機動戦士ガンダムSEEDASTRAY X INFINITY   作:ichika

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重力の底へ

side一夏

 

『こちら管制室、射出タイミングまで150セコンド、各員、準備をお願いします。』

 

「こちら降下シャトル、発進準備完了、何時でも出せるぞ。」

 

大気圏突入用のシャトルのコックピットにて、俺は管制室と発進前の交信を行っていた。

 

数か月ぶりの地球への出立だし、降下地点の気象情報や時刻などは操縦の仕方にも大きな影響を及ぼすために、準備を怠る事は出来ない。

 

今回は地球の各地でデータを集める予定だ、その足掛かりとして、まずはオーブのモルゲンレーテとの接触から始まる旅になるだろう。

 

副操縦士席に座る宗吾も、何処か緊張の面持ちでその時を待っていた。

 

固くなるなりすぎるなとは言っておいたが、経験の浅い彼にはまだ酷な話だろう。

 

その固さにある種の初々しさを覚えながらも、俺は作業を続けた。

 

『一夏、聞こえているか?』

 

「ミナか、俺達がいない間はルキーニの情報を頼って動いてくれ。」

 

通信を入れてきたミナに対応しながらも、俺は計器を確認し、発進の準備と効果地点のデータを入力する。

 

『分かった、オーブに降りたら、出迎えに来させているある技術員に会うと良い、彼女もお前に会いたがるだろうからな。』

 

「誰の事・・・、ってのは聞かないでおくよ、色々と詫びなきゃいけない事もありそうだしな。」

 

あの人の事なんだろう、俺が何も言わずに逝ってしまった事を、一番怒ってそうな関係だったしな・・・。

 

「じゃあ、行ってくるよ。」

 

ミナとの通信を切り、俺は操縦桿を握り、開いた隔壁の間から青い星、地球へ向けて発進した。

 

一番大気圏に近いスペースゲートから発進したため、すぐにでも突入準備をしなければ色々とヤバい。

 

「大気圏突入シークエンス開始、シャッターを下ろせ、眼が死ぬぞ。」

 

「了解っと・・・、しかし、ひどい揺れだ・・・。」

 

俺の指示に答えながらも、宗吾は頷きながらもスイッチを押し、輸送シャトルの遮光シャッターを下ろす。

 

「ツラいか?なら、セシリアかシャルと変わって貰え、あの二人は色々となれてるから大丈夫だ。」

 

「いいや、大丈夫さ・・・、こういうのに慣れとかないと、後々面倒だろ?」

 

分かっているじゃないか、これから先、何度も地球に降りる機会はあるだろうし、下手をすればMSでの単独降下なんて荒っぽい事もする事になるやもしれん。

 

比較的安全なシャトルでの降下から慣れといてもらわないと、こちらとしても運用の幅が狭まるからな。

 

「けど、アンタもこういう事をする機会は少なかったんじゃないのか?これで何度目だ?」

 

「二度目だな、前は数カ月前にジャーナリストのジェス・リブルと南米に降りたぐらいだな。」

 

「へぇ、それにしちゃ慣れてるって感じだな、羨ましいよ。」

 

彼は俺の慣れの早さを羨ましがっているのだろうが、今の俺にはそう捉える事が出来なかった。

 

戦いを多く経験した事、そこでの戦いの苛烈さを生き抜いて来れた事を羨ましがっていると、俺は考えてしまった。

 

「そうでもないさ・・・、力が無ければ、こんなにも苦しまずにいれたのに、な・・・。」

 

「?」

 

力が無ければ、こんなに多くの戦いに赴く事も無く、戦いに行く事も無くなり、誰かが死ぬのも見る事が無かったのにな・・・。

 

だが、持ってしまったもの、背負ってしまったモノには責任というモノがある。

 

だから、せめてそれを果たすまでは戦い続けるしかない、それが力を持つ者が出来る唯一の事・・・。

 

「気にするな・・・、ただの独り言だ、それより、しっかり操縦桿握ってろ、俺が動かしているとはいえど、しっかり気を張ってろ、そうでないと墜ちるぞ。」

 

「お、おう・・・、聞かせてくれたっていいのによ・・・。」

 

俺の指示に頷きながらも、彼は何処か不満げに小さく呟いて操縦桿を握り直した。

 

聞こえてるぞ、俺の身の上話を聞きたいって本音がな・・・?

 

だけど、もう少し待ってくれてもいいだろう・・・?

