機動戦士ガンダムSEEDASTRAY X INFINITY 作:ichika
sideシャルロット
「これが新しい武器、ねぇ・・・、随分と御立派じゃない?」
僕の隣に立つ玲奈が、何処か感心した様にまじまじとバスターを眺めているのを、僕は何処か複雑な想いで聞いていた。
今、バスターのビームライフルとガンランチャーと交換される形で装備される新型ビームライフル《ガレオス》は、嘗ての僕の機体のデータを使って製作されたモノだ。
僕が提出したヴェルデバスターのビームライフルと、カナードのドレッドノートイータのΗユニットを参考にして造ったんだけど、正直な話、これでいいのかと思うんだよね。
嘗てと決別したいと思っていても、結局はそれに縋る様な形になってるんだ、人殺しの僕とはいってもプライドはあるんだ。
けど、そんなプライドのために使わなかったらその内討死する事は必須だから、悩み所なんだよね。
「まだ試作型だからね・・・、立派じゃなくてもいいけど。」
彼女の言葉が今の僕にとっては皮肉にしか聞こえなかったから、つい言葉に棘がある様な言い方になってしまう。
そんな自分に自己嫌悪しながらも、僕はヘルメットを被り、バスターへと歩み寄った。
「ジャックさん、バスターのテスト、初めてもいいですか?」
「おうよ、派手にぶちかましてやれや、データもよく録れるしな!」
整備は万端なんだと分からせてくれる様な笑みを見せてくれるジャックさんを信頼し、僕はバスターのコックピットに乗り込む。
「さてと・・・、玲奈、そっちは出れる?」
『いつでもどうぞ、それにしても、イージスでの観測試験なんてとんでも無い事やるわね・・・。』
機体を立ち上げながら通信を入れると、玲奈からの呆れた様な声が返って来た。
今回の試験は、イージスのMA形態時の速度と、通信性能を活かしての射程距離、及びビームの拡散率を測定するというモノだ。
拡散率を調べれば威力の計算も出来るし、それに見合うエネルギーの消費なのかも分かる、だから、今回はハロをイージスに搭載しての威力測定試験を行う事にしたんだ。
敵に見られない様にするために、一夏とセシリア、宗吾やアメノミハシラMS部隊の皆は周辺の警戒に出て貰ってる、これだけの規模の索敵網なら敵が近寄ってくる事もない筈だ。
試射はMS隊が展開していない宙域に目掛けて撃つつもりだから、フレンドファイアなんて事は無い、と思いたい。
まぁ、考えるのは後にしよう、今は出来るを一つ一つやって行こう、それだけが今の僕に出来る事だから。
「さっ、行くよ、予定よりも開発が遅れてるんだから。」
『了解、アタシに任せときなさいって。』
頼もしくそう言う玲奈の言葉を可笑しく思いながらも、僕はバスターをカタパルトまで移動させる。
もう慣れきったこの発進も、僕達の新たな一歩だと思うとなんだか感慨深いモノがある気がしなくもない。
「シャルロット・デュノア、バスター、行きます!!」
『早間玲奈、イージス、出るわよ!!』
別の宇宙港から飛び出した玲奈のイージスがMA形態に変形し、漆黒の宇宙を切り裂いて飛んでゆく、その姿はまるで流星の様な鮮やかささえ放っている様な錯覚を受けた。
「速いなぁ、でも、あれなら見逃す事も無いかな。」
イージスが飛んで行った方向へ向けて、僕はガレオスビームライフルを連結して構える。
『こちら玲奈、観測地点まで到達、何時でも良いわよ。』
「了解、デブリにターゲットを合わせる、観測開始して。」
スコープを作動させ、約100Km先のデブリに照準を合わせる。
宇宙空間は地球でやるよりも拡散率が低いし、長距離射程の観測には持って来いの場所だ、砂漠で超高インパルス砲のデータは録って来てるから、再試験の必要は無い。
そんな事を考えながらも、僕はトリガーに指を掛け、それを絞った。
その瞬間、砲口から大出力ビームの奔流が迸り、漆黒の宇宙を切り裂いて進んでゆく。
そして、僕の狙いを違えずに、大出力ビームの奔流はデブリに直撃、デブリを跡形も無く消し飛ばしながらも闇の中へと消えて行った。
「初撃命中!観測結果を送って!」
『了解っ!今出すわ!!』
玲奈に通信を入れると、すぐに観測結果が送られてきた。
命中結果は良好、拡散率を表す数値はシュミレーション上で計算された数値と違わない結果を示していた。
その結果に、僕はある種の興奮を抑えられなかった。
破壊衝動なんかじゃない、感慨というか、嬉しいというか・・・?
