機動戦士ガンダムSEEDASTRAY X INFINITY 作:ichika
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ソキウス。
それはコロニー・メンデルで研究されていたグゥド・ヴェイアの遺伝子を基に、地球軍によって作られた戦闘用コーディネィターの総称である。
確認されているだけで、サーティーンまでのナンバーがあるが、それ以降のナンバーがあるかは不明であり、その中でも、C.E.72年末まで生き残っていると確認されているのはスリー、フォー、シックス、サーティーンのみである。
他のナンバー達は、その力を恐れた地球軍の手によって処分、若しくはそれを恐れて脱走したため、ほとんどのソキウスはこの世には存在していない事になっている。
そんな彼等の中でも、アメノミハシラに仕える三人のソキウスは薬物によって精神を破壊され、人形同然にサハク家と、その家臣達に諾々と従っているらしい。
そんな彼等の日常を、今回は追ってみたいと思う。
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side一夏
その日、俺達はA.G.R計画の進捗状況を確かめる会議のついでに、俺の部屋で酒盛りをしていた。
大酒呑みのガンダムパイロット五人が集まれば、それなりに話も色々飛び出してくるもので、最近の調子やら、アメノミハシラ構成員の事、それから、下の話も何でもござれと言うカオスな話し合いになっていた。
だが、全員がそれなりに飲酒している中での話だ、後々にその話の細かい内容なんざ覚えている訳がない。
そんな中で、誰がポツリと呟いたか、とある人物達の話になった瞬間、俺達は一気に酔いが醒めるような気がした。
「そう言えば、ソキウスって、普段何してるんだろう・・・?」
「何ってそりゃ・・・、あれ・・・?」
多分玲奈が口にしたんだろう疑問に、俺も同じ疑問が頭を擡げた。
そう、俺達はソキウス達が普段どんなことをしているのか、全く知らないのだ。
「そう言えば・・・、気付けば誰かの斜め後ろにいる事が多いですものね・・・。」
セシリアも何故そんな事に気付かなかったのかと言わんばかりに、ワインが入ったグラスを置いて考え込む様なしぐさを見せた。
彼女は一度、この城にやって来た当初、ソキウス達の虚ろな目に若干怯えていた節があり、正直あまり関わらない様にしていたのは見え見えだったが、最近ではなれてしまっただろうからそうでもないだろう。
「部屋も何処にあるか分からないし・・・、もしかして、まともな扱い受けてないんじゃぁ・・・。」
「まさかそんな・・・、ミナが許すはず無いさ・・・!」
シャルの震えた声に、宗吾は有り得ないとばかりに声を上げた。
アメノミハシラは厳格な労働規律があり、シフトもかなりの余裕を持って組まれている。
それに加え、事情がちゃんと把握できる者はナチュラルやコーディネィターの区別なく受け入れるという、まさにホワイトな職場であると言っても過言ではない。
そんな中で、ソキウス達だけが不当な扱いを受けているとは考えたくも無いし、自分達を拾ってくれた恩人がそんな事をしているとは考えたくも無いだろう。
「けど、確認しとかなきゃいけないのは確かだな、それに、知らないままってのも気味が悪い。」
俺も、部下の待遇には気を配らなければならない立場だ、疑問が出て来たのならば早急に調査、対応するのが人の上に立つ人間の仕事だろう。
「今から・・・、と言うよりも、次にソキウスを見かけたらなるべく気取られない様に付けるぞ、そして、生活状況の把握、そこからの事は情報が集まり次第決定する、良いな?」
「OK、ソキウス救済大作戦、ここに決行って訳ね!」
「そんな大層な事でしょうか・・・?」
玲奈の完全に酔っ払っている様な声に呆れているのか、セシリアは苦笑しながらもワインを呷った。
今日の所は、全員が酔っ払ってしまっている状況だ、正直言ってまともな内偵が出来る筈もない。
故に、諦めて疲れて眠るまで飲んで飲まれてしようかな・・・。
