機動戦士ガンダムSEEDASTRAY X INFINITY   作:ichika

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第三章 空白の2年間編
そして宇宙へ


noside

 

地球、マティアス邸の一室にある電話が鳴り響いていた。

 

「アタシだけど、どうしたの?」

 

執務机で書類を眺めていた館の主、サー・マティアスは受話器を取り、向こう側にいる人物に内容を話す様に促した。

 

電話の相手は、ナイロビの会議に潜入させていた彼の配下であり、その報告をしてきたであろう事は想像に難く無かった。

 

『リンデマンプランが可決され、ナイロビ会議が閉会しました、それと、南米から連合軍が撤退を始めたようです。』

 

「そう、ご苦労様、引き続き動向を調べておいて頂戴。」

 

『かしこまりました、それでは、失礼いたします。』

 

部下からの電話が切れた後、彼は受話器を戻し、椅子に深く沈み込んだ。

 

「(これから五年、いいえ、もっと短い間で世界は動き出すわね、条約を結んだ連合のアーヴィング大統領も、プラントのカナーバ代表も時を待たずして失脚するでしょう。)」

 

この条約は、お互いが疲弊しきっており、尚且つ引き分けに近い形で終わってしまったため、両国共にそう容易く首を縦に振れる条件では無かった。

 

しかも、プラントにとっては連合有利の条約を結んだトップを決して許せはしないだろう。

 

故に、その先に在るのは退陣の未来のみ・・・。

 

「(そして、それを利用して新たなる力が動き出す・・・。)」

 

そう考えながらも、彼はこれから動き出すであろう勢力と、その野望に思いを巡らせた。

 

そして、同時に期待しているのだろう、彼が、ジェスがどの様にしてそれらに関わっていくのかという、未知への好奇心が・・・。

 

sideout

 

sideセシリア

 

「本当に、もう戻るのか?」

 

C.E.72年、1月の終わり頃、アメノミハシラへと戻る私達を見送るために、パナマ宇宙港まで見送りに来てくださったジェスさんが、何処か名残惜しそうに尋ねてこられました。

 

「一応、任務も終わった事だし、報告に戻らないとだし、それに・・・。」

 

彼の質問に答えながらも、シャルさんは隣に立つ一夏様を気遣わしげに見ておられました。

 

一夏様の表情は憔悴してしまっているように生気が無く、無理をしてここに立っておられるという様な、痛々しいものでした。

 

無理もありません。

何せ、自分を慕って従ってくれた部下に庇われ、その方を死なせてしまったのですから・・・。

 

「そうか・・・、もう少し、色んな所を一緒に回ってみたかったけど、それなら仕方ないよな。」

 

「あぁ・・・、すまないな、ジェス、マディガン。」

 

シャルさんの視線に、想いに気付いたのでしょう、ジェスさんは一夏様を気遣う様に言葉をお掛けになり、一夏様も心配ないとばかりに微笑まれ、お二人に軽く頭を下げておられました。

 

どうにかして、一夏様の痛みを和らげて差し上げたいところなのですが、責任感がお強い一夏様に下手な慰めはかえってその傷を大きくしてしまうやもしれません。

 

一番近くにいる私達が何も出来ない、それだけが悔しくてなりません・・・。

 

「それじゃ、もう出発の時間だから行くよ・・・、二人とも、近くまで来る事があったら寄ってくれ、ちゃんと歓迎するよ。」

 

そう仰いながらも、一夏様はお二人に背を向けられ、私達のMSが積まれているシャトルに乗り込んで行かれました。

 

足取りはしっかりしておられても、背中に背負われる悲しみは消えません。

その痛々しいお姿を見るだけで、私はどの様に御声かけすべきか分かりかねました。

 

「セシリア、シャルロット、アイツの事、支えてやってくれないか?」

 

「えっ・・・?」

 

そんな一夏様を見送られた後、ジェスさんが私とシャルさんを見ながらも、気遣わしげに言葉をかけられていました。

 

その意味が分からず、私達は顔を見合わせてしまいました。

 

「アイツは今、自分を信じられなくなりかけているだけだ、だから、二人が一夏を信じてやってくれれば、必ず立ち上がれるはずなんだ、だから、頼む!」

 

まるで自分の身内の事の様に心配してくださるジェスさんのお言葉に、私は何とも言えぬ程の感激に心を震わされました。

 

