機動戦士ガンダムSEEDASTRAY X INFINITY 作:ichika
sideシャルロット
「この・・・!すばしっこい機体だね・・・!!」
アメノミハシラ付近の宙域で、僕とセシリアはブリッツともう一機の赤い機体を相手取っていた。
撃っては避け、斬りかかられては撃ち掛けの繰り返しだ、時間の感覚も狂い始めてる。
もうどれぐらい戦っているだろうか、相手の素早い動きに攻撃を決めきれず、徐々に本隊との距離が開いて行く。
それに気付いた時にはもう遅い、これが彼等の作戦だったんだ。
戦力を分断させて敵を叩く、分断作戦に見事に嵌められてしまった。
お陰で僕達二人は足止めを喰らって味方の援護に向かえない、ハッキリ言って歓迎できた状況じゃあ無いね。
「だけど・・・!!諦めるもんか・・・!!絶対に、僕が落とす!!」
一夏の苦しむ姿なんて見たくないし、何より、僕だって仲間が死ぬなんてもう御免だ!
だから、僕の大切な人達に害を為すのなら、容赦なんてしない!!
必殺の意志を籠めてビームライフルを撃ちかけても、ブリッツは回避して、その隙に赤い機体が格闘戦装備の無いバスターを狙って攻めてくる。
セシリアが何とかカバーしてくれてはいるけど、戦っている敵の相性があんまり良くないから、正直ジリ貧だ。
赤いMSもただ攪乱しているだけじゃなかった、時々MAに変形して突っ込んで来たり、高出力ビームを撃ってきたりしてるからね・・・!!
『シャルさん!このままでは・・・!!』
「分かってる・・・!だけど、退いちゃダメだよ!!」
そうは言っても、キツイかな・・・?
そう考えた時だった、デュエルの牽制を掻い潜った赤いMSが僕に体当たりしてきた。
「うわっ・・・!?」
しまった・・・!体制を崩された・・・っ!!
衝撃を何とか堪えながらも目をやると、そこにはビームライフルを構えたブリッツの姿があった。
このタイミングを狙っていたんだ・・・!!
一夏の事とか、いろんな事に気を取られすぎて周りを見てなかった・・・!!
そう気づいてももう遅い、次の瞬間に来るだろう衝撃に、僕は身体を強張らせた。
だけど、それが来る事はなく、代わりにブリッツを幾恵もの光が襲っていた。
「助かった・・・!?」
『一体何方が・・・!?』
僕を救ってくれたビームが飛んできた方向へ目を向けると、そこには漆黒の翼を広げた金色の機体の姿があった。
「『ゴールドフレーム!!』」
ミナさんだ・・・!ミナさんが僕を助けてくれたんだ!
頼もしすぎる援軍の登場に、僕とセシリアは歓喜したけど、次の瞬間にはそれすらも驚きに変わってしまった。
『シャル!セシリアも無事か!?』
「一夏・・・!?」
『どうしてその機体に・・・!?』
なんで一夏が・・・!?そもそも、戦える状態じゃなかったのに・・・!!
止めないと・・・!止めないと取り返しの付かない事になる・・・!!
『セシリアとシャルは守備隊の援護に回ってくれ、ここは俺が受け持つ!!』
「ダメだよ!今の貴方じゃ・・・!!」
『せめて私達も共に・・・!!』
『ダメだ!!』
なんでさ!?僕達じゃ一夏を助けられないって言う訳なの・・・!?
助け合いながらなら何とかなるかも知れないのに、それすらも否定するの?一夏・・・!!
『俺が、俺が全部吹っ切るために・・・!悪夢から逃げるためにも・・・!こいつらは俺独りで倒す!!』
悪夢・・・、一夏を苦しめる過去からの脱却・・・。
それが本音なの・・・?本当にそれが目当てなの・・・?
『頼むよ・・・、君達を失いたくは無い・・・、だから・・・!!』
『一夏様・・・。』
それが本音、か・・・。
大事に思ってくれるのは嬉しいけど、その事で彼に背負い込んで貰いたくないものもある。
だから・・・!
『分かりました、ですが、どうかお気をつけて・・・。』
「セシリア・・・!?」
なんで今の彼を独りにする様な事を・・・!?
今は僕達が傍にいないと不味いんじゃないの!?
『今はこれで良いのです、本当に危なくなったら、私達も戻りましょう?』
「・・・。」
彼の好きに・・・、か・・・。
確かに、彼自身の問題を解決できるのは彼しかいないんだから、僕たちがどうこう言っても無駄なことは分かり切ってたね・・・。
やっぱり、セシリアには敵わないなぁ・・・、僕は心配するだけしか出来なかったから・・・。
「分かった、行こう、セシリア!
