機動戦士ガンダムSEEDASTRAY X INFINITY 作:ichika
noside
「織斑一夏以下四名、ただいま到着っと・・・、いきなり呼びだすなんてどうしたんだ、ミナ?」
途中で合流したセシリアとシャルロットと共に、アメノミハシラの主、ロンド・ミナ・サハクの部屋までやって来た一夏達、Xナンバーパイロット達は何の用事だとばかりに用件を尋ねていた。
部屋の中ではミナ以外の五名分の椅子と、その前に置かれたワイングラスに注がれたワインがあった。
「おや?呼びつけたのは一夏達だけだった筈だが?」
「別に構わんだろう、二人にも働いて貰わなくちゃならないんだしな?」
宗吾と玲奈がいる事に、意地悪く尋ねてくるミナだったが、一夏は二人にも聞かせておくべきだとばかりに進言していた。
寧ろ、自分が二人も連れてくると予想してたんだろと言いたげだったが、それについては何も言わない事にしたようだ。
それを聞いた彼女は、その通りだと言わんばかりの表情を浮かべ、彼等に着席を促していた。
彼女の指示に頷き、一夏達はそれぞれ席に着き、彼女の話の続きを待った。
「諸君らに集まって貰ったのは他でもない、諸君らにこれから行ってもらう行動について話そうと思う。」
「漸く腹が決まったんだな、ミナ?」
ミナが話す内容に合点が行かなかった宗吾と玲奈は、一体何の事だと言う様な表情を浮かべていた。
だが、彼女の側近であり、実働している一夏は待ちかねたと言わんばかりの笑みを浮かべており、彼女の一言がどういう意味を持っているのかを予想させるに十分すぎるモノだった。
「うむ、ジャンク屋、ロウ・ギュールが示した世界、それを実現するための方法が見付かったのだ。」
「ロウの示した、世界・・・。」
彼女の言葉の真意を、その可能性を示した男と行動を共にしていたシャルロットは、なるほどと言う様な表情を浮かべながらも、何処か嬉しそうに微笑んでいた。
自分の友人が認められる事に喜んでいるのだろう、そんな想いが彼女からは伝わってきた。
「ミナ様、新参者の俺達にも、その計画ってのは理解できるものなんだろうか?」
「そう身構えなくても平気さ、なんせ、内容は割と単純だがらな。」
不安そうに尋ねる宗吾に対し、一夏は楽にしていろとばかりに声を掛けていた。
自分の計画を単純と言われたミナは少しばかりムッとした様な表情を見せていたが、一夏に抗議の目を向けると、彼は悪かったと言わんばかりに手を広げていた。
「まぁよい・・・、全員揃った事だ、始めるとしようか。」
これ以上何を言っても暖簾に腕押しと感じたのだろう、一つ咳払いをし、ミナはモニターに映像を投影した。
「これを見て貰いたい、今、連合やその他勢力に支配されている、または、支配されつつある地域だ。」
「あぁ、いくら条約が締結されるからって、連合もみすみす支配地域を手放せないだろうな、南米ですら、必死の抵抗があればこその独立だしな。」
連合に支配された地域で撮られた映像を見せながらも語る彼女の言葉に頷き、その一部であった南米の現状を知る一夏は事の重大さを噛み締める様に呟いていた。
「うむ、そこに暮らす者達はあまりにも強大な武力によって押さえつけられ、支配されている、反抗しようにも、それが出来る力が無い事が現状だ。」
「確かにその通りですわね・・・、いくら足掻いても、力ですぐ押さえつけられ、より苛烈な圧政が待ち構えている事は、目に見えておりますわね・・・。」
ミナの語る内容に同意し、補足するように呟きながらも、セシリアは何処か憂いを帯びた表情を浮かべていた。
実際、彼女達はそれを目の当たりにし、そうならない様に命を賭して戦い、散って行った者達を見て来ている、どれ程力の差があろうとも、自由の為に戦い続けた者達がいた事も知っていたのだ。
「で・・・、それをアタシらに聞かせて、どうしろってんです?確かに連合の姿勢は気に入らないけど、オーブの国民でもない奴等を、アタシらが助ける義理もないでしょうに?」
