機動戦士ガンダムSEEDASTRAY X INFINITY 作:ichika
side宗吾
『オルコット卿、神谷卿、これより模擬戦のデータ収集を開始します、準備はよろしいですか?』
アメノミハシラのオペレーターの言葉を聞きながらも、俺はブリッツのコックピットでOSのパラメーターの見直しと、武装の調子を確かめていた。
今回の相手は、あのセシリアが駆るデュエルだ、生半可な状態でやり合ったらタダでは済まない相手だ、出来る限りの準備だけはしておきたい。
『宗吾さん、準備はよろしくて?』
「あぁ、俺は何時でも行ける、お手柔らかにお願いするよ。」
しかし、こんな美女が男勝りにMS動かして、城のトップ4に入る位の実力なのは未だ理解出来たモンじゃないな。
此処に入る前に一度戦って互角ぐらいだったのは憶えてるけど、あれもセシリアが遠征帰り直後の事で、万全の状態とはお世辞にも言い難い状況だったに違いない。
つまり、彼女が万全の状態で同じバトルスタイルで戦えばどうなるか、やってみなくても分かると言う物だ。
だけど、それは俺がただ未熟で、修羅場を知らぬヒヨッコだからだ、機体の性能なら同じ、いや、武装の数なら上回っていると言って良い。
だから、この戦いで自分の力量を確かめる、それからどういうスタンスで戦うかを考える、今はこれだけで十分すぎるぐらいだ。
『ふふっ♪かしこまりましたわ、一夏様が期待される御方の御力、見せて下さいませ?』
「おぉう・・・、いきなりプレッシャーを掛けないでくれよ・・・。」
穏やかな笑みから繰り出される重い言葉に、正直勘弁してほしいという感覚を抱くが、今はそれどころじゃないのは分かっている。
あの一夏が愛している女の力、この身を持って体験させてもらうとしよう!
『レコーダー起動させました、試験開始してください。』
「了解!行くぞセシリア!!」
『参りますわよ!!』
管制官の試験開始の言葉と同時に、俺達は互いに向けて飛び出し、まずは小手調べとばかりにビームライフルを撃ちかけていく。
俺も彼女も、なるべく相手を傷付けない様に手足を狙って撃ってるが、これも一歩でも間違えれば死に繋がりかねない危険な行為には違いが無い。
なので、俺達は相手に味方殺しと言う泥を塗らぬように注意しながらも、死なない瀬戸際を見極めながらも銃を撃ちかけていた。
『あら?前より射撃が上手になりましたわね、特訓でもされてますの?』
「そうか?セシリアに褒められると、その気になっちまうよ。」
自分では気付けない事を気付かせてくれるのが、生の人間と戦う事の良いコトなのかもな、今だって、何時も通りに戦っているだけだし、そんなに腕が上がったとも自分では感じられなかった。
もっとも、それはセシリアが俺よりも遥かに格上で、色んな奴等と戦ってきたが故にレベルアップの幅を見落とさなくなっているだけかもしれないけどな。
『射撃がお上手でも、その機体の特性は活かせませんわよ?』
「分かってるよ、格闘戦で!!」
ビームサーベルを展開し、撃ちかけられるビームの間を縫ってデュエルに接近、なるべくダメージを与えないためにもシールドを切りつける。
セシリアもそれを分かってくれていたのだろう、シールドを掲げてビームサーベルの光刃を受け止める。
『回避の腕も、攻撃の腕も巧くなっておられるとは・・・、貴方方のセンスには目を見張るものがありますわね。』
「涼しい顔で言われても実感できないさ・・・!」
もっと焦る様な表情とか、切羽詰まった叫びとかが聞ければ自分でも上達を感じられるところなんだろうけど、やっぱ地力が違い過ぎんのかね・・・?
『ですが、踏み込みが微妙に遅くズレておりますわ、折角の威力も落ちてますわよ!』
「うおっ・・・!?」
デュエルがシールドを押し返し、俺の体勢が崩れたところに回し蹴りが胴に突き刺さる。
盛大に蹴り飛ばされ、体勢を立て直せずにいる俺目掛け、デュエルはグレネードランチャーを構えていた。
「くっ・・・!あんなの喰らったら、一撃でPSダウンだろ・・・!?まだ終わらねぇよ・・・!!」
何とか右腕だけはデュエルの方に向け、ランサーダードを二発発射した。
それと同時に、デュエルもグレネードランチャーを発射、俺達のちょうど間ぐらいで激突し、盛大な爆発を引き起こした。
何とかヒットは避けられたか・・・?
