機動戦士ガンダムSEEDASTRAY X INFINITY   作:ichika

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第三章最終話




noside

 

一悶着終えた七人は、そのままの脚で夜の海岸に歩いて出ていた。

 

どうやら、バーで飲むには少々騒がしくなる人数でもあったため、人目に付きにくい場所を選んだのだろう。

 

「灯りは・・・、こんなもんかな?」

 

「そうだな、というか、ランタンなんて良く持って来てたな・・・。」

 

「車に積んであったのよ、ささ、座って座って。」

 

手際良く席を整える宗吾と玲奈に、一夏はタメ息を吐きながらも尋ねる。

だが、答える気が無いのか、分かってるでしょとでも言いたいのか、玲奈は上手くはぐらかし、全員を円状に座らせ、自分は宗吾とシャルロットの間に座った。

 

宗吾の隣にはコートニーが、その隣にはリーカがいるという座席になっており、どうやら親睦を深める為の位置の様だ。

 

そして、セシリアとシャルロットに注がせておいた酒を全員に配ってゆく。

 

「じゃあ、全員グラス持って、一夏元帥、乾杯の音頭取ってよ?」

 

「げ、元帥・・・!?」

 

玲奈の発言に、リーカは驚いた様に素っ頓狂な声を上げた。

 

自分より遥かに階級の高い人物がいるとは思わなかったのだろう、その表情は一瞬にして更に固さを増していた。

 

「・・・、身内人事だから気にするな・・・、それに、酒の席じゃ関係ないさ。」

 

「は、はぁ・・・。」

 

呆れた様にリーカを宥める一夏だったが、それでもまだ緊張気味なリーカは生返事しか出来なかった。

 

どうやら、一夏に対してコートニーを横取りする悪いヤツ的なイメージを抱いてしまっているのだろう・・・。

 

「ま、良いさ、まずはこの七人の出会いを祝して、乾杯っ!」

 

『乾杯っ!!」

 

「か、乾杯・・・!」

 

その緊張を祓う為に、一夏は敢えて大袈裟に声を上げ、それに合わせてアメノミハシラの四人とコートニーが勇んで応じ、リーカも遅れて乾杯する。

 

各々が他のメンバーとグラスを合わせ、一気飲みが如くグラスに入った酒を飲み干していく。

 

「くぅ~!外で呑む酒は違うわね~!ささっ、どんどん呑みましょ!!」

 

「えっと・・・、わ、私は良いかなぁ~・・・?」

 

久し振りにヤケ酒では無い楽しめる飲みが出来てテンションが上がったのか、玲奈は満足げに二杯目を注いでいく。

それを見たリーカは、苦笑いを浮かべながらもグラスを地面に置こうとした。

 

彼女とてコーディネィターではあるが、そこまで飲める自信は無いらしい。

 

だが・・・。

 

「気にしない気にしない、酔ったら酔ったで、介抱してくれるヒトがいるでしょ?いや、あんなコトやこんなコト、かしら?」

 

「かっ・・・!?」

 

目敏くそれを見付けた玲奈によって二杯目が注がれ、完全にシモの方に話を持って行った彼女の言葉に、酔いでは無い何かによって、リーカの顔は一気に赤くなった。

 

どうやら、その手に関する免疫はあまりないらしい。

 

「初対面の奴に何下ネタぶっこんでんだ・・・、あっ、そう言えば自己紹介がまだだったな、俺は神谷宗吾、アメノミハシラ中将で一夏の部下だ、よろしくな!」

 

自分の恋人が下世話な話をしている事に呆れながらも、まだ自己紹介していない事に気付いたのだろう、話題を変える意味も込めて、宗吾は改めて名乗った。

 

「アタシは早間玲奈、同じく中将で一夏の部下よ、今後ともよろしく!」

 

「一夏達は南米で会ってるから分かると思うが、プラント兵器開発局所属のコートニー・ヒエロニムスだ、よろしく頼む。」

 

「私はザフト軍ラビット小隊所属のリーカ・シェダーよ、リーカって呼んでね!」

 

彼につられて、玲奈達も互いに自己紹介を始めていた。

どうやら、それなりに打ち解けてきたようだ。

 

「では、私も改めて、アメノミハシラ軍部大将のセシリア・オルコットです、お見知り置きを。」

 

「アメノミハシラ軍部大将、シャルロット・デュノアだよ、改めてよろしくね?」

 

それを見ていたセシリアとシャルロットも、コートニーとリーカに対して改めて名乗っていた。

親しき仲にも礼儀あり、意味合いは違えどそれを実行しようとしているのだろう。

 

一夏はその間に全員のグラスにウォッカを注ぎ、改めて乾杯して一気に飲み干していた。

 