彼女達の話の先を読めなかったのだろう、玲奈はおずおずと挙手し、どうするのかと言わんばかりの表情をしていた。
せっかちかつ短気な彼女の事だ、さっさと答えを示し、自分がやるべき事を教えて欲しい所なのだろう。
「そう慌てるな、だが、そうだな・・・、玲奈、そなたに聞くが、国とはなんだ?」
「へっ?」
そんな玲奈の焦りを見抜いたのだろう、ミナは落ち着けとばかりに微笑みながらも質問を投げかけていた。
いきなりの質問に目を白黒させながらも、玲奈は誰かに助け船を頼もうとしているのか視線を右往左往させていたが、宗吾は分からんとばかりに肩を竦め、一夏達は頑張れとばかりにジェスチャーで返すだけだった。
「えーっと・・・、国境線で決められた場所の事・・・、じゃない・・・?」
助けが得られないと分かった時点で相当追い詰められたのだろうか、玲奈は普段の声色とは全く違う、自信なさげな声色で答えていた。
「玲奈、そこはハッタリでもなんでも良いからシャキッと答えろよ・・・。」
そんな彼女の言葉にタメ息を吐きながらも、宗吾はやれやれとばかりに首を振っていた。
勢いだけで解決しようとしてきた彼女だ、せめて出鼻を折られるまではガツンと行ってほしいのだろう。
「一般的に考えてその通りだと言えるだろうな、だが、これから私が行う計画のヒントをくれた男は、国とは人と人との繋がりだと語っていた。」
「国とは・・・、人と人との繋がり・・・。」
彼等のやり取りを可笑しく思ったのだろう、ミナは柔らかい笑みを浮かべながらも持論を掲げた。
彼女の言葉に、玲奈はその意味を反芻させる様に呟いていた。
これまで、自分が生きてきた世界とは異なった世界での価値観を取り込み、彼女なりにどう動くか、どう対処すれば良いかを判断する材料としたいのだろう。
「自分達の理想を追い、そのために誰かと繋がる事が出来る、それが会った事の無い者同士であったとしてもだ。」
出会ったことが無くとも、同じ志を持つ者同士ならば分かり合う事が出来る、その繋がりこそ、国家と呼ぶべきものであり、古代の人間が取っていた、外敵から身を護り、助け合いながら生きると言うコミュニティーの形であるのだ。
「無論、理想を他にする者達とは相容れぬ事もあるだろう、残念だが、人間とは頭の固い生き物だからな、それらにも対処できるよう、相容れぬ思想同士は関わらぬ様に働きかける積りでいる。」
だが、手を取り合える者もいれば、手を携えられない者もいる、それが世の常であり、人間が抱える、争いの根源たる存在でもあった。
これを取り除く事、失くす事は人間から自由を奪うのも同義であり、それは力による支配と何ら変わりのない非人道的であると言わざるを得ないのだ。
「なるほど・・・、それで、この計画が無意味な争いに苦しむ人々を救える、って事なのか・・・?」
「ご名答だ、やはり頭の回りが良いのは流石だな。」
これまでの話でミナがやりたい事が理解できたのだろう、まさかと言う様に尋ねる宗吾に、一夏は流石だと褒める様に笑っていた。
「うむ、だが、ただ単にその理想だけを掲げた所で、我々を知らぬ者達はこの計画に賛同はしないだろう、故に、我々はもう一つの計画を以て、この天空の宣言を示さねばならぬのだ。」
「もう一つの・・・、計画・・・?」
まだ足りぬと言うミナの言葉に、いや、正しくはその計画と言う単語に合点がいかなかったのだろう、シャルロットは首を傾げながらもどう意味かと尋ねていた。
「それについては、この俺から話させてくれ。」
「一夏・・・?」
突如として席を立ち、ミナの隣へと歩み寄る一夏の姿に、玲奈は何をするのかと言わんばかりに彼を見ていた。
事前に聞かされていなかったのだろう、セシリアとシャルロットも顔を見合わせており、彼とミナの間だけで交わされていた計画なのだろう。
「この計画には、もう一つ、俺達が出張る必要がある項目がある。」
「私達が、ですか?」
何故自分達が表に出る事になるのだろうか?
