機動戦士ガンダムSEEDASTRAY X INFINITY   作:ichika

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GWと言うことで、連休中にもう一、二話あげたいと思います。


邂逅

noside

 

ジャンク屋組合所属の宇宙船〈リ・ホーム〉に新たな仲間が加わってから早二日、

彼等の航路はL4コロニー群に存在するコロニー、メンデルに向けられていた。

 

メンデル、その地は嘗て、遺伝子研究が盛んに行われていたことで有名である。

 

現在はC.E.68年に発生したバイオハザードの影響により閉鎖され、

施設やその他の設備もそのまま放棄された。

 

尚、メンデルは地球連合の息がかかっていた時期があり、

軍部主導の下、戦闘用コーディネィターの開発、研究が行われていた。

 

その結果として生み出されたのが、サーペント・テールのリーダー、叢雲 劾や、

元ザフトの英雄、グゥド・ヴェイアであり、ヴェイアの遺伝子を基に作られたソキウスシリーズも、メンデルで作り出されている。

 

しかし、それは表沙汰にはなってはおらず、この事を知るのは限られた人物、当事者達しかいないのも事実であった。

 

そして、メンデルに向けて進むリ・ホームのメンバーは当然の事ながら、

この事実を知る由もなく、ただ、次の仕事現場がたまたまメンデルであるという、ある種の偶然の結果であると言うべきか・・・。

 

「今度の依頼ってプラントからの直接の依頼なんだよね?」

 

「えぇ、組合を通じての依頼です、

危険な仕事を組合が寄越すとは考えられませんので、大きな問題は無いでしょう。」

 

リ・ホームの艦橋で、今回の依頼内容の確認を行う樹里に対し、黒髪の男性、リーアムは説明するかの様に概要を話していた。

 

今回、彼等に舞い込んだ依頼の内容は、コロニーメンデルにいるディラー・ロッホと言う人物に、

MSのパーツの配達、及び、破損箇所の修理であった。

 

プラント政府からの依頼ではあるが、恐らく本当の依頼主はメンデルにいるディラー・ロッホなのだろうと予想する事が出来る。

 

もっとも、その人物が何をしているかまでは分かっていないのも事実ではあるが・・・。

 

「リ・ホームは港で待機しておくわ、目的のポイントにはMSで行ってちょうだい。」

 

「分かった、俺と『8』はレッドで、樹里とリーアムはバクゥで行こう、シャルロットも来るか?」

 

プロフェッサーの指示を受け、リ・ホームのメンバーは各々が登場する機体に乗り込むべく、

艦橋から出ていく中、

ロウはモニターを見ていたシャルロットに尋ねていた。

 

「う~ん・・・、僕はまだいいかな、バスターにも乗り慣れてないし、

それに何かあった時の為にも、船の近くにいるよ。」

 

「分かった、任せたぜ。」

 

まだMSに乗り始めて間もない彼女ではまともに機体を動かす事も難しい事は明確であった。

 

その為に、彼女はリ・ホームの周囲に残り、

機体の操作に慣れる事に専念するのだろう。

 

その意思を汲み取り、彼は彼女に船の近くにいること任せたのだろう。

 

「船の事は任せておけ!なんといってもこの私がいるからな!」

 

「私とシャルロットがいるから安心して行きなさい。」

 

『りょ、了解!』

 

軽すぎるジョージの言葉を遮る様に言うプロフェッサーの言葉に、出動組は苦笑を浮かべつつ、艦橋から出ていった。

 

「あ、あははは・・・。」

 

そんな様子に、シャルロットはひきつった様に乾いた笑いを漏らしていた。

 

sideout

 

sideシャルロット

 

ロウ達が出撃していったのを見送り、プロフェッサーとジョージを艦橋に残して、

僕は格納庫までやって来た。

 

「待たせちゃったかな、バスター、

これからちょっと訓練するから付き合ってね。」

 

コックピットに乗り込み、『8』から聞いたOSの設定を行う。

 

なんでも、まともに調整されてない、若しくは自分の反射能力に合っていないOSでは、

戦闘どころか、動かすこともままならないらしい。

 

聞いた処によると、ロウがレッドフレームを動かせているのは、

『8』のサポートが大きな手助けになってるみたいで、OS自体に大きな変更はあまり無いみたい。

 

それは兎も角、僕はこの世界においてはナチュラルと呼ばれる人種だと思うし、

『8』に測定してもらった数値で事足りると思う。

 

