鬼殺奇譚 仮面ライダー大正に駆ける   作:あみだ

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砂塵の猛攻(1)

「柱合会議だっけ、その鬼殺隊最強の剣士とお館様って人が……んぐっ、集まって話し合うっていうのは」

「もう、喋りながら食べるだなんて行儀が悪いわよ?」

「ごめんごめんしのぶちゃん。アオイちゃんが作ってくれるご飯が美味しいもんだからさ」

 

光太郎が蝶屋敷に居候になってから暫く経った時の事。

すっかり蝶屋敷の面々と打ち解け、しのぶやカナエとも気の置けない友人のように接するようになった。

皆で食卓を囲み朝ご飯を食べる。光太郎は久しく味わっていない、団欒の幸せを噛みしめていた。

 

「光太郎さんは沢山食べてくれるから作り甲斐があります。おかわりはまだありますから行ってくださいね」

「ありがとう、アオイちゃん」

 

アオイから白飯がたんまり盛られた茶碗を受け取りはにかみながら礼を言った光太郎はまたおいしそうに食べ始めた。

 

「おはよう、みんな」

「おはようございます」

 

カナエのあいさつに皆が声を揃えて返す。口の中に物を入れてる光太郎は会釈をしてからゆっくりと飲みこんでから口を開いた。

 

「おはよう、カナエちゃん」

「おはようございます、光太郎さん。ふふ、今朝もよく食べるのね」

 

にこりと微笑みながらカナエも席に着く。一時はどうなる事かと思うほどの大怪我を負った彼女だが日毎に快復し、今では戦いには出られずとも事務仕事をこなせるまでになった。

 

「食べ終わったら準備をしましょう。今日はお館様や柱の皆と光太郎さんが初めてお話しするんですもの、準備はしっかりね?」

 

柱と呼ばれる9人の剣士と鬼殺隊をまとめ上げるお館様が一堂に会し近況の報告や今後の対応、対策、作戦等を決め柱合会議というものが半年に一度行われる。

光太郎の存在はカナエを通して既に柱全員とお館様に伝えてあり、是非とも柱合会議に連れてきて欲しいとのことだった。

上弦の鬼を相手取った実力、そして花柱であるカナエの危機を救ったことについて直接礼を言わせて欲しいというのがお館様と呼ばれる人物の要望だ。

他の柱に関しても同様に南光太郎の力に興味がある、という返事が返ってきていた。日輪刀も持たずに鬼と渡り合った力が興味深いのだという。

 

(俺の、仮面ライダーの力をいたずらに利用するなら俺は鬼殺隊から離れなければいけないが……カナエちゃんやしのぶちゃん、蝶屋敷の人たちを見ている限りは大丈夫だろう。ほかの柱やお館様って人もきっと信頼できる)

 

光太郎にとって一番避けたいことは仮面ライダーの力を都合よく利用されることだった。決して人を信じていないわけではない。しかし人の心にある悪性が肥大化し手の付けられないようになる事もあるのだ。

しかし、目の前に居る蝶屋敷の面々にそのような心算は毛頭ないというのは言うまでもない。それならばきっと、接触しても悪い結果にはならない筈だと考えていた。

 

「……光太郎さん?どうしたのよ、そんな難しい顔をして」

「……あぁ、ごめん!ちょっと考え事をしてたんだ」

「大丈夫よ、光太郎さん。きっとみんな歓迎してくれるわ」

 

考え事が顔に出ていたのか、しのぶに呼ばれた光太郎は何でもないという風に明るい笑顔を返す。

カナエは光太郎の心の内を察したように穏やかに笑みを浮かべながらそう声をかける。その言葉に光太郎が頷きながら料理に箸を伸ばしたのを見て花が咲いたような笑みを浮かべた。

 

「さ、私も食べましょうか。急がないと光太郎さんに全部食べられちゃうものねっ」

 

朝の団欒はまだまだ続くのだった。

 

 

—————————————

 

 

蝶屋敷での朝食を終えた光太郎はいつものブルゾンへと着替えて外出の準備を整えると予定通りに産屋敷邸へと向かうことになった。

鬼殺隊の中枢である産屋敷邸は厳重に場所が秘匿されており、柱などの一握りの人間以外は場所を知ることができないらしい。

隠と呼ばれる隊士目隠しと耳栓を装着され、カナエに先んじて光太郎は産屋敷邸へと到着するのだった。

 

「ここが鬼殺隊の本部……蝶屋敷もそうだったけどすごく立派な屋敷だ……」

 

目隠しを外された光太郎は目の前に建つ屋敷の外観を眺めながら感心したように呟く。

隠しから庭園で待つようにと言い渡された光太郎は去ってゆく彼らに礼を言いつつ、門をくぐり庭へと向かう。

綺麗に庭石が敷き詰められ、池や庭木も丁寧に手入れされた庭園には人の気配。それも、離れた所からでも戦士の闘気をビリビリと肌で感じる程の強い圧だった。

 