『油断大敵ですわよ!!』
「なっ・・・!?」
その爆煙の中から飛び出してきたデュエルの跳び蹴りを避ける事が出来ず、またしても俺は大きく体制を崩してしまった。
「うわっ・・・!!すげぇテクニック・・・!それに、判断能力だな・・・!」
油断していた訳じゃ無かった、次にどうすれば良いかの判断が一瞬遅れたためにまたしても追いつめられているんだ。
『戦場は動き続けないと死にますわよ?今の間は、殺してくれと言っている様な物ですわ!!』
「手厳しいご指導感謝しますよ・・・!!もっと優しくしてほしいけど・・・!!」
甘ったれるなと言わんばかりにビームサーベルの光刃が迫ってくるが、崩した体勢のままで俺はビームサーベルを握るデュエルの腕を展開したグレイプニールで掴む事で振り抜かせず、そのまま密着してトリケロスでデュエルの左腕を抑え込む。
『あら?存外機転が利くものですわね、そう来ましたか。』
「使えるモノは上手く使え、だろ?」
『その通りですわ。』
一夏以外の男には案外素っ気ないんだな、セシリアって・・・!!
そんなくだらない事を考えながらも、俺はこの状況を如何しようかと無い頭を回していた。
膠着状態を作ったは良い、だが、このゼロ距離の攻防は如何すれば良い?
トリケロスはシールドを抑え込んでいる為にライフルもサーベルも向けられない、グレイプニールも右腕を押さえる為に使っているから尚の事。
『さて、此処からどうなさるのですか?』
俺に手が無い事を見透かしてか、セシリアは意地悪く尋ねてくる。
此処で無いって言っても彼女は嗤わないだろうが、何か目に物見せてやらねば俺のちっぽけなプライドが許さない。
「少しは・・・、足掻かせてもらうよ・・・!!」
左腕を押し込みながらもグレイプニールのアンカーを射出し、スラスターも全開にして一気に体勢を押し崩す。
些か強引だったが、今は気にしちゃいられない、我武者羅でもやり通してやる!!
『きゃっ・・・!?なんて強引な・・・!!』
「悪いけど、これでフィニッシュだ・・・!!」
今迄堪えていた右腕を押し込み、デュエルのコックピットにトリケロスの銃口を突き付けた。
「俺の勝ち・・・、っ!?」
勝ったと思ったのも束の間だった。
シールドだけに上手く力を乗せて逃がしたのだろう、デュエルは体勢を崩してはいたものの、何時の間にか左手に握られていたビームサーベルの柄がコックピットに当てられていた。
『ふぅ・・・、ヒヤヒヤしましたわ・・・、流石ですわね・・・。』
「いや・・・、あの状況から相打ちに持ち込めるって・・・、有り得ねぇ・・・。」
規格外にも程があるってものだ、一夏はこれを更に上回るのだから笑えない、しかも、全盛期には程遠い実力で、だ・・・。
『互いにサーベルを展開していれば撃墜されていましたわね、試験はここまででよろしいでしょうか?』
「あぁ、そうしよう。」
セシリアの提案に頷き、管制官に試験終了の暗号を送った後に機体をアメノミハシラに向ける。
帰ってからの講評をきちんと聞いて、これからの糧としていこう。
俺はまだまだ未熟だから、やるべき事からコツコツと、な・・・。
sideout
noside
「お疲れ様でした、宗吾さん。」
模擬戦が終わった後、セシリアはベンチで寛いでいた宗吾に近付き、手に持っていたドリンクボトルを手渡していた。
「ありがとう、こっちこそ付き合ってもらって助かったよ、セシリア程の手練れに相手してもらえば俺も色々とダメな部分が見えるってもんだ。」
「身に余る評価ですわ・・・、私はそんな大層な者ではありませんわよ?」
若干興奮しているのだろうか、彼は彼女の力量に心からの賞賛をしていたが、当のセシリアは何処か苦笑気味に否定していた。
彼女からしてみれば、嘗ての経験のトラウマも相まって、人を殺すための技を称賛されたところで、自分はろくでなしだと思い知らされているのだろう。
