機動戦士ガンダムSEEDASTRAY X INFINITY 作:ichika
sideセシリア
A.G.R計画が始動して早半年近い月日が流れました今日この頃。
毎日少しずつ、様々な組み合わせで起動試験を行った結果、想定より早く基礎データが集める事が出来ました。
各々が持つ動かし方の癖や多く使う武装、そして好みのOS設定など、一言では語り切れないほど膨大なデータが蓄積され、漸く一つステップを踏み出せる段階までやって参りました。
とは言え、これらはまだまだ序の口で、本当に必要になってくる武器に必要なデータは、試作機を使って録って行く他在りません。
「・・・って感じなんだが、此処までは良いか?」
あら、いけませんわね、今はジャックさんに新しい装備のレクチャーを受けている所ですのに。
「はい、大丈夫ですわ、続きをお願いします。」
「おうよ、一応新しく作っておいたアサルトシュラウドに量子通信システム用のグラビカルアンテナを着けといたから、前よりはロスも少ない筈だ、ダメならもっと考えるけどな。」
デュエルに装着されてゆく新規製作のアサルトシュラウドを見ながら話されるジャックさんの言葉を聞きながらも、私は開示されたデータに目を通して行きます。
今回、新たに装着されたアサルトシュラウドの腰と両肩に、それぞれ一対のソードドラグーンが装備されております。
今回は試作型と言う事で、刃にはラミネート装甲を用いてはおりますが、ビーム刃を発生させる事は出来ません。
まぁ、後々でイージスから技術流用すれば何とでもなりますので、今はこのままでの稼働制限を見ると致しましょう。
「ドレッドノートのドラグーンのデータを解析して造ったは良いが、正直な話、十分でも動きゃ良い方かもしれんぞ。」
「構いませんわ、これからデータを録って参りますので、また良い物を造ってくださいまし。」
忠告と言うよりは念押しと言う様なジャックさんの御言葉に微笑み返しながらも、私はデュエルのコックピットに入り、機体を立ち上げて行きます。
新しい装備が入っているだけありまして、何時もとは設定を変えねばなりません。
もっとも、ドラグーンならば操る事は造作も無い事ですが、念には念を、ですわ。
「さて・・・、今回は付き合って頂きますわよ、ハロさん?」
『ワッカリマシタ!』
一夏様からお借りしたハロを繋ぎ、なるべく動かない様な場所に置いた後、私は機体をカタパルトまで移動させます。
さぁ、参ると致しましょう。
私が誇りを取り戻すための更なる一歩の為に・・・。
『進路クリアー、デュエル、発進どうぞ!』
「セシリア・オルコット、デュエル、参ります!!」
カタパルトから飛び出した私は操縦桿を握りながらも感覚を一層研ぎ澄ませ、大きく息を吐きます。
さぁ、試させて頂くとしましょう、私の愛機の牙の唸りを!!
