機動戦士ガンダムSEEDASTRAY X INFINITY 作:ichika
side一夏
憂鬱だ・・・、どうしてこんな事になるのか・・・。
地球のとある場所で、俺は周りにいる人間に気付かれない様に小さく溜め息を吐く。
今、俺はとある国のとある応接間にて、俺は今回の仕事の要となる人物との接触を図ろうとしていた。
あぁ、本当に億劫だ、出来ればこの国の中枢とは極力関わりたくない。
この国には色々と厄介な爆弾や地雷がゴロゴロと転がっていて、下手すりゃそれがアメノミハシラにまで飛び火する、本当に厄介だ・・・。
だが、今回は親友の頼みだ、少しでも無茶しないとやってられないからな。
そんな事を考えながらも、壁の模様を目で眺めながら待つ事数十分、漸く扉が開き、SPに囲まれた一組の男女が応接間に現れた。
「おぉ!アメノミハシラから遠路遥々お越しいただき、感謝する、織斑卿!」
その内の、薄い紫の髪を持った男がへらへらとした笑みを浮かべながらも、俺の方に握手を求めてやってくる。
「ご多忙の中、お時間を下さり誠にありがとうございます、ユウナ・ロマ。」
指紋を残さない為に付けていた手袋を外し、俺は男、オーブの軍事官僚であるユウナ・ロマ・セイランと握手する。
俺とそんなに歳も変わらんと言うのに、ボンボンの顔してやがる・・・、こんなやつが国の中枢にいて良いのか・・・?
ま、他人様のお家事情なんて知ったこっちゃない、俺が考えるのは俺の家の事情だけで良い。
「あまり時間が取れずに済まない、私がオーブ首長国連合代表首長、カガリ・ユラ・アスハだ、よろしく頼む。」
ユウナ・ロマとの握手を解くと、何処か影のある笑みを浮かべた少女、カガリ・ユラ・アスハが握手を求めて手を伸ばしてきた。
勿論、それを拒む理由も無い、それに、最初は外面良くしてりゃ、話も進みやすいだろうしな。
「いえ、私どもの為にお時間を設けて下さって光栄です、私は織斑一夏と申します、御見知りおきを。」
彼女とも握手を交わし、俺は促されて着席する。
さて、もうここがどこだかお分かりだろう。
そう、ここはオーブ本島の行政府の一室なのだ・・・。
sideout
noside
時は遡る事半月前、宗吾が助けたケナフ・ルキーニによって齎されたとある依頼から始まった。
「プラントの人間から、映像メール・・・?俺にか?」
「御大将に直接渡せと依頼されたからな。」
「そうか、ありがとうルキーニ。」
ルキーニから手渡されたビデオメールのメモリーを掌で弄びながらも、一夏はこれをどうするべきか考えていた。
自分の正体が何故プラントに知れてしまったのか、それに合点が行かなかった。
確かに、自分は何度かザフトと交戦しているし、何度も親友と刃を交えて来た身だが、それ故の情報管理もキッチリ熟していた筈だ。
仮に、自分の素性を親友が勘付いていたとしても、彼はそこまで思慮が浅い人物では無いため、プラントの上部にまで情報は行かないだろう。
そして、もし自分の事をプラントの上部が知っていても、こうやってわざわざビデオメールを寄越すはずが無い。
「どうしたもんか・・・、なぁ、ミナ・・・。」
「そなたが決めると良い、私はそなたを尊重したい故にな。」
「そりゃどうも・・・。」
ミナは彼がどうするかが気になっているのだろう、判断の全てを委ねる積りでいるのだろうが、少しは気にしてくれと言わんばかりに彼は乾いた笑いを零した。
「じゃあ、一緒に見てくれ、それからどうするかは俺が決める。」
「うむ、それならば良かろう。」
内容を確認する事だけはやってくれと言いたげな一夏の懇願に折れたか、ミナは仕方ないと言わんばかりの苦笑を浮かべて席に腰を下ろした。
一夏は慣れた手付きで機材を弄り、メモリーに入った映像を再生した。
『・・・、これで映っているか・・・?』
映像には何処かの部屋と、この映像を撮っているカメラを弄る男性がいた。
暫くゴソゴソとカメラを弄っていたが、しっかり撮れている事を確認し、椅子に腰掛けてレンズを見据えた。
『拝啓織斑一夏卿、プラント兵器開発局所属のコートニー・ヒエロニムスだ、このような形で便りを送る事を許して欲しい。』
「コートニー・・・!」
その送り主に合点が行った一夏は、席を蹴飛ばす様に立ち上がった。
そう、その送り主は彼の親友であり、幾度となく刃を交えたライバルだったのだ。
『今お前がどこにいるかは敢えて聞かないが、出来れば俺に力を貸して欲しい。』
彼の困惑と歓喜を知らずに、画面の向こうのコートニーは話を続ける。
『これは極秘事項なんだが、今度新型のMSのテストを地球のカーペンタリアで行う事になった、だが、カーペンタリア周辺だけでは正確なデータが録れないと上層部から指摘があった。』
「つまり、場所を提供してほしいってか・・・?」
