鬼殺奇譚 仮面ライダー大正に駆ける   作:あみだ

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闇夜を駆けろ RX!(3)

童磨が爆散した痕に煙が立ち上る。

RXは煤けた地面と自分の掌を交互に見ながら言い知れぬ違和感を感じていた。

 

(……リボルケインを引き抜く瞬間に、変な手応えを感じた。俺の気のせいか……?いや、今はそれよりもあの子だ!)

 

カナエの方を振り向く。

ぐったりとしてばいるが、呼吸が先ほどよりも安定してるように見えた。

 

「キミ!大丈夫か!」

 

変身を解除した光太郎はカナエの元へと走り寄り、傍に屈みながら傷を見た。

どうやったのかは知らないが、出血は止まっている。とはいえ重症な事には変わりなく予断を許さない状態だ。

 

「鬼……上弦の、弐は……」

「さっきの童磨の事か?俺が……いや、それよりもまずは君の怪我だ」

 

 カナエの身体を抱える。羽のような軽さに驚いた光太郎は傍らに落ちている彼女の刀に視線を向ける。

 

(あまりにも軽い……こんな身体でこの子はあの鬼と戦っていたのか)

 

「光……太郎、さん……」

「キミ、あまり喋らないほうがいい。傷が開くよ」

 

しかしカナエは光太郎の忠告を無視して外を指さす。その先には、こちらに向かって飛んでくる二羽の鴉がいた。

 

「カァーーーッ!カァーーーッ!胡蝶カナエ発見!胡蝶カナエ発見ンンンッ」

「カラスが喋った……!冗談じゃないぜ!」

 

けたましい声でカナエの無事を叫ぶ鴉。

流石の光太郎も人語を介する鴉の存在に度肝を抜かれたのか目を丸くしていた。

 

鎹烏(かすがいがらす)……しのぶちゃんが来たのね……」

 

鴉達の声が呼び寄せたのか、黒衣のような格好をした者達と、カナエとそっくりの髪飾りをした少女が急いで駆け寄ってくる。

しのぶ、というのは先頭を突っ切っている娘の事だろうか。

 

「姉さん!姉さん……!」

「しのぶちゃん……」

 

しのぶと呼ばれた少女は何か言いたげな様子のカナエに気付き耳を口元に寄せる。何かを耳打ちされているしのぶがハッとした顔で視線を光太郎に送り、姉と交互に見つめては静かにコクリと頷いた。

 

「南、光太郎さん。姉を……この人達へ。治療できる施設に運び、迅速に治療します」

「あ、あぁ……わかった。お願いします」

 

しのぶの傍らに控えていた鬼殺隊の一員らしき黒衣にカナエを引き渡す。彼は一礼すると人ひとりを抱えているとは思えない速さで駆け出していった。

 

「自己紹介が遅れましたね。私は胡蝶しのぶと申します。姉を……カナエを助けていただいてありがとうございました」

「いや、いいんだ!君のお姉さんを助けることができて良かった。その恰好……姉妹で、鬼を狩ってるのかい?」

「はい、私も姉と一緒に鬼殺隊に。それだけでなく私達は屋敷で傷ついた隊士の治療もしているんです」

 

そこまで言うとしのぶは目を伏せる。

 

「私も急いで戻らねばなりません。そこで……南さん、貴方にも来ていただきたいんです」

「俺にも?」

「姉からの言伝(ことづて)で、貴方に頼みたいことがあるから、と」

 

頼みたいこと、と言われば話を聞くほかない。光太郎がしのぶを真っすぐ見ながら頷くと彼女は踵を返す。

 

「では、ついて来てください。申し訳ありませんが急ぎますので見失わないように」

 

 

 

***

 

 

 

光太郎はしのぶの導きで蝶屋敷と呼ばれるカナエの私邸に導かれた。

鬼殺隊と呼ばれる鬼狩り部隊が負傷した際に病院として利用するだけでなく、鬼による被害で身寄りを失った子どもを引き取る孤児院も兼ねているそうだ。

 

