機動戦士ガンダムSEEDASTRAY X INFINITY 作:ichika
side一夏
『一夏卿、こちら艦橋、目的ポイントに到着しました、発進準備を開始してください。』
「こちら一夏、了解した、直ぐに発進します。」
デブリベルトの外縁部の辺りにやって来たイズモの艦橋から発進を促す通信が入った。
それもそうか、こんなところ、一刻も早く用事を済ませて立ち去りたい様な場所だ、俺だって長居はしたくない。
それに、このデブリベルトに価値があるとすれば、何もしてなくても何かが起こる事、そして、それが外にばれにくいって事だけだろう。
さて、今回は俺の新型ストライカーのテストのためにここまでやって来た。
二週間ほど前にセシリアにI.W.S.P.を破壊されてしまい、この新型ストライカー、今はプロトタイプだから正式な名はないが、が完成するまではマルチプルアサルトストライカーの残った部分だけを利用して何とかカバーしてきた。
一応完成したストライカーはI.W.S.P.の設計思想をそのまま引き継いだ形となり、シュベルト・ゲベールを一回り小さくした対艦刀を右背に一本と、左背にバルカンポッドを一基搭載、二対あるウィングにはそれぞれ数基ずつミサイルを装備してある。
そして、スライドして両脇から出てくるような構造になったレールガン一基と、もう一基はビームキャノンという武装配置になった。
スラスターはI.W.S.P.のデータから、より効率の良い配置が施されているため、実質上、推力は1.5倍にもなっていた。
「けどまぁ、欲を言えば対艦刀は二本あった方が良いよなぁ。」
使いやすいし、戦い易いからなぁ。
まぁ、今回は宇宙でのデータ計測が目的だし、限界以上の動きを求めることも無い筈だ、それほど手間取る内容じゃないのは確かだと言えるだろう。
「さて、今日も最後まで付き合ってもらうぞ、相棒。」
『ガッテン!ガッテン!!』
相棒であるハロに声をかけた俺は、愛機であるストライクを動かしてカタパルトまで移動させる。
ハッチが開いてゆき、いつでも発信してくれと言わんばかりの状況を見て、俺は改めて操縦桿を握りしめた。
『進路クリアー、ストライク、発進どうぞ!!』
「了解、織斑一夏、ストライク、行くぜ!!」
何時もと同じように漆黒の宇宙へと飛び出した俺は、PS装甲をオンにしながらもストライカーの推力を確かめるように宙を駆った。
「凄いな、相変わらず手足を伸ばしてるみたいに機体が付いてくる・・・!」
調整の賜物か増大した推力に機体が振り回されるということも無く、しっかりとマニューバを取れている。
流石はウチのメカニックだ、パイロット好みだけじゃなくてメカの特性をしっかり把握してる、良い仕事してるよ。
「さて、やってみるか!」
持ってきていたビームライフルとシールドを改めて持ち直し、俺はペダルを踏み込んで機体を加速させた。
「さて、試すとしようか・・・?」
操縦桿を操作し、レールガンを試し撃ちしようとした、まさにその時だった。
「・・・っ!!」
突然、身体に稲妻が走った様な感覚を受けた。
全身の産毛までもが逆立つ様な感覚、それは強大な力を持っている相手への畏怖、そして、歓喜だ。
そうだ、間違いない・・・!この感覚は、アイツが発していたプレッシャー・・・!!
「ったく・・・!!退屈な試験かと思えば、命の危険迫ってんじゃねぇか!!」
だが、恐怖などしていない、むしろ、普段の俺ならば絶対に抱かない興奮すら覚えている。
「行ってやるよ、今からそっちにな!!ハロ、イズモに連絡、一時間で戻ると!」
『リョウカイ!リョウカイ!!』
ハロに指示を出しながらも、俺はストライクのフットペダルを踏み込んで感覚が強くなる方向へと急いだ。
きっと、彼も俺に気付いているのだから・・・!
