機動戦士ガンダムSEEDASTRAY X INFINITY   作:ichika

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また会う日まで 後編

sideコートニー

 

デブリベルトで始まった俺達の戦いは、苛烈を極めようとしていた。

 

単純な性能評価試験になるとタカを括っていたが、まさか、最強の好敵手が出てくるとは思いもよらなかった。

 

撃てども撃てども当たる気配が無い、いや、当たらない事が当然なんだ。

 

何せ、アイツは俺よりも間違いなく強い、そう確信できる何かを漂わせてくるから。

 

『そこだっ!』

 

「チィッ!!」

 

大きく舌打ちをしながらも、ストライクが撃ってくるビームを何とか回避する。

 

相変わらず恐ろしい位の射撃精度と反応速度だ、並のコーディネィターのそれを遥かに上回っている・・・!!

 

回避するだけでこれほどまでに身体に恐怖と快感が走り抜ける事も少ないだろう。

 

「お返しだっ!!」

 

機体を捻りながらも撃ったビームは、いとも容易く避けられてしまい、逆にこちらがバルカンの掃射を浴びせかけられる。

 

『相変わらず、巧いな!!』

 

「このっ・・・!押しといてよく言うぜ!!」

 

嫌な男だ、分かっていてからかっているのか?

 

だが、やられっぱなしも気に食わない。

 

持っていかれる事を承知でビーム突撃銃を持ち直し、ストライクのビームライフルを狙撃する。

 

それが功を奏したのか、ビームは狙い違わずストライクのビームライフルを貫き、爆散させた。

 

とは言え、こちらも新型のビーム突撃銃をバルカンで破壊されてしまった事には変わりはない。

 

『やってくれるよ、コートニー!!』

 

「それはこっちのセリフだっ!!」

 

まったくの同時にライフルを手放しながらも、ストライクは右背から対艦刀を抜刀、俺はザクの左肩に装備されているシールドからビームトマホークを取り出して構える。

 

小回りならこちらが勝るだろうが、あの一夏の事だ、そのぐらいのハンデなど物ともしないだろう。

 

「行くぞっ!!」

 

『おうっ!!』

 

まったくの同時に飛び出しながらも、俺はビームトマホークを振りかぶり、ストライクのボディを狙って振り下ろす。

 

だが、一夏はそれを見越していたのか、シールドで防ぎながらも受け流し、振り向き様に対艦刀を横薙ぎしてくる。

 

『やっぱこの程度、楽に避けるよな・・・!?』

 

「この野郎・・・!殺す気で掛かってるな!?」

 

何とか機体を沈める事で回避するが、ヘッドに掠った様な鈍い衝撃が襲い掛かってくる。

 

直ぐに体勢を持ち直し、トマホークを振るうが、ストライクは華麗に宙を舞い、あっさりと回避してしまう。

 

「なんて奴だ・・・!」

 

あまりにも正確で、あまりにも美しい動きに目を奪われてしまう。

 

人間業では無い様な動きの連続が、俺に衝撃を与え、そして心を昂ぶらせる。

 

良いぞ・・・!この心地良さ、戦いの中にいるというのにクスリを決めた様な心地にさせてくれる・・・!

 

「お前との戦いは、麻薬みたいなモノか・・・!!」

 

『人を薬物扱いしやがって・・・!まぁ、人の事は言えんか・・・!!』

 

軽口を叩き合いながらも、俺達は更にスロットルを上げて相手へと向かってゆく。

 

さぁ、もっと楽しもうじゃないか!この世の宴だ!!

 

sideout

 

noside

 

「こ、これほどまでとは・・・!」

 

試験監視艦の艦橋にて、そんな驚愕の声を発したのは誰であるか。

 

艦橋の内部は水を打ったかのように静まり返っていた。

 

目の前で繰り広げられる戦闘の激しさに、そして、その美しさに目を奪われてしまったのだろう。

 

誰もが瞬きする事すら忘れて光景に見入っていた。

 

「えぇ・・・、コートニーをこうも熱くさせるなんて・・・、織斑一夏、一体何者なの・・・?」

 

その声に答える様に、驚愕に憑りつかれたような声ながらも、ジャーナリストのベルナデット・ルルーは考えを巡らせていた。

 

ストライクの接近を告げられてから開始したデータ測定は良好に進んでおり、機動性や運動性にに関してはシミュレートした数値を上回っていると言って良いほどだった。

 

足りていない物と言えば、ブレイズウィザードのファイヤビーミサイルの威力と追従性能位な物で、取り立てて計測する必要はなかった。

 

