ようこそ実力至上主義の教室へ〜間違った青春はとある教室で始まる〜   作:らふ

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第三十三話捻くれぼっちは人気少女の夢を見ない 後編

昨日は話し込んで、作戦を考えた。由比ヶ浜が言った何もしないなど愚の骨頂だと言える。由比ヶ浜はそれでいいんだろうけど、自分自身が傷ついてそれを周囲が認めてるなんてだめだ。

 

自分だけが傷ついていい世界なんて誰も傷つかない世界じゃない。誰も傷つかない世界というのは、こうやって作るんだ。

 

見せてやるよ。由比ヶ浜お前が望んだ世界を。

 

 

 

 

 

 

 

 

先程、メッセージを開いて、一之瀬が書いたメールは全部無視されていた。

 

 

「うぅー、比企谷くん。やっぱり結構きついねこれ。」

 

「おう、よく耐えたな。褒めてやる」

 

ナデナデ

 

頭を撫でながら褒める。一之瀬にものしかかってきた虐めの重荷は後々成長の糧となるだろう。だから、その未来への投資として、僅かながらの褒美。

 

撫でてやることなんて誰にでも出来るが、そこに少しでも気持ちが混ざっているといいなと思いながら。ゆっくりと撫でる。

 

「はぅー、ね、ねぇ、比企谷くん。本当にやるのあの作戦。比企谷くん目立っちゃうよ?」

 

「いいんだよ。ぼっちは目立ってこそ本当のボッチとなる。あれ?これやって俺無視とかされないよね?」

 

「あははー、比企谷くんに話しかける人がいるのかどうかも怪しいけどねー」

 

「その言葉が痛い。ぐさっときたぞ今。まぁ、大丈夫だよ。俺がどんなに批判されても、やることは変わらん。」

 

「ふーん。比企谷くんって変わってるよね」

 

「はぁ?いきなり何言うんだ?俺なんか普通だろ。むしろ普通すぎて俺が浮くまである」

 

「いや、普通じゃないよー。比企谷くんはいい意味で変わってると思うな〜」

 

「はぁ。いい意味でも悪い意味でも変わってるって言われて喜べるようなポジティブなやつではないんでな」

 

「そう言うのなんて言うと思う?」

 

一之瀬は試すような目で俺を見てくる。ここで俺はなんて答えればいいのだろうか。正解はなんなんだろうか。と逡巡し、行き着いた答えは

 

「ふっ、男らしいっていうんだろ?」

 

「ぶっぶー、違います!そう言うのひねデレって言うんだよ」

 

「………なんだその造語聞いた覚えがあるんだが」

 

寧ろ言われ慣れてその言葉が染み付いてきたまである。いやいや、俺はひねデレじゃねぇっての。なんだよひねデレって。俺のことなめてんのか?

 

その時一之瀬はばっと振り向いて、髪が巻かれ、風となってこちら側に吹いてくる。

 

桜の匂いのするシャンプーか何かを使っているのか、桜のフレグランスが漂い、こちら側に吹いてくる。

 

その匂いは確かに一之瀬の存在を際立て、俺に伝ってくる。

 

「私は好きだよそう言うの」

 

俺はそんな一之瀬の顔を見ることも出来ず、確かにある一之瀬の存在を姿からか由比ヶ浜と重ねてしまい、どちらがどちらか判別がつかない。

 

だが、しばしの緊張から解かれ、やっと一之瀬と由比ヶ浜の違いというものに気づき、はっとする。

 

それに気付いても、やはりそれは照れ隠しだったのかもしれない、と思い直した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「でさー、それでさー」

 

「だよねー、それまじあるわー」

 

「ちょっ………」

 

由比ヶ浜(中は一之瀬)が試しにとばかりに話しかけようとするが、あははーと笑いながら完全にわざととしか見えないぶつかり方をする。嫌味なやつだな。

 

しゅんとなっている一之瀬の側によると、慰めに頭を撫でてやる。流石に可哀想だしな。中身が違うのにそうやって避けられるのは辛いことだろう。

 

そういえば由比ヶ浜は今どうやっているのだろうか。

 

俺の想像ではBクラスで薄気味悪い笑みを浮かべながら仲良く振る舞っているように思えるが………それもそれで、由比ヶ浜ならうまくやれそうなのが怖いところだよな。

 

「とりあえず、ホームルームが終わるまでの辛抱だ。由比ヶ浜には知られるなよ。あと、…………雪ノ下。お前には世話になる」

 

「本当よ。なんで私が」

 