「蝶屋敷、か……こんなでっかい屋敷持ってるなんて一体何者なんだ?」

 

寛ぐ様にと案内された個室のベッドに横になりながら独り言ちる光太郎。

ここでやることといえばもうカナエの無事を祈りながら相手から本題を切り出されるのを待つことだけだ。

 

顔に差し込んでくる光に目を細め、外を見れば朝焼けの景色。もう夜が明けているようだ。

ここが何処だか分らないし今がいつなのかもわからない。見知らぬ土地に投げ出され、未知の脅威と戦い、剣士の少女を救った怒涛の一晩を乗り切ったという事実がある。

確実に言えることといえば南光太郎は新しい戦いへと身を投じることになるだろうということだけ。仮面ライダーBLACK RXとして、人々を守る事に変わりはないのだ。

 

「南さん、居ますか?」

 

短いノックの後に扉の向こうから声が聞こえる。

しのぶの声ということに気づいた光太郎は身体を起こして扉を開けた。

 

「しのぶちゃん!カナエちゃんは……?」

「姉さんは……大丈夫です。一命を取り留めました」

「———!そうか!よかった、本当に良かった……!」

 

疲れが滲む笑顔を浮かべるしのぶ。光太郎は良い知らせを我が事のように喜んだ。

それを見て顔を綻ばせたしのぶだったが、重要な事を思い出しキッと顔を引き締める。

 

「……南さん。私と姉とで話があります。ついて来ていただけますか?」

 

様子が変わったことに気づいた光太郎はしのぶの言葉に頷く。

光太郎としても話しておきたいこと、聞きたいこと多すぎたので願ってもない提案だったのだ。

朝の光が差し込む蝶屋敷の廊下を歩く二人。光太郎が案内されたのはカナエが療養する病室だった。

ベッドには一通りの処置を終えたカナエが居た。二人が来たことを察してベッドから起き上がろうとしている。

 

「光太郎、さん…ッ」

「姉さん駄目よ、じっとしてて」

「大けがしたばっかりなんだ、ゆっくり横にならないと」

 

二人に促されてカナエは申し訳なさそうに横になる。

ベッドの傍らに置いてある椅子に座った光太郎とその隣に立つしのぶ。二人を順々に見つめたカナエは話を切り出した。

 

「南光太郎さん、まずは命を助けて頂いたことにお礼を言わねばなりませんね。本当にありがとうございました」

「そんな……俺は俺にできる精一杯をやったまでさ」

 

照れたように頭を掻く光太郎にカナエは微笑みを浮かべながら話を続けた。

 

「私の怪我も浅くはないのでしばらくは療養ですがいずれしっかりと恩返しを」

「恩返しだなってそんな……あ、そうだ。カナエちゃん。君達が入ってる組織、えぇっと……」

「鬼殺隊の事、ですね?ええ、その事も含めてお話しするつもりでした」

 

カナエの口から鬼殺隊という組織について語られた。

鬼殺隊とは人に仇なし人を喰らう鬼を日夜問わず狩る政府非公認の組織である。

通常陽の光で焼かねば殺せない鬼を討つために特殊な刀である『日輪刀』と『呼吸』と呼ばれる技法、剣技の型を用いて太古の昔、千年も前から人々のために活動している。

中でもカナエは柱と呼ばれる9人の一人で、トップクラスの実力を持った剣士。その妹のしのぶも毒を用い薬学に精通した鬼殺隊には欠かせない人材だという。

 

大学では文学部に所属し、少なからず歴史を学んでいた光太郎もこの鬼殺隊という言葉は初耳であった。もちろん、ゴルゴムの怪人やクライシスの怪魔妖族以外の鬼なんていう存在が実在していたという事も含めてだ。

 

「人を喰らって生きる鬼という存在は、不老不死や怪力誇る強靭な身体を誇ります。そして血鬼術と呼ばれる異能を用いる者……そう、先ほど交戦したあの鬼のような技で人を傷つける者もいるのです」

「そんな恐ろしい存在が……」

 

尚更放って置く訳にはいかなくなったと腕を組んで考える光太郎の目に古めかしいデザインの卓上の日めくりカレンダーが留まった。

 

(1911年……明治末期じゃないか!そんな、俺はタイムスリップしたって事なのか!?)

