機動戦士ガンダムSEEDASTRAY X INFINITY   作:ichika

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イグニート

noside

 

「こちらガイアのリーカ・シェダー、シャルロット、準備は良い?」

 

『いつでもどうぞ、先に出てて。』

 

デブリベルト宙域にて、ナスカ級試験観測艦の格納庫内にスタンバイされているガイアのコックピットで、テストパイロットであるリーカ・シェダーは、今回のテスト相手であるシャルロットに向けて通信を入れる。

 

デブリベルト宙域においての実戦形式による合同テストには、それぞれの陣営の新型機のデータを録り合うという意味合いがあった。

 

とは言え、それは暗黙の了解に近い形であり、明文化されている訳では無かった。

 

だが、そんな事など知った事では無いというのは、この公開テストに参加している織斑一夏の談である。

 

「バスターと戦うのは初めてだけど、そっちも新型なのよね?」

 

『まぁね、驚かせてあげるよ。』

 

友であり、腕の立つパイロット同士であるが故か、リーカもシャルロットも口角が若干吊り上がっていた。

 

それは、これから始まる模擬戦の激しさをきたしているが故なのだろうか・・・。

 

「じゃあ、先に出て待ってるわね、リーカ・シェダー、ガイア、テイクオフ!!」

 

威勢のいい掛け声と共に、リーカは自機のガイアを宇宙へと奔らせる。

VPS装甲が色付き、黒を基調とした機体色へと変化していった。

 

彼女自身のパーソナルカラーは薄桃色ではあるが、今回は自分の専用機という訳では無い、テスト終了後は、正式なパイロットへと引き渡されるため、OS以外の設定はあまり弄れないのだ。

 

今回のテストは、ジェス・リブルの乗るアウトフレームが撮影の為に近くにいるため、かなり気を遣った模擬戦になるだろうが、リーカにとっては構いはしなかった。

 

友人の実力を測れる絶好のチャンス、それを逃して堪るモノかと考えていた。

 

そんな彼女の機体の前に、母艦から飛び出してきた機影が現れる。

 

それは、今回の相手であるシャルロットが駆る機体・・・。

 

「その姿・・・!?」

 

だが、その機体の姿は、彼女の知るバスターとは大きく異なっていた。

 

基となった機体のフォルムは残っている、だが、そこに追加された様々なパーツにより、受ける印象が全くと言っていいほど違ったのだ。

 

頭部はクリアパーツで形成されたバイザーを纏い、肩部はフットボール選手の様に大きく盛り上がり、背面には突き出した砲門が一対見受けられた。

 

そして、脚部は上半身とのバランスを取るようにスラスターが追加され、推力の低下を防いでいるようにも見受けられた。

 

「その機体・・・!本当にバスター・・・!?」

 

戸惑うリーカに、シャルロットは高らかに宣言する。

自身の新しい力を、未来への道を切り開く、炎の機体を。

 

『これが僕の新しい力、バスターイグニート!!』

 

noside

 

sideシャルロット

 

リーカの機体、ガイアを前にして、僕は改めて操縦桿を握り直した。

 

彼女の腕を良くは知らない、けど、テストパイロットに選ばれるぐらいの腕はある。

だから、僕も油断は出来ない、たとえ、自分専用の機体で相手するとしても。

 

「行くよ、僕の新しい力・・・!!」

 

バスターに大幅な武装の追加、そして、OSに改良を加えた、究極の砲撃特化機体。

 

僕の弟の想いを継ぐ、僕の機体!!

その名は・・・!!

 

「シャルロット・デュノア、バスターイグニート、行きます!!」

 

ラテン語で炎を表す機体を、僕は炎にも負けない熱い心で操る。

 

両腰に装備されるガレオス並行連結式ビームライフルを両脇に抱え込み、ガイアを狙って発砲、牽制に用いる。

 

ガイアは変形によるトリッキーな動きと高い格闘戦能力で敵を攪乱、各個撃破する機体だ、なら、隙を見せずに叩く事が勝利のカギになるだろう。

 

『うわっ・・・!?なんてパワー・・・!?』

 

牽制とは言っても、このビームライフルはドレッドノートみたいな核エンジン機体のパワーをバッテリー機で再現した代物だ、そんじゃそこらのライフルなんかじゃ足元にも及ばないパワーを秘めてる。

