機動戦士ガンダムSEEDASTRAY X INFINITY   作:ichika

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マイスターズ 玲奈編

side玲奈

 

『こちらブリッツ、イージス、応答してくれ。』

 

「こちらイージス、そろそろ試験宙域よね、気を引き締めてくわよ。」

 

アメノミハシラから少し離れた宙域まで、ブリッツを曳航してきたアタシは宗吾と話をしながらもこの試験プランを立てていた。

 

可変機はサブフライトシステムにもなるし、今の今まで他の機体のアシになるなんて事はした事も無かったから、ちょうど良い練習にもなったけど、本題はソコじゃない。

 

今回、アタシのイージスの起動試験と、可変機構の癖を掴むために動かしているの、そのために宗吾に付き合ってもらう訳だけど、ブリッツも色々癖のある機体だから、何となく互いの訓練にもなるでしょうしね。

 

『あいよ、一応機体のレスポンスも確かめたいし、速い機体の相手はちょうどいい。』

 

「バディ組んでる仲だけど、こうやって向き合うことは無かったしね。」

 

アタシ等って、それなりの期間MSには乗ってるけど、やっぱり生き抜くことに必死だったから、こうやってゆっくりと確かめあう事も無かったわね。

 

『試験とはいえ、実弾を使うんだ、お互い気を付けていこうぜ。』

 

「分かってるわ、まだ恩の一つも返せてないからね。」

 

それに、アンタと死に別れるのも御免だから、前は寿命で死ねてないんだし、次の死は寿命で迎えたいからね。

 

『オーライ、気合入れてくぞ。』

 

「勿論よ!死ぬんじゃないわよ!!」

 

宗吾に戦闘の意志アリと見て、アタシはブリッツに向けてビームライフルを撃ちかけながらも突っ込んで行く。

 

速度だけならイージスは圧倒的だし、武装に偏りのあるブリッツの左側に回り込めば勝てる、そんな算段もあるしね。

 

けど、それを見越してか、宗吾はトリケロスを掲げる事でビームを防ぎ、こっちの進路を阻む様に回り込んでくる。

 

読まれてるの・・・!?何故!?

 

『こっち側に回り込む事は織り込み済みだ、一夏に教えて貰っておいて助かったよ。』

 

「なっ・・・!それ卑怯じゃないのよ・・・!!」

 

『卑怯もラッキョウも戦いの内ってね。』

 

一夏・・・!あの狼め・・・!!

 

実力あるくせに、妙に狡猾で人の裏を掻いてくる・・・!!

 

でも、それで生き残ってこれたんだろうな、じゃなきゃあんだけ強くもなれなかっただろうし・・・。

 

そんな事を考えている間にも、宗吾はトリケロスからランサーダードを一発だけ撃ちかけてくる。

 

当たったらそれなりのダメージはあるけど、実弾はまだ回避がしやすい、だからアタシ程度の腕でも回避するのは造作も無い。

 

「そんな程度の攻撃ぃ!効くわけないでしょ!!」

 

イージスの機体を逸らし、ランサーダードを回避した直後だった、飛んで来たグレイプニールに右腕を掴まれた。

 

「しまっ・・・!?」

 

『遅い!!イージスの機動力が形無しだ!!』

 

手繰り寄せられる反動で体勢を崩し、そこに飛んで来たブリッツの蹴りを回避できずに直撃してしまう。

 

だけど、まだ終わってはいなかった。

 

宗吾は吹き飛ばされるイージスを、ワイヤーを巻き取る事で引き寄せて逃がさず、追撃とばかりにトリケロスの縁で殴ってくる。

 

「くぅっ・・・!!これ、前にも・・・!!」

 

ついこの間、シャルロットのバスターに殴られ続けた時のことを思い返す。

 

あの時も、アタシはこの機体の速さだけを過信して突っ込んで、それでやられてしまった様な物だった・・・。

 

なのに、何の学習も無しなのか、アタシは・・・!!

 

いや、まだ終わっても、それどころか始まっても無い・・・!!

 

だったら、やれる事をやるだけよ!!

 

「やられっぱなしは、性に合わないのよっ!!腕の一本は覚悟せい!!」

 

両足にビームサーベルを展開して、殴られた衝撃で反り返った所で後転し、蹴り上げの様な形でビームサーベルの斬撃を叩き込もうとした。

 

『なにっ!?』

 

それに反応しきれなかったんだろう、宗吾は何とか機体を逃がそうとしたけど、グレイプニールのアンカーを切り裂かれていた。

 

「惜しかった・・・!でも、まだよっ!!」

 

腕を掴んでいたグレイプニールのクローを引き剥がし、体勢を崩したままのブリッツへ蹴り飛ばした。

 

勿論、それだけじゃ避けられる事ぐらいは分かってる、ならばどうするかって?