「しかし・・・、総帥を除くアメノミハシラ幹部と飲めるとは思いもしなかったよ・・・、俺達はよっぽど運が良いらしい。」

 

「皮肉にしか聞こえないわよ・・・、ま、アンタ等の新型のお蔭で、アタシの機体の改修が一気に進んだから文句は言えないわね。」

 

コートニーが自分の置かれた立場を改めて俯瞰し、感心していると、玲奈が半目で睨んだ後、意味がないとばかりにタメ息を一つ吐いてグラスの中の液体を一気に呷った。

 

「あ、えっと・・・、元帥閣下は・・・。」

 

「だから身内人事だって、階級とか気にするなよ・・・、コートニーとは、ライバルであり親友だ、君が思ってるコトは何一つないよ。」

 

「そ、そう・・・。」

 

苦笑しながらも話す一夏の言葉に、少々安堵しながらもリーカは彼への追及を諦めた。

 

それを見ていたセシリアとシャルロットは顔を見合わせて笑いながらも、グラスを傾けた。

 

「しかし・・・、妙なもんだな、ザフトの関係者とこうやって呑むなんて思いもしなかったよ。」

 

「俺もだよ、だが、アメノミハシラ大幹部との付き合いがあるのは行幸だった、今回の件は、特にな。」

 

宗吾は自分の上官と同等の戦士と飲めることが純粋に楽しいのか、何時も以上にその表情は笑みで溢れていた。

 

それに答えるコートニーは、自身の幸運を喜び、この至福の時を噛み締めているようにも見て取れた。

 

彼はその立場上、同期と呼べる人間が殆どいないため、同年代と酒を酌み交わすことも少ないのだ。

そのため、同い年、もしくは一つ下しかいないこのメンバーに対して、ある種の親近感を覚えているのだろう。

 

「そういえばさ、なんでコートニーって技術官なのよ?一夏並みなら前線出ても良いんじゃない?」

 

そんな時だった、何の気無しに玲奈が発した言葉に、一夏とコートニーの表情が曇った。

 

つい三十分ほど前に、一夏が同じ質問をして、聞き返されて詰まってしまっていたのだ。

もし、この場でそれをしてしまうと、先ほどの二の舞になる、そう確信した二人は全く同じタイミングで表情を硬くしたのだ。

 

だが、そんな事など露知らず、他のメンバーは興味深げに彼を見ていた。

 

そんな空気の中、一夏とコートニーはアイコンタクトを交わし、どうすべきかを一瞬で判断、諦めた様にタメ息を吐いていた。

 

「そうだな・・・、一夏にはさっきも話したが、俺は戦争を、争いをさせない兵器を造りたいから、メカニックになったんだ、俺の夢のためだよ。」

 

玲奈の問いに、一夏に配慮しながらもコートニーは答えた。

だが、それは偽りではなく本心であることに違いはなかった。

 

その証左に、彼の顔には熱っぽさが出ており、まるで少年のような無垢な感情だけがあった。

 

「ふぅん・・・、変わってるわね、でも、嫌いじゃないわ。」

 

それを察することは、出会って一時間も経っていない玲奈にもでき、羨ましそうに微笑んだ。

 

「私も、初めて聞いたんだけど・・・、二番目、かぁ・・・。」

 

だが、対照的に面白くなさそうなのはリーカだった。

 

自分の方が付き合いが長いのに、先に知ったのが一夏である事に嫉妬しているのだろう。

 

それに気付いた一夏は、更に苦笑の度合いを深くし、何かを察した宗吾も可笑しそうに頬を緩めていた。

 

彼等の間には、親しい仲にある者同士でしか出せぬ雰囲気が流れており、初めて集まったとは思えぬ程、穏やかで優しい時が流れていく。

 

「そうだっ!コートニーにばっかり語らせるわけにはいかないわね、アタシ等も夢語ろうじゃない!」

 

だが、その空気を破るように、玲奈が突如として声を上げた。

 

それにギョッとして、コートニーは飲んでいたウォッカを噴き出しかける。

先程は何とか回避できた地雷原にまた突っ込みに行くのかとでも言いたげに、彼は玲奈を驚愕の表情で見詰めた。

 

だが、それを知ってか知らずか、玲奈は言葉を続けた。

 

「アタシの夢は、一夏に勝つ事!そして、宗吾の御嫁さんにしてもらう事よっ!!」

 

「なにを恥ずかしい事を・・・、まぁ、俺も一夏に勝って、玲奈と添い遂げる事、それが夢だな。」

 

何の臆面も無く言い放たれたその言葉に、宗吾は僅かに赤面しながらも自身の夢を、願いを口にした。

 

嘗ては生きる事のみに執着していた彼等がそれ以外を望む事が出来るのは、一重に一夏の助けが有ったからだ。

そんな彼を超える事と、互いに添い遂げる事、それが今の彼等の夢で在り、生きる意味だった。

 