雪ノ下こいつの存在が、今は必要だ。俺らは教室の隅で、話しているが、俺はそう長くは居れない。別クラスだし、さっきから視線が痛い。

 

「すまん。お前の助力が必要なんだ。由比ヶ浜といつも一緒にいるお前にしか頼めない。お願いだ」

 

「そうじゃないわ。なんで先に私に話してくれなかったの?」

 

「は?」

 

俺にぶつけられる言葉が俺の考えていたものとは相反する内容であり、それが本当に俺にぶつけられた言葉なのかと半疑になる。

 

「由比ヶ浜さんは私に知られるのが怖かったようだけど、その話は昨日のうちに私に知らせておくのが筋なんじゃないのかしら。」

 

「そ、そうだな。でも、お前が反発する恐れが「ないに決まってるじゃない。」……はぁ?」

 

自分でも気が抜けたような頓狂な声が漏れる。は?何言ってんのこいつ。本当に雪ノ下なのか?

 

「私はそう言うのに敏感だと自負していたのだけれどまだまだ未熟みたいね。私が反発なんてすると思う?それなら貴方は私のことをまだまだ知らないってことになるわね」

 

「ふっ」

 

つい鼻で笑うが、悪い意味じゃない。いい意味で笑ったのだ。気の合う仲間が見つかった時のような、そんな笑い。

 

やはりこいつは俺が思っている以上の人間だ。期待を外させてくれない。

 

「とにかく、私はその作戦乗ったわよ。それよりも貴方聞きたいことがあるのだけれど……」

 

「なに?お前に聞かれるようなことなんてないと思うんだけど」

 

「貴方就任の儀の時派手にやらかしたわよね」

 

「ああ、あれね。ぼっち委員会。いいと思うんだけどなぁ」

 

「別に存在を否定してないわ。貴方が委員長ということが癪なだけで」

 

「は?俺以外の敵人がいると思ってんの?」

 

「いるじゃない。私よ!私こそがぼっち委員会の委員長いや、総裁にふさわしいとおもうの!」

 

「え?」

 

こいつなに言ってんのと視線で送ると、少しびくっとなるが、それ以外に反応がない。

 

ちらと一之瀬の方を見るが、雪ノ下の剣幕に捲し立てられたのかぽけーとしている。

 

つまり一之瀬もこいつなに言ってんのと思っているのだ。

 

「ふ、ふたりしてそんな顔しなくてもいいじゃない。私はそう思って口にしただけなのだし……」

 

「ああ、そういう意味じゃないんだけど……いやそういう意味だな。まさになに言ってんのこいつと」

 

「ふ、ふーん。比企谷くんも偉くなったものね。昔は私に毒舌を振る舞われ、ひいひい言ってたくせに」

 

「ひいひい言ってた覚えは一切ないんだが」

 

「兎に角、私こそ真のぼっちよ!貴方が総裁なんて認められないわ!ということで、私も委員会に入れなさい。」

 

「いや、お前のその勝負心もうちょっと違うとこで生かせないのか?」

 

「何か?」

 

「い、いえ、何もありません。だからその目はやめて!」

 

「ふん。わかればいいのよ。で、私の役職はなにかしら」

 

「へ?」

 

こいつちょっと陽乃さんに似ているな。似ているいうか姉妹なのだし当たり前のことだと思うけど、こういうところ少し似ている。

 

変なとこで真面目になんだよなぁ。

 

「………今までの詫びとして副総裁、副委員長の役職を任します」

 

「光栄ね。じゃあ。この話はこれでおしまい。貴方が副会長になっているという話も、由比ヶ浜さんのことでの詳細も聞かないわ。

 

だから、派手に暴れましょう」

 

「そうだな」

 

鼻で笑い、これからやることを脳内でもう一度シュミレートする。

 

さぁ、派手に暴れるか。

 

思ったんだけど、副総裁ってなに?お前やっぱぼっちだったのな。変んねでなお前も。てか、由比ヶ浜いるんだからぼっちじゃなくね。お前やっぱずるいわ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ホールルームが終わる鐘が鳴ったあと、俺はDクラスに駆けつけて、教壇に立つ。

 

隣には雪ノ下がいるが、それも必要なことだ。

 

この解決策では雪ノ下を後ろ盾にする。

 

まぁ、ただの宣言に近いけどな。

 

「では、貴方達には聞いてもらうことがあるわ」

 

教室の後ろの席では由比ヶ浜の姿をした一之瀬が怯えている。クラスで信頼を寄せられている一之瀬には結構辛いことだろう。

 