 

「こうするのよっ!」

 

すかさずビームライフルの銃口を向けて、クローを撃ち抜いて爆散させた。

 

『あぁ!?何しやがんだ!?』

 

折角の武器を破壊された事を非難したかったんでしょう、宗吾はビームサーベルを展開してこっちに向かってきた。

 

それを待ってたのよ、手数はこっちが上だしね!!

 

「出来る事をしたまでよっ!!」

 

スラスターを強引に吹かして斬撃を回避し、AMBACを利用した前転から踵落としの要領でビームサーベルを振るう。

 

『うぉっ!?そう来たかっ!』

 

予想だにしなかった攻撃だったろうけど、宗吾は全く焦る事無くトリケロスでビームサーベルを防ぎ、スラスターを全開にしながらもアタシを弾こうとしていた。

 

けど、推力ならこっちの方が上!!押し切ってやる!!

 

「しぶといっ・・・!流石は宗吾ね・・・!」

 

『お前こそ、腕を上げたな・・・!!だが・・・!!』

 

推力で押し込むことが出来ないと判断したんだろうか、ブリッツは力任せにトリケロスを振るって拮抗状態を破り、その勢いで回し蹴りを打ってきた。

 

当たったら体勢が崩れて撃たれる事は間違いなし、その後に追撃が来たらそれでゲームオーバーね。

 

「避けてやろうじゃんっ!!」

 

すかさずMAに変形させながらも急速離脱、そのままの勢いを着けたまま旋回して突撃する。

 

『なにっ・・・!?しまった・・・!!』

 

渾身の蹴りを外した宗吾は体勢を僅かに崩してしまい、動くのが一瞬遅れていた。

 

その一瞬が戦場で命取り、この勝負・・・!!

 

「貰ったぁぁ!!」

 

そのまま突っ込み、捕縛形態をとってブリッツを掴む。

 

腕もガッチリ掴んでるから、向こうはもう何も出来ない筈だけど、こっちには必殺の一撃がある!

 

「スキュラ発射ぁ!!チェックメイトぉ!!」

 

スキュラの発射ボタンを押したと言う想定で宗吾に向けて叫ぶと、抜け出そうともがいていたブリッツが抵抗を止めた。

 

『あー・・・、負けだ負けだ・・・、俺の負けだよ・・・。』

 

「やりぃ!これで良いっしょ!」

 

ブリッツを解放しながらもイージスに掴まらせ、アタシはアメノミハシラへと戻るコースを辿った。

 

『くそぉ・・・、最近全く良いトコ無しだなぁ、俺・・・。』

 

そう言えば、宗吾は格上との戦いばっかりしてるから戦績も全然振るわないし、相性の悪いアタシと戦って負けて更に勝率を下げてるんだ、落ち込んでも仕方ないわよね。

 

アタシも、まだまだ満足できないって事ね・・・。

 

「仕方ないわよ、その機体でそんだけやれてる事に自信持つしかないわよ。」

 

『そう言われてもなぁ・・・。』

 

あちゃー・・・、逆効果かぁ・・・。

 

まぁ、人の事心配してられる程、アタシも強くないからね・・・。

 

如何したモノかしら・・・。

 

sideout

 

noside

 

「二人ともお疲れ様、良い戦いだったよ。」

 

格納庫横の控え室に戻って来た二人を、ドリンクボトルを持ったセシリアとシャルロットが出迎えた。

 

「ありがとう、セシリア、シャルロット、一夏はどうしたんだ?」

 

「今はジャックさん達と次の行き先について相談されていますわ、あの方が責任者ですもの。」

 

セシリアとシャルロットが来ているにもかかわらずに一夏の姿が見えない事に疑問を感じたのだろう、宗吾は彼女達に尋ねていた。

 

その疑問を払拭するかのように、セシリアは格納庫の方へ目を向けていた。

 

「そっか・・・、アイツも大変よね、まだここに来て半年ぐらいしか経ってないんでしょ?よくやるわ。」

 

シャルロットからドリンクボトルを受け取り、咽を潤すために呷りながらも呟いていた。

 

そこには純粋な畏怖と挑戦的な感情が見て取れたが、その実態は彼女本人にしか分からぬ事だったが・・・。

 

