機動戦士ガンダムSEEDASTRAY X INFINITY 作:ichika
side一夏
「はぁぁっ!!」
『おぉぉっ!!』
滾る、この上なく滾る・・・!!
この世界に来て、こんな感覚を抱くとは夢にも思わなかった。
何度切り裂こうとしても斬れず、何度捌いても俺を切り裂こうと狙って来ている、こんなギリギリの攻防・・・!
最高だ・・・、あぁ、最高だよ・・・!!
俺と同等、若しくはそれ以上の奴が目の前にいて、俺を対等と見て向かって来てくれる・・・!!
戦士としてこれ以上ない誉じゃないだろうか。
「すげぇぜ、コートニー・・・!!南米の時とは大違いだ・・・!」
シュベルト・ゲベールを振り抜こうとしても、その先で待ち受けるトマホークに阻まれ、逆に体勢を崩されそうになるが、それを堪えて、何とか拮抗状態で押し留めながらも、俺は歓喜に染まった声を上げていた。
『伊達に宇宙に住んでる訳じゃないからな・・・!だが、お前もやるな・・・、一夏!!』
拮抗状態から離れたザクがレールガンを撃ってくるが、俺はそれを見越して機体を動かしていた為に当たる事は無く、お返しとばかりにアグニの大出力ビームを撃ちかける。
既に五つあったバッテリーパックの内の三つを切り離し、エネルギー的にも余裕があるとは言い難いが、今はそんな事はどうでも良かった。
ただひたすらに、コートニーとの戦いを楽しんでいたかった。
こんなに手数を尽くしても掠めるだけで傷一つ付けられてない・・・!
機体性能の差もあるだろうが、あれだけの高性能機に振り回されない彼自身の技量も相当なモノだ、データを見りゃ分かる。
「ハロ!データの収集はどうだ!?」
他に気を向けている余裕は無いが、せめてストライカーのデータと戦闘ログぐらいは気にしておかないと、後々の事に活かせやしないからな。
『ジュンチョウ!ジュンチョウ!!スゲーゼアニキ!!』
誰がそんな言葉を教えたんだか・・・!
さぁて、機体データは十分すぎる程に集められる、か・・・!
なら、心置きなく、限界まで戦うとしようじゃないか・・・!!
「コートニーっ!!」
『一夏ぁっ!!』
パンツァー・アイゼンのクローを射出したが、彼はそれを難なく避け、ワイヤーを引っ張って俺の体制を崩そうとしてくる。
だが、早々簡単に殺られる俺じゃない、彼がワイヤーを掴むと同時にマイダス・メッサーを引き抜いて投擲、直後にバルカンやミサイルを撃ちかけて反撃の暇を与えない。
『ちぃっ・・・!手数がI.W.S.P.よりも多いじゃないか・・・!!嫌なストライカーだ・・・!!』
「言ってくれる・・・!操縦はキツイんだよ・・・!!これでも使い慣れてないもんでなぁ!!」
その増えた攻撃の数を、彼は難なく回避して俺の方へと向かってくる。
「速いなぁ・・・!相変わらず良い機体だ、宇宙で映えるよ!」
『だが地上でダメ出しを喰らったんだ、改造の余地はまだある!!』
「根に持ってるのかよ・・・!よっぽど機体に思い入れがあるみたいだな!」
技術者の気性はサッパリ分からんが、コートニーがあのザクに思い入れがあるのはよく分かった。
さて・・・、どうやって切り抜ける?どう戦う・・・!?
「だが、俺もこの機体に愛着以上の感覚があるんだよ!!」
しょがねぇ・・・!この手を使うとするかね!!
そうと決まれば迷う暇は無い、エネルギーももうすぐレッドゾーンだからな。
マルチプルアサルトストライカーからアグニを切り離し、ビームを撃ちかけた直後にアグニをぶん投げる。
『おいおい・・・!血迷ったか!?』
「そう思うんなら、来いよ・・・!!」
アグニを切り裂いたコートニーの呆れた声が聞こえてくるが、俺は構わずに肩に付いていたユニットを二つとも排除、空になったバッテリーパックも全て排除して、エールのみになったストライカーの全推力を以て一気にザクとの間合いを詰める。
『そうさせてもらう・・・!!これが・・・!!』
「最後だっ!!」
渾身の一撃を打ち込むために、俺は回避をかなぐり捨て、シュベルト・ゲベールを振り抜いた。
コートニーもトマホークを振り抜き、俺達は全くの同時に交錯し、すれ違った。
sideout
sideコートニー
「くっ・・・!!」
ストライクの一撃を躱し切れず、ザクの左腕がシールドごと半ばから断ち切られてしまった。
なんて奴だ・・・!性能ではこっちが勝っていると言うのに・・・!!