だが、彼女にとって、今はそんな事など気にも留めていなかった。

 

視線の先には白亜の機体、ストライクがあり、彼女はそのパイロットの能力に驚嘆していた。

 

南米で見た時も、コートニーに匹敵する凄まじい戦士だとは思っていたが、今の動きはその時を軽く超越していた。

 

コートニーが手を抜いているせいでそう見えるのではない、むしろ、彼も好敵手の出現で普段以上にキレのある動きをしているのだ、ジャーナリストたるもの、その違いぐらい見抜けなければ仕事にならない。

 

だが、それを差し引いてもストライクの動きは異様としか形容できなかった。

 

「まさか、彼が、デュランダル議員が仰っていた、スーパーコーディネィターという存在なの・・・?」

 

そんな彼の動きに、彼女はかつてインタビューした一人の議員が話していた事を思い出した。

 

彼は遺伝子工学の出であり、今は閉鎖されたコロニーメンデルで人の遺伝子、取り分け、コーディネィターが抱える諸問題についての研究を主に行っていた人物であった。

 

何が彼をそうさせたのかは全く以て見当も付かないが、議員職に就いてからというもの様々な手段を用いて足場を固め、プラント国民だけでなく、穏健派、急進派問わず多くの議員達からも支持されるほどの地位を築いていた。

 

だが、特筆すべき点はそこではない、彼が語った内容だった。

 

コーディネィターは元来、ナチュラルの親が自身の子により良い能力を付与しようと生み出された存在だった。

 

ある者は運動に、またある者は芸術に、そしてまたある者は戦闘能力に秀でた者達が生み出された事は既に周知の事であった。

 

だが、彼は憶測ではあるがと付け足した後で、それら全てに秀でた最高のコーディネィターの存在があるかもしれないと語っていた。

 

そのコーディネィターの事を分かり易く言うなれば、スーパーコーディネィターと言うのだそうだ。

 

故に、目の前でエースクラスのコーディネィターですら出来そうにない動きを平然と行い、尚且つトップエースクラスの腕前を持つコートニーと渡り合う織斑一夏という男がそれに価する存在だと感じたのだろう。

 

「だとすれば、これは報告すべきなのかしら・・・?」

 

自分のもう一つの仕事を思い浮かべながらも、彼女は静かにコンソールを操作し、映像を録画し始めた。

 

自分がこれから仕える事になる、男の姿を思い浮かべながらも・・・。

 

sideout

 

side一夏

 

「ハロ!データはどうだ!?」

 

『チョーイイネ!サイコー!!』

 

何処かで聞いた事のある様なハロの電子音声を聞きながらも、俺は必死にストライクを操っていた。

 

コートニーの機体から繰り出されるトマホークの斬撃を何とか回避し、こっちからも攻撃するが、まるで暖簾に腕押しだ、当たる気配すら全くない。

 

半年前に見たザクと言う機体に良く似ている、と言う事は、こちらが正式採用型であり、量産前提の構造になっているんだろう。

 

「そう考えたら、この性能はおかしいよな・・・!!」

 

前のザクの性能に慣れきってたから何とかなってるが、こんなレベルの量産機がわんさか出てくると考えると堪ったもんじゃない。

 

現に、今こうやって互角に持ち込めてるのも必死扱いてストライクを限界まで酷使しているお陰だ、整備が悪かったらとっくの昔にオーバーヒートしてお陀仏ってレベルだ。

 

コートニーの経歴に泥を塗るのは些か忍びないが、生き残るためだ、それなりに頑張らせてもらおうか・・・!!

 

「ハロ!後の為にデータ録るぞ!ストライカーのリミッターを解除してくれ!!」

 

ハロに叫びつつも、俺は必死にOSの設定を片手で行う。

 

今回、この試作ストライカーには出力を安定させるためのリミッターが取り付けられている、そのため、それを外せば今以上の速度が手に入る事だけは確かだ。

 

無論、今のままでも並のエースが使う分には十分すぎる程の出力だが、相手はスーパーエース以上の実力を持つコートニーだ、手加減なんて出来やしない。

 

危険は伴って大いに結構、そうでもしなきゃ充分なデータなんて録れないからな・・・!!

 

『イイノカ?イイノカ?』

 

良いも悪いも無い・・・!今ここで覚悟決めておかねぇと、どの道通っても未来はねぇ。

 

「やれ!出力もレッドゾーンギリギリまで上げちまえ!!」

 

『リョウカイ!リョウカイ!!』

 

行くぜストライク・・・!俺達の力を見せてやろうぜ!!