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side宗吾
翌日、と言うよりも目が覚めてからすぐ後、俺達はソキウス達の素行調査を開始した。
取り調べが目的ではないにしろ、仲間を調べてるんだ、正直言って気が滅入るよ。
という訳で、俺達ガンダムパイロット五人衆は絶賛張り込みの真っ最中でございます。
ちなみに、顔を出してる順は、一夏、俺、玲奈、セシリア、そしてシャルロットの順です。
誰に説明してるんだろうね、うん。
「気取られないようにしとけよ、顔に出てる。」
「マジか・・・。」
俺はそんなに分かり易い人間なんだろうか、一夏に指摘されて初めて自分が小難しい顔、若しくはくだらない事を考えてる時の顔をしていることに気付いた。
もしかして、俺って隠密に向いてない様な気もしてきたけど、今はそんな事はどうでもいいか。
俺がそんなどうでもいい事を考えていると、通路の向こうからソキウス達が三人そろってやって来るのが見えた。
「何時も三人組だよね、誰かに呼び出されない限りは。」
「ですわね。」
シャルロットとセシリアが俺の頭の二つ上で口々に話していた。
この二人、通路の先を良く見ようと身体を前かがみにさせてるんだけど、それの弊害が起こってる事に気付いてないんだろうなぁ・・・。
「巨乳なんて・・・、巨乳なんて・・・。」
俺の真上に居る玲奈が、何とも言えない表情で俺に圧し掛かって来ているのは気のせいではあるまい、胸囲の格差社会とは、今この瞬間にも精神を蝕むのだ。
「お、B-15ブロックに向かう通路に入るみたいだな、追おう。」
『了解。』
若干一名、眼に光が無いまま一夏の言葉に返し、俺達は壁に沿ってソキウス達の後を付けた。
ちなみに、B-15ブロックは普段からあまり人が来ない区画と言う事でアメノミハシラ内におけるサボり場や、ヤリ場になっている事で有名だ。
俺達はそういう趣味は無いから、ここら辺にはほとんど足を踏み入れたことが無い。
「もしかして、ソキウスって・・・。」
「シャラップ。」
玲奈が女の口から言っちゃいけない単語を言おうとするのを、シャルロットが言わせるものかと言った感じに言葉を被せて遮っていた。
流石に、その言葉聞いたら俺と一夏は即離脱しなければいけないからな。
そうこうしている内に、ソキウス達はB-15ブロックの奥まった場所にある、とある部屋へと入って行った。
あまり知られたくない事なのだろう、周囲を見渡して、かなり警戒してから入って行ったんだ、きっと何かあるに違いない。
入ってから暫くして、俺達はなるべく音を立てずに部屋の前にやって来た。
「こんな所で一体何を為されておいでなのでしょう・・・?」
「さぁな、俺達にさえ知られたくないヒミツか、或いは本当に低待遇か・・・。」
セシリアが何処か不安げに呟くのを尻目に、一夏は早速ハッキングを開始した。
どうやら、暗証番号を入れるタイプのオートロックドアだから、彼の手腕が必要になってくる。
「カードスキャナーもなければ、鍵穴も無いのね、これってある意味特注じゃない?」
「おいおい・・・、あからさまに扱いが違うじゃないか・・・。」
俺達の部屋の扉と完全な別物である事に気付き、より一層不安が掻き立てられる。
扱いが悪いなんて考えたくも無い、どうか、この嫌な予感が外れていてくれ・・・!!
「ロックの解除を確認・・・、自動では全部空いてしまうから手動で開ける、いいな・・・?」
祈る様な表情で、一夏は俺達に目配せした。
それに応える様に俺達も神妙な面持ちで頷き返した。
そして、一夏の手が扉に掛かり・・・。
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扉が僅かに開いた隙間を覗き込む様に、五人は再び上下に折り重なる様にして部屋の奥を覗き込んだ。
そこは眩いばかりの光に溢れており、彼等ですら目が慣れるまでに暫し時間を要する事となった。
いや、それだけではない、聞きなれない音楽も聞こえてくる。
「なんだ・・・?」
