機動戦士ガンダムSEEDASTRAY X INFINITY   作:ichika

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先立ちとして

noside

 

「くそぉ・・・!こんなトコに閉じ込めやがってぇ・・・!!とっとと出せよぉ!!」

 

アメノミハシラの監房区画から、鉄格子を激しく叩く音や、女性の怒鳴り声が響き渡った。

 

鉄格子の感覚はかなり隙間は狭く、外部からも様子は窺う事が出来たが、内部からの脱出はどう考えても不可能に近かった。

 

「やめろ、玲奈、大人しくしていろ、でないと本当に次は無いぞ。」

 

鉄格子を乱暴に殴り続ける女性を宥める様に、質の悪いベッドに腰かけた男がタメ息を吐きながらも制止していた。

 

「けどよ宗吾!このままじゃ何にも出来ないじゃないか!アタシはそんなの嫌だぜ!?」

 

「分かってる、だからと言って騒いでも誰も相手にしてくれんだろうに。」

 

玲奈と呼ばれた女性は、自身が宗吾と呼ぶ男性に食って掛かるが、彼は喧しいと言わんばかりの表情で聞き流し、大人しくしているべきだと諭した。

 

確かに、これ以上騒いでいたら何時銃弾が飛んできてもおかしくは無いのだ、そうなれば間違いなく、自分達にこれから先と言う概念は無くなる、だからこそ、今は大人しく、機を窺うだけで良いと言いたいのだろう。

 

「物分りの良い男で良かったよ、話し甲斐がありそうだ。」

 

「「っ!?」」

 

そんな時だった、彼等を見ていたかのような声が聞こえ、二人は身を強張らせた。

 

自分達をここに連れて来た衛兵の声ではなく、別の若い男の声だった。

 

幻聴などではなく、耳を澄ませれば近づいてくるような足音も聞こえてきた。

それも一人の物ではなく、複数人の足音だった。

 

そして、鉄格子の外に、その人物達は姿を現した。

 

「よぉ、気分はどうだ?」

 

「「な・・・っ!?」」

 

姿を現した三人の姿に、彼等は自分達の目が信じられないとばかりに驚愕していた。

 

一人は癖のある黒髪を持った男性、もう一人は長いブロンドにウェーブを掛けた女性、そして、最後の一人は濃い金髪を背中で括った女性だった。

 

その者達の顔を、彼等は見た事があった。

 

「織斑一夏・・・!?セシリア・オルコット・・・!?」

 

「それに、シャルロット・デュノアまで・・・!?どうして・・・!?」

 

宗吾と玲奈は、自身達の記憶にあった名を口に出しながらも、本当にその人物かと尋ねる様な声色でもあった。

 

そう、目の前の三人は、彼等が以前読んでいた小説、インフィニット・ストラトスの登場人物であり、この世界には存在しない筈の者達だったのだ。

 

「やはり、俺達の顔を知っている、か・・・。」

 

「これで、一夏様の御考えが当たりましたわね。」

 

彼等の反応が予想通りの物であったからか、一夏は何処か憐憫にもにた表情を浮かべ、セシリアは納得の表情を作っていた。

 

「なんの事・・・!?いや、そもそも、なんでアンタ達がこの世界に・・・!?ここはガンダムSEEDの世界じゃないの!?」

 

彼等の反応に、玲奈は今だ冷静さを取り戻せていないのだろう、困惑に染まった声で答えを求めている様でもあった。

 

いや、困惑と言うよりは、彼等が何もかも見透かしている様なある種の不気味さに怯えているのかも知れないが・・・。

 

「そうギャァギャァ吠えるな、俺達の事も含めて教えてやるから黙ってろ、転生者。」

 

「「なっ・・・!?」」

 

玲奈の叫びに耳でも痛いのだろうか、彼は顔を顰めながらも、自分達しか知らない単語を口にした。

 

「なんで・・・!?」

 

「どうしてアンタがその事を・・・!?」

 

彼の言葉に、自分達の正体が見破られた事に驚いているのだろう、宗吾と玲奈は目を見開いて尋ねていた。

 

転生者とて、外見はこの世界にいる人間と何ら変わり無く、見破る事は極めて困難であるため、こんなにも一瞬で見破られるとは夢にも思っていなかったのであろう。

 

「俺も・・・、いや、俺達も転生者だから、だ・・・、大方、あのピンク髪の女神に転生させられた、だろ?」

 