『えぇ!』
今、彼に慰めも優しさも与えられないなら、せめて好きにさせてあげるのが女の役目かも知れない。
だから、今は彼に従おう。
だけど、必ず勝って・・・、一夏・・・。
sideout
side一夏
連合本隊へと向かうデュエルとバスターを行かせまいとばかりにブリッツとイージスはビームライフルを構えるが、それを阻むかのように、俺はマガノシラホコを牽制代わりに射出、その卓越した技量で操作しながらも二機の攻撃を妨げる。
「悪いが、お前達は俺の相手をしてもらうぞ、仲間や妻を死なせる訳にはいかんのでね!!」
機体の感触を確かめる様にレバーを握ったり離したり、フットペダルの感触を確かめたりしながらも、俺は目の前の二機に視線を戻した。
「イージスとブリッツ・・・、まさかXナンバーが出てくるとはな・・・。」
あの二機はヤキン大戦の中期に撃破された筈・・・、それに、俺の記憶ではこの時期に再生機が存在したと言う事は無い。
それはつまり、目の前の二機がイレギュラー的存在で在る事は考えるまでも無い。
つまり、ここにあるブリッツとイージスは、この世界にあるべきではない物、俺達と同じ存在・・・。
「転生者・・・、なのか・・・?」
その可能性は十分に有り得る、もっとも、どっかのモノ好きが再生機を作ってないとも言い切れないけどな。
だが、俺には目の前の彼等が、俺と同じ境遇で別世界に連れて来られたのだと感じていた。
女神よ、アンタはまた誰かを狂わせたいのか、苦しめたいのか・・・?
所詮、俺達人間は神の遊戯の駒でしかないと?
彼等に罪は無い、そうは分かっていても、俺は憤りを堪え切れなかった。
「俺と同じ存在だったとしても・・・、罪の無い奴等だとしても・・・!俺の大切な人達を殺そうとするんなら・・・!!」
そう叫んだ直後、彼等は別々の方向から攻撃を仕掛けてきた。
ブリッツはトリケロスからビームサーベルを発生させ右側から、イージスは左側から斬りかかってくる。
後退する以外に避ける術はないがそこから先は防戦一方になっちまう、そんなのは俺の性にあわないんだよ!!
「見えているぞ!!」
ブリッツの斬撃をトリケロス改で受けながらも、イージスの腕にトツカノツルギを引っ掛ける。
切り結ぶ事が目的じゃない、敵のバランスを崩す事が目的だ。
イージス側のスラスターを全開にし、回転する事でイージスの体制を崩す。
「天ミナはこういうトリッキーな戦いが出来るんだよ!」
どうやら、目の前の二機はこういう搦め手には弱いらしいな。
戦い慣れしているのならば、今やったみたいな技に引っ掛かる訳がない。
「そこっ!!」
そのままの勢いでブリッツのトリケロスを弾き、胴に蹴りを叩き込んで吹っ飛ばす。
その隙に体制を立て直したイージスに近付き、ツムハノタチを引き抜いて僅かにフレームが露出する右腕の関節を突く。
PS装甲で覆われてなきゃ、他のMSとなんら変わらん防御力しかないんだからな。
破壊までは行かなかったが、イージスの右腕はスパークを散らし、もう動かす事すらままならないだろう。
「もう一撃・・・っ!?」
追撃しようとしたが、背後からブリッツがランサーダードを撃ちかけてきたため、機体を反転させつつもシールドで弾きながらも二機と距離を取る。
「素人かと思っていたが、そうでもないらしい、いずれは強くなるだろう・・・、惜しいな・・・。」
その力、味方に引き込めれば心強い存在となってくれただろう・・・、戦場以外で会えていれば、良かったのにな・・・。
だが、今は敵だ、容赦はしない!!
ブリッツへの牽制としてビームライフルを撃ちかけ、マガノシラホコでイージスとの距離を引き離す。
こうやって連携を取る暇さえ与えなければ数の差などどうと言う事は無い。
味方の危機に、イージスは残った左腕と両足にビームサーベルを展開、一気に俺を仕留める積りなのだろう、猪突猛進的な勢いで迫ってくる。
「手負いから先に仕留める!恨むなら恨んでくれていい・・・!!」
だが、俺もやられる訳にはいかない、マガノシラホコを戻しながらも天ミナ最大の特徴であるミラージュコロイドを発動し、姿を隠す。
ブリッツから発展させたコイツなら、不意を突くにもちょうど良い、一気に終わらせる!!