コートニーの説明から、何かを感じ取ったのだろう、一夏はその先の説明を予測するように呟いた。
『察しの良いお前なら分かるだろうが、オーブのオノゴロ島とカーペンタリアを試験の間だけ行き来出来る様に協力してもらえないだろうか?もちろん、協力の報酬は俺がキッチリ用意させてもらう、オーブ本国にも、お前にも渡るように・・・。』
「コートニーの奴・・・、俺の立場気付いてやがるな・・・?」
協力させる気満々なコートニーの説明を聞きながらも、彼は苦笑しつつ後頭部を掻いた。
別段、協力しても良いのだが、オーブ本国は彼にとってあまり良い印象が無いために関わりたくないのだろう。
無論、報酬と言う言葉を聞き逃さなかったわけだが・・・。
『本来なら、こんな事を頼むのは筋じゃないと分かってる・・・、だが、お前と一度顔を合わせてみたい、それが、お前の友としての俺の気持ちだ・・・。』
「コートニー・・・。」
『ちゃんと会って、酒でも飲みながら話そう・・・、良い返事を期待している。』
本心を真っ直ぐ伝えられた一夏は、一瞬目頭が熱くなるような感覚を感じる。
その雫が零れる事は無かったが、それでも、感激しているのだと分かっていた・・・。
カメラの映像が途切れると同時に、一機のMSの設計図が代わりに表示される。
しかも可変機らしく、航空機の様な設計図も共に表示されていく。
「この機体が・・・、テスト機・・・!?」
「ほう・・・、先払いにしては、とんでもない物を寄越してくれるな・・・。」
まさか設計図を送ってくるとは思わなかったのだろう、ミナですら驚愕に目を見開いていた。
そして、連絡先の番号も同時に流れており、彼の連絡を心待ちにしている事が窺える。
「親友にここまでさせておいて、行かねば男が廃るぞ?」
「分かってるよ・・・、コートニーの頼みなら断る訳無いしな。」
からかう様な視線を向けるミナに返しつつ、彼は早速段取りを考えるべく動き出す。
「俺は試験期間含めて数週間ほどここを空けてオーブに降りる、その間にイージスとバスター、それからストライクにこの機体のデータを反映させる様に言っといてくれ。」
「よかろう、私がそなたの代理で現場で指揮させてもらうとしよう。」
もはや相手が何をして何を欲するのかを理解しているからだろうか、二人は矢継ぎ早に指示と確認を繰り返す。
そこには、目に見えずとも確かに存在する強い信頼があった。
「あぁ、それと、オーブと交渉する時の手札として、俺にアメノミハシラとしての階級をくれ。」
「なるほど、相手に揺さぶりを掛ける、か?ならば、軍部元帥とでも名乗ると良い、そなたほどの男が一介のパイロットに収まるなど言語道断である故にな。」
「よりによってそんな大層な役職くれんのかよ・・・、やり難い事この上ないぞ・・・。」
役職を与えられたら与えられたで面倒なのだろうか、一夏は何処か苦笑しながらも手帳に段取りを書き記し、早速作業に取り掛かる。
その先に待つ、友との邂逅に期待しながらも・・・。
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side一夏
そんな事があって早半月だ、手札はなるべく増やして来たし、ゴマ擂りや脅しの文句も考えてきている。
まぁ、ユウナ・ロマを納得させるのは簡単だろうが、理解したうえで首を縦に振らないのが横にいるカガリ・ユラ・アスハという女だ。
ミナに聞く限りじゃ、どうもウズミ前代表が掲げた理念に固執しすぎている節があるそうだ、そこを突けば簡単に崩せるか・・・、それとも更に意固地になるか・・・。
「本日はわざわざお時間をいただき、重ねて感謝申し上げます、アスハ代表、ユウナ・ロマ、改めて自己紹介を、私はアメノミハシラ総帥、ロンド・ミナ・サハク配下の軍部元帥、織斑一夏であります。」
「アメノミハシラからの通達も届いている、楽にしてくれ、織斑卿。」
「はっ!」
軽い役職自己紹介をするが、彼女の表情にはあまり動揺は見られない。
その代わり、ユウナ・ロマの表情には軽い驚愕と期待の色が浮かんでいたが・・・。
なるほど、さすがはヤキンの大戦を生き抜いただけはある、が、まだまだ若い。
なんせ、動揺は見えなくとも、憤りは見えるんだからな。
サハク家は前当首がアスハ家を公然と批判していた立場であり、ギナに到っては目の前にいる女を殺そうとした事もあるのだ、悪い印象や黒い策略を抱えてると取られても仕方ないわな。
だが、そこで使うのが隣にいるセイランの坊ちゃんだ、彼は割と、タカ派らしいし、カガリを誰よりも欲しているという情報も不確定ながら入って来ている。
まぁ、首長を懐柔できたならば、実権は自分達にある様なもんだしな、そりゃ策を弄するってなもんだ。
なので、俺はその感情に付け入るとしよう、昔みたいなやり方でな・・・?