「それに、私をお褒め下さるより前に、御自分の癖は掴めまして?」
目を背けい、忘れてしまいたい過去への回想が酷くなる前に、セシリアは少し引き攣り気味な微笑みを浮かべながらも問うた。
今回の模擬戦は宗吾メインだったのだ、セシリアばかり話していても意味が無いと判断しての行為だろう。
「そ、そうだな、俺としては未熟さが目立ってるとしか思わなかったけど、欲を言えば、もうちょい武装が欲しかったってぐらいだな。」
彼女の微笑みから得体の知れぬプレッシャーでも感じたのだろうか、宗吾は何処か焦ったように話を戻し、自分のデータを確認しながらも、どうだろうかと言う様にセシリアに意見を求める様な視線を受けた。
「そうですわね・・・、確かに、デュエルやブリッツは武装面においては些か心許無い印象を受けますわね、宗吾さんが抱かれている感想は正解に近いかと。」
「やっぱりそうか・・・、もう二本ぐらい刀積んどこうかなぁ・・・、他にあったら教えてくれないか?」
自分の抱いた感想が間違ってないと分かるや否や、彼は表情を明るくしながらも更なる意見を求めていた。
自分に対しての尊敬の目を向けてくる彼に対して、何処かくすぐったさを覚えたのだろう、セシリアは苦笑しながらも別のデータを呼びだしていた。
「こちらをご覧下さいな、ここにヒントがありましてよ?」
「これは・・・、ゴールドフレーム天ミナ・・・?」
セシリアが示したデータに一瞬だけ合点が行かなかったが、それを理解した瞬間に、彼の表情には納得と驚愕の笑みが浮かんでいた。
「そうか・・・!ブリッツにもミラージュ・コロイドがある、それを応用すればマガノイクタチも使えるのか!」
「その通りですわ、それに、天ミナには武装面のエネルギー効率もかなり優れておりますし、参考にするにはこれ以上ない機体ですわね。」
「なるほどなぁ・・・!気付かなかったよ、やっぱり経験が違うのか?俺にゃ考え付かなかったよ。」
「・・・っ。」
提案に感謝しているのだろう、宗吾は彼女の経験からくる洞察力を褒め称えていた。
だが、それを受け取る側が誇れる事では無かった場合、それは只の棘になる事に彼は気付けてはいなかった。
「昔やった戦いの経験なんだろうなぁ、一夏やシャルロットとも―――」
「宗吾さんっ!!」
「っ!?」
そんな彼の言葉を遮る様な叫びに、宗吾は隣に座るセシリアを覗き見た。
自分の不躾な言葉に怒っているのではなく、何処か自分自身の過ちを悔やむかのような表情が浮かんでいたが、彼にはその正体には気付く事が出来なかった。
「・・・、申し訳ありません・・・、そろそろ、ジャックさんの所に行かれた方がよろしいかと・・・、私は、まだ・・・。」
「あ、あぁ・・・!すまない、不躾だった・・・、それじゃあ、また!」
彼女から発せられているプレッシャーに気圧されてしまったのだろう、宗吾は詫びを入れ、そそくさとその場を後にした。
折角逃げるチャンスをくれたのだから、逃げなければ後は無いと感じたのだろう。
そんな彼の後姿を見送りながらも、セシリアは自分自身が情けないと言わんばかりにタメ息をを吐いていた。
「宗吾さん・・・、貴方方は知らずとも良いのです・・・、私達の・・・、決して許される事の無い、過去を・・・。」
ドリンクを飲み干し、彼女は忘れたいと言わんばかりにタメ息を吐いた。
絶対に忘れる事など出来ない過ちを、それを止めようとしてくれた、忘れる事の出来ぬ者達に想いを馳せ、遣る瀬無い想いを抱きながらも、彼女は立ち上がり、その場を後にした。
今は止まれない、贖罪はその後で・・・。
sideout
次回予告
宙を駆ける紅い彗星の如く、彼女は駆けて行く、今だ見えぬ高みへと辿り着くためにも・・・。
次回機動戦士ガンダムSEEDASTRAY ⅹ INFINITY
お楽しみに。