「良いなぁ・・・、私も・・・。」

 

臆面も無く、堂々と交際宣言している宗吾と玲奈を羨ましく思っているのか、リーカは少し寂しそうにコートニーの横顔を見つつ、小さくタメ息を吐いた。

 

想いを寄せている男が、自分に気がある素振りを見せてくれなければ彼女でなくとも嘆きたくなるだろう。

それを分かっているセシリアとシャルロットは、温かい目で二人の様子を見ていた。

 

「んじゃ、次はリーカね、夢発表しましょうよ?」

 

「えっ!?わ、私っ・・・!?」

 

玲奈の意地の悪い投げかけに、リーカは顔を羞恥で耳まで赤く染めた。

 

玲奈も気付いていて、わざと発破を掛けようとしているのだろう、その表情は、友人の恋を応援する女のそれが有った。

 

「うぅっ・・・、私の・・・、私の夢は・・・。」

 

他の六人の目が自分に注がれている事に気付き、リーカは少々しどろもどろになったが、意を決した様に大きく息を吸い込み、口を開いた。

 

「こ、コートニーに好きって言ってもらう事ですっ!!」

 

「ぶはっ・・・!?り、リーカっ・・・!?」

 

リーカの思いもよらなぬ発言に、コートニーは飲んでいたウォッカを盛大に噴き出す。

 

まさか、好意を寄せられているとは露にも思わなかったのだろう、彼の狼狽はかなり滑稽でもあった。

 

「ひゅ~!大胆ねぇ~。」

 

「コートニーがあんなに驚くとは・・・、鈍い奴だ・・・。」

 

玲奈は満面の笑みを浮かべ、一夏は呆れた様な表情を浮かべていた。

初対面の自分達ですら気付ける感情の機微に、一番近くにいる筈の男が気付けないとなると、少々呆れもするものだ。

 

「何時も、優しくてカッコ良くて、でも人の事より機械の事が好きなコートニーが好きなのっ・・・!や、やっぱり自分で伝えたいのっ!!」

 

「すっげぇ・・・、マジだよこの子・・・。」

 

真摯に思いの丈を伝えるリーカの、その熱に胸を打たれたか、宗吾は感服した様にしみじみと呟いた。

 

自分は何となく、告白と言う形ある方法で恋人とくっ付いた訳ではない。

そのため、半ばやけくそ気味とはいえど思いの丈を伝えたリーカが羨ましいのだろう。

 

「リーカ・・・、俺は・・・。」

 

「それは、僕達がいないトコでやりなよ、知られたくないでしょ?」

 

すぐに答えを出そうとするコートニーの言葉を、シャルロットが遮る様に話した。

 

どちらの結果に転ぼうとも、全員が知るのは後で良い、そう考えているのだろう。

 

「次は僕だね、僕は一夏とセシリアと、優しい家庭を築く事、だね。」

 

「私は、一夏様とシャルさんと共に生きる事、ですわね。」

 

そして、自分達の夢は同じだと言わんばかりに、シャルロットとセシリアは顔を見合わせて微笑んだ。

 

彼女達にとって、一夏も含めた三人で添い遂げる事が、嘗ての世界からの願いであり、夢でもあった。

今度こそ、幸せに生きる、その想いだけが彼女達の胸には宿っているのだ。

 

そして、セシリアとシャルロットは、貴方は如何なの?と言わんばかりに自分達の間にいる一夏に目を向けた。

 

「俺は・・・、俺の、夢は・・・。」

 

その視線に気付いた一夏は、表情を僅かに歪めて声のトーンを落とした。

 

幾度も裏切りを働き、幾つもの夢を消し去って来た自分が夢を語っても良いのか、そして、夢を語れる程自分は何を望んでいるのか、それが分からないのだ。

 

「(あっ・・・、しまった・・・!)」

 

「(やっべ・・・、一夏のトラウマ、踏み抜いた・・・?)」

 

「(だから話したくなかったのに・・・。)」

 

一夏の凄惨なトラウマを察した玲奈と宗吾はしまったと言わんばかりに表情を歪め、コートニーは先程の一夏の表情を思い出して苦虫を噛み潰した様な表情を浮かべた。

 

そして、彼等は同時に悟ってしまった、一夏の語りたくない、思い出したくない過去を呼び起こすキーワードが、夢であるという事を・・・。

 

「(えっ、何この空気・・・?お、お通夜・・・!?)」

 

だが、一夏との関わりが浅いリーカは、急に空気がお通夜並みに重苦しくなった事の理由に合点がいかなかったのだろう、全員を見渡して視線を右往左往させていた。

 

いや、それはある意味で仕方がないのかもしれない。

彼女はただ、その問題に踏み込むにはあまりにも部外者過ぎただけなのだから。

 

