機動戦士ガンダムSEEDASTRAY X INFINITY   作:ichika

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貴方の傍で・・・

sideリーカ

 

「・・・、そう、やっぱりあのストライクのパイロット、只者じゃなかったのね・・・。」

 

L5コロニー群、プラントの一つ、首都アプリリウス市内の高速道路を走るコートニーの車の中で、私は彼が戦っていたストライクのパイロットの事を教えて貰っていた。

 

「あぁ、織斑一夏・・・、一体何処の人間なんだろうな・・・、あそこまで強い男、これまでに出会った事が無かった。」

 

「セシリアとシャルロットはオーブのスーパーエースって言ってたけど、詳しくは分からないわね。」

 

普段は物静かなコートニーが、何処か興奮を抑えきれない様な感じを見せてるのは、それだけ一夏と言う人が強くて、彼にとって大きな存在だからなのかな・・・?

 

もしそうなら、今までそう出来なかった私からしたら、少し、ううん、とっても悔しい。

 

ついこの間出会った人の存在の方が、ずっと同僚やってる私よりも大きいって思われるのはそれなりに辛いモノがある。

 

「そうか・・・、だけど、ザフト側の人間じゃなくて残念だよ、こうやって顔を合わせて話す事が出来ないんだからな・・・。」

 

「ふぅん・・・、それって、ず~っと相手してもらえないから?」

 

「違うって、何をそんなに怒ってるんだよ?」

 

「別に・・・。」

 

男の人に嫉妬してるなんて、言える訳ないじゃないの・・・。

 

なんでそれを分かってくれないかな・・・?

いや、そんな事言っても、私達人間は万能なんかじゃない、どれだけ遺伝子を弄っても、人間は人間のままなんだから・・・。

 

でも、女心はそう簡単に納得できる程単純な作りにはなってない。

 

それは、神が気まぐれに与えたモノだとしても、そうなってるんだから仕方ない。

 

「女心は、MSを動かす事よりも、戦う事よりも難しいんだな。」

 

私の態度に苦笑しながらも、コートニーは何処かからかう様に呟いていた。

 

この人、本当は分かっててこういう態度を取ってるんじゃないかしら・・・?

自分で言うのも何だけど、私はそれなりに考えが分かり易い方だと思ってるけど・・・。

 

「そう思うなら、分かろうとする努力をしてよ・・・。」

 

「ははは、俺はMSバカなんでな、そういうのは分からん。」

 

そういうの、笑顔で言わないで欲しいなぁ・・・、だって、怒れなくなっちゃうんだもの・・・。

 

「はぁ・・・、どうしてこの人の事、好きになっちゃうかな・・・。」

 

ダメ男って訳じゃ無い、寧ろ技術者としての腕も、MSパイロットとしての腕前も確かで、ザフトレッドの私よりも給料は高いんだから尚タチが悪い。

 

「ん・・・、まぁ、折角二人きりなんだから、この話はしちゃ悪いな、そろそろ予約していた店に着くし、切り上げようか。」

 

私の独り言が聞こえたのか、それとも気を遣ってくれただけか、コートニーは小さく咳払いして、この話は御終いだとばかりにアクセルを踏み、高速道路の出口を目指していた。

 

不器用に見せかけて、実は優しいなんて、ね・・・、好きになって良かったって思えちゃう。

 

だから、何も言わないでおこうかな・・・、束縛なんてしたいとも思わないし、ね・・・?

 

高速を降りて暫く進んで行くと、全プラントの中でも特に人気のお店だった。

 

出される料理もお酒もそれなりに上質な物しか置いてないから、軍人の中でも高給取りしか行けない様な場所の筈・・!

 

「うそ・・・!?ここって予約が中々取れないんじゃ・・・!?」

 

しかも完全予約制になってるから、とてもじゃないけど直ぐに予約が取れる事なんて考えられないのに・・・?

 

「リーカには何時も手伝ってもらってばっかりで、今日に到っては彼との戦闘で蔑ろにしてしまったからな、ほんの感謝とお詫びの印だよ。」

 

そんな・・・!私が好きで付いて行ってるだけなのに・・・!

 

ここまでしてもらうと逆に気が引けて来たわ・・・!!

 

「あぁ、金の事なら心配するな、今まで使い道が無かった貯蓄を使う時だと思ったらいい機会だからな。」

 

「そ、そうじゃなくて・・・!私なんかとで、コートニーは良いの・・・?」

 

正直、コートニーはそれなりにモテる、ジュニアスクール時代の先輩後輩だったから、それなりに噂とか評判とか色々耳に入ってくる訳で、そのどれもが好印象なものしかないから、正直私としても気が気じゃなかった事だけは確かなの・・・。

 

だから、私なんかがこうやって一緒にいる事だけでも嬉しいのに、こんな良い所に連れて来てもらっても良いんだろうかっていう気持ちになるのよね・・・。

 

「リーカは俺とじゃ、嫌か?」

 

「そ、そんな事ない!」

 

コートニーと一緒で嫌な理由なんてある訳ないじゃない!