「あまり手間取らせはしません、今日は一つ頼みごとを聞き届けてもらいたく存じます。」
「頼み・・・?ロンド・ミナ様からの通達か?」
俺の言葉に食いついたのは、目論見通りユウナ・ロマだった。
ここまでは予想通り、後はこちらの腕次第か・・・?
「いえ、これは私が懇意にしております、プラントの技術者からの頼みでもあります、まぁ、簡潔に申し上げますと、MSのテストに協力してほしい、そういう事です。」
「なっ・・・!?」
俺の言葉を聞いたカガリ・ユラは、テーブルを殴らんばかりの勢いで手を突き、俺を睨み付けた。
よし、この反応を引き出せたらこっちのペースだ、俺が遅れを取る筈もない。
ユウナ・ロマは国力強化のためならこういう事には目敏い筈だ、うまく味方につければ上々だ。
「ザフトに協力しろと言うのか!?断る!オーブは中立を貫く国だ!」
「まぁまぁ、カガリ、卿の話を最後まで聞こうじゃないか、断るのはそれからでも遅くはない、すまないな、織斑卿。」
激昂する小娘を宥める様に、ユウナ・ロマは薄い笑みをそのにやけた顔に張り付けて俺に声をかける。
目論見通りだ、これで畳み掛ければ勝てる。
「いえ、お気になさらないでください、アスハ代表には少々、難しいお話だと思っておりましたので。」
お前に政治は向かないという嫌味をたっぷり込めて、俺は彼に倣って取り繕った笑みを浮かべる。
所詮、オーブは俺達にとって母国じゃないし、それと言った思い入れも無い。
俺が情を入れ込むのは、それこそアメノミハシラや命の恩人達以外にない。
だからこそ、多少脅迫してでも有利に話を進めるとしよう。
「協力と言いましても、空路を開ける程度の物です、オノゴロの滑走路を一つ解放して、ザフトのカーペンタリアとの間を飛行するだけです、それ以上の事はさせないと、向こうは約束してくれました。」
「ほう・・・、それで、我が国へのメリットは?」
相変わらず納得できないといったカガリを差し置いて、ユウナ・ロマは興味深げに尋ねてくる。
どうやら、思った以上に協力する内容が少なかった事が幸いしたな。
ルキーニ曰く、彼は連合を牛耳るロゴスのロード・ジブリールと面識があるらしいし、不用意にザフト色を出すと断られていたかもしれん。
「新型可変MSのデータと、その試験データを提供してくれるそうです、その場には私も立ち会いす故、反故にする事は無いでしょう。」
オーブも可変機を試作している段階だとエリカ主任から聞いておいて助かった。
何せ、ただの新型MSと言うよりも、新型の可変MSと言っておけばそれだけ話が上手く進んでくれるしな。
「なるほど、それはオーブにとっても良い話だ、僕らオーブも力を着けねばならないからね。」
一々ねっとりとした喋り方だこって・・・、ま、気にする事じゃないか。だが、軍備強化を狙っているこの男との利害関係は一致している、もう2手踏み込めば勝てる。
「待てっ!強すぎる力は争いを呼ぶっ!お前だって分かっているだろう!?」
カガリはその事を理解してなお、俺に食いついてくるようだ。
伊達に前大戦を生き抜いたわけじゃなさそうだ、誰よりも武力の恐ろしさを知っていると見た。
だが、それ故にその力の使い方を一つと規定してしまっている。
昔の俺のように、力=破壊と思い込んでいるが故に、柔軟性を見失っている。
そんなんじゃ、施政者には向かん、所詮は器ではないという事か・・・。
「いいえ、護るために、想いを遂げるために力が必要なのです、オーブの理念を護る事も、民を護る事にも力がいるのではありませんか?」
結局力の使い方なんて、兵器の使い道なんてそれを使う人間が決める事だ。
何かを護るために力を振るえるならば、俺はどんな強力な力でも最善の使い道を探すだけだ。
それを怠る人間は、決まって力を悪と断じてしまう、故に進歩しないんだよ。
「そっ、そうだよカガリ!こんなチャンス滅多にないじゃないか!それに、ザフトへの顔向けも出来る!何にも悪い事なんて無いじゃないか!!」
畳み掛けるべくして語気を強めた俺に便乗するように、ユウナはカガリをまくし立てる。