 

俺が、自分の弱さにきちんと向き合って、それを本当の意味で受け入れられる様になるまで・・・、それまでは話せないから・・・。

 

俺が自分自身の覚悟の弱さにどう向き合うかを決めあぐねている時にも、シャトルはどんどん降下してゆく。

 

縛り付け、留まらせようとする枷の様に絡みつく重力と共に・・・。

 

sideout

 

noside

 

「来たわね・・・、サハク家の遣いが・・・。」

 

地球、オーブのオノゴロ島にある軍用滑走路脇に設けられた管制塔にて、一人の女性が降下してくるシャトルの機影を見ながらも呟いていた。

 

モルゲンレーテの技術士である事を表す制服を身に付けながらも、何処か女性らしい柔らかな雰囲気を纏う女性であり、華やかな美しさは無いが、静かに咲く水仙の様な美しさがそこにはあった。

 

彼女の名はエリカ・シモンズ、モルゲンレーテの技術主任であり、元首であるアスハ家だけでは無く、アメノミハシラを治めるサハク家とも繋がりを持っている。

 

また、彼女はヘリオポリスで極秘開発されていたアストレイシリーズの開発者であり、そのデータを基にM1シリーズの開発をサハク家の指示の下に行ったのも彼女であった。

 

連合軍によるオーブ侵攻によって国が壊滅した後は戦艦クサナギに乗り込み、三隻同盟のメカニック達と共に陰からカガリ・ユラ・アスハやラクス・クライン、彼女達と共に戦った者達を支え続けた。

 

「ミナ様か・・・、それともギナ様の遣いか・・・、どちらにしても、あまり関わりたくない相手なのに、ね・・・。」

 

だが、そんな彼女でも苦手としているのが、今回会う事になっているサハク家の人間だ。

 

確かに、以前からの付き合いはあるとは言えど、彼女はギナが掲げていた理念に、そしてその野望に賛同する事が出来なかったのだ。

 

しかし、それだけならば表面的な付き合いをしていればよかったのだが、ギナがオーブの指導者としての地位を得る為に、彼女にカガリを殺す様に仕向けさせたことがあり、その事が切っ掛けでエリカはサハク家と取引を止めようとしていた。

 

その矢先、ミナから会ってほしい者があると言われてしまったために、気が進まなかったがここまで出向いたのだ。

 

だが、不満はそれだけではない、連合の支配が薄れたとは言えどオーブは今だ復興の最中であり、モルゲンレーテも施設を再建している途中であったのだ。

 

そんな忙しい時に自分が現場を空ける事は出来ないにも関わらずに引っ張ってこられたのだ、不満も溜まってもおかしくは無かった。

 

「シモンズ主任、シャトルが到着しました、我々も参りましょう。」

 

「分かってるわ、あぁもう・・・、文句の一つは言ってやりたいもんだわ・・・。」

 

部下の進言に答えながらも、エリカは大きく溜め息を吐いて管制室から出て行き、エレベータを使って滑走路に降り立った。

 

着陸したシャトルまではそれなりの距離があったため、彼女は部下が回していたジープに乗り込み、シャトルの方に向かった。

 

そんな彼女達の前ではシャトルの格納部分のハッチが開き、数機のガンダムタイプMSが姿を現した。

 

「あれは・・・、ヘリオポリスのG・・・?」

 

デュエル、バスター、イージス、ブリッツ、I.W.S.P.を装備したストライクだった。

 

ヘリオポリスで生産されたのはそれぞれ一機だけ、二機目は存在するはずが無いのだ。

 

例外として、ストライクのデータと余剰生産された予備パーツで製造されたストライクルージュが存在するが、それも現在はモルゲンレーテの倉庫内に佇んでいる筈だ。

 

だが、そんな機体がなぜ目の前にあるのか、幾つかの可能性が彼女の脳裏を過ぎったが、今はそんな事を考えている場合ではないとばかりに頭を振り、彼女は立ち止まったストライクの前にジープを停車させた。

 

彼女達がジープから降りた事を確認したのだろう、ストライクのコックピットハッチが開き、中から長身の男性がラダーを使って降りてきた。

 

「貴方がサハク家の遣い、で良いのかしら?」

 

「そういう建前で来てる、出迎えに感謝しますよ。」

 

降りてきた男性に確認しながらも、エリカは探る様に尋ねていた。

 

流石に苦手としている家からの遣いなのだ、警戒しすぎるくらいでも良い位だと感じたのだろう。

 