対して、ストライクにはダメージが見受けられない、当たっていないのか・・・!!
まだ戦えるとは言えど、被弾してしまった以上、これは認めざるを得ないか・・・。
「俺の負けだ、一夏・・・!!」
こうまで楽しませてくれるとは・・・、正直、戦争は御免被りたいのだが、俺をここまで滾らせてくれるとは、こうも勝ちたいとは思いもしなかった・・・!
だからこそ、負けがこんなにも清々しいとは、な・・・。
『いや・・・、俺の負けだよ、コートニー・・・。』
「何っ・・・?」
俺がどういう事かと尋ねる前に、ストライクのPS装甲が落ちた。
つまり、俺の攻撃は当たっていたと言うことか・・・?
『PS装甲が無きゃ、もし、そのトマホークがビームなら、俺は死んでいた・・・、それに、こっちはもうエネルギー切れ、つまりは事実上の負けさ・・・。』
「そんなものはタラレバにしか過ぎないさ・・・、だが、実際相討ちも良いところだな・・・。」
『だろ?俺の機体も動くけど、帰りが怖いからな、ここら辺が引き際だよ。』
そうか・・・、もう、終わってしまうんだな・・・。
愉しい時間はすぐに終わってしまう、それが本当に残念でならないよ。
「そうだな・・・、機体の損傷からして、俺も帰った方が良さそうだ。」
『あぁ、名残り惜しいけど、その方が良いだろう。』
彼はストライクのバックパックにシュベルト・ゲベールを格納し、何処か名残惜しそうに呟いていた。
俺もその気持ちはよく分かるよ、これ以上に無い戦いだったからな。
「それじゃあ、また逢えたら良いな。」
『そうだな、戦場だろうが何処だろうが、会えるならまた会いたいもんだ。』
「あぁ、あの時の借り、返して欲しいものだよ。」
俺がからかう様に言ってみると、それもそうだなと言う様に苦笑し、彼は機体を翻して母艦がある方へと戻って行った。
さて・・・、俺も帰るか。
『コートニー・・・。』
「うぉっ!?リーカ・・・!?』
しまった、リーカを連れて来てたのを完全に忘れていた・・・!
『随分とお楽しみでしたね・・・、私とはあんなに楽しそうな顔しないのに・・・。』
「えーっと・・・、それはだなぁ・・・。」
マズイ・・・、言い逃れできん状況だ・・・、何せ俺から依頼しておいてそれを反故にしてしまったんだ、相当無礼だったのは間違いない・・・。
『良いのよ・・・、どうせ私はその程度の女だもの・・・。』
「うぐっ・・・!」
その自虐的な言葉が、今の俺の心には重く突き刺さる。
やってしまったな・・・、助け船を求めても、一夏は帰って行ってしまったし、これはどうしようも無い・・・。
何とかして機嫌を直さないとな・・・、じゃないと、後々に響いてくる・・・。
「あー・・・、すまなかった・・・、この後時間あるか?」
『あるけど・・・、もう一戦ならお断りよ?二番目みたいで嫌じゃない・・・。』
これはマズイ、完全にご機嫌斜めだ。
一夏と会う時は誰もいない時の方が良いかも知れないな・・・、心置きなく出来るし、迷惑かけないしな・・・。
「違う、お詫びと言っちゃなんだけど、食事でも一緒にどうだ?仕事に都合着けてでも良い、俺が全部持つよ。」
『えっ!?良いの!?行く!絶対に行く!!』
おっ、何とか機嫌直してくれたみたいだな、一安心だ。
「それじゃ、俺達も帰ろうぜ。」
『えぇ!早く早く~!』
「急かすなって。」
先行するリーカを追いかける為に、俺はザクのスラスターを吹かし、母艦へと帰投するルートに就いた。
心の奥で、今もまだ猛る炎を抱えたままで・・・。
sideout
sideセシリア
『あっ・・・、そろそろ終わりみたいね・・・。』
コートニーさんのザクの腕が切り裂かれ、ストライクのPS装甲の色が落ちる事を確認したリーカさんが声を上げられ、彼等の方へと向かって行こうとしておられました。
もう終わってしまうのですか・・・、折角同じ様なタイプの殿方を好いてしまった女同士、もっと話をしていたかったのですが仕方ありません、彼女にも、私達にも戻るべき場所があるのですから。
『そっか・・・、残念だけど仕方ないね、後で一夏にキツく怒っとくよ。』
『ううん、セシリアとシャルロットと話せて嬉しかったわ、またどこかで会えると良いわね。』
「えぇ、次はこの様な形では無く、ゆっくりとお話しできれば良いですわね。」