この計画は、自由を渇望する者達が立ち上がるための口実に過ぎない、それなのに、何をそれ以上行う事があるのか分からなかったのだろう。
「あぁ、アメノミハシラが持つ軍を、救いを求める者の為に使う事、つまり軍事的支援だ。」
「お、おい・・・!?それって・・・!」
何の臆面も迷いも無く言い放った一夏の言葉に、宗吾は驚いた様に立ち上がった。
そう、彼の言葉通りに意味を取るならば、それは連合やザフトへ反抗する組織や団体への幇助、つまりはテロを援助するに近しい行為なのだ。
「勿論、この方法が危ない橋を渡るモノだとは、ミナも俺も重々承知の上だ、だが、そうでもしなければ、争いは無くならない、この相互不干渉的な計画を敷かなきゃならないほどに。」
それを半ば肯定しながらも、一夏は仕方の無い事だと言い切った。
確かに、ミナが掲げた計画は相容れない思想同士の相互不干渉的な考えの下に成立しているが、それだけで大人しく従う者はまずもっていないだろう。
「だが、ここで俺達が持つカードを使う、ポーカーで謂う所のジョーカー、それがサハクの名だ。」
「サハクの名・・・?それがなんでジョーカーなの・・・?」
しかし、手はあると言いたげな一夏の表情から、更に何が何だか分からなくなったのだろう、玲奈は早く答えをくれと言わんばかりに急かしていた。
自分の家柄が何の役に立つのかと言われた様に感じたのだろう、ミナも少ししょんぼりとした様な、若干寂しそうな表情を浮かべていた。
「お前・・・、そんな事も知らんでこの世界に来たのか・・・、セシリアとシャルなら兎も角・・・、宗吾、お前なら分かるよな?」
何故、この世界がアニメでの話であった世界から来たのにも関わらずに、そして、この世界に関しての知識が絶望的に少ないにも関わらずにこの世界に来たのか前々から疑問だったのだろう、一夏はもう説明するのも、ミナにフォローするのも徒労だと感じたのだろう、自身の参謀になりつつある宗吾に説明を丸投げしていた。
「はぁ・・・、サハク家はオーブ五大氏族の中でも暗部、主に汚れ仕事を引き受けてきた家柄で、その気になればアスハ家に成り代われるだけの地位がある、それは連合やプラントの首脳陣はとっくの昔に知ってる、つまり、その名を出すだけでそれなりに脅しに使えるんだ。」
彼の言葉を受け、自分に振るのはやめてくれと言わんばかりにタメ息を吐きながらも、彼は自身が知る限りの知識と情報を交えて説明し、一夏にこれでいいのかと確認を取るようにアイコンタクトを交わしていた。
「う~ん・・・、とにかく凄いって事しかわかんないけど、連合とかザフトに下手な手出しさせないってのが目的なわけ?」
「半分はそれで合っている、だが、もう一つはある意味で裏を掻く行為だけどな。」
何となくだが理解したのだろう、玲奈はこれで合ってるかとばかりに尋ね、一夏は半分だけは正解と頷いていた。
「もう一つは、そのネームバリューの影響を恐れた各国のお偉いさんは、躍起になってデマに惑わされるなとお達しするだろう。」
彼の言う通り、先程語られた内容から推察できるだろうが、これにはもう一つの意図があった。
それは、各国政府の対応による副次効果だった。
「そうなれば、放送を聞いただけでは半信半疑だった民衆は、国がそれを恐れていると勘ぐる、そして、ミナが行う宣言が真実だと気付く者も現れ、人々をそれぞれ集め始める。」
「なるほど・・・、国家の対応を逆手に取る方法ですか・・・、ですが、それがもう一つの計画に何の関わりがありまして?」
デマであると思いこませようとする度に、政府は自ずと宣言の信憑性を高めている事まで視野に入れた計画に舌を巻きながらも、今だ明かされぬもう一つの計画に対して疑問を持ったのだろう、セシリアは早く教えてくれと言わんばかりに尋ねていた。
「先に言っている様に、民衆は自ら戦う力を持ち合わせていない、だから俺達が有形、無形の支援を行う事も計画に入っている、だが、今のままでは成功できる望みは少ないだろう。」
「なんで?結構な念の入り様な気もするけど、何が足りないの?」
彼の言葉に違和感を覚えたのだろう、シャルロットは不思議そうな顔をしながらも説明を求めた。
確かに、この計画は国家の出方や民衆の行う動きを予想して立てられており、滅多な事が無い限り失敗は無いだろう。
だが・・・。
「これを見て欲しい、ザフトが開発した新世代MSの試作型だ、性能はストライクを優に超え、尚且つ改修すべき点も多く存在している。」
投影されていた映像を切り替え、彼は南米やデブリベルトで交戦した機体、ザクのデータを表示させた。
高級機の部類に入るストライクを超える性能を持つ機体、しかもそれが量産化の為の試作型であるとすれば、此処から導き出される結論は・・・。
「今後、一年もしない内にアメノミハシラにある機体は、ガンダムタイプを含めて、新型量産機と同程度、若しくはそれ以下の戦力に成り下がる事だけは確かだ。」