 

ただ、不釣り合いな気がして・・・。

 

「俺はリーカと食事をしたい、それで良いだろ?」

 

「はぅ・・・!」

 

今、なんかすごいことをサラッと言われた気がする・・・!!

 

リーカと一緒にいたい的な事を言われた気がする・・・!!

 

これはあれよね、欲張っても良いって事よね・・・!?

 

「うん・・・!」

 

「それは嬉しい、ちゃんとエスコートさせてくれるか?」

 

「勿論よ!お願いするわ・・・!!」

 

車から降りたコートニーは、私の方のドアを開けて、右手を差し伸べてくれた。

 

折角コートニーの好意を無駄にはしたくないから、私はほんの少しだけ躊躇いながらも彼の手を取った。

 

「それじゃ、行こうか。」

 

「うん!」

 

彼と腕を組み、私はこれまでにない位に満たされた心地で、お店の中へと足を踏み入れた・・・。

 

sideout

 

sideコートニー

 

「大丈夫かリーカ・・・?」

 

「らいりょうぶよ~・・・。」

 

食事を終え、二次会とばかりに俺の部屋に上がり込んだリーカは、何を考えていたんだろうか、途中のスーパーで買い込んだ酒を凄まじい勢いで飲み干し、遂にはベロンベロンに酔っ払ってしまっていた。

 

俺がほったらかしにした事を根に持っていたんだろうか、何となくだが愚痴の様な言葉も聞こえてたしな・・・。

 

「ほら、水を飲め、送って行ってもヤバそうだよな・・・。」

 

台所に取りに行っていた水が入ったボトルを手渡すが、最早力が入らないのだろう、だらしなく床に突っ伏していた。

 

男の部屋に上がって酔いつぶれるなんて、喰ってくれと言っている様な物だろうに・・・。

 

そう見られてないのか、俺がそうしないと同僚として信頼してくれているからなのだろうかは分からないけどな・・・。

 

「んぅ~・・・、コートニー~・・・。」

 

「はいよ、どうした?」

 

俺を呼ぶ声に返事を返すが、どうやら彼女は既に夢の中らしい、規則正しい寝息が聞こえてくる。

 

「やれやれ・・・、困った御姫様だ・・・。」

 

如何に空調が効いている部屋であっても、床で眠るのは身体に良くない、軍人なら体調管理には特に気を遣うべきなのは常識だ。

 

それに、寝ている時に彼女が掛けている眼鏡型のディスプレイが割れてしまってはそれこそ大問題だからな。

 

彼女は遺伝的に盲目であるため、この眼鏡型ディスプレイを装着する事で一般的なナチュラルと同程度の視力を確保しているんだ。

 

それでもMSを使う時は、性能が上がったゴーグルタイプのディスプレイを使って視力を強化しているんだ。

 

それを知らされた時は軽く驚いた事を良く覚えている、何せ、ザフトレッドの中でもトップに近い実力を持っていたんだからな・・・。

 

ま、それはさておき、今はこの御姫様を何とかするかな・・・。

 

そんな事を思いながらも、俺は彼女を御姫様抱っこの要領で抱き上げ、俺が使っているベッドに寝かせる事にした。

 

「それにしても、軽いな・・・。」

 

一般的な女性の身長よりも少し低い彼女の身体は軽く、鍛えているとは言えども何処か儚ささえ感じられてしまう。

 

いや・・・、それは彼女に対して失礼だな・・・、弱く見られて良い心地でいられる人間なんていないんだから・・・。

 

ベッドに寝かせた後、彼女の眼鏡を外して近くの台に置いておいた。

 

これで明日の朝まで快適に過ごせるだろう、女性に風邪をひかせる訳にもいかないしな。

 

「ふぅ・・・、呑み直すか・・・。」

 

彼女の愚痴や飲みっぷりを見ているとどうもそういう気になれなかったからな、独り静かに飲むのも良いだろう。

 

冷蔵庫で冷やしていた、気に入っているウィスキーを取り出し、氷を入れた二つのグラスに注いでゆく。

 

「・・・、本当はこんな事をするのは失礼だとは分かってるが・・・、お前は許してくれるよな、一夏。」

 

本来なら相手もいないのに酒が入ったグラスを二つ用意する事は、死者への手向けを意味するところであり、世間一般からはそう取られても仕方ないだろう。

 

だが、ここに居ない相手だからこそ、そして、その相手が敬意を払うべき相手であるならば許してくれるだろう。

 

「こんな形じゃなくて、何時か向かい合って飲みたいよ、お前ほどの男と飲む酒は、さぞ旨いだろうからな・・・。」

 

俺に初めての敗北を与えた男、負けを清々しく受け入れられるぐらいに認め合える男と語り合えるものなら、ゆっくりと、誰にも邪魔される事なく語り合いた。

 

「けど、今はこれで我慢だ、俺の好敵手《友》よ・・・。」

 