私達以外にも、彼を想ってくださる方がいらっしゃる、それだけでも救いになる様な心地でした。

 

それが、一夏様にも伝われば、きっと・・・。

 

「勿論ですわ、きっと、次にお会いになられる時は、すっかり元気になっておられますわ。」

 

「それじゃあ、二人とも気を付けてね!僕達も行くよ。」

 

お二人に礼を返しました後、私とシャルさんはシャトルの中へと足を進めました。

 

我が家に戻るために、そして、愛しの旦那様を支えるために・・・。

 

sideout

 

noside

 

何も見えない、何も聞こえない・・・。

ただただ、漆黒が広がるだけの空間に、ただ独り、一夏は立っていた。

 

いや、立っていたと言うよりは、脚に絡みつく鉛の様な重さを引き摺るように、足掻く様に歩いていた。

 

どれ程歩いた事なのだろうか、身体は重く、呼吸も乱れて来ていた。

 

「どこだ・・・、ここは、何処だ・・・。」

 

今だ見えぬ出口を求め、彼は重く気怠い身体を引き摺って進んでゆく。

 

だが、彼の足は何かに絡め捕られるかのように縺れ、それに釣られて彼も血の色をした沼に倒れこむ。

 

「教えてくれ・・・、俺は・・・。」

 

底があるかも分からぬ沼から這い出ようと、彼はもがきながらも自問していた。

 

誰に聞く訳でもなく、ただ譫言のように・・・。

 

――お前は、人形――

 

「・・・っ!」

 

そんな彼の声に答えるかのように、闇の中から声が聞こえてきた。

 

「誰だ・・・!?」

 

重い身体を奮い立たせ辺りを見渡すが、そこにはただ、赤黒い血の沼が広がっているだけだった。

 

――思い出せ、お前がやった残酷なゲームを――

 

謎の声が告げると同時に、彼の目の前に光が溢れ出す。

 

「・・・っ!!」

 

あまりの眩さに目を閉じ、慣らした後に目を開くと、風景は一変していた。

 

暗雲が立ち込め、辺りは炎の海と化した廃墟の風景だけが広がっていた。

 

「ここは・・・!!」

 

彼には、その場所に見覚えがあった。

否、それだけではない、何せ、彼はそこにいたのだから・・・。

 

その風景を見せ付けられ、呆然と立ち竦む彼を追い越すように現れた複数の機体、ISの数々は、炎の中に立つ何者かに次々と吸い寄せられる様にして向かってゆく。

 

だが、その何者かが振るう刃に次々と切り裂かれ、断末魔の悲鳴と鮮血が彼の眼前に迸る。

 

「やめろ・・・。」

 

その光景を見せ付けられた彼は、絞り出すように声を出すが、殺戮は止まらない。

 

新たに現れた十近いガンダムタイプの機体を相手にしながら、その悪魔は姿を現す。

 

漆黒のボディに生える堕天使の翼を翻す機体、ストライクノワールは、次々とガンダム達を切り裂き、屠ってゆく。

 

「やめろ・・・!」

 

目を閉じようにも、耳を塞ごうにも身体が動かない。

まるで、自分の身体ではないかのように・・・。

 

ガンダム達も、次々に討たれてゆき、最後に残っていたのは、屍と血の海だけ・・・。

 

その漆黒の機体は、ゆっくりと彼の方を向き、刀の切っ先で彼を指しながらも、どこか嘲笑うかのような表情を浮かべた。

 

そして、一夏は自分の身体に気づく。

そこには、目の前にいる悪魔と同じ、ストライクノワールの装甲が、刃があった。

 

「・・・っ!!」

 

慌てて刃を手放そうとするが、その柄は彼の手に溶け込む様に同化し、漆黒の装甲は、彼を飲み込むかの様にその面積をどんどん増やしてゆく。

 

――お前は人形、ただの、道具だ――

 

ふと、自分の近くで声が聞こえ、顔を上げるとそこには彼自身、狂喜に狂った顔があった。

 

――そして、悪魔はお前だ――

 

ニタリと笑い、悪魔は彼を飲み込もうと闇を広げてゆく。

 

動けない彼に、それから逃れるすべはなかった。

 