「流石は新型のライフルだね、命中精度も悪くないし、次は連射力を試してみようかな?」
データに目を通し、他の皆に帰投要請を出しながらも、僕は管制室との回線を開いた。
「管制室、こちらシャルロット、擬似ターゲットの射出をお願いします。」
『こちら管制室、了解しました、良いデータを期待しています。』
直ぐに返事があると、宇宙港のカタパルトから幾つものデブリがこっちに向かってくる。
どこで拾ってくるものなのかも見当の付かないような物もチラホラ混ざってるけど、今は気にする事でもないかな。
「ハロ!!マルチロック!!」
『ガッテン!!』
素早く合わせられたカーソルを一瞥し、僕は連続でトリガーを引いた。
それに応える様に、二丁のビームライフルが火を噴き、次々とデブリを灰塵に帰した。
「元のビームライフルに比べて連射力が二割ぐらい上がってるね、エネルギーの効率をもうちょっと考えないと、調子に乗って撃ってたら直ぐにカラッポだ。」
『ヨウジン!ヨウジン!!』
用心しなきゃだよね、その通りだ。
僕はバカスカ撃つから余計にバッテリーが早く干上がっちゃうからね。
『シャルロット、結果はどうだった?』
そう思っていた時だった、イージスがこっちに向かって戻ってくると同時に、玲奈からの通信が入った。
律儀な子だね、遠くからでも通信は出来た筈なのに。
「バッチリだよ、イージスが観測してくれてたお陰で充分すぎる程集まったね、ありがとう玲奈♪」
『良いって良いって♪アタシの機体のデータ取りも出来たわけだし、一石二鳥じゃない。』
「・・・、そっか、なら良いんだ。」
悪気が無いのは分かってるけど、やっぱり色々と経験してない玲奈じゃ、僕達とは見えるものや感じるものが違うんだね・・・。
でも、君はそのままでいてね、それが僕達にとっても救いになるんだし、ね・・・。
『で、まだエネルギー残ってるんでしょ?試しに模擬戦しない?』
「それが目的で買って出たの・・・?別に良いけど、実弾だよ?」
別に軽い模擬戦程度なら受け持ってもいいんだけど、今のバスターに積んでるのはこのビームライフルしかない。
ミサイルは軽量化のために全部抜いてきたし、下手をすれば彼女に怪我どころか命さえ奪う結果になるかもしれない。
そうなったら、僕はもう立ち直れないんだよね・・・。
『なーに言ってんのよ、そんな事ぐらい分かり切ってるわ、それに、何時までもアタシをヒヨッコ扱いしてんじゃいわよ、アンタ達が強いのは分かってるけど、仲間なんだからちょっとは信じてくれても良いじゃない!』
「っ・・・!!」
その言葉に、僕はまた頭を叩かれたかのような感覚を覚えた。
確かに、彼女の言った通りかもしれない。
心配していると言ったら聞こえはいいけど、それは彼女の事を下に見て軽んじてるという事に変わりはない。
それに気付いた時、僕は何だか胸のつっかえがまた一つだけ落ちた様な気がした。
僕達が何だろうと、彼女にとってはそんな事なんてどうでもいい、ただ、目の前にいる一人の女を見ているだけなんだ。
「はははっ・・・、君は相変わらず、僕達の仲に入り込むのが上手いね・・・、考え続けるのが馬鹿らしくなるじゃないか。」
『ちょっと、それどういう意味よ!?アタシが何も考えてないみたいな言い方は無いんじゃないの・・・!?』
何も考えてないなって思ってないよ、考えてる事が単純だなって思ってるだけ。
でも、それは悪い事じゃない、色々考えすぎて堂々巡りになる僕達に比べたら、彼女は真っ直ぐ前に進めてるから。
だから、僕も自分に蹴りを着ける為に彼女の胸を借りよう、そうする事で前に進めるのなら。
「行くよ、避けないと本当に死ぬよ?」
『ちょっと!?いきなりぃ!?』
僕がビームライフルを向けると、玲奈は慌てて射線上から逃れ、その高い機動力で足の遅いバスターを攪乱する様に動き始めた。
厄介な戦法だよ、こっちとは相性が悪すぎる。
「まったく・・・!!嫌味なのかなその動きは・・・!!相性に気を遣ってくれてもいいんじゃないかな!!」
『気ぃ遣ってたら間違いなく死ぬわ!!アンタ相手に手加減なんて出来る訳無いでしょ!!』
謙遜しないでよ、君の延び白は僕達何かよりも遥かにあるんだ、その内、対等どころじゃない話になれるだろうからね!