AMBACを使い、慣性で機体を動かしながらも、周囲を警戒しているのだろうか、ビームサーベルを無茶苦茶に振り回すイージスの右側に回り込む。
「悪いがトドメだ!!」
そのままマガノイクタチを展開し、イージスを捕縛すると同時にミラージュコロイドを解除、放電を開始した。
既にセシリアとシャルと交戦した後だ、そんなにエネルギーも残っていないだろう。
同時にイージスをブリッツの方に向け、攻撃できない様な態勢を取る。
フレンドファイアなんてやりたかないだろうからな。
『くそっ・・・!!離せ・・・!離せよぉ・・・!!』
接触回線が開かれてしまったのだろうか、敵のパイロットの女の声が聞こえてきた。
嫌なもん聞いちまったな・・・、今から殺す相手の声なんて・・・!!
だが、仕方ないんだ・・・!今は、仕方ないんだっ・・・!!
そして、間も無くイージスのエネルギーは底を突き、PSダウンを引き起こした。
「許せ・・・、許せ・・・!!」
目の前にいるのは人間じゃない、MSだ・・・!!
俺の敵なんだ・・・!!
断末魔を聞くのを無意識に拒んだのだろう、俺はイージスをブリッツの方へ突き飛ばしていた。
これで、終わりだ・・・!!
ツムハノタチを左手に握り締め、俺はイージスのコックピット目掛けて突き出そうと操縦桿を動かした。
だが・・・。
――どんな理由でも、人殺しが許される訳がないだろ!!――
「・・・っ!!」
そんな俺の耳に、この世界にいない男の声が耳に届く。
人殺しは許される事の無い罪・・・、俺はそれを犯し続けている、何人殺そうともう代わり映えはしない。
だが、殺さなくて済むのなら、俺と同じ存在を消さなくてもいいのなら・・・!!
「うぅぉぉぉぉ・・・っ!!」
機体に制動を掛けるのは間に合わん・・・!なら、軌道をずらす事ならば・・・!!
必死に操縦桿を動かし、コックピットからずれた切っ先はイージスの背面スラスターを破壊するだけに留まった。
そのままの勢いでイージスに組み付き、トリケロス改の銃口をコックピットに向けつつもオープンチャンネルを開く。
「ブリッツのパイロット、聞こえているなら投降しろ・・・、さもなくばイージスのコックピットを焼く!イージスのパイロットも妙な事をするんじゃないぞ、死にたくないんならな・・・!!」
応じてくれ・・・!でないと、この躊躇いが無駄になっちまうだろうが・・・!!
息詰まる様な時間がどれほど続いた事だろうか、アメノミハシラの方で瞬いていた光が目に見えて少なくなり、母艦がいるであろう方へと撤退していく様が見受けられた。
どうやら、彼等を見捨てたのだろう、いや、もしかすると、この二機のパイロット達は連合軍ですらないのかもしれない。
だったら、命を無駄になんて出来んだろう、自分達を見捨てた連合軍のためなんかにはな・・・。
ブリッツのパイロットも状況を理解してくれたのだろうか、トリケロスを手放し、降参の意思を示すかのように手を上に挙げていた。
「よかった・・・、これで・・・。」
殺さずに済んだ、そのれだけの思いが身体を支配していたのだろうか、俺の身体から張りつめていた緊張が抜けていくのが分かった。
『一夏卿!ご無事でしたか!?』
そんな中、連合の本隊と交戦していた部隊の内、もっとも損傷の少ないだろう機体が数機、俺の方に近付いてくるのが確認できた。
おっと、いけねぇいけねぇ・・・、こんな緩みきった顔、見せられんよな・・・。
「あぁ、俺は何ともない、味方の損害状況は?」
『小破二機と中破が一機のみです、死者は出ていません。』
良かった・・・、何とか護れたんだな・・・、大切な人達を・・・。
「そりゃ良かった、こっちに寄ったついでだ、コイツ等を連行しろ、機体共々だ。」
『はっ!承知しました!!』
寄って来た内の一機にイージスを渡しながらも、俺はアメノミハシラへと連行される二機の後姿を見送った。
さてさて、何とか護れたのは良いが、このまま帰ったら間違いなく誰かしらに説教されるよなぁ・・・。
自分で出てきたとは言っても、気が重いぜまったく・・・。
たけどまぁ・・・、そうやって俺の事を思ってくれてるんなら、良いかな・・・?