その音楽に顔を顰めながらも、一夏はその光の奥を見た。
そこには・・・。
決め顔しながらディスコミュージックにノッて踊るソキウス達がいた。
愉しいのか愉しくないのか、いつも通りの無表情のままで踊っているのだ、ある意味怖い。
「「「「「・・・、・・・。」」」」」
その光景を見た一夏達は、一様に某やきうゲームの主人公が見てはいけない物を見た時にする表情をしていた。
それもそうだろう、一見ノリノリに動いてはいるが、表情は普段のままなのだ、何度も言うが、何時ものままなのだ。
そんな彼等が妙にキレのいい動きでダンスを踊るのだ、想像すら出来なかっただろう。
「(えーっ!?アタシ等より広い部屋貰ってない!?)」
「(キレッキレだぁ・・・!?)」
自失から抜け出した玲奈は部屋の好待遇に驚愕し、シャルロットはダンスのキレの良さに驚いていた。
普段からそれなりに良い動きを見せるソキウス達だが、ここまで軽快な動きを見せられるとある意味で戦慄すら覚えてしまうのが道理と言う物だろう。
「(わ、私は夢でも見ているのでしょうか・・・!?)」
「(セシリア・・・、俺ら疲れてるんだよ・・・、きっと・・・。)」
自分の頬を何度もペチぺチと叩くセシリアとは対照的に、一夏は現実逃避でもしているかの様にハイライトから光が消えていた。
目の前で繰り広げられる訳のわからない光景を、彼自身受け入れたくないのだ。
「(明日からどういう顔して会えばいいんだろう・・・、というか、アイツ等絶対に精神壊れてないだろ・・・。)」
そして、宗吾は彼等と次に会った時にどのような顔をして会えばいいかを考え、頭を抱えていた。
そして、もうなかった事にしたいのか、彼はそっと扉を閉めようとした、まさにその時だった。
突如内部から手が伸び、扉を掴んでゆっくりと開けて行く。
「見たな・・・?」
頭上から降り注いだ抑揚のない声に、まさかと言わんばかりの表情で顔を上げた一夏達の眼前には、眼を限界まで見開いたソキウス達の顔が在った。
女性が羨む白い肌も、男性にしては少し高い声も、そして、中性的で整った容姿も、今の彼等にとってはただ恐怖の対象でしかなかった。
「「「「「ウワァァァァァァァァァァア!!!?」」」」」
歴戦の猛者である彼等ですら、この状況では腰を抜かして、恐怖に憑りつかれた某ダディの様な絶叫をするしか出来なかった。
そんな彼等の哀れな叫びが、アメノミハシラ中に聞こえたとか、聞こえなかったとか・・・。
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side玲奈
一通り絶叫した後、アタシ等はどういう訳かソキウス達の部屋に招かれた。
脅迫でもされるのかと内心凄い不安だけど、ソキウス達が何を考えてるのか分からないからどう切り抜けるかも考え付かない。
そんな事を思いながらも、アタシは無意識の内に部屋の中を見渡していた。
ディスコを踊るためのちょっとしたステージやビリヤードの台、それに加えてダーツ台やバーカウンターなども揃ってる。
娯楽室か何かと思えるような場所だけど、アメノミハシラ構成員全員が使えるラウンジはこことは違う場所に用意されてるし、何より、ここみたいな型落ち品が集まっている様な場所なんかじゃない。
「皆様は、何故こちらへ・・・?」
そんな事を考えてた時だった、フォーソキウスがアタシ等に何故ここに来たのかを聞いてきた。
あまり知られたくなかった事なんでしょうね、ほんの少しだけどやってしまったという色が見え隠れしてるし。
「お前達がどういう扱いを受けてるか知りたかっただけだ、俺の部下の扱いは、俺がしっかりと把握して良い質を提供してやらなけりゃいけないだろう。」
彼等の目を、背ける事無くしっかりと見据えながらも一夏は言葉を紡いだ。
彼らしい、不器用だけど包み隠さない言い方は、ある意味で交換が持てるけど、今のタイミングで言って良いのかしら・・・?
「一夏様・・・。」
そんな彼を、ソキウスは何処か驚いた様な目で見ていた。
まさか、彼等も自分たち自身の事を案じてくれているとは考えもしなかったのかしら?