それにしても、自分に機体を合わせるって、ISみたいでなんだか懐かしいかな。

 

「さてと・・・、今の僕に何処まで動かせるかな・・・。」

 

いきなり戦闘とかにならない限り落ち着いて操縦できるからいいんだけどね・・・。

 

まぁ、心配ばっかりしてても何も進歩しないんだけどさ。

 

じゃぁ、そろそろ行こう、バスター。

 

機体を固定していた金具が外れた事を確認して、

僕はフットペダルを少し踏み込み、操縦桿を押し込んだ。

 

僕の操作に応える様に、機体はゆっくりとながらもカタパルトまで移動を始めた。

 

懐かしいなぁ、初めてISを動かした時みたいだよ、

あの時は自分で望んでやってた訳じゃなかった、でも、今は違う。

 

自分の意志で宙を飛ぶために、新しい一歩の為に、僕はこの機体に乗ってるんだ。

 

『進路上に障害物は確認されない、何時でも行けるぞ、シャルロット。』

 

「了解だよ、ジョージ、シャルロット・デュノア、バスター、行きます!」

 

ジョージのアナウンスを聞きながら、僕はカタパルトから船外に飛び出した。

 

その直後、バスターの機体が大きく傾きかけた。

 

「うわっ・・・!思ったよりも難しいかな・・・!」

 

慌てて体勢を立て直すけど、今度は反対方向に機体が流れそうになる。

 

そういえば、宇宙では慣性が強く働くし、押し留めようとする力がないんだよね・・・!

 

「でも、そうこなくちゃね!」

 

難しいからこそ頑張れるんだ、だからこそ挑めるんだ!

 

新たな目標を見つける事が出来た僕は、フットペダルを更に踏み込み、宙を駆けた。

 

sideout

 

noside

 

シャルロットがバスターに乗っていた頃、彼女に先行して船を出たロウ、リーアム、『8』、樹里は、

各々の機体を駆り、依頼人との待ち合わせ地点まで移動していた。

 

コロニーメンデル内部は閉鎖されている事もあり、人の気配や生活の痕跡などは全くなく、

まさしくゴーストタウンならぬ、ゴーストコロニーと言うべき有様だった。

 

「指定されたポイントは此処の辺りですね。」

 

「よっしゃ、降りてみるか。」

 

指定ポイントが近づいた事を知らせるリーアムの言葉に、

ロウは仕事するぜと言わんばかりの返事をしつつ、レッドフレームをメンデルの地表に降下させていく。

 

高度が下がるに連れ、メンデルに存在する施設跡がハッキリと確認できるようになっていく。

 

どの施設も荒れ果て、かつての面影を僅かに残す程度でしかなかった。

 

「しっかし、随分と荒れてるな、こりゃ・・・。」

 

その様子をコックピットのモニター越しに見たロウは、

呆然と呟く事しか出来なかった。

 

諸行無常、栄華を誇った存在もいつかは寂れ、歴史に埋もれ消えていく・・・、

それを体現した様な風景に、遣る瀬無い気分を抱いたのだろうか・・・。

 

だが、今はそんな事を考えている場合ではないと頭を振り、彼は己の愛機を着地させた。

 

「おーい、誰かいないのか~?」

 

「何にもないね~。」

 

「おかしいですね・・・、指定されたポイントはこの辺りの筈なんですが・・・。」

 

地表に降り立った彼等は依頼主の姿を見つけるべく、辺りを見渡すが、

見えるのは殺風景な廃墟と、Ⅹ線で徹底的に消毒され、赤茶けた地表が見えるのみだった。

 

まさか依頼がデマだったのではないか?

彼等がそう思った矢先、突如として彼等の足場が大きく揺らぎ始めた。

 

「な、なんだ!?地震か!?」

 

「そんな!コロニーで地震が起こる筈がありません!!」

 

ロウの叫びを、リーアムは有りえないという様に叫び返した。

 

地震はプレート同士が押し合いを続ける事で発生した力と歪みが蓄積し、

それに耐え切れなくなったプレートが戻ろうとする事で発生する自然現象である。

 

だが、此処はスペースコロニー、プレートも存在しなければ地震も発生するはずが無い。

 

では、この揺れは何なのか?