警戒の色が伝わって来たのだろう、男性は何処か苦笑しているかのような声色で話していたが、ヘルメットが着けっぱなしだったことを思い出したのか、ヘルメットに手を掛けて脱いでいた。

 

一体どんな顔をしているものかと睨む様な目つきを取っていたが、ヘルメットを脱いだ彼の素顔を見るや否や、その表情は驚愕の色に染まった。

 

その艶やかな黒髪、切れ長の瞳から除く黒曜石の如く黒い瞳・・・。

 

それらの特徴を兼ね備えた青年に、彼女は見覚えがあった。

 

「一夏・・・、なの・・・?本当に一夏なの・・・!?」

 

「えぇ、お久し振りです、エリカ・シモンズ、帰ってきましたよ。」

 

驚愕に目を見開き、彼女は彼に近付きながらもその頬を撫でた。

 

彼に出会った事は無いが、心に湧き上がる喜色と悲哀に塗りつぶされた思考は、そんな事を考えさせずにいた。

 

「どうして・・・、貴方の事を・・・?でも・・・、なんで・・・?」

 

「詳しい事は出来る限りお話しします、人払い、お願いできますか?」

 

何故自分が彼の事を知っているのか、出会えた事にこれほどまでの歓喜と悲哀が湧きあがるのか、混乱する中で答えを知ろうとしたエリカだったが、一夏は柔らかく笑むだけで答えず、ゆっくり話がしたいと切り出していた。

 

それもその筈だ、この事は彼等以外の人間が聞いた処で理解すらできないのだ、限られた人間だけで密会する様な形が一番望ましいだろう。

 

「分かったわ、案内する、着いて来て。」

 

「了解です。」

 

彼の意図を汲み取った彼女は周囲の部下に指示を出しつつ、彼に付いて来るように促しながらもジープに乗り込んだ。

 

それを受け、一夏もストライクのコックピットに戻り、走り出したエリカ達のジープを追いかけて機体を駆った。

 

各々が、やるべき事があると、そして、話したい事があると言う様に・・・。

 

sideout

 

side宗吾

 

モルゲンレーテの秘匿格納庫に機体を置かせてもらった後、俺達はエリカ・シモンズ主任に案内された来賓室のソファに腰掛け、今回ここを訪れた目的と、ミナから預かった伝言を話していた。

 

しかしながら、一夏達とエリカ主任の間に嘗ての世界から通じるアレコレがあるとは思わなかった。

 

並行世界の同じ人間とはいっても、所詮は別人の筈なのに、彼女は彼を知っていた。

 

一夏曰く、前にも同じ事が何度かあったらしく、考えが及ばない領域で起こっているのだそうだ。

 

つまり、詮索しようにも答えは得られそうにないので、俺も追及はしないでおこう。

 

名前と既視感以外、彼女は彼について何も覚えていないらしいしな・・・。

 

「そう・・・、貴方達はミナ様に仕え、ミナ様が新たに目指す理想の為に働いている、と言う事なのね・・・?」

 

「えぇ、ギナが抱いていた野望をミナは止めたんだ、世界征服もオーブの首長も眼中にない、そうアスハの小娘にも伝えて欲しいそうです。」

 

「ちょっ・・・、一国の代表に向かって小娘ってのは・・・。」

 

流石に言って良い事と悪い事がある、仮にも相手は次期オーブの首長なんだ、如何に裏のアレコレを知るサハク家の名前を出せるからとは言えど、これは不敬罪に問われても文句は言えんだろうに・・・。

 

「ロンド・ミナからの伝言は以上です、後は、俺個人からの頼み事なんですが、聞いてくれませんか?」

 

「良いわよ、私に手伝える事なら力になるわ。」

 

だが、当の一夏やエリカ主任は全く気にした様子も無く話を続けていた。

 

って、そんな軽い事で良いのかよ・・・、今のは肝が冷えたよ・・・。

 

他のみんなもそうだろうと思い、顔色を窺う様に女性陣を見てみると、セシリアとシャルロットは話は全部一夏に任せたと言わんばかりの表情で紅茶を啜っており、玲奈に到っては出された菓子を食っているだけで話自体にはあまり興味がなさそうにしていた。

 

そんな事で良いのか・・・?本当に良いのか・・・!?