一夏がそんな薄情者な訳無いじゃない、なんせ、最初は敵だったアタシと宗吾すら、転生者だから捨て置けないって理由で、ロンド・ミナに頭を下げてまでして助けてくれたんだから。
「こんな隅っこなんかに居ないで俺達のところに来いよ、俺達は仲間だ、何も遠慮する事なんて無いんだよ。」
「そうだよ、ソキウス達がいないと、みんな心配しちゃうから!」
「えぇ、私達が保証しますわ。」
ホント、一夏もシャルロットも、それにセシリアも御人好しよね。
ここまで親身になってくれたら、折れない訳にはいかないわよね。
「我々が・・・。」
「皆様と共に・・・?」
「よろしいのですか・・・?」
今迄、ギナからは散々人形扱いを受けてきた彼等はまだ、アタシ等の言葉を信じられなさそうだった。
それは仕方ないけど、これ以上、彼等が苦しむままなんて嫌なのよ。
「断る理由なんてないさ、俺達は同じ方向を向いてる仲間だ。」
「仲間なら、お楽しみぐらい一緒に過ごさなくちゃでしょ?硬い事言わないで、アタシ等と来なさいよ。」
だから、アタシと宗吾も手を伸ばす、掴める相手の手を、放したくなんてないから。
「・・・。」
どれぐらい沈黙が続いた事だろうか、ソキウス達は互いの顔を見合わせ、アタシ等の顔を見た。
「ありがとう・・・、ございます・・・。」
「気にすんなって、何かあれば、俺達がお前達を救ってみせる。」
頭を垂れるフォーソキウスに、一夏は右腕を差し出して握手していた。
彼なりの心遣いなんでしょうね、そうやって人と繋がって行く事をモットーにでもしているのかしら。
でもま、これで一件落着でしょうから、これから先の事を考えましょうか。
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sideセシリア
「がぁぁ・・・!?また負けたっ!!」」
「うっそ・・・、これで何連敗よ・・・。」
あの日から数日の後、レクリエーションルームに宗吾さんと玲奈さんの恨めしげな声が響きました。
「八連敗・・・、だよね・・・?」
シャルさん・・・、それを言わないでくださいな・・・。
私達の手元にあるモノは、トランプのカード。
そう、たった今、私達はポーカーの勝負をしている最中でした。
つまり、先程の勝負は宗吾さん達のボロ負けでした・・・。
無論、私達と戦っている訳ではありません、御二人のお相手は・・・。
「宗吾様・・・、玲奈様・・・、そろそろ掛け金が無くなりますが・・・。」
「せめて一回勝つまではやらせてくれよ・・・!」
サーティーンソキウスさんの言葉に、宗吾さんはそこを何とかと言わんばかりの調子でもう一戦と言う様に勝負を頼まれておいででした。
ですが、勝てる見込みは少ないでしょう、何せ、彼等は完全なポーカーフェイスですもの・・・。
「読めない・・・、考えが読めない・・・、勝てない・・・。」
玲奈さんがテーブルに突っ伏していらっしゃいました。
数回戦って、一回も勝てないんですもの・・・。
「一夏様・・・?」
そういえば、先程から一夏様が妙に静かなような気がしますが、どうかされたのでしょうか・・・?
「ここはこうするのか・・・?」
「はい、バックスピンはこう掛けて下さい。」
別の場所で、シックスソキウスさんとフォーソキウスさんにビリヤードを教わっておられました。
どうやら、かねてより不得手であったビリヤードを自分のモノにしておきたいがために、こういったゲームが御得意なソキウスさん達に師事されておられるのでしょう。
「僕も近くで見とこっと。」
「あ、でしたら私も。」
シャルさんがビリヤード台の方へ行かれるので、私もそれに着いてゆく事にしました。
今は取り込み中なのでしょう、一夏様は真剣そのものと言う様に姿勢を低くし、玉の軌道を読もうとされておいででした。
「ふっ・・・!!」
息詰まる瞬間、一夏様は白いボールを突き、次々とボールを穴に落として行かれました。
「・・・、どう・・・?」
「順番が違いましたね、番号順ではないといけません。」
「またか・・・、俺、プレッシャーに弱かったっけ・・・?」
ソキウスさんの御言葉に、一夏様はガックリと肩を落とされておられました。
「お気を落とさないでくださいな、何事も数を重ねませんと・・・。」
「そうそう、何度だって挑戦あるのみだよ、ね?」
私とシャルさんは、一夏様の背中をさすりながらも励ましてみます。
旦那様にこういった事は逆高価な気もしますが、少しは良い気紛れにはなるでしょう。
「ははは・・・、せめて、ちゃんと出来る様にはなりたいけどな。」
一夏様は乾いた笑いを浮かべながらも、一夏様はまた台に向かってしまいました。
ソキウスさん達も、一夏様の手元を見る様に台へと向かわれました。
「ねぇ、セシリア、ソキウス達も変わったね。」
そんな時でした、シャルさんが私に耳打ちしてこられました。
「えぇ、私もそう思いましたわ、以前よりも表情が柔らかくなられましたもの。」
見る人が見れば分かる程度でしょうが、ソキウスさん達の目に、僅かな光も見える様にもなっておられます。
あの日、私達が尋ねた事は間違いではなかった、そういう事なのでしょう。
「一夏様なら、きっと、彼等に光を齎せるでしょう。」
何時か、私達に光を見せてくれた時の様に・・・。
あの時の様な人格に戻られた、今の一夏様ならきっと・・・。
私達と初めて出会った頃の、優しい一夏様なら・・・。
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次回予告
影の者、行く道は違えど、その生きざまを示せるならば・・・。
次回機動戦士ガンダムSEEDASTRAY X INFINITY
影の者
お楽しみに。