「「・・・。」」

 

彼女の言葉に思う所があったのだろう、セシリアとシャルロットは表情を僅かに翳らせていた。

 

二人は、一夏がどの様な過去を辿って来たか、それにどれほど苦しんでいるかを知っているのだ、そんな彼女達からしてみれば、その称賛は思う所があるのだろう。

 

人の骸を積み上げて造った功績など、忘れてしまいたいのだろうか・・・。

 

「どうしたんだ?」

 

その事を全く知らぬ宗吾は、何処か勘ぐりながらも彼女達に話しかけていた。

 

何があったんだと、何故話してくれないんだとでも言うように・・・。

 

「何でもないよ・・・。」

 

「それよりも、御二人は何かを見付けられまして?」

 

話を逸らそうとしているのだろうか、二人は愛想笑いの様な笑みを取り繕いながらも、先程の模擬戦の感触を確かめていた。

 

「う~ん・・・、アタシは取り立てて何か直さないとって所は無かったと思うわ、最初の被弾だって機体が悪かった訳じゃ無いしね。」

 

「俺の方は目にセシリアに指摘された通りだったよ、今一度、プランを改めようかねぇ・・・。」

 

イージスの宇宙における戦闘能力は問題にならないにせよ、ブリッツの方は手数や戦法の幅が限られてしまっている事が大きな問題となってしまっているのだろう、彼は渋面を浮かべながらも話していた。

 

「なるほど、それならばプランθは如何でしょう?天ミナの模倣に近い形態になるでしょうが、そこはお好みで変えられますわよ?」

 

「それに、手数を増やすならライフルの類いを積んでみるのも良いかもね、幅を広げるためにはちょうど良いかも知れないよ?」

 

ブリッツの強化プランを瞬時に考案し、幾つもあるプランの中から最良のモノを選択、提案していく様は機体を知り尽くしていなければならない物だった。

 

「プランθ・・・、かなり用途は限られてくるが手数は増える・・・。」

 

「けど、稼働時間も問題ね、マガノイクタチも積んどくのもアリね。」

 

彼女達の言葉を聞き、宗吾と玲奈は自分達の考えを口に出していた。

 

「ですが、その辺りの事は宗吾さん自身が決めて下さい、動かすのは貴方なのですから。」

 

「じゃぁ、僕達は次の地球行きの準備しとくから、二人とも早く休んで用意しといてね。」

 

自分達の言いたい事を言い切ったのだろう、セシリアとシャルロットはもう用は無いとばかりに微笑みながらもその場を去ろうとした。

 

「あぁ、ありがとう、次の会議は俺達も呼んでくれ、決めてくれるならそれはそれで良いけどさ。」

 

「知らないままなのも嫌だしね。」

 

去って行く二人に手を振って見送りながらも、何処か複雑な表情を浮かべていた。

 

彼女達の過去に思う所があったのだろうか、その表情は暗かった。

 

「あの三人・・・、何かあるのか・・・?」

 

「教えてくれても良いじゃない・・・、そんなに、アタシらは頼りないの・・・?」

 

過去に何かあった事に気付いても何もしてやれないどころか、知る事さえ許されないのだ、自分達が彼等とは対等でない事をまざまざと思い知らされている心地なのだろう。

 

長い時間を共に過ごし、同じ業を背負っているであろう三人と、何も知らぬ自分達とでは埋められぬ差があると・・・。

 

だが、それも事実であるために、彼等の葛藤は深いのだ。

 

「いいさ・・・、だったら辿り着いてやるさ、アイツ等が頼れるくらい強くなって、聞いてやるまでよ!!」

 

「あぁ、信じて貰えるまで戦うだけだな。」

 

しかし、簡単には引き下がらないのが玲奈であり、その相方である宗吾だった。

 

自分達がそれに見合うだけの人間になれれば、彼等も教えてくれる。

 

今は無理でも、何時の日か腹の底から語り合える様になるまで・・・。

 

「いよっし!次の準備しようぜ!!」

 

「あぁ、張り切り過ぎて熱だすなよ。」

 

「子供か!?」

 

その想いを胸に、彼等は他愛も無いやり取りをしながらも自分達の部屋へと戻ってゆく。

 

何時の日か、彼等の隣を歩けるようにと・・・。

 

sideout




次回予告

逃れられぬ過去に翼を捥がれ、飛び立てぬ魂は何を想うか・・・。

次回機動戦士ガンダムSEEDASTRAY X INFINITY

マイスターズ 一夏編

お楽しみに
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