 

「これからアフリカの砂漠地帯に試験稼働をしに行くのですが、オーブ軍の潜水艦を一隻貸してくれませんか?現地での足は個人的な伝手を頼るつもりです。」

 

初めて砂漠地帯に行くと聞いた時、何故オーブからもっとも遠いアフリカ大陸を目指すのかと疑問に思った者だ、何せ、遠回りにも程があるしな。

 

それに、まさかオーブから潜水艦を拝借させるなんて思いもしなかったよ。

 

「アフリカで・・・?なるほど、貴方達の機体を連合軍に見られる訳にはいかないものね。」

 

だが、エリカ主任の言葉を聞いて、俺は初めて彼の意図に気付く事が出来た。

 

なるほど、言われてみればユーラシアのゴビ砂漠や北アメリカの山岳地帯はそれぞれ連合軍の勢力域だ、俺達の機体では迂闊に踏み込めやしない。

 

それに比べ、アフリカは中立及びザフトの勢力域、俺達の機体がザフト軍と交戦しても連合軍を疑う筈だ、こっちに降り掛かるリスクは少ないし、勝手に連合とザフトが牽制し合ってくれる形になるから俺達への追及は幾らか軽くなる。

 

尤も、それは保険でしかない訳で、俺と玲奈の機体は一時期連合とも行動を共にした事もあるし、身バレはしているかもしれないからな。

 

「勿論、見返りとしてゴールドフレームのデータを持ってきました、ミナからも許可を貰っているので遠慮せずに受け取ってください、これからのM1の後継機造りへの参考にでもしてもらえれば、こちらとしても光栄です。」

 

そんなの何時の間に録って来たんだよ・・・!?協力を取り付けられるってこういう事か・・・!!

 

「よく持ってこれたわね・・・、相変わらずやり手なのね。」

 

うん、俺もそう思う、何せどうやってミナを丸め込んだのか、その手腕が謎だからな。

 

まぁ、アメノミハシラにオーブがちょっかいかけない様に牽制して来いってのも含まれてるからかもしれんが、それを実際にやるんなら俺にも教えといてくれ、後で確認したくなるしな。

 

「はぁ・・・、カガリに怒られるかもだけど、ここまでされたら手伝わない訳にはいかないわね、分かったわ、一週間以内に動かせる様に手配するわ、貴方達は降りてきたばっかりだし、休んでいなさい。」

 

「ありがとうございます、エリカ主任、御厚意に感謝します。」

 

何とか話が着いた様で、エリカ主任は立ち上がって俺達に微笑んだ後に部屋から出て行ってしまった。

 

あの人にもやる事が増えてしまったから、一秒でも早く仕事をこなしたいんだろう、本当に色々と大変だろうなぁ・・・。

 

「よっし・・・、大陸までのアシは確保出来た・・・、次は砂漠での移動手段だな・・・。」

 

「宛はあるのか?」

 

確かに、飛べるストライクは兎も角、他の四機は歩いたりジャンプしての移動だ、砂漠では効率が悪すぎるし、快適してしまった時に制空権を取られるとマジでシャレにならない。

 

だからこそ、空中を移動できるようにSFSの類いを調達するんだろうけど、一体どうするのか・・・。

 

「あぁ、前に南米に行く前に会った事のある御方がいる、それなりに幅が効かせてもらえるだろうし、一度直談判してみるよ。」

 

「裏の権力者って事?そんな人と関わって大丈夫なの?」

 

一夏の言葉に、さっきまで出されたケーキを貪っていた玲奈が話に割り込んできた。

 

どうやら、それなりに聞き耳を立てておかないと面倒な話だと感じたようだ。

 

「オネェ口調以外は紳士だから大丈夫だ、尤も、何を考えてるかイマイチ見通せないのが怖い所だ。」

 

「アンタですら考えが読めないのは相当な御仁なんだな・・・。」

 

そりゃ警戒もするわな・・・、そうでなければ喉笛を食いちぎられてもおかしくは無いだろうし。

 

「全員で行かなくても良いだろうし、俺独りで行ってくる、お前達は骨休めでもしといてくれ。」

 

一夏の言葉を聞くや否や、セシリアとシャルロットの表情が少しムッとした様なものに変わってしまった。

 

この二人も、それなりに一夏への依存度が高いなぁ・・・、それは一夏本人にも言える事なんだろうけど・・・。

 

「セシリアとシャルロットは連れて行かないのか?」

 

「機体を護って貰わないとな、モルゲンレーテを信頼できない訳じゃ無いが、ホームじゃないんだ、警戒しとかないと戦場で死んじまうかもしれんからな。」

 

