「仮面……らいだぁ?」
目の前に現れた異常な存在に鬼は首を傾げた。
「うーん、西洋の言葉かな?随分ハイカラというか奇抜な格好だねぇ……」
(それになんだか、太陽そのものと相対してるみたいな……そんな感覚がする。こいつと戦うのは不味いかもしれない。少しつっついたら無惨様に報告しに行くべきかな?)
畳んで口元に当てていた扇を扇を振るって広げて構えな直す氷の鬼。
⁅血鬼術 粉凍り⁆
扇を振るい続けるたびに鬼を中心にが光を反射して煌めきながらRXとカナエを囲んでゆく。。RX目はそれが霧のように揺蕩う極低温の微細な氷であることを見逃さなかった。
「き、気を付けて……!その氷を吸うと、肺を傷つけて細胞を壊死させるわ……!」
「わかった!そうとわかればその手は食わないぜ……!」
凍りを吸わぬよう羽織で口を覆ったカナエの助言を受けてRXは両手を上に突き出してから握り拳にしてサンライザーの上で構える。
「キングストーン・フラッシュ!」
掛け声とともにサンライザーから眩い閃光が放たれて空気中に散布された氷を瞬く間に蒸発させてゆく。逃げ場を塞ぐように二人の周りを覆いつくしていた氷の霧は霧散したのだった!
「うはぁ、そんなのアリ?」
氷の鬼が理解できないものを見たような声を上げるのも無理はない。
RXは太陽光線とキングストーンエネルギーの結合反応が生み出すハイブリッドエネルギーを放ったのだ。本能で当たれば不味いと察した氷の鬼は咄嗟に氷を閃光に向かって吹きつけながら横に跳ぶ。
それを待っていたといわんばかりにRXが拳を振りかざして攻撃をするが差し込まれた扇によって直撃は辛くも防がれてしまった。
余裕のある笑みを浮かべながら攻撃を受け流す鬼。両手に持った一対の扇から繰り出される鋭く速い斬撃をいなしながらRXも反撃の機会を伺う。
「くっ、こいつ中々強い……!クライシスやゴルゴムの怪人にも負けないパワーだ!」
「あっはは、君なかなか楽しいねぇ!俺の名前は童磨。もっと俺に力を見せてくれるかい?仮面らいだぁさん!」
⁅血鬼術 蓮葉氷⁆
掠めるだけでも凍てつくような氷の蓮華をRXの攻撃を塞ぐように生み出しながら扇での斬撃を繰り出す鬼。宙に浮かぶ蓮の華はRXの身体を凍てつかせるように冷気を放ち続けている。
能力だけでなく近接での戦闘でも渡り合う能力を見せる氷の鬼だったがRXはその程度で怯むことはなかった。
「RXチョォップッ!!」
光のエネルギーを纏いながら蓮の華を打ち砕く!体中にハイブリッドエネルギーが廻り回っているRXに血鬼術による凍結攻撃など通用しない!
砕けた氷を払いながら童磨の頸目掛けてチョップを放つRX。
「……おいおい、冗談キツイなぁ」
童磨の頬をチョップは掠め、傷を与えていた。傷口からはまるで灼熱で焼いたかのように煙が上がっている。
本来鬼の身体は首以外を斬られたところですぐに再生してしまう。しかし今童磨が追っている傷は太陽エネルギーを纏ったRXによって付けられたもの。すなわち……
「傷が、再生しない……!?」
彼は太陽に焼かれたも同然のダメージを受けたのだ!
「童磨!貴様の悪巧みも今日までだ!」
「悪巧みだなんて酷いなぁ。俺は、みんなを喰べることで救ってあげてるだけだって言ってるじゃないか」
ふらり、とよろめきながら立ち上がる童磨。焼かれたように痛む頬を抑え、その顔からは薄っぺらな笑みは消え失せ、能面のような無表情でRXを見つめるる。
「人間って馬鹿だからさぁ、神様とか仏様とか天国とか地獄とか信じて自分の辛いものから目を背けてるんだ……そんな可哀想な生き物、生きてたってつらいだけだろ?救済してやってる俺のどこに責められる謂れがあるのさ」
「それは違う!確かにこの世には神も仏も居ないかもしれない。しかし信仰が、何かを信じる事が人の心を救うこともある!信じる心を利用し、人々を傷付け殺してきた貴様を俺は断じて許さんッ!!」
童磨の言葉を切り捨てたRXは右腕を高く掲げ———
「リボルケインッ!!」
回すように振り下ろし腰に拳を添えながら左手をサンライザーの前に添える。
生成された柄を握りしめ、引き抜けば、鍔部のリボルジャイロが音を立てて唸って回り、光の刀身を生成した得物を右手に持ち替えた。
これこそが光を放ち輝く光杖、光子剣リボルケイン!RX最強の武器が姿を現した!