「さてと・・・、俺も帰るかな。」
こんな俺を案じてくれる人達の温かさに触れながらも、俺は天ミナをアメノミハシラへと向けた・・・。
sideout
noside
「身柄確保ぉ!暴れんじゃねぇぞ!!」
ブリッツのコックピットから出てきたパイロットの手に手錠を掛けながらも、保安兵に交じって銃を構えるジャックは、ブリッツのパイロットを連れて独房までの通路を進んでゆく。
「おいコラ!妙なマネすんなよ!?捕虜は丁重に扱えーっ!!」
その隣では保安兵に腕を掴まれ、ジタバタと暴れるイージスのパイロットの女性が歩いており、格納庫内の空気は緊張で張りつめていた。
それもそうだ、如何に拘束されているとはいえど、敵が自分達の内部にまで入ってきているのだ、何時暴れられても不思議ではないため、保安兵達は密かに銃を構えている様な状態なのだ。
「おとなしくしてろ、撃たれるぞ。」
「ちくしょう・・・!アタシが負けるなんてぇ・・・!!」
男性は悔しそうに唇を噛む女性を宥めながらも、周囲を窺うかのように辺りを見渡していたが、逃げ出す隙も無い事に気付いたのだろう、諦めた様にタメ息を吐いていた。
そして、彼等はそのまま格納庫から去って行き、緊張が解れたのだろうか、その場にいた者達は何事も無かった事に安堵していた。
「いやぁ・・・、何にも無くって良かったねぇ・・・。」
「そうですわね・・・、まさかあの二機を鹵獲するなんて思いもしませんでしたわ。」
それぞれの機体から降りたシャルロットとセシリアは一触即発の雰囲気が解かれた事に安堵しながらも、何処か困惑の色を隠せずにいた。
それもその筈、先程連行されていったパイロット達は、さっきまで彼女達と殺し合いをしていた者達だったのだ、それを何故、彼は捕える様な真似をしたのだろかと言いたげな様子だったのだ。
そんな空気の中、天ミナのコックピットから降りてきた一夏が彼女達の傍に歩み寄り、ヘルメットを脱ぎながらも彼女達の目を、申し訳なさそうに見詰めていた。
「・・・、どうしてあんな事をしたのかって顔だな・・・、分かるよ。」
あまり問い詰めないでくれと言わんばかりの表情だが、そこには何か確信めいた想いがあるのだろう、そんな色が見て取れていた。
「一夏様・・・?」
「もう、良いの・・・?」
出撃前にあった、何処か思い詰めていた様な色はその影を潜め、今はやるべき事をやるだけと言う様な気概だけがあった。
「ん、あぁ、今は考えなくちゃいけない事があるんだ、ウジウジしてる暇なんてないよ、だから、セシリアとシャルには俺を支えてもらわないとな?」
まだ疲労の色は残っているものの、その瞳は生気を取り戻しつつあった。
「はい・・・♪」
「勿論だよ♪」
そんな彼の姿を喜び、二人は微笑んで顔を見合わせた後、彼に向けて頷いていた。
「よし、早速だけど耳貸せ。」
「はい?」
「良いけど・・・?」
彼女達に微笑み返した次の瞬間、彼は表情を引き締めながらも彼女達を自分の傍に寄せながらも呟いた。
「(アイツ等、俺と同じ転生者かもしれん。)」
「「えっ!?」」
唐突な言葉に、セシリアとシャルロットは驚きの声を上げていた。
転生者、その単語は一夏の口から語られ、彼も、そして自分達自身も転生者と呼ばれる存在であると知覚していたため、まさか、自分達以外の転生者が同じ世界に現れるとは思っても見なかったのだろう。
「とは言え、まだ確証はない、だけど、もし俺が最初に居た様な世界からの転生者なら、この絶世の美女の顔を知っている筈だしな、聞く価値はあるだろう。」
「ですが・・・、それを確かめてどうなさる御積りですか?」
確証は無いと言いながらも、何処か確信めいた何かを抱いている様だった。
それを不思議に思ったのだろう、セシリアは彼がやろうとしている事に合点がいかずに、何をするのかと尋ねていた。
「まぁ、そんなに難しい事じゃないさ、ウチの戦力増強にも良い機会だしな?」
「あぁ・・・、うん、何となく分かったよ、ダシに使われてるみたいで癪だけど、一夏の頼みなら仕方ないかな?」
戦力増強、その言葉に彼の真意を酌み取ったのだろう、シャルロットは納得の表情を浮かべながらも何処か呆れている様でもあった。
何時から自分の旦那はこうも情に脆くなってしまったのか、そして、そんな彼により一層惹かれている自分も、随分変わったなと苦笑していた。
だが、こういう感覚も悪くないと思えるのも、また事実だったのだ。
「さてと、頑張ってみるとしますかね?」
何かを決心して、彼等は連れ立って格納庫を後にするのであった。
sideout
次回予告
捕らわれし者達に差し伸べられた救いの手は、彼等を何処へ誘うか・・・。
次回機動戦士ガンダムSEEDASTRAY X INFINITY
先達として
お楽しみに!