sideout
sideコートニー
『ヒエロニムス技術員、X1000のテストに入ります、所定の位置まで進んでください。』
「了解した、こちらでもモニタリングしているが、詳細なデータが欲しい、そっちでも採取頼む。」
デブリベルトの外縁部のとある場所にて、俺は新型MSのテストに臨んでいた。
数カ月前に開発が凍結された機体、X999のデータと、ある好敵手から貰ったストライクのデータを合わせて造り上げた新型機、ZGMF-X1000《ザクウォーリア》の初めてのテストだ。
パック交換式のビーム突撃銃に両腰に二基ずつ着いたグレネード、左肩に搭載されたシールドに収納されているビームトマホークと言う基本装備に、ウィザードと呼ばれる換装型のバックパックが装備される機体に仕上がった。
今回はその実験機として、機動戦型装備《ブレイズウィザード》を装備して来ている。
機動力を重視した装備ではあるが、搭載されているファイヤビー誘導ミサイルのポッドを装備している為に火力もそれなりに確保されている。
その出力は総合的にゲイツの二倍近くにもなり、スペックはそれこそストライクを上回るモノがある。
量産化の計画の話も出ている程良い機体だ、俺も開発に携わったし、それなりに思うモノがある、気合入れて掛かろうじゃないか。
『コートニー、聞こえているかしら?』
操縦桿を握り直した時だった、試験監視艦に乗っているスポークスマン、ベルナデット・ルルーからの通信が入った。
どうやら、次期議長閣下から直々に要請が降りているらしい、試験には必ずと言っていいほど彼女が付いて来る。
もっとも、上の思惑や彼女の仕事については気になる事も多い、だが余計な詮索はしない、それはやがて、自分の身を滅ぼす事にも繋がりかねないからな。
「聞こえている、良い報告が出来る様に頑張ってみせる。」
『えぇ、貴方の腕は最高よ、それ程の腕があれば軍でトップガン張れば良いのに。』
ったく、嫌味で言ってるのか本気で言ってるのか・・・。
俺がMSに乗るのは、ただメカを動かすのが好きだからに過ぎない、戦争して手柄を上げたいとかそんな理由なんかじゃないと言うのに・・・。
とは言え、アイツと戦う時だけはそんな事も考えられなくなる程に気分が高揚しているのは確かだ。
まるで、何も取り繕う必要は無いとでも言うんだろうか、自分でも驚く程素直になれている気がしなくもない。
「また・・・、アイツと会ってみたいな・・・。」
彼と腹を割って話してみたい、自分の想いを知ってもらいたい、そんな気持ちが強く渦巻く。
だが、今はやるべき事をやるとしよう、結果を出して、次に繋げてやらないとな?
「さて・・・、これより試験を開始する、まずは・・・。」
ビーム突撃銃の性能を確かめようと構えるが、その直後、稲妻に打たれたかのような衝撃が俺の身体を走り抜ける。
全身を焦がすように走る感覚、そして、この胸の高鳴り・・・!!
普段なら全く感じる事の無いであろう感触、だが、既視感を感じるもの・・・、それは・・・!!
「まさか・・・!?まさかアイツが・・・!!」
『コートニー?どうかしたの?』
俺の歓喜の声に聞き返すベルの声も耳を素通りしてしまうほどに気を惹かれている事が分かる。
レーダーや目視で辺りを見渡しても、まだ何も見えない。
だが、確かに感じるこの感覚だけは偽り様も無い、南米でも、そして、半年前に感じたものなのだから・・・!!
「最強のストライク乗りがやってくるぞ・・・!俺に惹かれてな・・・!!」
スラスターを全開にし、感覚が強くなる方へと走る。
分かる、分かるぞ・・・!すぐに近くに来ている・・・!!
「・・・!来たっ!!」
メインカメラのズーム機能を使い、漆黒の闇と星々の間に煌めくスラスターの光を見付ける。
それは一直線にこちらへと向かって来ており、それに連れて感覚もより強くなってくる。
『こちらストライクの織斑一夏だ!コートニー!聞こえてるな!』
「こちらコートニー・ヒエロニムス!やはりお前だったか、一夏!!」
彼も俺を見付けたのだろう、通信を入れつつもスロットルを上げた様だ、光が更に近付いてくる。
そして、暫くもしない内にストライクの姿が肉眼でも確認できる距離に入り、その姿がしっかりと確認できた。
「あれは・・・、ストライカーを新造したのか・・・?」
『あぁ、テスト機だけど前のよりも良い性能だ、それに、ソッチの機体も新型だろ?お互い、都合のいい時に出会うもんだな。』
まったくだ、何時も都合のいい時にお互いぶつかって、それでいて良いデータが録れるんだ、一石三鳥と言っても過言ではないほどに。
「そうだな、なら、もう分かっているんだろう?コイツの稼働試験をさせてくれ、良い機体に仕上がってるんだ。」
『あぁ、勿論だとも、俺の新しいストライカーも今日が初稼働なんだ、お前が相手ならこれ以上ない僥倖さ!』
なるほど、相手にデータを与える代わりに相手のデータを貰う、等価交換も良いところか?