その正体が掴めないのだ。

 

「地震ウイルスだぁ~!!」

 

完全に取り乱し、パニックを起こした樹里の悲鳴を、

リーアムは「そんなバカな」と、小さく突っ込んでいた。

 

そんな中、彼等の目の前の地表が割け、地中から何かが姿を現した。

 

「キャァァァ!!」

 

「敵かっ!?」

 

地中から現れた何かに対処すべく、ロウはレッドフレームの装備、ガーベラストレートを引き抜き、臨戦態勢に入った。

 

土煙が晴れ、そこに立っていたのは、モグラの様な色合いを持ったMSであった。

 

「此奴は・・・、グーンじゃないか!」

 

「これは驚きですね・・・。」

 

「モグラだぁ。」

 

ロウとリーアムは現れた機体に驚愕し、樹里はまたしても的外れな突っ込みをかましていた。

 

グーンはザフト製のMSではあるが、本来の用途は水中での運用にあり、

地中で活動できる筈はないのだ。

 

「驚かせてしまって申し訳ありません、ジャンク屋組合の方ですね、

私の名前はディラー・ロッホと申します。」

 

地中から現れたグーンは、敵意が無い事を示す様に両手を挙げた後、

コックピットハッチが開き、中から褐色の肌を持った青年が姿を現した。

 

彼こそ、ロウ達の依頼主である、ディラー・ロッホその人であった。

 

sideout

 

noside

 

「こりゃ、やっぱりスケイルモーターの振動でセンサーがいかれてただけだな、

持ってきた部品だけでなんとかなりそうだぜ。」

 

「そうですか、助かります。」

 

臨戦態勢を解いた後、ロウは早速グーンに取りつき、

各部のチェックを開始、すぐさま異常な点を発見し、修理に取り掛かった。

 

「ねぇ、こんなところで何をやってたの?」

 

サポートはリーアムが受け持っているため、手持無沙汰になった樹里は、

近くに佇み、作業の様子を見ていたディラーに近寄りながらも尋ねた。

 

「プラント評議会からの依頼で、ジョージ・グレンのDNAサンプルの発掘作業をしてたんですよ。」

 

「ジョージ・グレン!?」

 

彼の言葉を聞いた樹里の脳内では、高らかに笑いながらⅤサインをするジョージ・グレンの姿が浮かんだが、

それは違うという風に顔を顰め、薄い笑みを浮かべたクールな彼を想像しなおした。

 

彼女にとってのジョージ・グレンはファーストコーディネィターとしての彼であり、

現在の軽薄な彼ではないのだろう。

 

「メンデルでは彼の遺伝子も研究されていましたし、

それに、彼は我々コーディネィターの始祖でもありますから、そのデータが欲しいんでしょう。」

 

彼女の言葉に頷きつつ、彼は何処か楽しそうに語り始めた。

 

「最初の内は重機を使って作業していたのですが、このグーンが送られてきて重宝してたんです、

調子が悪くなった時は途方に暮れましたね、外は戦争も激しくなっていると聞きましたし、何時来てくれるのかも分かりませんでしたから、今はホッとしていますよ。」

 

おどけた様に肩を竦める彼の表情は安堵の色が濃く滲み出ていた。

 

確かに、自分の仕事に支障が出ている中、修理の手が何時来てくれるのか気が気でなかった事だろう。

 

「貴方一人で作業をされていたのですか?」

 

「はい、此処に派遣されたのは私一人です。」

 

「これだけの広さをたった一人でですか!?無茶です!非現実的もいいところです、

貴方には現実が見えていないのですか?」

 

自分の質問に答えた彼に対し、リーアムは非現実的だと叫んだ。

 

現実主義者〈リアリスト〉である彼にとって、たった一人でコロニー内部を丸ごと発掘調査している彼の行為は無謀、現実を見ていないとでも取れるのだろう。

 

「そうですね、でも、あれを見てください、あのエリアは既に発掘を終えたんですよ。」

 

そんな彼の指摘を素直に肯定しつつ、ディラーはとある方向を指差した。

 

そこには掘り返されたと思われる土石が高々と積み上げられた山がいくつも存在していた。

 

その量から推察するに、相当の面積を発掘したのだと思われる。

 

「あんなに広い場所を一人で掘ったの!?」

 

「はい、エリア毎に分けて発掘しているので、ほんの少しずつですが達成感もあるんです、

全てを終えるのが何時になるかは分かりませんが、明確な目標があるので遣り甲斐があるんです。」

 