どうやら、俺を利用して上手く立ち回りたいらしいが、アンタも俺の掌の上さ、せいぜい、額面上で思惑通りに進むのを見ていればいいさ。
「・・・っ!だが、それでは・・・ッ!」
「では貴女は、自分の親が作った理想の為に国民に死ねと仰るのですね?」
「・・・ッ!!」
言葉に詰まり、漸く絞り出した言葉をあっさりと封殺され、更に自分の理念の犠牲になる対象を上げられれば最早ぐうの音も出ないのだろう、小娘は愕然とした表情で固まった。
信じている理念の犠牲になるのは自分ではない、自分の国の民だという事を突き付けられ、思考が回らないのだろう。
「御父上を敬い、理念を護りたいという貴女のお気持ちも分かります、ですが、民は貴女の為に税金を払ってる訳じゃ無い、それをお忘れなく。」
国民の事を考えられん政治家は要らん、そんな奴は只の金食い虫だ、軍備縮小を謳う前にそっちを粛清してほしいもんだ。
俺も戦争はしたくないが、一つの手段としてある程度力が無くちゃな、護るためにも、生きるためにも・・・。
コイツはまだまだ、政治家としても人間としても三流だ、二流の俺にここまで一方的に責められるんだからな・・・。
だから、今の内にアメノミハシラには勝てないという印象を植え付けさせてもらうとしよう。
さぁ、チェックメイトだ・・・。
「国を護るために、今はザフトの開発に協力して技術を手に入れましょう、それでよろしいですね?ユウナ・ロマ?」
「も、勿論だとも!許可させてもらうよぉ!いやぁ!とてもありがたい話だったよ!!」
お前では話にならないという意味も込めて、俺は決定を促す言葉をカガリでは無くユウナに投げた。
俺の言葉の意図が、貴方こそ真のオーブの指導者だ、とでも受け取ったのだろうか、彼は表情を輝かせながらも承諾していた。
ボードがどうなっているのかも分からないのに、よくもまぁそんな事を考えられるもんだ。
大将首を討ち取ったと言わんばかりだったが、それを手に入れたのは俺なんだよなぁ・・・。
それに気付かないまま、彼は俺に握手を求めて立ち上がる。
受けなければ交渉は成立しないしな、ここは仮面の笑みを貼り付けて握手を交わしておく。
「では、一週間後の明朝より、オノゴロの滑走路を使用させて頂きます、ザフトには私が伝えましょう。」
「あぁ、頼んだよ織斑卿!いやぁ、素晴らしい!!」
まったく・・・、コイツはどうして扱いやすいのか・・・、まぁ、これで親友に恩返し位は出来るか。
「では、私はこれで失礼致します、本日はありがとうございました。」
俺は今だ打ちひしがれるカガリ・ユラと、してやったりと言わんばかりのユウナ・ロマに頭を下げ、部屋を辞した。
もう少し、難しいと思ったんだがなぁ・・・、俺の杞憂に終わったな。
だが、これで良い、これ以上この国に居ては俺も面倒に巻き込まれる。
さっさとカーペンタリアにトンズラさせてもらおう。
そんな事を考えながらも、俺はさっさと行政府を後にした・・・。
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『ってな訳で、また半月ぐらい帰れねぇわ、バスターとストライクのブラッシュアップを頼んどいてもいいか?』
アメノミハシラ総帥、ロンド・ミナ・サハクの自室に備えられていたスクリーンに、飛行艇で移動中の一夏からの通信が映し出されていた。
どうやら、途中経過と帰還時期についての報告なのだろう、少しウンザリした様子が見て取れた。
「うむ、委細承知した、私がそなたの代わりとなる契りを交わしたのだ、そなたはそなたのすべき事を完遂せよ。」
その部屋には、ロンド・ミナ以外にも、セシリアやシャルロット、そして宗吾と玲奈といったアメノミハシラ大幹部が集結し、彼の話に耳を傾けていた。
だが、彼の妻であるセシリアとシャルロットは、何処か不満げに画面を睨みつけていた。
どうやら、彼からはすぐに戻るとだけ言われていたのだろう、ある意味で裏切られたと言った表情だった。
『了解っと、宗吾、玲奈、セシリアとシャルの面倒見といてくれ、帰ってきたら謝るからさ。』