「行きなさい、ソードドラグーン!!力を示しなさい!!」
四基のドラグーンを全て射出し、デュエルの周囲を弧を描く様にして飛ばしながらも、私はバッテリーの消耗具合を確かめます。
やはり、量子通信システムの為に削られるエネルギーの量は馬鹿にはなりませんわね、これはサブバッテリーの増設も考えねばなりませんか・・・。
『オルコット卿、これより模擬ターゲットを射出します、スタンバイお願いします。』
「了解しましたわ、よろしくお願いいたします。」
さて、本腰を入れて戦うと致しましょう。
そう思った直後、アメノミハシラからデブリが射出され、私の方へと向かってまいります。
大きさ、材質全てが異なっているために、様々なデータが録れる事でしょう。
「行きなさい、ドラグーン!!」
私の意志に呼応するかの如く、四基の牙はデブリに向けて突貫、まるで紙でも切り裂くかの様に破壊してゆきました。
流石はアメノミハシラの技術力、この短期間でこれほどまでの完成度を実現させて下さるとは、頭が下がる思いですわね。
それに、操作のラグが少なくて、まるで手足を伸ばしているかのような感覚のままで戦えるのです、何やら懐かしい感触がしますわね。
ですが、感傷に浸るのはまた後で、今は目の前の試験を熟すとしましょう。
『ゼンポウチュウイ!ゼンポウチュウイ!!』
「なっ!?」
そう思った時でした、ハロさんが警告を発し、私は反射的に機体を動かしていました。
デュエルとドラグーンがさっきまでいた空間を、レールガンの砲弾が凄まじい勢いで通りすぎて行きました。
「今のは、I.W.S.P.の・・・っ!」
『随分と懐かしい動きを見せてくれるじゃないか、セシリア、昔を思い出してしまったよ。』
「一夏様・・・、出て来られるなら一言お声かけ下さいな、ビックリするではありませんか。」
一夏様からの通信と共に、アメノミハシラの格納庫から飛び出してきたストライクが私のデュエルの前に立ち止まります。
本当に、御心に素直な御方ですこと・・・。
『対MS戦闘の想定でやっとかないとダメだろう、俺が相手になるよ、妻の力を知っておくのも夫の務めだからな。』
「私達にその様な建前が要りますか?ですが、御申し出はありがたく受け取らせて頂きましょう。」
久方ぶりの一夏様との模擬戦、何かと気合を入れねば結果は残せないでしょう。
『行くぜ、見せてくれよ!!』
「えぇ、行きなさい、ドラグーン!!」
対艦刀を引き抜き、此方へと向かってくるストライクに向け、私は四基のドラグーンを突撃させます。
ですが、私のドラグーンの軌道を読んでいるのでしょう、白い機体を掠める気配すらありません。
「牽制の為にビームライフルを持ってくるべきでしたわね・・・っ!」
エネルギーの効率を確かめるために、ビームライフルを置いてきたのは痛い所ですが、そうは言ってもいられません。
『牽制の為のエネルギーさえ惜しいみたいだな、効率の向上を提案してみるか?』
直接戦う事でまだまだ完成度が低い事を感じ取っているのでしょう、一夏様は何処か試す様な口調で尋ねて参ります。
可愛げのないお言葉です事・・・!私がどうするかのかなど御見通しでしょうに・・・・!!
「えぇ・・・!!そのつもりですわよっ・・・!!」
しかしながら、言われてばかりややられてばかりも、些か面白くありません。
ですから、私も吠えると致しましょう!!
「行きなさい、ソードドラグーン!!私達の想いに応えなさい!!」
ストライクのバックパック、I.W.S.P.を狙い、私はドラグーンを突撃させます。
同時にデュエルも前進させ、イーゲルシュテルンを撃ちかけながらも退路を断ち、徐々に包囲網を狭めて行きます。
一夏様は豪快な戦い方からは考えられないほど機体や資材を大事にされる御方、喩え戦況に合わなくなった装備でも、戦いが終わればなるべく回収されると言う、MS乗りとしては見習うべき姿勢を御持ちです。
ですが、そこに付け入る隙が生じるのです。
被弾させたくないと思うあまりに機体が回避に動くため、こちらは誘い込みを掛ける事が出来ます。
そして、討ち取るまでは行かずとも、せめて見返してしまいたい気持ちはあります、吹っ切れて頂くためにはそれも良い刺激となる事でしょう。
「そこっ!!」
研ぎ澄ませた感覚を利用し、私はドラグーンを縦横無尽に動かして行きます。
エネルギーに余裕はありませんが、データを録るためです、出し惜しみは一切致しませんわ!!
『くっ・・・!相変わらず良い動きをする・・・!!良い完成度じゃないか!!』
しかし、一夏様はストライクを巧みに動かし、ドラグーンの攻撃を全て回避しておられました。
いいえ、それどころか、撃ち落そうとレールガンやガトリング砲の照準を合わせようとしておられるなど、眼が慣れきっている事が窺えました。
「そう仰って・・・!以前と同じ様に避けておられるではありませんか・・・!!」
以前の世界よりもかなり見劣りするとは言えど、これほどの御力・・・!
やはり、一夏様は侮れませんわね・・・!!