「と言っても、僕とセシリアはその女神様には在ってないんだけど、多分前の世界で一夏と出会ってたからここに来れたんだろうけどね。」

 

「そんな・・・。」

 

「俺達だけじゃ、無かった、のか・・・?」

 

そんな彼等の問いに、何処か後ろめたい想いでもあるのだろうか、一夏は表情を翳らせながらも頷き、それを見ていたシャルロットも彼を案ずるような視線を向けながらも補足するように語っていた。。

 

「俺は元々、織斑一夏という人間じゃなかったが、前の世界に転生する時に一夏になった男だ、だから、この世界は三度目の世界、なのさ・・・。」

 

何処か苦しげな表情を浮かべながらも、彼は自分の現在に至るまでの経緯を語った。

 

事実を伝えるだけでなく、そこには、何処か自分を信じて欲しいと言わんばかりの色が滲み出ていた。

 

「一夏・・・、アンタは・・・?」

 

それに気付いたのだろうか、宗吾は僅かに彼を案ずるような表情を浮かべていた。

 

傭兵をやっているとは言え、根は善人なのだろう、その言葉からは悪意を感じる事は出来なかった。

 

「俺の事は良い・・・、今はお前達にある相談をしに来た、それだけでも聞いてくれ。」

 

「あ、あぁ・・・、分かった・・・。」

 

その表情に気付いたのだろう、彼は気にするなと言う様な笑みを浮かべながらも本題を切り出す事にしたようだ。

 

重要な話だと直感で察したのだろうか、玲奈も押し黙って一夏の言葉の続きを待っていた。

 

「お前等、ロンド・ミナに仕えろ、それだけを言いに来た。」

 

「「はっ・・・!?」」

 

彼が発した、予想だにしなかった言葉に、彼等は素っ頓狂な声を上げて固まった。

 

いや、それよりも怪訝の念の方が強いのかもしれない。

何せ、彼等二人はついさっきまで殺し合いをやっていた間だ、それを自分達の懐に取り入れようなどまずもって思わないだろう。

 

「おいおい、その顔は何だ?俺が血迷ったとでも言いたげだな?」

 

呆れた様に言う一夏に、いや、その通りだからと言いかけた宗吾と玲奈だったが、ここは敢えて突っ込まない事にしたようで、口を噤んで言葉の続きを待った。

 

「聞くが、お前等、これから先、生きていける算段、有るか?」

 

「「・・・っ!」」

 

表情を真剣そのものに戻した一夏の見透かした様な言葉に、二人は痛い所を突かれたと言わんばかりに身体を震わせた。

 

転生者である彼等の能力値なら、経験を積みさえすればどんな敵にも負ける事は無いと、心の何処かで考えていたのだろう。

 

だが、そんな浅はかな考えは、今回の戦闘で無情にも打ち砕かれてしまっていたのだ、今の彼等には、自分達の未来がどんどん暗くなるような錯覚すら抱いているのだろう。

 

「天ミナに乗っていたとはいえ、俺如きに負けるお前達程度じゃぁ、到底生き残れないぞ?特に、今の機体のままでは、な・・・?」

 

「アンタがゴールドフレームに・・・!?そんな・・・!!」

 

自分達を下した相手が目の前にいる男だとは思いもしなかったのだろう、玲奈は目を見開いて驚愕し、次の瞬間には気落ちしたかのように俯いてしまっていた。

 

同じ転生者でも、これほどまでに力量の差が出てしまっているのだ、悔しくないと言えば嘘になってしまうだろう。

 

「そうだ、だから、今のお前達では力不足も甚だしい、此処を生きて出れてもすぐに死ぬ、俺達も下手をすればそうだったからな、よく分かる。」

 

「だから・・・、ここの軍門に下って、生き残れって事か・・・?」

 

「そうだ、理解が早くて助かる、俺の感覚も鈍ってなくて良かったよ。」

 

彼の言いたい事が分かって来たのだろう、宗吾は呻く様な声で尋ね、一夏はそれを肯定する様に頷いていた。

 

だが、そうは分かっていても、宗吾は即決する事は出来なかった。

 

自分達がこの世界に来てからの日は浅いが、それでも何処かの軍に着く事も出来る期間は当然ながらあった。

 

それをしなかったのは、一重に自分達の自由を侵されたくなかったがためである。

 

そのため、連合やザフト、その他の勢力にも着かなかったのは、思想的な面もあっただろうが、自由が何よりも物を言っていた。

 