「やめろ・・・!!やめろぉぉぉぉぉ・・・!!」

 

抵抗も虚しく、彼の叫び声は闇へと溶けてゆく・・・。

 

sideout

 

noside

 

「うわぁぁぁぁぁっ!!」

 

絶叫と共に、一夏は飛び起き、何かから逃れようとするかのように身体を振った。

 

そこに何時もの様な穏やかさは微塵もなく、見えない恐怖に駆り立てられた者が浮かべるような引き攣った表情を浮かべていた。

 

「一夏様・・・!?」

 

「どうしたの・・・!?落ち着いて・・・!!」

 

そんな彼の両隣に座っていたセシリアとシャルロットは、彼の唐突な行動に驚きながらも、何とか彼を落ち着かせようとその身体を抱き留めた。

 

「あぁぁ・・・!セシリア・・・!シャル・・・!俺は・・・!」

 

彼女達の声が聞こえ、自分に寄り添ってくれている事に気付いた彼は、ほんの少しだけ恐慌状態から抜け出すが、それでもまだ、その逞しい身体は恐怖に震えていた。

 

「酷い汗・・・、それに顔色も・・・。」

 

シャルロットに水を取ってくるように頼みながらも、彼女は持っていたハンカチで彼の汗を拭きとった。

 

「すまない・・・、もう、大丈夫だ・・・。」

 

愛しい女の甲斐甲斐しい姿に自制心を取り戻したのだろう、彼は彼女の手を取り、心配ないとばかりに微笑んだ。

 

「はい、お水持ってきたよ・・・、もうすぐでアメノミハシラに着くから・・・、大丈夫だよ、一夏。」

 

シャトルに積まれていた冷蔵庫で冷やされていたドリンクボトルを手渡しながらも、シャルロットは何処か不安げに彼の表情を覗き込んだ。

 

彼女達は気付いていたのだろう、彼が見ていた夢の内容を、その現実を・・・。

 

「大丈夫だ・・・、切り替えなくちゃならない事ぐらい、俺にだって分かってる・・・、だけど・・・。」

 

被るように水を飲みながらも、彼は弱々しく言葉を紡いだ。

 

まるで、物の重りに耐えきれず、軋みを上げるような、そんなギリギリの悲愴感があった。

 

「一夏様・・・。」

 

「苦しんだね・・・。」

 

そんな彼の苦悩の根源を共に味わってきたが故に、彼女達は気遣わしげに彼を見詰めるだけで、それ以上は何も言えなかった。

 

一夏は、自分達にもかなりの負い目を感じている節があるため、下手な慰めはむしろ、彼を追いつめかねないと気付いているのだから・・・。

 

彼女達に出来る事と言えば、ただ何も言わず、彼の震える身体を抱き留めてやる事しかなかったのだ・・・。

 

sideout

 

noside

 

その頃、アメノミハシラから少し離れた宙域に、二隻の連合軍艦、アガメムノン級の艦影があった。

 

何処か目的地でもあるのだろうか、その動きは明らかにパトロールと言うよりは行軍と呼ぶべきだった。

 

その内の一隻のブリッジでは、オペレーターが艦内各所、及び僚艦への連絡に奔走しており、まるで戦闘準備を行っていると言わんばかりに緊張した雰囲気だった。

 

「戦闘宙域に接近、MS隊は発艦準備急げ!」

 

それを受け、艦長の男は受話器を取り、艦内の部下達に命令を伝達していた。

 

そう、彼等は連合軍の上層部より、ロンド・ミナ・サハクが治めるアメノミハシラを接収するように命令を受けているのだ。

 

その為に集めたMS隊は四十機近くを数え、アメノミハシラが出せるMS隊を優に上回る数を揃えていた。

 

だが、それだけで勝てるのならば、これまでの部隊が失敗する筈もないと、彼は脳内で冷静に実力を推し量っていた。

 

アメノミハシラは少数精鋭であることに間違いはない、トップのロンド・ミナ・サハクを始め、彼女に仕える者はそれこそ連合軍の一兵卒以上の技量を持っていると見て良い。

 

つまり、自分達だけでは勝利は危ういと言うこと、それだけは間違いはなかった。

 

だが、彼の表情は何処か勝利を確信している様にも見える、笑みを浮かべていた。

 

彼はそれを確信させるに充分すぎる、戦力があったのだ。

 