 

思わず目を見開いた光太郎。その様子を不思議そうに見つめるカナエと不審に思うしのぶ。

光太郎はゆっくりと口を開いた。

 

「……二人とも、俺の話を聞いてくれるか?」

 

光太郎は自分が未来から来た事。そして、暗黒結社ゴルゴム、クライシス帝国との戦いの事。そして自分が仮面ライダーBLACK RXだという事を掻い摘んで話し始めた。

未来から来たという突拍子もない話に驚いた二人だが、真剣に話に聞き入っていた。特に光太郎の親友である信彦……シャドームーンとの決戦と決着を話した時には目に涙を滲ませていたのだった。

 

「ごるごむ、くらいしす……少なくとも私と姉さんには心当たりはありません」

「そうか……あいつら、特にゴルゴムは随分と昔から暗躍してたって聞いてたから少しばかり心配してたんだ」

「光太郎さんはずっと、辛い戦いをしてきたのですね……あの不思議な姿、仮面らいだぁと言うのですよね?」

「そう、正義の為、人間の自由の為に戦う戦士の名前さ」

 

一通り話し終わったところで光太郎は二人を真剣なまなざしで見つめる。

 

「俺も、この戦いに協力させて欲しいんだ」

(奇怪な術を使い人を喰う鬼……あの子たちは奴を上弦の弐と呼んだが……これが奴らの階級のようなものだとしたらまだまだ人食い鬼が蔓延っているということになる。

———キングストーンよ、俺をこの場所に呼んだのは……もしかしてこの為なんだろう?鬼に脅かされた人々の平和を守れと、この人達と一緒に戦って鬼を退治しろって、そういうことだろう?)

 

キングストーンは今まで幾度も光太郎を導き、試練と力を与えてきた。この事態も光太郎への試練の一つなのだと考えた。

二人に頭を下げながら助力させて欲しいと願い出ると暫くの静寂が場を支配する。

 

「……頭を上げてください、光太郎さん」

 

大けがをしているとは思えない程、凛としていて丈夫なカナエの声。

 

「私の一存では決められないんです。しかし……お館様ならきっと貴方を迎え入れてくれる筈です」

「それじゃあ……!」

「はい、一度話を通してみましょう。それまではウチに居候してもらって構いません……次の、柱合会議…に、は……」

「カナエちゃん!?」

 

ふっ、と気を失ってしまったように見えるカナエ。焦る光太郎だったが、しのぶが肩に手を置く。

 

「大丈夫、寝てしまっただけですよ。姉さん、大けがしてるのに南さんと話をするんだーって譲らなかったんだから……ほんと、そういう頑固なところあるんですよ?」

 

困ったように言いながらも微笑み浮かべてカナエの頬をつついているしのぶ。彼女がそう言うなら大丈夫だろうと、光太郎はほっと胸をなでおろした。

 

「さ、そろそろ皆が起きる頃です。行きますよ、南さん」

「行くってどこへ?」

「皆への紹介と貴方に手伝ってもらおうと思ってる事が有るんです。せっかくの男手なんですからバリバリやってもらいますからね?」

「働かざる者食うべからずって?よぉし……!」

 

しのぶと共に病室から出る光太郎の足取りは軽かった。

新たな味方。新たな絆。これからまた始まる長い戦いの中であっても、きっと共に乗り越えられると確信したのである。

 

こうして南光太郎の新しい戦いが幕を開ける。

人々の平和と自由を守るため戦え、仮面ライダーBLACK RX!




9人の柱、そしてお館様こと産屋敷耀哉と会合する光太郎。決意を新たにした彼の前に現れたのは砂を自在に操る鬼、砕蟻だった。
迫りくる砂と岩の猛攻を潜り抜け、平和を乱す鬼を討て!

変身、仮面ライダーBLACK RX『砂塵の激戦』
ぶっちぎるぜ
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