機動戦士ガンダムSEEDASTRAY X INFINITY 作:ichika
sideセシリア
C.E.72年2月6日、連合の侵攻から一週間が過ぎた日の事でした。
私達はアメノミハシラ艦隊の旗艦、イズモの艦橋に居ました。
今日は実地訓練と言う事で、私達三人がこの宙域になれる事をメインに訓練すると言う事です。
ちなみに、宗吾さんと玲奈さんは、一夏様のご命令でアメノミハシラで御留守番しています。
何か会った時の為に、一気に戦力を空ける訳にもいきませんしね。
「これがデブリベルト・・・、宇宙の墓場か・・・。」
映像に映されたコロニーの残骸や、破壊されたMSや艦艇の残骸を見ながらも、一夏様は何処か遣る瀬無い想いを口にされていました。
宇宙の墓場、言い得て妙というべきなのでしょう、この光景はそれ以外の何物でもありませんでした。
人間同士の争いの結果と言うべき世界が、そこには広がっているのです、まともな感覚を持っている人間でしたら、そう思わずにはいられないでしょう。
「こんな所で動かすの・・・?バスターが傷だらけになっちゃうよ・・・。」
シャルさん、お気持ちは痛いほど分かりますが、嫌がっても仕方ありませんわ。
いずれはここで戦う事があるかも知れませんし、慣れておくには良い機会でしょう。
「艦長、イズモはこの宙域で待機していてください、デブリの中に入って傷が付いたりしたらミナに顔向け出来ませんから。」
「了解しました、一夏卿、お気を付けて。」
一夏様は艦長さんに指示を出しながらも、これから進む場所の見取り図を見ていました。
暗礁宙域も甚だしい場所なのです、せめて何処にどういう残骸があったか見ておかねば明日は在りませんしね。
「よし・・・、大体分かった、セシリア、シャル、出るぞ。」
「かしこまりましたわ。」
「はーい。」
さて、今日はデュエルにロングダガ―のフォルテストラを調整して着けて来ている訳ですが、上手く動かせるか分かりませんわね・・・。
一夏様もI.W.S.P.ではなく、アークエンジェルから流れてきたストライカーのテストをするとも言っておられましたし、何事もなければ良いのですが・・・。
ですが、疑心暗鬼になっていては出来る事も出来ません、とにかく前に進んでみると致しましょう。
そんな事を考えながらも、私達は艦橋を後にし、愛機の下へと向かいました。
sideout
side一夏
「織斑一夏、パーフェクトストライク、出るぞ!!」
イズモから発艦した俺は、ストライクに装備したストライカー、マルチプルアサルトストライカーの調子を確かめながらも機体を動かした。
ストライクの整備が終わって初めての稼働だ、感触を確かめておきたいってのもあるし、パワーエクステンダーの性能がどれほどのモノかってのも見ておきたかったからな、こうやってデブリベルトまで出向いているという訳さ。
それに、このストライカーはオーブのモルゲンレーテからの横流し品と言う事で、俺のストライクに装備してデータを録るために出てきた訳なんだが、コイツはなんだ・・・?
「くっそっ・・・!!重い!!」
とにかく後ろに倒れそうになる機体を、ハロのサポートでなんとか立て直しながらも悪態を吐く。
I.W.S.P.も大概重い装備だったが、あれは全部載せ前提のパックだ、取って付けのこのストライカーとはまるで違う。
「これ作った奴は阿保なのか・・・!?こんなもん・・・!!」
全部載せにしても、もっと遣り様は在ったろうに・・・!!
『一夏様、大丈夫ですか・・・?』
『もうI.W.S.P.に変えたら?どう見てもアンバランスだよ・・・。』
後から出てきたセシリアとシャルが心配そうに声を掛けて来てくれるが、正直、俺にはそれを気にしている余裕は無かった。
「いや・・・!少し動かしてコイツのデータを録る、幸い、攻撃さえしなけりゃそれなりの時間は動ける。」
ま、何もなければっていう大前提付きだけどな・・・。
ここら辺の宙域は脱走兵やテロリスト、宇宙海賊の隠れ家には打って付けの場所だからな、油断は出来ん。
「イズモから離れ過ぎん程度に動くぞ、キリの良い所で切り上げて・・・、っ!!」
機体を動かそうとした、まさにその時だった、俺の身体に電撃が走った。
何かに心臓を鷲掴みにされる様なプレッシャー、そして、これほどまでに無い高揚感・・・!!