 

『カイジョセイコウ!セイコウ!!』

 

「おっしゃ!行くぜ、コートニィィィィ!!」

 

『一夏ァァァァ!!』

 

スロットルを全開にし、一気に突っ込んで行くと、むこうもそれを察したか、トマホークを振り上げて突っ込んでくる。

 

唸りを上げる機体を操りながらも、俺は対艦刀を振るう。

 

間合いに入った瞬間、お互いにシールドでガードしながらも相手の体勢を押し崩そうとスラスターを吹かすが、全くの同時に行っている為に、ただ高速で動きながらも回っている様にしか見えない。

 

「うぉぉぉぉっ!!」

 

『うぁぁぁぁっ!!』

 

雄叫びを上げながらも、互いの得物を振るい続け、相手を打ち負かそうと更に己の中のギアを上げていく。

 

アドレナリンが何時もの何倍も出てるせいか、身体は激しく燃え盛っている様な熱を持っているというのに、頭の中はそれに反比例して冴えわたって行く。

 

この病み付きになりそうな感覚・・・!たまんねぇ・・・!!

 

「はぁぁっ!!」

 

強引に対艦刀を振り抜きながらも後退し、レールガンとビームキャノンを発射しようと展開する。

 

だが、コートニーはそれより早く背面のスラスターの様な物の上部を展開させ、無数のミサイルを発射してくる。

 

『これを喰らえ!!』

 

「くっ・・・!?ミサイルポッドだったのかよっ・・・!!」

 

まさかの装備だったが、今は驚いて止まっている場合ではない・・・!!

 

必死にスラスターを吹かして後退しながらも、レールガンとビームキャノン、そして、ウィングに装備されていたミサイルを全て発射して相手が撃ってきたミサイルを全て撃ち落す。

 

「どんなもんだっ・・・!?」

 

だが、爆煙で視界を塞がれた一瞬の隙を突くかのように、煙を切り裂いてトマホークを振り下ろすザクが現れた。

 

これを狙ってたのかっ・・・!!

 

そう思えども身体は反応して直ぐに回避行動をとらせる。

 

だが、流石に至近距離にまで迫ったモノを回避しきれず、身体を揺さぶる様な鈍い衝撃と共にストライクの左腕が根元から持って行かれてしまった。

 

『レフトアームハソン!ハソン!!』

 

「構わんっっ!!」

 

頭に響く様な衝撃を堪えながらも叫び、俺は残った右腕を横薙ぎした。

 

その一閃は、回避しようと動いていたザクの左足を切り飛ばし、大きく体制を崩させた。

 

『何をっ・・・!!』

 

「まだまだぁぁ!!」

 

互いに崩れた体制のまま、俺達は全くの同時に蹴りを放ち、相手の胴に叩き込んだ。

 

横殴りの衝撃に身体が揺さぶられ、体勢を立て直す暇も無く大きく吹っ飛ばされてしまう。

 

「ぐぅぅっ・・・!!」

 

『うぁぁっ・・・!!』

 

俺もコートニーも呻き声を上げ、中々動く事が出来ずにいた。

 

だけど、俺はまだまだ戦える・・・!

まだ俺もストライクも、そして、コートニーも折れてなんかないんだから・・・!!

 

だが、機体は持っていたとしても、付いて行けていないものが有ったらしい。

 

引っ切り無しに耳を劈く警告音の原因を探ろうと計器に目をやると、ストライカーに問題が発生している事が分かった。

 

どうやら、俺があまりにも無茶な加速方法を取った事と、リミッターを解除した事による出力に耐えきれなかったのだろう、ストライカーが悲鳴を上げていた。

 

「ウソだろ・・・!?まだ、途中だってのに・・・!!」

 

ストライク本体は今だ戦える位にチューンされていたが、俺専用とは言えど試作型のストライカーでは荷が重かったか・・・っ!

 

『俺の勝ちか・・・!?一夏っ!!』

 

まだ終わってないだろと言いたげなコートニーの言葉に、俺の中にある何かに再び火が燈る。

 

あぁ、まだ終わりなんかじゃねぇ・・・!

俺の炎は、まだ燃えているぅっ!!