「この作戦、何としても勝たねばならん、傭兵のお前達に助力を請おう。」

 

彼が首だけで振り返ると、そこには長い黒髪を伸ばしっぱなしにした男と、その隣に立つ茶髪の女の姿があった。

 

彼が傭兵と呼んだのは、その二人であることは明白だった。

 

「あいよ、任せときな、アタシらも稼がなきゃ生きてけないんでね。」

 

「後払いとは気に食わないが、成功しようがすまいが、キチンと払ってもらう。」

 

女は自分に任せておけば全て片付くと言わんばかりに自信満々に豪語し、男は金が今だ支払われていないことが不服なのだろう、少々刺のある言葉で返していた。

 

彼等とて傭兵、自分達の生活が第一であり、金がモノを言う生活を送っているのだろう。

 

「分かっている、そろそろ戦闘だ、頼んだぞ。」

 

「任せろ。」

 

そんな彼等の言葉に頷きながらも、彼は出撃する旨を伝えた。

 

それを受け、傭兵の二人は足早に艦橋を後にし、自分達のMSの下へと向かって行った。

 

「・・・、全く、金に卑しい傭兵風情が・・・。」

 

そんな彼等を見送った直後、彼は誰にも聞こえないほど小さく、傭兵を罵る様な言葉を吐いた。

 

彼は気に入らないのだろう、何処の軍にも属さず、金次第でコロコロとその立場を変える、金の亡者その物と呼べる存在の事を・・・。

 

だが、それでも好都合と、彼は意識をモニターに映る天空の城に戻した。

 

所詮は傭兵、自軍の人間ではないため、好きに使い潰す事が出来る為、彼にとっては様々な利用価値がある。

 

そう、その存在を捨て駒としても使用できるのだから・・・。

 

そんな薄暗い思惑を乗せ、舟は進んでゆく、天から見下ろす女王の下へと・・・。

 

sideout

 

noside

 

「よぉ、やっと帰ってきたか!」

 

アメノミハシラのスペースポートに到着したシャトルから降りてくる一夏達を出迎えたのは、アメノミハシラの整備士長、ジャック・ウェイドマンであった。

 

よくよく見てみれば、彼以外にも数名の整備士達が列を作り、歓迎ムードの中で、三人は久方ぶりの本拠に足を着けた。

 

「ふぁぁ~!やっと帰って来たぁ~!」

 

「やはり、我が家は落ち着きますわね~、皆様も御変わりなくて、一安心ですわ。」

 

シャトルから降り、背伸びをしながら言うシャルロットと、何処かしみじみと呟くセシリアの表情からは、心地良さから現れる安堵の色が濃く滲み出ていた。

 

馴れない土地での生活はそれなりに苦労する事も多く、尚且つそこが戦場となれば尚更気疲れもするだろう、彼女達はリラックスする様に身体を動かした。

 

「ははは、そりゃ、ここが何処よりも一番良いトコだからな、仕方ないさ、なぁ、一夏?」

 

「ん・・・、あぁ、そうだな・・・。」

 

自分に尋ねるジャックの言葉に、一夏は心此処に在らずと言った調子で、引き攣った様な笑みを浮かべていた。

 

やはり、心に負った傷はあまりにも大きく、まともな感覚にはまだ戻れてはいないのだろう。

 

「ミナの所に報告に行ってくる、ストライクを頼むよ、ジャック。」

 

早めに話を切り上げたいと言う風に、彼は愛機の整備を依頼しながらも背を向け、そそくさと通路を進んで行ってしまった。

 

「・・・、アイツ、また何かあったのか?」

 

そんな彼の背を見送ったジャックは、彼の様子から何か感じたのだろう、一夏の飲み仲間である彼はその様子で悟った様だ、一夏の妻であり、傍にいたセシリアとシャルロットに真相を尋ねていた。

 

「南米軍での部下を死なせてしまったんです・・・。」

 

セシリアは痛ましげに目を伏せ、彼の質問に答えていた。

そこには、自分が何もしてやれない事を悔やむ様な表情だけがあった。

 

「彼はその子に庇われて、ね・・・、生き残ったみたいなものだから・・・。」

 

「なんてこったよ・・・、残酷過ぎんだろうか・・・。」

 