間違いない・・・!この感覚は・・・!!
「アイツが、近くにいる!!」
そう分かった瞬間、俺はフットペダルを踏み込み、その感覚が強くなる方向へと急いだ。
『一夏様・・・!?』
『ちょっ・・・!?どうしたの!?』
俺の唐突な行動に驚いたのだろう、二人は必死に俺を追ってくるが、推力の差で追い着いて来れずにいた。
だが、そのスピードにも俺は満足できなかったのか、デブリを足場にして加速し、隙間を縫う様にして機体を走らせた。
もうすぐ、彼と戦える・・・!
そう思うだけで俺の心は逸った。
こんなに心が逸るのも俺らしく無いのは分かっている。
だが、それでも構わない、アイツとの戦いは最高なのだから・・・!
sideout
noside
その頃、一夏達がいた宙域にほど近い場所には、二機のMSの姿があった。
「レーダーに敵影なし、この辺りなら十分なデータが得られそうだな、そっちはどうだ?」
その内の一機、ザク量産試作型に乗り込むパイロット、コートニー・ヒエロニムスは、僚機である薄桃色に塗装されたゲイツに追加装甲や武装を施した機体、ゲイツアサルトに通信を入れていた。
ゲイツアサルトは、ゲイツにジンのアサルトシュラウドを取り付けた姿だが、元から計画されていた姿では無く、パイロットの趣向に合わせた現地改修型と呼ぶべきであり、その装備もビーム兵装をシールドに装備されているクローを除いて撤廃され、腰部にはレールガン、追加装甲のバックパックには五連装ガトリング砲が一対装備され、脚部にも四連装ミサイルポッドが一基ずつ装備されていた。
重装備ながらも、随所に配置されたスラスターによって、ある程度の機動力は確保されている様で、特に問題らしい問題も無く、彼のザクに曳航していた。
「バッチリよ、問題無いわ、久し振りにこの機体を使えるんだから、頑張らないとね!」
そんな彼の通信に、ゴーグルを掛けた女性が何処か嬉しそうに答えていた。
彼女の名前はリーカ・シェダー、歳はコートニーよりも一歳下の19ながらも、ザフトレッドを纏うエリートパイロットだ。
その腕前はコートニーも良く知る所であり、テストで付き添いが必要な時は、何時も彼女を指名する事が多いため、それなりに仲は良いと感じているらしい。
「それは良かった、俺もついこの前まで地球での仕事だったからな、宇宙は久し振りだ、感覚を取り戻すためにも付き合ってくれよ。」
「もっ、もちろんよ・・・!私で良いなら、いくらでも・・・!!」
久し振りと言う言葉に偽りは無かった。
彼はつい一週間前まで地球のカーペンタリアで実地訓練を行っていたのだ、故郷である宇宙に帰ってきて間もないため、まだ地上での感覚が残っているのだ。
そのために、リーカに付き添ってもらっての試験を兼ねた訓練をするためにこのデブリベルトまで出向いていたのだ。
それを依頼されたリーカは、申し出を受けた時は何時も飛び上がらんばかりの勢いで喜んでいるらしい。
それを見ている彼は、よっぽどMSを動かしたかったんだなと言う感覚で見ているようだが、当の彼女の想いは別の所にあるとは思いもしないだろう。
「ははは、お手柔らかに頼むよ、この機体に傷を付ける訳にも・・・、っ!?」
ブレードトマホークを引き抜こうと腕を動かした、まさにその時だった、彼の身体に強烈な何かが走り抜けた。
肌を焼く様なプレッシャーに、心をかき乱し、興奮させるような感覚・・・。
それは、以前、南米でも体験した、ある男が発していた物だった。
「まさか・・・!アイツか・・・!?」
確証はない、だが、この互いに呼び合っている様な感覚は、あの男以外に感じられなかったもの・・・。
ならば、それは・・・。
「っ!!」
「ちょっ!?コートニー!?」
唐突に自分とは別方向へと向けて機体を急がせるコートニーに呼びかけながらも、リーカは彼を追って機体を駆った。
だが、コートニーのザクの推力に、アサルトタイプのゲイツでは追い付く事が出来ないのだろう、徐々にその距離は開いていった。
「近いぞ・・・!どこだ!?」
感覚が一際強くなった辺りで、彼はブレードトマホークを引き抜き、周囲を警戒し始めた。