出来れば、戦場では無い所で、友人同士としてお話ししたいものですが、お互いの組織と言う物がありますし、難しいのは分かっております。
ですが、そう思ってしまう所が、私達が人間に戻ったと言う証の一つである事に心地良く思ってしまうのもまた事実なのです。
ですが、今は帰られる友人を見送ると致しましょう。
『そうね!また何時か会いましょ!じゃあね!!』
その言葉を最後に、リーカさんは機体を翻して、コートニーさんがいる方へと去って行かれました。
『リーカ、コートニーと上手くいくと良いね。』
「そうですわね、こればかりはどうなるかは分かりませんが・・・。」
ですが、彼女ならきっと上手くいくそんな根拠も何もない感覚が私の胸には在りました。
想いが届くまで、彼女は歩みを止めないのですから・・・。
『セシリア、シャル、イズモに帰ろう、俺が限界だ。』
そんな事を思っていますと、ボロボロのストライクが私達の方へと帰ってきました。
『僕達をほったらかして勝手やってた一夏の事なんて知らないよーだ。』
『うっ・・・、悪かったよ・・・、だけど、良い成果があった、帰ってミナに進言したい事も見付かった。』
「それが私達をほったらかしにしておいての言い草ですか?」
少し申し訳なさそうにされていましたが、これぐらいの小言は言っても許されるでしょう。
ですが、もう慣れきっている事なので構いませんがね・・・。
『すまなかった、今日の夜は空いてたよな?酒出すから機嫌直してくれ、俺が悪かったから。』
『はいはい、今は許してあげるよ、お酒の席ではボロクソに愚痴ってやる。』
『シャルは酒癖悪いからな、こりゃキツそうだ。』
シャルさんの言葉に答えながらも、一夏様は機体をイズモに向けられました。
私とシャルさんも機体を並走させながらも、通信回線越しに文句と痴話喧嘩とも分からない言い合いを続けていました。
『何さ!僕がそんな酒乱みたいな言い方!?』
「事実ですわよ、慣れておりませんのに呑まれるから・・・。」
『ちょっ・・・!そう思うんなら止めてくれても良いじゃないか!?』
止めたのに呑まれていたのはシャルさんでしょう?
とは言えずに、私も一夏様も笑う事しか出来ずにいました。
『も~!!なんなのさぁ~!!』
非難の声を上げるシャルさんの言葉を聞きながらも、私達は帰路に就きます。
これから先の未来を楽しみにしているかの様に・・・。
sideout
noside
「ジャック、さっきの戦闘のデータだ、思ったよりも質の良いのが録れた。」
アメノミハシラに帰投した一夏は、パイロットスーツから着替える事も無く、MSベッドに固定されたストライクに寄って来ていたジャックに、先程のテストデータを渡していた。
「おうよ、しかし、なにも壊してくるこた無いだろ、折角の寄贈品を・・・。」
それを受け取ったジャックは、折角のストライカーが半壊している事に少々呆れている様だった。
だが、それ以上に良いデータが録れていると知っている為に何も言わなかった。
「あのストライカーはダメだ、ビーム兵器があっても重すぎる、アレを使うぐらいならI.W.S.P.の方がやり易かった。」
「貴重な意見に感謝するぜ、パイロットの好みに合わなきゃ無意味だもんな!」
一夏の好みと合わない事を知ったのだろう、彼はパイロットに無理強いさせる事は整備士の名折れだとでも言うように、軽く笑い飛ばしていた。
「しっかし・・・、相当な相手だったんだろ?見た限りお前さんと同等か?」
ストライクの様子から、ジャックは彼が戦った相手の練度を見抜いたのだろう、険しい表情をしながらもどう調整すべきか思案していた。
整備士の仕事はパイロットの好みに機体を調整し、不備が無いようにする事であるが、それ以上にパイロットが生きて帰ってこれる様にするのも仕事の内だ、それを疎かにすれば勝利は無い。
まさに、整備の現場は第二の戦場とも呼ばれる所以だった。
「あぁ、機体は間違いなくストライクよりも高性能だった、完成度は此方が上だったが、気を抜けば一瞬でやられていたよ、技量では彼が、場馴れで俺がっていう僅差だったよ。」
「へぇ・・・、ソイツは問題だな、対策はあるのかい?」
一夏が興奮を抑えきれないと言う様に話すのを見て、どれほどギリギリの攻防を行ったのかと気になったジャックは、探るように尋ねていた。