 

「あぁ!まだ終わらんよっ!!」

 

ストライク本体のスラスターを吹かしながらもストライカーを排除、何故か取り入れられていた戦闘機形態へと変形させながらもザクへと突っ込ませる。

 

なるほど、この複雑な機構のせいで強度が落ちていたのか、これは帰ってからオミットする様に進言しないとな。

 

『なにっ!?戦闘機だとっ!?』

 

まさかこんなギミックが仕込まれているとは思いもしなかったのだろう、彼はザクを射線上から逃がそうとしていた。

 

「逃がすかっ!!」

 

だが、そうさせてやるほど俺も甘くない、すぐさま対艦刀をジャベリンの様に投擲し、ストライカーに直撃させる。

 

ビーム刃を発生させていたからか、ストライカーは推進剤に引火して盛大な爆発を引き起こす。

 

『しまった・・・!?ストライカーを囮にっ・・・!?』

 

「今だっ!!」

 

残った右腕にアーマーシュナイダーを持たせながらも、俺はストライクのスラスターを全開にし、ザクの懐へと飛び込む。

 

「これでっ・・・!終わりだっ!!」

 

『負けて堪るかぁぁぁ・・・っ!!』

 

突き出したナイフの切っ先はザクのモノアイを貫き、負けじと振り下ろされたトマホークはストライクの右足を切り落とした。

 

その直後、エネルギーが切れたのか、ストライクのPS装甲の色が落ち、ザクのビームトマホークのビーム刃が消えた。

 

「エネルギーレッドゾーン突入・・・、帰りのエネルギーしか残ってねぇや・・・。」

 

『あぁ・・・、折角楽しめていたのにな・・・。』

 

接触通信に切り替えながらも、俺達は全くの同時にヘルメットを脱ぎ、通信機越しの相手を見詰める。

 

男に対してここまでトキメキに近い感覚を覚えるなんて、俺はどうかしてると思う。

 

だけど、こんなに楽しいと思える事も少ないだろう、だからこそ、こうやってたまに会うだけで純粋に喜べるんだよな・・・。

 

「けど、良いデータが録れたよ、コートニーのお陰だ。」

 

『こちらこそ、ザクの評価試験には良すぎるデータだよ、破損状態からの修復のやり方も計れる、と言っても、辛口な評価を下されそうだけどな。』

 

それもそうか・・・、けど、仕方ない事だと分かってくれているだろう。

 

俺とコートニーは、何処かで似ているんだから・・・。

 

「そろそろ約束の時間だ、名残惜しいが、失礼させてもらうよ。」

 

『あぁ、またどこかで会えると良いな、戦場では無い、何処かで・・・。』

 

何時かは、戦場ではない何処か別の場所でゆっくりと酒でも酌み交わせれば、と・・・。

 

あぁ、そう言えば・・・。

 

「ハロ、データをコートニーに送ってやれ。」

 

『ガッテンデイ!!』

 

ハロに指示を出し、コートニーのザクに今回の戦闘で得られたストライカーのコピーデータを転送する。

 

特にリミッターを解除してからの数値だ、絶対に今後のMS開発の役に立つだろう。

 

『良いのか?企業秘密なんじゃないのか?』

 

「良いさ、これでザフトからの俺達への追及も誤魔化せる、それに、俺はお前の事を信頼している。」

 

それに、この程度なら流失したところで別に困りはしないからな。

 

だが、それ以上に俺は彼の事を信頼している、立場とかそんな事がどうでも良くなる程に・・・。

 

『・・・、分かった、このデータ、俺が責任を持って扱わせてもらう、それがお前に、親友に対する礼儀だ。』

 

「親友・・・?俺なんかが、か・・・?」

 

俺なんかを・・・、虐殺を繰り返すばっかりのロクデナシを、親友と呼んでくれるのか・・・?

 

その言葉を聞くのは何時以来だろうか・・・、俺にとっては、ある意味での救いにもなるから・・・。

 

「・・・、あぁ、親友だ、俺とお前は友達だ。」

 

『あぁ、また会おう。』

 

通信機越しに拳を合わせた後、ザクはストライクから離れ、母艦がある方向へと帰って行った。

 

「親友、か・・・。」

 

懐かしい感覚を抱きながらも、俺はイズモが待っている方角にストライクを向かわせる。

 

嘗て、俺が裏切った後もその言葉を使ってくれた男の事を思い出し、少しだけ胸が痛むのを自覚する。

 

こんな俺でも、受け入れてくれる人たちがいると言う事、それがこんなにも嬉しい事だったと今更ながら感じてしまった。

 

「もう少し、頑張ってみるか・・・。」

 

何時か、自分にも、過去の自分にも向き合える時が来る筈だから・・・。

 

訪れるかも分からない希望を、今は信じられるようになったから・・・。

 

sideout




次回予告

また会える時のため、また戦う時の為に、彼は進んで行く、たとえそれが絶望を深めるだけだとしても・・・。

次回機動戦士ガンダムSEEDASTRAY X INFINITY

進化の鼓動

お楽しみに
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