ですが、私も一人の戦士、戦場では負ける訳には参りません!!
「負けませんわよ・・・!そこっ!!」
一夏様からの攻撃が無いにしても、今だ命中はゼロ、流石に戴けませんわね・・・。
しかしながら、私も攻撃をワンパターンにするつもりはありませんわよ!!
荒っぽい攻撃は流儀に欠きますが、私なりの戦い方をお見せすると致しましょう!!
二基のドラグーンを突撃させながらも、私はデュエルのスラスターを全開にし、ストライクに飛び蹴りを仕掛けます。
『いきなりだな・・・!だが、貰った!!』
しかし、その程度の攻撃ならば、一夏様は簡単に回避して私の後ろを取ってくる事など織り込み済み、ですので・・・。
「三段構えは用意してありますの!!」
後方に控えさせておいたもう二基のドラグーンが、ストライクの背後から襲いかかります。
『やばっ・・・!?』
反応されても機体を避けさせる事が出来なかったのでしょう、一基のドラグーンは対艦刀を弾き飛ばし、もう一基はI.W.S.P.を貫きました。
『このっ・・・!何しやがる!!』
推進剤に引火して爆発する直前にI.W.S.P.を排除した一夏様は、その勢いのままコンバインドシールドをデュエルにぶつけて体勢を崩しに掛かります。
「きゃっ・・・!?」
攻撃が中った事で気が抜けていたのでしょう、私は回避する事も出来ずに大きく体制を崩します。
機体が重いせいか、中々体勢を立て直す事すらできません。
ですが、一夏様は吹き飛ばされる慣性を利用して、アーマーシュナイダーを引き抜いてこちらに向かってまいります。
「ドラグーン・・・!!」
照準を合わせる暇も無くドラグーンを突撃させますが、一夏様は機体を掠める事すら気にせずにこちらへ向かって来ます。
『チェックメイト・・・!!』
そのまま、コックピットに切っ先を突き立てられ、敗北を認めざるを得ない状況になった事で諦めが付きました、ドラグーンを全て格納し、私は臨戦態勢を解きました。
「はぁ・・・、また私の負けですか・・・、残念・・・。」
『お前なぁ・・・、I.W.S.P.を壊すなよ・・・、使えるストライカー無くなっちまったじゃねぇか。』
一夏様の小言を聞き流しながらも、私はエネルギーの残量を確認します。
やはり消費量が多かった様で、既にレッドゾーンの後半にまでなっていました。
効率向上と武装類の見直しをせねばなりませんわね・・・、いえ、いっそアサルトシュラウドを固定するのもアリですか・・・?
『聞いてないな・・・、まったく・・・、気に言ってたのに・・・。』
「申し訳ありません、勝気が急いてしまいましたわ。」
悪気が無いと言えばウソになりますが、それでも考え事をしている中では上の空になってしまうのは仕方ありませんわね・・・。
さて・・・、どうしたモノでしょうか・・・。
『とりあえず、射撃武器と手持ちの近接装備の類いは積んどいたほうが良いかもしれん、後で設計担当のオイゲン主任に掛け合ってみよう。』
「一夏様・・・?」
『君に死なれちゃ、俺とシャルはもう立ち直れん、だから必死に悩む、俺達夫婦の問題としてな・・・。』
そんな事を仰って・・・。
気付くと、口元が緩んでおり、心が満たされる様な感覚を受けました。
惚れた弱みか、何かですか、私は今すぐにでも旦那様を抱き締めたいという想いが強く宿ります。
『さっ、帰るぞ、講評はまた後だ。』
何処か誤魔化す様にそっぽを向き、アメノミハシラへと戻ってゆく一夏様の事を可笑しく思いながらも、私はストライクを追って機体を帰投させます。
ほんの少し、胸に宿った暖かい気持ちを慈しみながらも・・・。
sideout
次回予告
その想いは、願いは何を見て抱くモノなのだろうか、それが善きモノか悪しきモノかも分からぬままに・・・。
次回機動戦士ガンダムSEEDASTRAY X INFINITY
熱き熱情
お楽しみに