驚いて尋ねてくる樹里に対し、自分のしてきた事を誇らしげに語る彼の表情は、

目標に向かって進んで行く者がする、誇りに満ち溢れた輝かしいモノになっていた。

 

「あの~、一つ提案があるんですけどぉ~・・・。」

 

「はい?」

 

「私たちの船にありますよ、ジョージ・グレンの遺伝子サンプル。」

 

「えぇっ!?本当ですか!?」

 

樹里の下心丸出しな申し出に、彼は驚きながらも、作業を続けていたロウとリーアムに確認を取った。

 

彼女の魂胆としては、リ・ホームからジョージを追い出したくて山々なのだろう、

だからこそ、ジョージ・グレンの遺伝子サンプルを探しているディラーに渡してしまおうとしたのだろう。

 

「まぁなぁ・・・。」

 

「出所は明かせませんが・・・。」

 

尋ねられた二人は、彼女に呆れつつも存在する事だけは認める様な返事をしていた。

 

その事について考え始めたが、暫く考えた後、答えを出したようだ。

 

「申し訳ありませんが、そのサンプルは受け取れません」

 

「えぇっ!?どうしてぇ!?」

 

折角ジョージを追い出せるチャンスだったにも拘らず、

彼は提供を断ってしまった事に理解できなかったのだ。

 

「確かに、そのサンプルは本物なのでしょう、

それを受け取れば私に依頼をしてきた評議会の人は満足するでしょう、

ですが、それは私が探している物ではありません、私の目標ではありません。」

 

「「?」」

 

「分かるぜ、その気持ち。」

 

彼の語る意味が分からなかった樹里とリーアムは顔を見合わせていたが、

ロウは我が意を得たりと言う風に笑いながら頷いた。

 

「折角の申し出でしたのに、すみません。」

 

「いいや、気にするなって、それよりも聞いていいか?」

 

「はい?」

 

グーンから降りたロウは、ディラーに対して唐突に質問していた。

 

「外ではアンタの同胞が武器を取って戦っている、

アンタは戦わないのか?」

 

その問いとは、彼が常々抱いている疑問だった、

戦争は泥沼化し、互いが互いを滅ぼさんと戦っている。

 

そこに参加しないのかと尋ねているのだろう。

 

「戦っていない同胞も、銃を持たない同胞も多くいます、

戦いたい人だけが戦えばいいんです、私には他にやるべき事があります、

それは、貴方方も同じでしょう?」

 

「その通りだ、気に入ったぜアンタ!」

 

「そう言ってもらえて光栄ですよ。」

 

彼の言葉に深く頷きながらも、ロウは笑いながらも彼の肩を叩いた。

 

周りに流されることなく、自分のなすべきことをただひたすらにやり通し、己の道を歩む、

そんな姿勢に強い共感を覚えたのだろう。

 

リーアムと樹里は、そんな彼等を不思議そうに眺めながらも、

何処か納得した様に頷いていた。

 

自分達の理解が及ばない場所で彼等は分かりあっている、彼女達に分かったのはそれだけであろう。

 

それから幾らもしない内に修理は終わり、別れの時がやって来た。

 

「じゃぁな!また何かあったら呼んでくれよ!すぐに駆けつけるからな!」

 

「はい!ありがとうぎざいました。、その時はよろしくお願いします。」

 

各々の機体に乗り込みつつ、彼等は別れの挨拶を交わす。

 

短い時間ではあったが、確かな交流が出来たのだ、名残惜しいものがあるのかもしれない。

 

「これから先、何かが見つかる事を祈ってるぜ。」

 

「はい、ロウ、貴方の目標が成就するといいですね、応援していますよ。」

 

「あぁ、それじゃな!」

 

最後の通信を入れた後、ロウはレッドフレームを飛翔させ、港まで戻っていく。

 

「(俺は、ナチュラルもコーディネィターも争わなくて済む、そんな世界を目指すぜ!)」

 

彼が目指すものがどこにあるのか、そして、どれほど困難かなどは関係ない、

望みさえすれば、何時かは辿り着ける、彼はそう信じていた。

 

故に歩き続ける、その目標に辿り着くまで、何時までも・・・。

 

sideout

 




次回予告

新たに動き始める者達の軌跡が、王道を行かぬ者達の軌跡と交ざり合う、その先に待つものとは・・・?

次回機動戦士ガンダムSEEDASTRAY X INFINITY

第一章 XASTRAY 編

激動の始まり

お楽しみに!
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