だからこそ、生き残るためとは言え、強力な後ろ盾が付くとは言えど、その申し出には素直に応じる事が出来ないのだろう。

 

それを見抜いていたからこそ、一夏は彼等に無理強いはしなかった、全て自由に決めろと言いたいのだろうか・・・。

 

「ま、すぐに決められないってのは分かる、だから、暫く待ってやるよ。」

 

だからこそ、今は時間を置く必要があると考えた彼は、話を切り上げて持って来ていた台車に乗せていたトレーに盛られた食事の数々を、小窓から中に差し入れた。

 

「時間を取らせた礼だ、毒なんざ入ってないから安心して食え、考えるのはその後で良いさ、それじゃ、失礼するよ。」

 

「待ってくれ!!どうしてここまでしてくれるんだ・・・!?アンタは、何なんだ・・・!?」

 

もう用は済んだとばかりに、彼はセシリアとシャルロットと共に去って行こうとしていたが、玲奈は堪らずに呼び止めていた。

 

自分達と殺し合いをしていたのにも関わらず、それでも尚、自分達を救おうとしてくれる彼の行動の本意が分からなかったのだろう、困惑が滲んだ声で、彼女は彼に問うた。

 

「俺は・・・、護るべき人を護れなかった・・・、果たすべき責任から逃げた、弱い男さ・・・。」

 

立ち止まり、彼女の問いに答えた彼の表情は、痛みを堪えているかの様に険しく、それでいて、悲哀に満ちている様にも見えた。

 

その意味が分からなかったのか、彼女は首を傾げながらも彼を見ていた。

 

もっと具体的な返答を期待していた為に、期待外れ的な落胆もあるのだろうか・・・。

 

「・・・、良い返事を期待している。」

 

見せたくない物を見せてしまったと言う様に、彼は再び背を向けてその場から去って行ってしまった。

 

残された二人は、暫く顔を見合わせた後、どうするべきかと言う様に押し黙っていた。

 

「・・・、良い返事ったって・・・、アタシらは・・・。」

 

自分達は敵で、アメノミハシラを落とそうとしていたのだ。

 

そこに私怨は無かったとしても、殺されて当然の行為をしていた訳だ。

 

だからこそ、彼が自分達に救いの手を差し伸べてくれるのか、理由が欲しかったのだろう。

 

「まず・・・、飯を食ってから考えよう、彼もそう言っていた事だしな・・・。」

 

困惑したままの玲奈を置いてけぼりに、宗吾は一夏が持ってきた食事に手を伸ばし、スープから口に含んだ。

 

「う、うん・・・、そうだよな・・・。」

 

彼のスタンスから、今は考えても仕方のない事だと割り切ったのだろう、彼女は考える事を止め、食器に並べられていたホットドッグを手に取り、口に含んだ。

 

「美味しい・・・。」

 

こんなに暖かい食事を口に含んだのは何時振りだろうか。

 

彼女達は、転生してからと言うものこんなにゆっくりと食事を採った覚えがなかったのだ。

 

忘れつつあった感覚を、生きることだけに執着していた中で薄れていた感覚に、玲奈は気付かぬ内に涙を溢していた。

 

その表情からは、先程までの切羽詰まった様な焦燥は何処にも無く、ただ安堵する様な色だけが窺えた。

 

「あの野郎・・・、何処まで馬鹿なんだよ・・・、ホント・・・。」

 

「そうだな、大馬鹿野郎だよ、アイツは・・・。」

 

そんな玲奈を慰める様に、宗吾は彼女の頭を撫でつつも、考えを止めてはいなかった。

 

「(アイツの下に着けば、今の生活からは脱却出来る、か・・・、それも悪くないな・・・。)」

 

彼が求める自由も、ここでならばある程度は保証される上に、機体の強化にも打って付け、これ以上ない条件だった。

 

「(俺達はまだ生き返ったばかりだ・・・、そう簡単に死んで堪るモノか・・・、俺が頭下げるだけで良いんなら・・・!)」

 

自分達が生き残るには力を着けるには、この方法だけが残されている。

彼の中で、答えは決まりつつあった・・・。

 

sideout

 

sideセシリア

 

「一夏様、何故あの御二人を引き込もうとなさるのですか?」

 

監房があった区画から、私達の部屋がある区画へと向かう道すがら、私はどうしても疑問に思っていました事を、一夏様に尋ねていました。

 