「(申し訳ありません、皆様・・・。)」

 

「(でも、一夏にも、変わって貰わないと・・・。)」

 

そんな友人達の反応に気付いていながらも、セシリアとシャルロットは一夏から視線を逸らさなかった。

 

自分達は誰かと関わる事で嘗ての自分と決別し、生きたいと心の底から思える様になった。

だからこそ、今、この時に一夏に変わって欲しいのだ。

過去の罪に人一倍責任を感じて、その念に囚われ続けるだけの牢獄から抜け出して、自分達と生きて欲しいのだろう。

 

「俺の夢は・・・。」

 

全員の思いに気付いている一夏は、どうするべきかとウオッカの液体に映る自分の顔を覗き込んで自問自答した。

 

夢は幾らだってある、だが、それを口にしても良いモノかと、自分が夢を望んでも良いのかと。

 

だが、今この瞬間を自分が心地良いと思えるなら、それが永遠に続いて行けるなら・・・。

 

「俺の夢は、夢が叶った後の皆と、こうやって酒を飲む事だ、俺には夢が無い、けど、誰かの夢を叶える手伝いくらいなら、今の俺にも出来るかもしれない。」

 

一夏には夢がまだ無い、だが、無いからこそ誰かの夢を願える。

自分の夢の代わりに誰かの夢を叶える、良くも悪くも彼らしい答えだった。

 

「だが、宗吾と玲奈にはまだまだ負けんよ、もちろん、コートニーやリーカにもだ。」

 

「そうこなくっちゃ、簡単に叶う夢ならこっちから願い下げよ。」

 

「あぁ、難しいから夢なんだ。」

 

一夏の挑戦的な笑みを受けて、玲奈と宗吾はニヤリと笑った。

それは、一夏が自分達の挑戦を何時でも受けると言った言質を取ったからか、それとも、ただ認めてくれることが嬉しいからかは分からなかったが。

 

「って、私達も含まれてるのね・・・。」

 

「リーカ、コイツはそういう男だ、だから俺も負けたくないって思える。」

 

少しげんなりと、だが、それ以上にこの集まりの中心人物に身内と認められている事が嬉しいのか、リーカははにかんだ笑みを浮かべて、コートニーに身体を少し預けた。

 

そんな彼女の心中を察したか、あるいは、先程の告白を受けて心境が変化したのか、コートニーは彼女の肩に腕を回し、一夏に対して好戦的な笑みを浮かべていた。

 

互いにライバルと認め合いつつ、友人として接するという想いを、目に見える形で表しているのだろう。

 

「ふふっ♪私達も負けませんわよ?」

 

「一夏には、僕達をずっと見て貰わないとね?」

 

彼等の、一夏に向けられる想いが嬉しいのか、セシリアとシャルロットは慈愛の笑みを浮かべて愛しの夫の腕に抱き着いた。

 

今だ苦しみから逃れられない彼に、せめてもの救いがある事が、彼女達にとっても救いに成り得るのだ。

 

「あぁ、俺達の夢を、俺達で叶えよう。」

 

愛する妻達に微笑みかけ、彼は頭上に煌めく満天の星空を見上げた。

 

宇宙から見る輝とは違う、宝石箱の様な煌めきと、三日月のかすかな光が、彼等を包む様に見詰めていた。

 

「俺達は、手を取り合って生きていけるんだから、な。」

 

視線を戻した彼が前にグラスを突き出すと、それに応じて他の六人もグラスを重ね合わせた。

それはある種の誓いであり、友情を示す形であった。

 

「俺達は・・・。」

 

『仲間だ!』

 

想いを口にした彼等は、示し合わせて酒を一気に呷った。

まるで、杯を交わす様に、友情を確かなものにする様に・・・。

 

「ささっ!湿っぽいのはここで終わりっ!!どうせ明日にゃ暫くお別れだし、このメンバーで呑むわよ~!!」

 

一番最初に呑み切った、メンバー1の元気印、玲奈が声を上げて全員のグラスに違う酒を注いでゆく。

 

「あ、あはは・・・、大丈夫かなぁ、私・・・。」

 

彼女の勢いに、リーカは苦笑しながらも、何処か楽しそうに呟いた。

 

そんな彼女達の様子に、他のメンバーもつられて楽しげに笑う。

 

 

満天の星空の下、彼等が巡り会ったその日は、彼等に訪れる事になるその未来へ向けての、新たな一歩となるのであった・・・。

 

sideout

 




次回予告

新たな力が目覚める時、歴史は新たに動き始める。
それがたとえ、如何なる未来へと繋がろうとも・・・。

次回機動戦士ガンダムSEEDASTRAYXINFINITY
第四章 天空の宣言編
新章への扉

お楽しみに
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