するとどうだろう、レーダーにMSが接近してくる様子が映し出され、その方向へと目を向けると、大きなバックパックを背負った白い機体、ストライクが彼のほうへと一直線に迫ってくる。
「やはり・・・!一夏か!!」
「コートニー!南米以来だな!」
ストライクに向けて叫ぶと、そのパイロット、織斑一夏も彼に向けて叫び返した。
自分の感覚が間違いでは無かった事、そして、自分の好敵手たる男が目の前にいると、二人は興奮を抑えきれない様子であった。
「やはり、俺達はつくづく縁があるらしい!でなければ、こんな所で出会う筈もない!!」
「言ってくれるよ、コートニー!それなら言葉は不要だな!!」
興奮しながらも、どこか誘うように話す彼の言葉に感化されたのだろうか、一夏もシュベルト・ゲベールを引き抜きながらも構え、間合いを取るかのように佇んでいた。
「あぁ!南米での続き、ここで始めよう!!」
「ちょっ!ちょっと待ってよ、コートニー・・・!私との模擬戦は~!?」
今にも飛び出そうとしていたコートニーを止めるかのように、追い付いたリーカは自分との模擬戦はどうするんだとばかりに食いついた。
折角、コートニーと戦える事を楽しみにしてここまで付いて来たのに、当の彼自身はそれをすっぽかして別の誰かと戦おうとしているのだ、彼女でなくとも非難したくもなるだろう。
「かかって来いよ、このストライカーのテスト以上のモノが得られるんなら、俺も好都合だ!!」
「ちょっと!壊しちゃダメだよ一夏!!」
「というよりも、テストはどうされますの~!?」
そんな彼女の言葉を聞き流しながらも、一夏はコートニーに飛び掛かろうとしていたが、彼に追い付いたシャルロットとセシリアが制止の声を上げるも、その言葉は届いていないようだった。
「「今はアイツと戦うだけだ!!」」
全く同時に飛び出し、鍔迫り合いをする二人の目には、ただ、互いにライバルと認め合う者の姿しか映っていないのだから・・・。
sideout
sideシャルロット
僕達を完全に放置して始まった、一夏とコートニーの戦いは、お互いに目まぐるしく入り乱れるほどに激しさをどんどん増していた。
シュベルト・ゲベールを避けたザクがトマホークで切り付けるけど、それを避けたストライクがアグニを撃ちかけ、それを避けたザクが間合いを取って・・・。
僕達ですら捉え切れるかどうか分からない動きで戦うもんだから、迂闊に割り込めない、完全な蚊帳の外状態で、どうしようもなく漂っている事しか、今の僕達にはできなかった。
だけど、僕が嘆きたいのは彼の助けが出来ないと言う、良妻が思い浮かべそうな事なんかじゃない。
「・・・、どうして男に走るかなぁ・・・。」
男の人って、なんで愛妻ほったらかしにしてまで男友達に走るのかなぁ・・・?
自信無くしちゃうよ?泣いちゃっていいんだよね?
『困った御人・・・、こんなにも納得できませんのに、強く怒れないのは惚れた弱みでしょうか・・・?』
苦笑いを浮かべているんだろう、セシリアが何処か呆れを含んだ声で聴いてくる。
うん、分かり切ってた事だけどさ、強く怒れないのはホント、惚れた弱みだよ、色んな意味で。
だけど、僕達はこんな事にはもう慣れっこだ、昔っから彼はそうだったから。
だけど、問題は目の前の彼女だ・・・。
『ぐすっ・・・、私じゃダメなの・・・?コートニー・・・?」
泣いちゃってる・・・、泣いちゃってるよ、しかもガチな方で・・・。
あー・・・、多分、彼女、コートニーって人の事が好きなんだ・・・。
なんか色々とデジャヴな光景だったからすぐに分かっちゃったよ。
「あー・・・、えっと、こちらバスターのシャルロット、ゲイツのパイロット、応答して?」
なんとか宥めないと、号泣されちゃうと色々と後ろめたいよホント。
旦那の尻拭いさせられてるみたいで癪だけど、仕方ない、やってみようか。
『えっ・・・?何・・・?』
ゴーグルで隠れてるから分かりづらいけど、完璧に涙目じゃないか、映像越しでも判るって相当だね。
「いきなり邪魔しちゃってゴメンね?彼、熱くなると周りが見えなくなっちゃうから・・・。」
『う、ううん、良いの、彼を満足させてあげられない私が悪いの・・・。」
ダメだ、この子、絶対にダメな領域に入りかけてる。
とにかく気を紛らわせないと・・・!!