現に、前に戦った時よりも動きが格段に良くなってる、結構本気で撃ってるって言うのに・・・!!
『こわっっ!?コックピット狙ってない!?今当たりかけたんだけど・・・!?』
「気のせいだよっ!ほら、反撃してくれないとデータ録れないじゃないか!!」
ガレオスビームライフルを連結させ、大出力ビームをイージスが動く先に向けて発射する。
それを避けれないと判断したのか、玲奈はシールドを掲げてビームを防ごうとしていたけど、あまりのエネルギー量に耐えきれなかったのか、シールドはいとも容易く用を為さなくなった。
『げぇっ!何よその威力っ!!』
溶断される前に何とか逃げた玲奈はビームサーベルを展開してこっちに向かってくる。
やっぱりそう来るよね、バスター相手に近接戦は絶好のサンドバッグでしかない。
でも、ある程度、それは予想してる、この機体の特性は誰よりも僕が知ってるからね!!
バスターのスラスターを強引に吹かして斬撃を回避し、カウンター気味に蹴りを叩き込もうと動く。
『同じ手には乗らないわよ!』
流石、僕と何度か戦っただけは有るね、手札を覚えて来たみたいだ。
だけど、その程度じゃ僕のバスターは捉えられないよ!
イージスが身を沈めて蹴りを避けて、隙が出来たと見るやいなや、彼女はすぐにカウンターのビームサーベルを発生させたケリを叩き込もうとしていた。
でもね、僕は僕の真似事で倒せるほどヤワじゃないよ!!
イージスの間合いよりも更に深く懐に入り込み、ライフルの下部に配置していたグレネードランチャーを突き付ける。
デュエルのグレネードとドレッドノートイータのグレネード弾を基に開発してるから、威力はそれなりに高いものがある。
本当は牽制用に積んでおこうと提案したけど、至近距離からならPS装甲だって無傷じゃ済ませないよ!!
「いっけぇぇぇ!!」
『ちょっ!?まっ・・・!!』
玲奈の困惑する声が聞こえてくるけど、僕は迷わずに操縦桿を押し込んでトリガーを引いた。
その直後、直撃したグレネードが激しい閃光と共に爆発し、イージスを大きく吹き飛ばした。
『きゃぁぁっ!?』
あまりの威力に体制を立て直せないイージスに向けて、シミュレートモードに切り替えたライフルを構え、コックピットに狙いを定めてトリガーを引いた。
エネルギーの量も心許無かったし、機体をこれ以上消耗させないためにも、これが一番手っ取り早いんだよね。
『いてて・・・、無茶な事するわね・・・!むち打ちになっちゃうところだったわ!』
「ごめんごめん、悪気は無かったんだ、つい熱くなっちゃったよ。」
玲奈からのボヤキを聞き流しつつ、暑苦しいヘルメットを脱いで汗を拭った。
結構良いデータが録れたね、やっぱり玲奈を相方に選んで正解だったよ。
『悪びれない図太さも羨ましいわ・・・、アンタ等はやっぱ凄いわ。』
「それ、嫌味にしか聞こえないけど素直に喜んでいいのかな?」
まぁ、素直に物事をハッキリと言えるトコには好感を持てるけど、それとこれとは話が違うからね。
「まぁ、付き合ってくれてありがとうね、玲奈、君のおかげで色々と分かったから。」
『ほぇ?なによいきなり?お礼される事なんて何もしてないわよ?』
気づいてないならそれでもいいんだよ、僕が勝手に救われてるだけだから、ね・・・?
「さっ、お腹も空いたし帰ろっか?ご馳走するよ。」
『ん、ありがたく頂くわ、乗って頂戴。』
僕の言葉に頷いた玲奈は、イージスをMA形態に変形させてアメノミハシラに向けて機体を駆った。
それはまるで、僕達の想いを、未来を運んでいくように・・・。
sideout
次回予告
何時の日か、戦場ではない場所で会いたいと願いながらも、二人の想いは交錯する。
演舞が織り成す景色とは・・・?
次回機動戦士ガンダムSEEDASTRAY X INFINITY
また会う日まで
お楽しみに