 

と言っても、サブバッテリーの容量を大幅に増やしてるからこその破壊力の増大って言うのもあるけどね。

 

『でも、スピードで攪乱すればっ・・・!!』

 

バスターの新しいパワーに脅威を見出したか、ガイアはMA形態に変形しながらも、デブリを足場に、次々とデブリに跳び移って行く。

 

デブリを蹴って加速する動きなら出来る人達は一杯知ってるけど、デブリからデブリに跳び移るのは容易では無いよね。

 

「それで攪乱できる程僕は甘くないよっ!!」

 

背中に二門装備されているレールガンを使って、足場になりそうなデブリを片っ端らから撃ち抜いて行く。

 

『わわっ・・・!?全身武器庫ねっ・・・!?でも、ガイアの力はこんなものじゃないわ!!』

 

彼女は驚きながらも、機体をMS形態へと変更、背中の小型のビーム砲をこっちに撃ちかけてくる。

 

やるねぇ、でも、負けないよ!!

 

肩部のカバーを開きながらも後退、ミサイルをばら撒いて弾幕にする事でビームを防ぐ。

 

「女は秘密を隠すから美しいんだよっ!!」

 

そう、バスターに隠されてる武器はこんなもんじゃない。

まだまだ隠している機能だってあるんだから。

 

向かってくるガイアに狙いを付けて、左右のビームライフルを連結させる。

 

「これでもっ!!喰らえぇぇ!!」

 

連結した事によるパワーの相乗効果によって威力が増大した極太ビームがガイアに襲い掛かる。

 

この威力、アグニとは比べ物にはならないぐらいの高エネルギーだね、設計段階から携わってたとは言え、実際に使うと驚きも一入だ。

 

『凄いっ・・・!!でもっ、避けられない訳じゃ無いっ・・・!!』

 

背中のスラスター兼ビームブレイドを強引に使って、ガイアはシールドを機体とビームの間に入れる事でダメージを軽減、見事に回避してみせた。

 

「さっすがっ・・・!!」

 

一夏と同レベルのコートニーが相方に選ぶぐらいだから腕は立つだろうと思ってはいたけど、アメノミハシラ幹部と比べても遜色ない腕前だね・・・!勧誘したくなっちゃうじゃないか・・・!!

 

『今度はこっちから行くわよっ・・・!!』

 

ガイアは右肩にビームライフルを接続して右手を空け、そこにビームサーベルを保持して向かってくる。

 

なるほど、砲撃機の弱点である格闘戦を挑もうってつもりだね、でも、それぐらい御見通しっ!!

 

殴り掛かる要領で右腕を前に着きだし、腕に装備してあった固定式ビームサーベルを展開、突きだす形で振るう。

 

『嘘っ・・・!?ビームサーベルっ・・・!?』

 

この装備は予想外だったんだろう、彼女はシールドを前に掲げる事でなんとか防いだ。

 

「ここも、イグニートの間合いだよっ!!」

 

右腕を払って左腕を突き出し、カバーを開いて内蔵していた四門ガトリングガンを展開、ガイアのコックピット目掛けて撃ちかける。

 

『ガトリングっ・・・!?そんなモノまでっ・・・!?きゃぁぁっ!!』

 

「どうだ!!」

 

『くっ・・・!まだぁっ・・・!!』

 

ガトリングの掃射に耐えながらも、リーカはバスターに向けてバルカンを連射、ヘッドバイザーを狙ってくる。

 

「やめっ・・・!?そこはダメっ・・・!!」

 

このパーツ高いのにっ・・・!!傷付けないでよ・・・!!

距離を取るべく蹴りを入れ、何とかバルカンの掃射から逃れた。

 

あっちゃぁ・・・、傷付いてたらヤダなぁ・・・。

ジャックさんや皆に怒られちゃいそうだよ・・・。

 

『や、やるわね・・・!!流石はシャルロット・・・!!』

 

「褒め言葉として受け取っておくよ・・・!!」

 

流石、やられっぱなしにはいかないよね、リーカだからこそ出来る荒業なのかもね。

 

でも、ザフトの新型に匹敵するパワーが手に入っただけでも儲けものだね・・・!