セシリアの答えに補足するかのように答えながらも、自分が付いて行っていたのに彼を傷つけてしまった事を悔い、唇を噛んでいた。

 

そんな彼女達の言葉に、ジャックは額に手を当てていた。

 

またしても彼を追いつめる事が、苦しめる事が起こってしまった。

それは只でさえ凹んでいる彼の心をより一層傷つけてしまっている。

 

だが、どれもこれも一夏本人が望んだ事でない事など承知しているため、より一層やり切れない感情だけがあるのだ。

 

「だけどまぁ・・・、立ち直るにゃ時間が要るからな、それまでは、お前さんらで受け止めてやんな、一夏の事をさ。」

 

そして、それを推し量って尚、彼が抱く一夏への信頼は、必ずや一夏が立ち直る事を確信させるには十分すぎるほどの物だった。

 

自分一人が支えるのではない、ここにいる全員が支えあっているのだと、ジャックは伝えたかったのだろう。

 

彼女達が彼等を見ると、全員がその通りだと言う様に笑みを浮かべ、力強く頷いていた。

 

「ふふふっ、皆さん、本当に一夏様の事を想っていて下さるのですね。」

 

「うん、皆の気持ち、本当に嬉しいな。」

 

そんな彼等の暖かな想いに触れ、彼を想っている者が他にもいてくれる事を、心の底から喜んでいた。

 

自分達は独りでは無い、彼等が感じさせてくれる暖かさに感激しているのだろう。

 

「アイツとはダチだからな、まぁ、今はそっとしといてやろうぜ。」

 

「そうですわね。」

 

だからこそ、今はそっとしておいて、彼が救いを求めた時に受け止めてやる事が大事なのだと判断した彼等は話を切り上げ、荷物もそのままなセシリアとシャルロットを部屋に戻らせてやろうと道を開けた。

 

「おっと、忘れる所だったぜ、デュエルとバスター、お前さん達が留守の間にバッテリーパックを新しいのにとっかえといたんだ、休んだ後に調子を見といてくれな。」

 

「まぁ、それは御手数をお掛けいたしました。」

 

「わざわざありがとうございます。」

 

帰ろうとしていた彼女達に、機体のバッテリーを交換しておいた事を、ジャックはデータを示している端末を二人に手渡しながらも伝えていた。

 

自分の機体に関わっている事だからだろうか、二人は足を止め、機体のデータに目を通した。

 

「なんと・・・、稼働時間が延びてますわね?」

 

「パワーエクステンダー・・・、これ凄いね、バスターには嬉しいエネルギーだよ。」

 

以前と比べた稼働時間の長さと機体出力の増大化に、彼女達の表情は驚愕と感嘆に彩られた。

 

オーブの、いや、アメノミハシラの技術力を改めて目の当たりにし、ただ、凄いとしか感想がないのだろう。

 

「おうよ、一応、今までのお前さんらのデータを基に調整してるから違和感は少ないと思うが、まぁ念のためだ、地上戦のデータも録って来てるだろうし、アップデートしとくか。」

 

職人だからなのかそういう気質だからなのだろうか、パイロットに最高のパフォーマンスをしてやりたいと言う想いが、彼の言葉からは色濃く滲み出ていた。

 

「はい、早速ですがよろしくお願いします。」

 

「こんなにしてもらって、休んでるわけにはいかないね。」

 

彼の想いに感激したのだろうか、彼女達は微笑みながらも頷き、自分達の機体の下へと行こうとした。

 

正にその時だった、けたたましい警報が格納庫に鳴り響く。

 

「敵襲か・・・!?」

 

『連合軍の艦影を確認、守備隊にスクランブル発令!』

 

彼の驚愕に答えるかのように、どの軍勢かを報せるアナウンスが響き渡り、全員の表情が緊張に強張った。

 

「シャルさん!」

 

「うん!!」

 

そんな中、セシリアとシャルロットは瞬時にアイコンタクトを交わし、すぐさま迎撃に出ようと愛機の下へと急いだ。

 

こんな自分達を受け入れてくれた、この家を護ると誓いながらも・・・。

 

sideout




次回予告

暗い思いに囚われる一夏、だが、迫る敵に彼は・・・。

次回機動戦士ガンダムSEEDASTRAY X INFINITY

来訪者 前編

お楽しみに~。
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