しに動く事にしたようだ。
「それじゃ、俺はそろそろ行くとするよ。」
「えぇ~?もう行っちゃうの~?もう少しぐらいいてくれたっていいじゃない?」
I.W.S.P.を拾ってきたキースとコージのダガーに手伝ってもらいながらも装備し直し、飛び立とうとする彼に向けて、ミーナがせめてもう少しだけでもここに居ればどうだとばかりに声を上げた。
自分達がこうして生き残れたのも一夏のお陰だからだと分かっているからだろうか、ほんの少しの時間でも良いから彼を持成したいと言う気色が見て取れる。
「ミーナ、隊長を困らせてはダメ、隊長にも帰らなければならない所がある。」
そんな彼女を窘めるように、ネーヴェは呆れを含んだ声をかけていた。
「悪いな、だが、俺の任務も終わった事だし、宇宙に帰らないとな?」
彼女達のやり取りを見ながらも、彼は何処か暖かい心地に包まれていた。
隊員から慕われ、信じて貰えている事に対する悦びなのだろう、それは、彼がこれまでに感じた事の無いモノだったのだ。
嘗ては得られなかった、得ようとしなかったモノの心地良さに、彼は自分のやるべき事を見出したに違いなかった。
だが・・・。
「っ!危ないっ!!」
唐突にフィーネルシアのダガーが動き、一夏とコートニーの機体を押しのけた。
「うわっ・・・!?」
「どうした・・・!?」
何が起こったのか、それを見極めようとした彼の目に、受け入れがたい光景が飛び込んで来た。
「あぁ・・・!」
ウソだと、夢で在ってくれとでも言うかのように、一夏は目を見開き、嫌々をする様に、弱弱しく首を振った。
そこには、彼女の機体がビームに撃ち抜かれている所だったのだ。
彼がそのビームが飛んで来た方へと目を向けると、彼が倒したはずの連合のダガーが、最後の足掻きとばかりに、倒れ伏したままライフルを撃ったのだろう様子が見受けられた。
トドメを刺し損ねていた、彼がそう理解するよりも先に、彼女の機体は被弾箇所から火を上げ、地に倒れ伏した。
「この野郎っ!!」
口汚く吐き捨てながらも、コートニーが誰よりも先に動き、レールガンを発射、そのダガーを木端微塵に撃ち抜いた。
「フィーネルシア!!」
「おい・・・!応答しろ・・・!!」
他の隊員達が彼女の安否を確かめるかのように呼びかけるが、彼女からの返答は無かった。
「・・・!!フィーネルシア!!」
隊員達の叫びに、漸く我に返ったのだろう、一夏はストライクのコックピットから飛び出し、彼女のダガーのコックピットに駆け寄った。
ハッチを開けようとしたが、衝撃で歪んでしまったのか、途中で何かに引っ掛かる様に、完全には開かなかった。
「離れろ、一夏!俺が開ける!!」
ザクから降りたコートニーは工具を取り出しながらもコックピットハッチに取り付き、慣れた手付きでハッチを抉じ開けて行く。
「早く!!頼む・・・!!」
焦燥を隠しきれない様子で、一夏は隣で作業を行うコートニーを急かす様に言葉を紡ぐ。
そして、間もなくハッチがこじ開けられ、人が通れるぐらいの大きさになった。
「フィーネルシア・・・!」
そこに間髪入れずに、一夏は滑り込む様にコックピットの中に入り、そこにあった光景に目を見開いた。
大量の破片が彼女の身体に突き刺さり、大量に流れ出た血が、コックピットを赤く染めていた。
一夏に次いでコックピットの中を覗き込んだコートニーは、その凄惨な場面を目にし、もう助からないと見切りをつけた様に目を伏せていた。
「隊長・・・、御無事で・・・。」
一夏の声に気付いたのだろう、彼女は苦痛に歪んだ表情に笑みを浮かべながらも、彼の無事を喜んでいた。
そんな彼女の想いが痛いのだろう、彼の表情は後悔の念を浮かべていた。
「よか・・・た・・・。」
「何故俺を・・・、俺を庇うんだ・・・!お前がこうまでして・・・!?」
彼女が自分を庇った事が腑に落ちなかったのだろう、彼は彼女の身体を支えながらも問い掛けていた。
自分が、誰かに庇われるほどの人間ではないと感じている彼の事だ、彼女の身を犠牲にするぐらいならば自分が撃たれていればいいと思っているのに・・・。
「南米を・・・、私の・・・故郷を・・・護って・・・くれたんです・・・、それに・・・貴方だから・・・。」
身体がもういう事をきかないのだろう、彼女は彼に向けて手を伸ばすも、それはもう、弱弱しく、何時落ちてもおかしくなかった。
その手を見て尚、一夏は彼女の手を取る事を躊躇った。
自分が、その想いに応えられるかどうか、彼は悩んでいたから・・・。
「俺は・・・、護れなかったのか・・・?部下を・・・、君を・・・!」
自分がもっとしっかりしていれば、周りを見ていれば、こんな事にはならなくて済んだのに。
そんな自責の念が彼を苛む。
「隊長・・・、どうか・・・。」
「フィーネルシア・・・。」
この国を頼むと言う様な、いや、他の想いが籠められた言葉と共に伸ばされた手を取ろうと、彼は手を伸ばしたが、後少しと言う所で、その手は力無く落ちた・・・。
「あ・・・、あぁぁ・・・。」
その手が落ちるのを、彼女が死ぬのを、ただ黙って見ている事しか出来なかった彼は、喘ぐ様に呻いた。
護れなかった、ただ、取り返しのつかない事に恐怖していたのだ。
「うぅぁぁぁぁぁぁぁぁぁ・・・・っ!!」
彼の血を吐く様な絶叫は、南米の晴天には、虚しく溶けてゆくだけだった・・・。
sideout
第二章完
と言うわけで次回からは独自展開メインの第三章へ突入いたします
次回予告
絶望を抱えたまま宇宙へと戻る一夏達を待ち構えるかの様に二つの影が迫る
次回機動戦士ガンダムSEEDASTRAY X INFINITY
第三章 空白の2年間編
そして宇宙へ
お楽しみに!