 

『でも、まだ負けてないわ!!これからよっ!!』

 

「望むところ!!リーカの力、僕に見せてよ!!」

 

でも、まだ模擬戦は終わっちゃいない。

 

だから、僕達はもう一度得物を構えて相手と向き合う。

それが、今を生きる僕達に出来る事だから。

 

「見せてあげるよ、僕の本気を!!」

 

ガイア以外にもカーソルを合わせて、狙いを定める。

 

これが、僕専用のバスターの力だ!!

 

「全砲門完全開放!!フルバーストっ!!」

 

ビームライフルを、レールガンを、ミサイルを、そしてガトリングを遠慮なしにぶっ放す。

 

あぁ、これだよこれ、圧倒的な弾幕とパワー、目の前に広がる爆炎、これだから重装備は止められない。

 

圧倒的な弾丸やビームが漂っていたデブリを砕き、蒸発させていく。

たまんないなぁ、これこそMSがあるべき姿だと思うんだよね。

 

『きゃぁぁ!?や、やり過ぎよシャルロットぉ~!!』

 

あまりの弾幕に、リーカが悲鳴を上げるが知ったこっちゃない。

君の実力はその程度じゃ無いはずだよ。

 

閃光と爆炎が晴れた時、模擬戦開始当初に辺りを漂っていたデブリは全て破壊され尽くしていた。

 

いやぁ、ここまでキレイになるとは思わなかったね、一夏達の模擬戦も捗るだろうね。

 

『シャルロット、リーカ、二機のデータは一通り採れたわ、一旦帰投してちょうだい。』

 

ありゃりゃ、もうそんな時間か・・・。

 

確かに、バカスカ撃ち過ぎたね、サブバッテリーを沢山乗っけたとは言っても、その分エネルギーを喰う武装をてんこ盛りにしてるんだ、もうちょっと戦略を練らないとね。

 

「ゴメンねリーカ、作戦終了だって。」

 

『ひ、酷い目にあったわ・・・、全く近付けないなんて・・・。』

 

まぁ、負ける気はしなかったしね、でも、リーカだから撃墜なんていう事態は無かったと言えるね。

 

『でも流石ね、そんなに強い機体を操れるなんて普通じゃないね。』

 

「あはは、これしか能が無いけどね。」

 

機体をナスカ級に向けながら、僕はヘルメットを脱いで髪を結んでいたリボンを解く。

 

ちょっと興奮しすぎちゃったね、暑いや・・・。

 

でも、これからはクールに、熱く行こうか。

僕の夢を、弟の夢を叶える為に・・・。

 

sideout

 

sideコートニー

 

「凄まじい破壊力だ・・・、恐ろしい機体を創るもんだな?」

 

ブリッジでシャルロットとリーカの模擬戦を見ていた俺は、隣でモニターを見ていた一夏に感想を漏らした。

 

AI-GAT-X103 バスターイグニート、恐ろしい程に強力なパワーを持っている機体だ。

イグニートはラテン語で炎を表す言葉だが、シャルロットはどちらかといえば風が似合うような気もするが・・・。

 

いや、一夏を挟んでセシリアとの対比を考えるなら炎で良いのか、セシリアは氷河だったし・・・。

 

それは兎も角、一番目を見張るのは追加された武装類だ。

 

ガンランチャーとビームライフルが外された代わりにそれを補って余りある火力の新型ライフル≪ガレオス≫や、背面に装備されるアポロニアスレールガン、そして、隠し武器の内蔵型ガトリングとビームサーベル。

 

データ上、火力は原型機の2.5倍に跳ね上がっているのに、機動力や運動性に目立った劣化は無い。

それが意味する所を考えると、乾いた笑いしか出て来ない。

 

近接戦に備えている辺り、アメノミハシラが立たされている状況を如実に知れるから、兵器開発は経緯を知る事も面白いんだ。

 

「ウチの五機の新型の内、火力は最高だよ、OSやマルチロックオンシステムの改修に時間が掛かったけどな、本当なら一番最初にロールアウト出来た機体さ。」

 

なるほど、オーブで試験した、プロトセイバーのアムフォルタスのデータを転用したからその分遅れたという訳か・・・?