戦力増強のためだと仰っておられましたが、それ以外の想いがある様な気がしてなりません。

 

それがハッキリしないのが、何と言えば良いのか分かりませんが、もどかしく感じてしまうのです。

 

だからこそ、分かり易く答えを示して欲しいと思ってしまっている私も、まだまだ妻として未熟と言う事でしょうか・・・。

 

見れば、シャルさんも気になっている様で、一夏様の御顔を覗き込んでおられました。

 

「ん・・・、君達になら話しても良いか、な・・・、こんな事言うと、恥ずかしいけどさ・・・。」

 

恥ずかしい、ですか・・・、一体どのような理由なのでしょうか・・・?

 

その意味が測れない以上、聞かねば分かりませんわね。

 

「ただ、単純に助けたかったんだよ、アイツ等を、俺と同じ人間を、な・・・。」

 

「それだけ、なの・・・?」

 

ただ助けたかったから、そう呟かれた一夏様の御言葉に、シャルさんは何処か拍子抜けしたかのように呟いておられました。

 

ですが、そのお気持ちはよく分かります、何故、助けたいと思われたのか、私にも分からなかったのですから。

 

「俺達、いや、俺は前の世界で、色んな人の想いを無碍にしてきてしまった・・・、俺を想って止めようとしてくれた秋良や雅人、俺を想って力を貸してくれたダリル達、彼等は俺をずっと想ってくれていた・・・。」

 

何処か懐かしげに、それでいて何処か寂しげに語り始めた一夏様の御言葉は、何処か懺悔の様にも聞こえて参ります。

 

ですが、俺達と言わない辺り、私達に気を遣って下さっているのでしょうか・・・?

 

「なのに、俺は彼等を裏切った・・・、死ぬ事で責任から逃げた・・・、導く事も、共に生きていく事すらも捨てて・・・。」

 

「一夏様・・・。」

 

そう、私達は逃げていたのです、その世界で果たすべき責任から、なすべき事から・・・。

 

私も、今更ながらそれを悔いる事があります、やり残した事、償わねばならなかった事・・・、数え切れぬ事が浮かんでは、手から零れ落ちてしまう様な感覚すらありました・・・。

 

一夏様は、私達にも苦しみを与えてしまったと思われてしまっておられるのでしょう、それ故に、私達の何倍も傷付いておられるのですね・・・。

 

「だから、この世界に来たからには、俺が救えるモノは救いたい、伸ばされた手を、もう見捨てたくなんてないんだ、だから、俺はアイツラを助けたい、死なせてしまった奴等への、せめてもの償いとして・・・。」

 

償いですか・・・、咎人である私達には、当然の事ですわね・・・。

 

「ははは・・・、らしくないって、自分でも分かってるさ、そう思うだろ?」

 

恥ずかしげに、人差し指で頬を書きながらも、一夏様は照れ笑いを浮かべておられました。

 

らしくない事なんて、何処にもありませんわ。

私達に、決まりは無いんですもの。

 

「いいえ、それも貴方様らしいお考えですわ。」

 

「恥ずかしくなんてないじゃない、一夏らしい、優しさじゃないか。」

 

私と同じ事を考えておられたのでしょう、シャルさんも、そんな事は無いと言う様に頷かれ、力を籠めてそうするべきだと仰られておりました。

 

どうやら、情に脆くなったのは一夏様だけでは無かったようですわね・・・。

 

私も、シャルさんも、誰かを救いたいと、共に生きたいと思える様になれたのですね・・・。

 

なんだか、漸く人間に戻れたようで、むず痒いものもありますが・・・。

 

「ははは、優しい嫁さん貰えて、俺は幸せだよ、セシリア、シャル、ありがとう。」

 

そんな私達を見て、一夏様は、私とシャルさんの唇に口づけを下さいました。

 

「さっ、ミナのトコに謝りに行ってくる、先に部屋に戻っててくれ。」

 

「はい、行ってらっしゃいませ。」

 

「早く帰って来てね~。」

 

私達から離れ、ミナさんが居らっしゃる部屋へと向かう一夏様を見送った後、私達は静かに顔を見合わせて頷き合い、自室へと戻るべく歩みを進めました・・・。

 

sideout




次回予告

自分達に向けて差し伸べられた手を取る時、彼等は共に戦う事を決める。

次回機動戦士ガンダムSEEDASTRY X INFINITY

天空の誓い

お楽しみに。
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