彼女達の視線が妙に痛かったため、何とかフォローしようとしたが、彼は大丈夫だと言わんばかりに笑い飛ばし、さっさと部屋を出て行ってしまった。

 

やべぇよ・・・、やべぇよ・・・、どうすんだよこの空気・・・。

 

セシリアは溜め息吐いてるし、シャルロットは地味に歯軋りしてるし、玲奈はそんな雰囲気に引き攣った様な苦笑を浮かべる事しか出来なかった。

 

誰か・・・、あのフリーダム貴公子を連れ戻してくれ・・・、でないと・・・。

 

sideout

 

noside

 

「ん~、今日も良い天気ね~、そう思わない、マディガン?」

 

「呼びだされたと思えば茶会かよ、まぁ、良いけどな。」

 

地球、マティアス邸の庭園に、二人の男性の姿があった。

 

一人はこの屋敷の主、サー・マティアスと、そのお抱えプロMSパイロットであるカイト・マディガンだった。

 

特に何をするでもなく、出されたお茶と菓子をつついての雑談をしている様だったが、カイトはそんなに乗り気でない様で、苦笑とも渋面とも取れる様な微妙な表情をしていた。

 

どうやら、報告がてら寄った所を付き合わされているのだろう、用がないのならさっさと御暇したいと言う様な感じが彼からは見受けられた。

 

「ジェスはオーブに取材に出向いているみたいだから、話し相手がいなくて退屈だったのよ、助かったわ。」

 

「へいへい、夜までは付き合うよ、後は次の準備をさせてくれ。」

 

「ありがと♪イイ男は違うわね。」

 

クライアントからの頼みと来れば断れないのだろうか、彼は苦笑しながらも頷きながらも紅茶に口を付けていた。

 

そんなカイトを見ながらも、マティアスは満足と言わんばかりに微笑み、自分も今を味わおうとでも言うように紅茶を啜った。

 

そんな穏やかな雰囲気を破るかのように、黒服のSPがマティアスに駆け寄った。

 

「マティアス様、アメノミハシラの織斑一夏卿がお見えになられました、マティアス様と会いたいと申されておりますが、いかがいたしましょう?」

 

「あの色男が・・・?アイツ、精神をやられかけてただろうに、こんなにも早く・・・?」

 

SPの報告に最も驚いたのは、マティアスでは無くカイトであった。

 

それもそうだろう、彼は一夏が負った心の傷の原因を知っていたし、その時の彼の様子も鮮明に思い出せた。

 

廃人寸前まで落ち込んでいた彼が、数か月も経っていないのにも関わらずに現れたのだ、驚かない方がおかしいだろう。

 

「アメノミハシラの色男クンが現れたなると、色々とロンド・ミナの思惑が絡んでいるのか、それとも・・・。」

 

だが、彼の訪問の思惑を測るかのような表情を浮かべながらも、マティアスは考えを巡らせていた。

 

一度だけジェスの紹介で顔を合わせているが、所詮はその程度の付き合い、取り合わずに門前払いしても構わないのだろうが、彼はオーブのロンド・ミナの腹心であり、それなりに様々な仕事を熟しているだろうと考えられた。

 

つまり、話を聞くだけ聞いてやろうと言うのが、彼の出した結論であった。

 

「通して頂戴、丁重にもてなす様に。」

 

「承知しました、マティアス様。」

 

マティアスからの指示を受けたSPは一礼した後、そそくさと待たせている一夏の下へと動いた。

 

客人を待たせるのは如何なものか、それが分かっているのだろう。

 

「マディガン、貴方も彼の話を聞いてみる?良い話かもしれないわよ?」

 

「分かったよ、俺もアイツの顔を拝んでやりたいと思っていたところさ。」

 

雇い主の誘いを断れない性分なのだろうか、マディガンは苦笑しながらも席を立ち、先に謁見の間へと言ってしまった。

 

「さぁて・・・、天空からの遣いは何を教えてくれるのかしら・・・?」

 

ギブアンドテイクが鉄則なこの世の中、彼が求める根回しと持ってくる情報、それを楽しみにしているのだろうか、マティアスは立ち上がり、マディガンの後を追う様に部屋へと戻っていたのであった・・・。

 

sideout




次回予告

マティアスとの会談を終えた一夏は、カイトと共に夜の街へと繰り出した・・・。

次回機動戦士ガンダムSEEDASTRAY X INFINITY

一夏とカイト

お楽しみに
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