それは戦闘単位ではなく、これから先の為の方針を聞いておきたいという好奇心から来ている様でもあったが・・・。
「あぁ、謹慎中から考えてたんだが、今日やっと纏まったよ、後でミナに直談判してみる。」
「相変わらず行動的だなぁ、そのバイタリティを若い奴らに分けてやってくれよ。」
「俺からそれを取らないでくれよ、ただのダメ人間になるだろうが。」
それもそうだなと言うように笑うジャックの様子に苦笑しながらも、彼は背伸びをしていた。
相当な疲労があるのだろう、少し動かすだけでも骨が鳴る音が聞こえていた。
「さて、そんじゃストライクの整備は任せて、お前は休んどけ、嬢ちゃん達のご機嫌取りするんだろう?」
「迷惑を掛けるよ、ジャック、よろしく頼む。」
自分の考えを見透かさないでくれというように笑いながらも、彼はパイロットスーツから着替えるために自室への帰路へと就こうとした。
「あっ、一夏じゃねぇか、案外帰ってくるの早かったな!」
「玲奈、それに宗吾もか。」
そんな彼を呼び止めたのは、つい先日彼の部下という扱いになった神谷宗吾と早間玲奈だった。
どうやら、先程まで訓練をしていたのだろう、彼等の表情には疲労と汗が浮かんでた。
「お勤めご苦労、その様子だと相当苦労している様だな。」
「あぁ、ついさっきまでシュミレーションをやってた所さ、と言っても、戦績は振るわなかったけどな・・・。」
敬礼してくる彼等に敬礼で返しつつも、一夏はどんな訓練をしていたのかを尋ねていた。
「シュミレーションか・・・、誰のデータと戦ったんだ?」
シュミレーションと言う言葉に興味を持ったのだろう、彼はその表情に挑発的な笑みを浮かべながらも尋ねていた。
いや、その相手に大まかな合点がいっていたのだろう、そのためにわざわざ問いただしていたのだ。
「アンタよ・・・、アンタのストライクのデータと戦ってたのよ・・・!」
そんな一夏の意図に気付いたのだろう、玲奈はムカつくと言う様な表情をしながらも答えていた。
よっぽど手痛い結果だったのだろう、悔しさを通り越した諦念が見えてもいたが・・・。
「なぁ・・・、あんな動きを本当に出来るのか・・・?どう考えても人間が出来る動きじゃないぞ・・・?」
データ上でのストライクが常識を逸した動きをしていたのだろう、宗吾はパイロットである一夏に真相を尋ねていた。
少なくとも、負けたままでは悔しいのだろう、本当かどうかを知って対策を立てておきたいのだろう。
「さぁな、俺の戦闘データを基にしてるとは言っても、完璧って訳じゃ無いからな。」
「だよなぁ~・・・!?あんなに凄い訳ないよなぁ・・・?」
「もっとも、あのデータは調整中なんだよな、低めに。」
「「えっ・・・!?」」
完璧ではないと言う言葉に、誇張だとでも思ったのだろう玲奈は安堵していたが、その次の言葉に絶句していた。
誇張では無くデータが弱いと言う事だった。
「ははは、俺はそこにあるデータよりも自分で集めたデータを信じるタイプなんでね、ま、たまにはシュミレーションも良いかもな、疲れないし。」
「そんなバカな・・・。」
勘弁してくれと言う様に、宗吾は頭を抱えていた。
自分の上官が相当な手練れだった以上に、そんな彼を従えるミナがそれ以上の腕前だとなると、もう頭を抱えるしかないだろう。
『伝達します、織斑一夏卿、セシリア・オルコット卿、シャルロット・デュノア卿の三名はロンド・ミナ・サハク様の下へ出頭してください、繰り返します、織斑一夏卿、セシリア・オルコット卿、シャルロット・デュノア卿はロンド・ミナ・サハク様の下へ出頭してください、以上、連絡終わり。』
そんな時だった、彼と彼の妻達がミナに呼び出された事を告げるアナウンスが流れた。
一体どういう事なのか分からないのか、一夏すらも怪訝の表情を浮かべていた。
「一体何の用だ・・・?だが、俺も今から行くとこだったけどな、ちょうど良い、お前等も来い。」
「はいよ、一夏卿。」
「お供しますぜ。」
ミナの計画や話を聞いておくのも良い機会だと考えたのだろう、彼は宗吾と玲奈を誘い、ミナの部屋に急いだ。
sideout
次回予告
拾われた命をどう使うか、彼等の悩みの日々は始まった
次回機動戦士ガンダムSEEDASTRAY X INFINITY
居残り組の訓練
お楽しみに