「それは・・・、ミナや一夏の技量を以てしてもカバーできないのか・・・?」
「無理だな、特に俺達は独りで多くを相手取る場合が多いからな。」
自分達の力量を以てしてもカバーできぬ性能差がこれからより顕著になっていく事を予想しているのだろう、一夏やミナの表情にはある種の感情からくる固さが見受けられた。
だが、そのままにして後手を取る程、彼等も愚鈍ではない。
「だから、それを出来る限り小さくするため、俺達も力を着ける、それがこの計画だ。」
キーボードを操作し、自身が立ち上げた計画を説明するようにモニターに新たな表示を映し出した。
そこには、『A.G.Remodelling Operation』と表された計画名と共に、ストライクを始めとする連合初期Xナンバー五機の姿が映し出された。
「謹慎中にプランを幾つか纏めておいた、それぞれの部屋のコンピュータに概要は送ってある、此処では大まかな説明しかしない、各々に合うプランかどうかは自分達で確かめてくれ。」
「何時の間にこんな計画を・・・、と言うか、どうやって改修するんだよ?」
あまりの手際の良さに驚いているのだろう、玲奈はどういう風に進めていくのかと尋ねていた。
「簡単な事だ、シュミレーションや実地でのデータ集めを通し、俺達の機体を俺達の好みと特性に合わせて発展強化させる、次の大戦までにな。」
「次の大戦って、まさか・・・。」
説明をしながらも、彼は何かを睨むかのような表情を見せていた。
「もう時間は長くは残されていないだろう、俺の見立てでは二年と持たずに条約は効果を失う、だから、この《アメノミハシラガンダム改修計画》は今、この瞬間を以て開始とする。」
「おいおい・・・、展開が早すぎて付いて行けないんだが・・・、ま、そう言ってもやるしかないけどな。」
彼の先を読んだ行動に驚いているのだろう、宗吾は何処か諦めたかのような声色で呟いていた。
「さて、話は理解してもらえただろう、A.G.R計画はそなた達に任せよう、そなた達の力になるのだからな、その方が良いだろう。」
自分の話を終えた一夏が席に着くのを確かめ、ミナはワイングラスを掲げた。
それに倣い、一夏達はワイングラスを同じ様に掲げるが、宗吾と玲奈は躊躇う様に彼等を見ていた。
「どうした?ワインは苦手か?」
「いや・・・、そうじゃなくてさ・・・。」
「アタシら、まだ19なんだけど・・・。」
躊躇う二人に声を掛ける一夏に、二人はまだ自分達が未成年である事を告げていた。
まだ前の世界での常識を捨て切れていないのだろう、彼等の言葉からは困惑の色が見て取れる。
「ははは、お前等、妙な所で律儀だな、安心しろ、この世界じゃ、コーディネィターは16で成人だから問題無い、何とも無い。」
「えっ?そうなの?」
彼等の困惑を他所に笑い飛ばす彼を見て、本当かとばかりにミナを見る玲奈だったが、そのミナも深く頷くだけであった。
つまり、それは肯定以外の何物でも無く、彼の言葉の信憑性を裏付けていた。
「成人がまだだと言うなら、ここで元服を迎えるのもアリだろう?」
「そっか・・・、なら、遠慮なく!」
誓いの場にそういうのは無粋だろと言いたげな一夏の表情から、何か違うモノを思ったのだろう、玲奈は何処か嬉しそうにワイングラスを手に取った。
それを見ていた宗吾は、自分だけやらないのもアレだと感じたのだろう、苦笑しながらもワイングラスを手に取り、彼等と同じ様に掲げていた。
「計画の始動を祝し、乾杯だ。」
ミナの音頭に、彼等はワイングラスに口を付けた。
「ふぅ・・・、さてと、部屋に帰って呑み直すかな。」
ワインを飲み干した一夏はグラスを置き、今日は休むと言いたげに席を立った。
「呑むよ~、たくさん飲むよ~!」
「はぁ・・・、今日はセーブして夜に備えましょうか・・・?」
彼の言葉を聞き、シャルロットは意気揚々と言った、セシリアはシャルロットを自分が止めねばと言った使命感をその麗しい表情に浮かべて席を立った。
「宗吾、玲奈、俺が酒を出してやる、付いて来い。」
「上官命令なら、断れないか?」
「そうね、でも、誘われたからには御馳走になるわよ!」
一夏に誘われた宗吾と玲奈も席を立ち、彼等はミナに一礼した後に部屋を後にした。
「・・・、さて、私も飲むとしようか・・・。」
独り残ったミナは、自室に置いてあったワインセラーから、見るからに高級そうなワインを取り出し、グラスに注ぎ始めた。
「さて・・・、この計画は、この世を、彼等を何処へ導くか・・・、私が見届けようか・・・。」
グラスに口を付けながらも、彼女は何処か楽しげに呟いていた。
彼女が配下に置く、五人の若人達の為す事に期待するように・・・。
sideout
次回予告
愛しい者へ、心震わせる者へ、そして亡き者へ、想いの在り処は何処か・・・。
次回機動戦士ガンダムSEEDASTRAY X INFINITY
貴方の傍で・・・
お楽しみに