最高の友に語りかける様に、俺はグラスとグラスを乾杯させ、一気にウィスキーを呷った・・・。

 

sideout

 

side一夏

 

「ったく・・・、シャルの奴、調子に乗って呑むからすぐに潰れるんだ・・・。」

 

一升瓶を抱えてベッドの上で蹲っているシャルと、彼女を止めるべく頑張っていたが結局は巻き込まれて目を回して横たわるセシリアと玲奈を見ながらも、俺は愚痴と共に大きなタメ息を吐いていた。

 

シャルの酒癖の悪さは常々感じていたが、本来ならここまでひどくは無い。

 

恐らくはずっと溜め込んでる不安やらトラウマ、そして俺への不満が爆発してしまった結果、こうもひどく荒れるんだと思う。

 

ホント・・・、申し訳ないやら情けないやらで色々と辛いもんだ・・・。

 

「そういうアンタも、かなり飲んでたじゃないか・・・、よくケロッとしてられるよ・・・。」

 

まだ飲みなれていない為に顔を青くしながらも、宗吾は俺に呆れる様に呟いていた。

 

「慣れればそれなりに耐えられる様になるもんさ、初めての酒でぶっ倒れなかっただけ良いじゃないか。」

 

「アンタが倒れない様にセーブしろと言ってくれてなきゃ、今頃俺もあぁなってるさ。」

 

それもそうか、シャルに絡まれない様に離れてろと忠告しといて正解だったな、それを無視してたのが玲奈で、今じゃ完全に目を回してぶっ倒れてるからな。

 

ま、何はともあれこれで静かになったのは確かだ。

 

「さて・・・、寝る前の最後の一杯だ、ちょっとだけ付き合え。」

 

「まだ飲むのか・・・!?アンタ、その内アル中になっても知らんぞ・・・。」

 

その時はその時だ、今を生きないとな・・・。

 

四つのグラスを用意し、ジャックから貰ったスコッチを注いでいく。

 

アルコール度数はかなり高めだが、口当たりは良いために呑みやすい酒だ。

とは言え、呑みすぎると死にかける程には強い酒だけどな。

 

「なんで四つも用意するんだ?俺達の分だけで良いだろうに?」

 

何故四つもグラスを用意したのか分からなかったんだろう、彼は不思議そうに俺の顔を覗き込んだ。

 

「ん・・・、死んだ部下と、俺の最高の好敵手《友》への敬意の形さ、何もしてやれないなら、せめてこれぐらいはな・・・。」

 

彼は知らないのだ、自分の命と引き換えに、こんなロクデナシの命を救った気高き女性を、そして、こんな俺を好敵手と認め、戦ってくれる最高のライバルを・・・。

 

彼は兎も角、俺が彼女にしてやれる事があるかは分からない、だけど、せめてこういう形でも思い返して、何かをするきっかけにでもなればと・・・。

 

「だから、大目に見てくれ、見っとも無い男だと笑ってくれても構わないからさ・・・。」

 

「一夏・・・、アンタ、俺達と会うまでに何があったんだ・・・?」

 

僅かに表情に出てしまったんだろう、彼は俺を案ずるかのような表情を向けてきた。

 

どうやら、俺の過去を知り、何とかしてやりたいとでも考えているのだろう、彼の表情からはそんな気配があった。

 

「気にするな、俺だって忘れられるもんなら忘れたいんだ、誰も信じなかった、過去を、な・・・。」

 

一時たりとも忘れられやしない、だからこうして酔えもしない酒に逃げてるに過ぎないんだ・・・。

 

それを、彼には知ってほしくは無い、まだ純粋で、若い彼には・・・。

 

「だからな、誰かを想って飲む酒なら、言い訳になるんだ。」

 

「アンタも強情だな・・・、部下の身としては、何も教えられないと戦いづらい事この上ないけどな・・・。」

 

「ははは、俺が話したくなるぐらい頼れる男になってみろ、そうすれば愚痴みたいに零すかもな。」

 

ま、コイツにはそうなれるぐらいの器があると見込んでるんだけどな・・・、コレばっかりはそう簡単にはいかんか・・・。

 

「今はヤケ酒に付き合ってくれ、それだけで十分さ。」

 

「はいはい、分かったよ、一杯だけなら付き合わせてもらいますよ。」

 

観念したのだろう、彼は詮索を止めてグラスを手に取り、俺のグラスと乾杯してスコッチを咽に流し込んだ。

 

コートニー、お前とも何時の日か、こうやって飲んでみたいもんだ。

 

話のネタは尽きないんだからな・・・・。

 

それに、南米にもまた行かなくちゃな、彼女への手向けも用意して・・・。

 

そんな事を考えながらも、俺はスコッチを呷った・・・。

 

sideout




次回予告

求める未来のため、彼等は力を求める、それが如何なる未来に繋がろうとも・・・。

次回機動戦士ガンダムSEEDASTRAY X INFINITY

マイスターズ セシリア編

お楽しみに~
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