 

アメノミハシラの戦力が増強されるのは、プラントにとっては痛い誤算だろうが、俺個人は如何という感慨も浮かばない。

 

むしろ、俺は友人達に銃を向けるなどしたくも無い。

プラントが裏でアメノミハシラを手に入れる事を画策している事は百も承知だが、それがそうしたというのだ。

 

俺は軍人じゃない、だからこそ、興味無しの一言で済ませているのだ。

 

一夏達が何処に属する人間か知らない奴等は、傭兵にしては十分すぎる戦力を持つ彼等の事を畏怖と恐怖が入り混じった表情で見ている。

多分それは、何時か彼等が敵になる事を危惧しているのだろう。

 

まぁ、一夏を含めた五人にアメノミハシラトップのロンド・ミナ・サハク、そして一国が保有すべき戦力以上の力を持ったMS隊、それら全てが敵に回ると考えると、俺ですら身体が震えてくるよ。

 

だが、今俺の目の前にいるのはアメノミハシラと言う組織じゃない。

 

下手をすればフリーダムのパイロット以上のポテンシャルを持つ、最強のMS乗りだ。

 

当代一と呼んでも過言では無い、その力を俺は知っている。

戦う度にその力を高め、次々に有り得ない機動を旧式機で見せてくれる恐るべきパイロット。

 

戦場で一番出会いたくない相手だ。

 

だが、そんな相手がライバルとして俺を見てくれる事は、男としても武人としてもこれ以上に無い誉だ。

 

「一夏、ジェスのアウトフレームの補給が終わったら俺達も出るぞ。」

 

「分かった、セシリア、シン!お前達も出る準備してくれ、タッグで模擬戦をするぞ。」

 

「かしこまりましたわ♪」

 

「えっ・・・?俺も、ですか?」

 

セシリアは嬉しそうに、シンは戸惑ったように声を上げていた。

 

彼は先日の一夏との話し合い以来、彼にある程度心を許している様にも見える。

 

そして、一夏はシンに、自分以上のMSパイロットに成り得る可能性を見出している。

だから気に掛けているのだろう、彼はシン・アスカという少年を、弟のように大事に想っているのだ。

 

「あぁ、俺達の戦いを間近で見て貰いたい、君にも良い刺激になる筈だ。」

 

「それに、貴方の機体は一夏様、私の機体はコートニーさんの機体と非常に良く似た性質です、どうタッグを組んでも、良い結果が生まれましてよ?」

 

一夏の言う通り、彼等レベルの達人級MSパイロットの腕を間近で見れば、まだまだ素人に毛が生えた程度のシンには非常に良い経験になる。

 

それに加え、コンビネーションを組む形にしても、2ON2の訓練には非常に良い。

 

なるほど、よく見ている。

流石は何百人の部下を抱えてるだけは有るよ。

 

「来いよシン、お前も俺達の仲間なんだ、一緒にいられる期間ぐらい、面倒見てやるからさ。」

 

無理強いはしていない、だけど、彼の人懐っこい笑みを見てしまえば、断りにくいのも事実だ。

それに、シンは力を欲している。

 

その力を持っている一夏は、彼にとっても憧れに値するだろう。

 

「はい!」

 

そして、シンは彼の本当の力を知りたがっている。

だから、彼の誘いを断る事をしない。

 

そして俺も、彼の新たな力に興味がある。

誰にも、何の不都合も無いのだ。

 

「俺にも見せて貰いたいものだ、お前の新しい力をな。」

 

俺が挑発的な笑みを見せてやると、彼もまた、交戦的な笑みを浮かべて俺を見据えた。

 

「あぁ、見せてやるぜ、俺のストライクをな。」

 

あぁ、最強のパイロットの力を俺は知る事が出来るんだな。

 

出来るなら、俺が携わった機体にもう一度乗り込んで、その力を示して欲しいモノだ。

 

「行くぞ。」

 

先行してブリッジを出て行く一夏を追って、俺達も後を追った。

 

これから始まる、名手達の美技を、この目に焼き付ける為に・・・。

 

sideout




次回予告

力はただ、力でしかないのかもしれない、それでも、未来を切り開けるなら・・・。

次回機動戦士ガンダムSEEDASTRAYXINFINITY

S

お楽しみに
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