しかし、今の俺達にはそんな建前なんぞ要らんか?
「良いだろう、俺が相手になる、行くぞ!!」
『受けて立つぜ!コートニーっ!!』
ビーム突撃銃を構え、ストライクに向けて突っ込んでいくと、ストライクも俺に向かって突っ込んでくる。
「こちらから行かせてもらう!!」
トリガーを引き、ビームを撃ち掛けるが、ストライクは僅かに機体を動かすだけで回避してしまう。
『お返しだ!!』
アイツも俺と本気で戦うつもりなんだろう、頭部バルカンを撃ち掛けながらも蹴りを放ってくる。
何とか回避してビーム突撃銃を構えるが、向こうもそれを見越していたのだろう、ビームライフルを俺に向けていた。
相変わらず、なんて奴だ・・・!
ゾクゾクさせてくれる、無駄な戦いを好まない、この俺を・・・!
全くの同時に距離を取りながらも、俺達が考えていたことは同じだっただろう。
最高の戦いを望む、と・・・!!
さぁ、俺達の宴を始めようぜ、一夏!!
sideout
noside
「あのストライクは・・・、まさかあの織斑一夏が・・・?」
いきなり現れたストライクと交戦に入ったコートニーのザクウォーリアの姿を見詰めながらも、試験監視艦に乗り込むジャーナリスト、ベルナデット・ルルーは驚嘆の表情を浮かべながらもその戦闘を追い続けた。
それはかつて、南米で遭遇したエースパイロットであり、その腕前はコートニーに勝るとも劣らない程のものだった。
どこの所属だったかは深く聞いていなかったが、ザフトの人間でないことだけは明らかであったことをよく覚えている。
「どうして彼がこんなところに・・・?それに、コートニーはどうして分かったの?」
だが、彼女にはそんな過去を思い起こしている暇はなかった。
なぜ彼がこんな場所に現れたのか、そして、なぜコートニーはレーダーがストライクを捉えるよりも早く存在を察知していたのか。
前者は偶然の産物だと考えられるだろうが、後者は明らかに説明が付かない。
運命か、それとも別の何かが、彼らを結び付けているのではないか、とまで考えてしまうのも無理はなかった。
「ルルー女史!コンディションレッド発令させます!ザクを下げて戴きたい!」
悠長に構える彼女に痺れを切らしたのだろうか、艦長と思しき人物がザクの撤退を進言する。
既に周知されたMSとは言えど、ザフトの識別コードを持っていなければそれは敵も同然、そして何より、新型機のデータを録られる訳にはいかないのだろう。
だが・・・。
「必要ないわ、MS隊の出撃はナシ、このまま監視を続けて。」
彼女はその打診を蹴り、戦闘に目を戻した。
「何故です!?これではデータが・・・!!」
「コートニーが自分からやり始めた事よ、けじめぐらい着けてくるわ、それに、ザクの性能を測るには丁度いい相手だわ。」
食い下がろうとする艦長の言葉を一蹴し、彼女はコートニーの思惑に考えを巡らせた。
恐らく、コートニーが戦い始めた理由はザクがストライク以上の性能を持つ機体であるかどうかを再確認するため、そして、ストライクの新型バックパックの性能を知るためなのだとでも思っているのだろう。
それ故に、失うデータよりも得られる確信とデータの方が大きいと判断し、戦闘を続行させたようだ。
尤も、彼女も気付けてはいないのだ、コートニーと一夏という男達の間にある、その繋がりに・・・。
「織斑一夏、貴方の本当の力を見せてもらうわよ。」
損得勘定で見る彼女の思惑を他所に、ストライクとザクの戦いはさらに苛烈さを増してゆく。
まるで、鎖から解き放たれた二匹の獣が争うかのように・・・。
sideout
次回予告
何故巡り会うか、何故戦うか、その答えは彼等だけが知るだろう・・・。
次回機動戦士ガンダムSEEDASTRAY X INFINITY
また会う日まで 後編
お楽しみに