「おい、さらっとアタシらを巻き込むんじゃないわよ、今ここで謝んなさい。」
無茶振りをされた玲奈は頭痛でもするのか米神を抑えながらも呟き、宗吾は腹を抑えて苦笑していた。
『ここで弱み見せたら着いてきそうだしな、あえて何も言わんよ、じゃあな。』
これ以上話したら色々と面倒と言う様に、彼はさっさと通信を切った。
そこで会合は終わりなのだが、部屋の雰囲気は先程以上に重たい。
「・・・、これは、少々お灸を据える必要がありそうですわねぇ・・・。」
「ふふふ・・・、僕達より男を優先するんだもんねぇ・・・。」
そんな空気を作り出しているセシリアとシャルロットは、ハイライトから少し光が消えた瞳をしながらも薄気味悪い笑みを浮かべていた。
ナチュラルでありながら非常に容姿レベルの高い彼女達がニタァと笑うのだから余計に不気味だ。
「ま、まぁまぁ二人とも・・・、今回は一夏が単独で当たらないと顔が立てられないんだし、な・・・?」
そんな彼女達を宥めようと、宗吾は冷や汗を流しながらも制止の声を掛けていた。
今回の依頼は一夏に向けて寄せられたものであるし、他の人間が無暗に関わる訳にはいかない。
そのために、アメノミハシラの他の幹部や人間を連れて行けば余計な波風が立つ事は予想される事であり、彼の立場を悪くするような行動は慎んでしかるべきだ。
それは無論、彼女達も承知の上ではある。
だが・・・。
「『ちょっと行ってくる』と言って、何週間も帰ってこない人がなにを仰るのかっ・・・!!」
「今初めて依頼の話を聞いたよっ!!」
セシリアとシャルロットが怒る理由、それは訳も告げずにさっさと行ってしまった夫に怒り心頭の様だ。
どうやら、テストには参加できずとも連れて行く事ぐらいはしてほしかったのだろう。
そんな彼女達の本音を聞いた宗吾達は、呆れた表情をしながらもタメ息を吐いていた。
一夏の愛妻家ぶりも大概だが、それに輪を掛けてセシリアとシャルロットの独占欲は強かったのだから・・・。
「こうしちゃいられない・・・!すぐにオーブに降りよう!」
「いや、待ちなさいって、バスターの最終調整終わらせてからにしなさいよ、あと三日で終わるんだから・・・。」
すぐにでも旅支度を始めようとするシャルロットを宥めながらも、玲奈は必死にアメノミハシラに残るように進言した。
バスターの改修がもう間もなく終了し、慣熟試験も行える前段階に来ているのだ、そんな重要な時期に留守にされては堪った物ではないのだろう。
それに、玲奈のイージスも、ザフトよりもたらされたあるMSのデータが大いなるヒントとなったため、既に新造段階に入っており、アップデートも一夏のテスト終わりを待つのみとなっている。
そのため、いざという時に出せる戦力を減らしたくはないのだろう。
「でしたら、すぐに終わらせて参りましょう!男なんかに寝取られる訳にはっ・・・!!」
「いや・・・、それは大丈夫だろぉ・・・。」
最早聞く耳持たんと言わんばかりにフルスロットルなセシリアのテンションに呆れ、宗吾は現実逃避をする様に遠くを見ていた。
何処へでも好きに行ってしまえ、けど俺に迷惑はかけるなと言わんばかりの想いが浮かんでいた。
「行きましょう、シャルさん!」
「勿論だよっ!!」
夫への憤りMAXのまま、彼女達は部屋を飛び出し何処かへ行ってしまった・・・。
「・・・、ミナ、アタシ等泣いていいわよね・・・?」
そんな彼女達を見送った玲奈は、頭を抱える宗吾の背中をさすりながらもミナに問いかけた。
その眼は、涙の雫で少々潤んでいた。
「そうだな・・・。」
そんな彼女を哀れに思ったのか、ミナも苦笑して二人をあやす様に抱き締めた。
せめて、心労が軽くなればとでも言うように・・・。
だが、彼等は知らなかった。
セシリアとシャルロットに訪れる、新たな運命に・・・。
sideout
次回予告
重力の底で再び邂逅する一夏とコートニー、彼等の出会いが、新たなアストレイを刻んでゆく。
次回機動戦士ガンダムSEEDASTRAY X INFINITY
大空を駆ける 後編
お楽しみに