「トゥアッ!!」
リボルケインを携えたRXが宙へ跳ぶ。降下の勢いを利用しながらの鋭い刺突を童磨は扇で受け止めようとした。しかし!
「熱い……!?」
扇を通して伝わる熱が童磨を襲う。あまりの熱さに扇から手を離した童磨は焼かれた掌を見つめた。
(この光る杖?刀か?これ自体がとんでもなく太陽の力を纏ってるんだ!扇で受け止めたら掌を焼かれた。これで斬られたら最悪だ。刺されても死ぬ!)
童磨の頭に何かが過る。自分の記憶ではない、誰かの記憶。昔このように、太陽のような熱を持つ赫刀を持った耳飾りの剣士に斬られたという誰かの実体験。
その剣士と、目の前にいる異形の男の姿がにわかに重なる。逃げろ、今すぐ逃げろと体中の細胞に警告されているような錯覚にすら陥ってしまう。
「扇を落としたな!?これでお前はあの術を使えまい!」
「見くびらないでほしいなぁ、まだ一つあるんだからさっ」
⁅血鬼術 冬ざれ氷柱⁆
雨のように降り注ぐ氷柱。すかさずリボルケインで切り払うRXだが童磨はすでに身を翻して逃げの体制に入っている。
「逃がすものかッ!」
絶え間なく襲い来る氷柱を切り伏せながら追いかける。ここで奴を逃がしては、また無用な犠牲が増えるばかりだ
RXは地面を叩き、高く跳び上がる。
「RXキィック!!」
前方後ろ宙返りから身体を伸ばしながら捻り、回転をつけながら両足にエネルギーを集めながら童磨の背中を目掛けてキックを放った!
「グッ…がぁ……!?」
いつでも余裕の笑みを張り付けるこの男も痛みに声を詰まらせながら吹き飛ばされ地面を転がる。
蹴られた背中を中心に爛れ、身体がヒビ割れている。扇も蹴られた衝撃で手放してしまい血鬼術の起点を失ってしまった。
「初めてだよ、俺がここまでけちょんけちょんにやられちゃったの……ゲホッ…!生半可な鬼じゃ死んじゃってたかもねぇ……?」
血反吐を吐きながらもなんとか立ち上がる。なぜか、顔には挑発するような軽薄な笑みが戻っている。
そして自らの死を受け入れるかのように抵抗もせず立ち尽くすのみだった。
「来なよ、仮面らいだぁ。俺を倒すんだろう?」
「童磨……覚悟ッ!」
無防備に身体を晒した童磨の腹にリボルケインを突き立てる!
その光る刀身から注がれたエネルギーが火花を散らしながら相手の身体へと注がれるが、鬼からすれば刀になった太陽が身体に突き立てられることと同義だ。
身体の中から焼き尽くされながら童磨は過去の走馬灯を見る。
結局、自分は自分の死すら他人事だった。何も得られず、満たされず。恐怖も悔恨もなく、死を受け入れてしまっている自分が居る事を認識していた。
(結局俺は、ずぅっとこうだったなぁ。何でカナエちゃんが怒ったのかも、この男が俺を許さないと断じたのかも理解できない。感情ってのは、俺にとっては夢幻と一緒だったんだ)
リボルケインが引き抜かれる。RXは童磨に背を向け、リボルケインを円を描くよう振り回し頭の上で手を交差させ……振り下ろす。
エネルギーがオーバーフロー寸前まで注がれた童磨の身体は瞬く間に爆発。
彼本人の意識は爆発の衝撃と……