「ほぉん、縦寸は六尺三分ってところか。だがあの洋装……中々派手な野郎が来たじゃねぇか」

 

宝石を多数あしらった額当てを付けた、忍装束を思わせる服に身を包み双剣を背負う光太郎よりも長身の男。

光太郎のブルゾンやパンツといった洋装に興味を持ったのか目を細めながら視線を向けている。

 

「……」

 

心此処に在らずと言ったように寡黙に佇む半々で布が違う羽織を羽織っている黒髪の剣士。

光太郎には目もくれずにじっと立ち尽くすのみである。

 

「南無阿弥陀仏……」

 

数珠を鳴らし、涙を流しながら阿弥陀経を唱え続ける巨漢。先の双剣の男よりも大柄だ。

何故涙を流し続けているのかはよくわからない。

 

「そうかァ……テメェが、南光太郎……」

 

身体中に大小無数の傷痕が刻まれている白髪の男は睨むような鋭い視線を光太郎に向けていた。

視線からは感謝や嫉妬、疑い混じったような複雑な心境が伺える。

 

(この人達がカナエちゃんが言っていた鬼殺隊最強の剣士!柱の人達か!)

 

ただそこに居るだけでも圧倒されるような圧を放つ彼らを見れば最強を呼ばれるのも頷けるものである。

意を決して庭へと足を踏み入れた光太郎。それに応じるようにまず近づいてきたのは涙を流し続ける巨漢だった。

 

「南光太郎殿……とお見受けする。私は悲鳴嶼行冥。上弦の件そして胡蝶の件。どれをとっても感謝の念に堪えない……」

 

手を合わせて涙を流し続けたまま御辞儀をする行冥。

 

「いえ、とんでもないです。カナエ……さんの命を繋ぐことができて良かったです」

 

光太郎も慌てて頭を下げながら言葉を返す。ふと顔を上げてみると行冥は相変わらず滝のように涙は流れっぱなしにしながら穏やかな笑みを浮かべ頷いていた

 

「南、光太郎だったなァ」

「君は……」

 

次に光太郎に近づいてきたのは傷痕の剣士だった。

 

「風柱、不死川実弥……俺からも感謝を言わせて欲しい。テメェがどんな力を使ったのかは知らねェ。だが胡蝶の命を救ったのが事実なのはアイツから聞いている」

 

ぶっきらぼうな物言いをしつつも光太郎に礼を言いながら頭を下げる不死川。

 

「ほぉー、不死川が素直に頭を下げるなんてな。明日は雪でも降るか?」

「黙れ宇随ィ……!」

 

茶化す様に声をかけてきたのは派手な額当ての男だった。

 

「俺は音柱の宇随天元。派手を信条とする柱一派手な男たァ俺の事よ。んで、そっちにいる地味なのが水柱代理の冨岡義勇。ま、仲良くしてやってくれや」

「よろしく宇随さん、冨岡くん」

「……」

 

冨岡は呼びかけにも応じず、相変わらず我関せずといった様子でどこか虚ろを見つめたままだった。

むっつりと無表情で会話の方を見すらしないその様子に宇随はやれやれだと肩を竦め悲鳴嶼は南無阿弥陀仏と呟き不死川はいけ好かない奴だと吐き捨てた。

場が微妙な空気に覆われてゆく。とても気まずい。光太郎は居心地の悪さに愛想笑いをするしかなかった。

 

「あら、もうみんなお揃いなのね?」

 

そんな雰囲気を打ち破ったのは蝶の舞うような声だった。

 

「カナエちゃん、着いたんだね」

「はい、この通り。光太郎さんももう皆と打ち解けたみたいで安心ね。悲鳴嶼さん、宇随さん、実弥くん、義勇くん。ご心配おかけしました」

 

カナエの登場により場に華やかさが加わってさっきまでの微妙な空気は吹き飛んでいった。

柱の皆に囲まれながらにこやかに笑みを浮かべ言葉を交わすカナエを見ながらこの笑顔を守れて良かった。光太郎は微笑ましく思いながら少し遠巻きにそれの光景から視線を外し改めて屋敷を見つめる。

誰かが近づいてくる気配がする。柱の剣士のように剛毅な雰囲気ではない。むしろ柔和で穏やかな雰囲気を感じ取っていた。

 

「お館様のおなりです」

 

幼い子供の声が響く。

 

(いよいよだ……!)

 

跪き頭を垂れる柱達に倣って光太郎も膝をついた。いよいよ、柱合会議が始まる。




大正コソコソ噂話

光太郎は蝶屋敷で主に力仕事を担当しています。
買い物で荷物持ちをしたり掃除を手伝ったりとよく働き、気さくな性格もあって蝶屋敷の女の子達から兄のように慕われていますよ。
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