「そんな事ないよ!君の機体、凄くハイセンスじゃないか!そのガトリングとか、レールガンとか!!」
『フォローの方向が変ですわよ!?』
セシリアに突っ込まれて初めて気付いた、なんで彼女の機体を褒めてるんだ、僕は?
もっと他に褒めるトコ有ったよね・・・?
しまった、やらかしちゃったかな・・・?
『わ、分かってくれる!?やっぱりMSは重武装に限るわよね~!』
「『えっ!?』」
まさかの食いつきに、僕達は揃って声を上げてしまった。
まさかこの子、こういう機体の事が本当に好きで堪らないのかな・・・?
『分かってくれる人がいてくれたのね!皆重装備を避けたがるから・・・。』
「うん、それは僕も分かる、大火力は戦ってて気持ちいいからね!」
どうしよう、彼女とはすごく気が合いそう、セシリア以来の衝撃だね、これ。
『大火力、ですか・・・、それも良いやも知れませんわね、シャルさんの戦いを拝見していますとそう思いますわ。』
『理解してくれる人が二人も・・・!夢じゃないわよね!?嬉しいんだけど!!』
ダメだ、いろんな意味でテンションが壊れてきた。
まぁ、何も出来ないからこうやって駄弁るのも悪くは無いかな。
『あっ、そうだ、まだ名前言ってなかったね、私はザフトのリーカ・シェダー、リーカって呼んでね!』
「リーカだね、僕はシャルロット・デュノア、シャルロットって呼んでよ。」
『私も自己紹介を、セシリア・オルコットですわ、以後、お見知りおきを。』
いつの間にか自己紹介タイムが始まっちゃってるけど気にしちゃいられない。
こんな所に男に振り回されてる女の子がいたんだ、仲よくなっておいたら後々いいかもしれないしね。
『シャルロットにセシリア、これからよろしくね!まさかデュエルとバスターが出てくるなんて思わなかったわ、それってジュール隊長達の御下がり?』
「ジュール隊長・・・?誰・・・?僕達ザフトじゃないから分かんないや。」
ザフトの関係者だと思われたんだろうか・・・、着てるパイロットスーツは連合のモノの筈だけど・・・。
それはそうと、他にもこに機体があったんだ・・・、なんだか複雑な気持ちだね。
『それにしても・・・、あのストライクのパイロット、凄いわね、特務隊並のコートニーに付いて行ってるなんて・・・、一体誰なの?』
話が一旦一段落すると、リーカは困惑した様子で一夏とコートニーの戦闘を見続けていた。
相変わらずの速さで戦ってるから、目で追いかけるのにも一苦労だよ。
と言うか、コートニーってやっぱり手練れだったんだね、それも相当の・・・。
いや、一夏とストライクの組合せと対峙して、互角以上に戦えるパイロットなんて極稀だった、アメノミハシラでも、一対一で彼に勝てるのは、それこそミナさんだけだしね。
「うーん・・・、オーブのスーパーエースって言えば良いのかな?僕達がオーブの人間かって聞かれたら自信ないけどさ。」
『ちょっと、シャルさん!?なにサラッと正体ばらしてますの!?』
あっ、自然な流れだったから喋っちゃったよ。
『オーブにあんな強い人がいたなんて・・・、ストライクももう型落ちなのに、新型と張り合えてるなんて・・・!』
あれー?気にしてない?それはそれで良かったけど、なんか構えてるのが馬鹿らしくなっちゃうね。
まぁいいや、ほったらかしにされた女同士で傷のなめ合いでもしておこう、どうせ死にやしないだろうしね。
「それはそうとリーカ、コートニーっていつもあんな感じなの?」
『えっ?うーん・・・、どうかしら?でも、熱くなったら没頭するのはあったかなぁ・・・?』
『まぁ・・・、一夏様と全く同じですわね・・・。』
あぁ・・・、今更だけど頭痛くなってきた・・・。
まぁ、似た者同士、響き合うモノがあるんだろうね、男同士のアレコレは全く理解できないけど。
さてと・・・、コレ、何時まで続くんだろうなぁ・・・、はぁ・・・。
sideout
次回予告
苛烈さを増す戦闘の中で、彼は何を見出だすのか・・・。
次回機動戦士ガンダムSEEDASTRAY X INFINITY
好敵手よ 後編
お楽しみに