生徒達はびくっとして、俺たちに向く。

 

中には席を離れ友人らと話している生徒もいて、席を後ろ側に向けていた生徒もいたが、こちらに向く。

 

だが、今すぐにやめさせることなので、問題はない。

 

正攻法で攻める。

 

「単刀直入に言う。このクラスでいじめが起きている。その事を何人の生徒が知っている。」

 

パラパラと手が上がるが、その数は3〜4人くらい。その中にはいじめをしているグループの人間もいたが、誰も自分からいじめるような人ではなかった。

 

「ちょっ、あんたなに手をあげてんのよ」コソコソ

 

おーい、こそこそ言ってるが聞こえてるからなー。馬鹿かよあいつ。まぁ情報は割れてるから意味ないんだけどな。

 

「おーい、虐めてるグループは割れてるからなー。」

 

「さて、このヒキガエルは置いといて」

 

生徒はぽかーんとしている。堀北なんかはクスクス笑ってるけどな。覚えとけよ!あいつ。

 

「由比ヶ浜さんを追い詰めたのは誰?今手をあげるなら容赦してあげるけど、手をあげないなら………」

 

「と言うわけで、虐めの首謀者〜手を挙げろ〜。分かってるからな〜」

 

シーンとした教室に手をあげる生徒など見受けられない。

 

やはりでないか。

 

「ふっ、ふふふふっ、ふははははははははは。お前ら。最初聞いたよな?学校はいじめに敏感だって」

 

それを聞いて数人の生徒がびくっとする。ビンゴ。やはり、篠原らの下位グループだったか。

 

清ないす!クラスのグループラインのチャット情報を3万で買ったが、まじでありがたい。やっぱ持つべきものはぼっちだよな!

 

ちらともう一度生徒達に向き直る。既に汗をだらだら流している生徒もいるがもう遅い。

 

「そして、俺は生徒会副会長。お前らが虐めているところを見ればどう反応するかなんてDクラスでもわかるよな?」

 

「ちょっと比企谷くん。私もDクラスなのだけれどそのくらい考えなくてもわかるわよ」

 

その返答に高円寺が、ふふっと爽やかな笑みを浮かべる。

 

あいつ、こうやって空気を穏和させて、あいつらの反応を見ているのが分かってるな?

 

「さぁ、早く出ろよ。今なら許してやる。でないなら。。その時考えさせてもらうわ」

 

「ねぇ、私たち出たほうがいいのかな?」コソコソ

 

「い、いや、でも私は関係ないし。貴方が出なさいよ!」コソコソ

 

「そもそも、私はいじめるの反対だったし」コソコソ

 

「はぁ、出ないのか?十数えるうちに出ろよー、はい十!」

 

あえて緊張を増長させる数数えで、適当な声のカウントをする。

 

「九」

 

緊張を増長させる目的はない。ただ、早く出てきてほしいがためだ

 

「八」

 

ここから先は読めている。俺がなにをして雪ノ下がなにをするかも

 

「七」

 

「す、すみませんでした!!わ、私が、私が虐めを起こしたんです!」

 

確か、篠原と言ったか?あいつがリーダー格だったよな。なるほどね。責任追求はなし、か。潔いのか、ただ怯えた結果なのか、わからないけど。

 

「はぁ、ちゃんと出てきてくれたか。お前達が由比ヶ浜をいじめていた奴らだな。」

 

「はい、本当にすみませんでした。」

 

ほう、少しは立派なようだな。クラスの中心である教壇でちゃんと謝れるとは。

 

「まぁ、お前らがちゃんとけじめつけてくれるなら、それでいい。生徒会もそれ以上は求めねぇよ」

 

「け、けじめって………」

 

「まずは由比ヶ浜に謝ること。これは何よりも先にやれ。だが、今すぐやれとは言ってない。こちら側にも事情があるからな。その件が片付いたら謝ってもらう。

 

つまりは俺がその場をセッティングするから、お前達は待ってろ」

 

「は、はい。」

 

「お前らもだぞー佐藤と松下」

 

「「は、はいっ」」

 

揃って、返事をするが、片方はなんだか胡散臭い。あまり関わりたくないやつだな。陽乃さんの超劣化版みたいなやつ。

 

「次に、今月のポイントを由比ヶ浜にやれ。これは命令ではない。お前らに俺が提案するだけだ。勝手にしろ」

 

ポイントをやれってところでは少しびくっとして、僅かに顔を歪めた篠原だったが、次の言葉を聞いて安堵したかのような表情を見せた。

 

「次に、由比ヶ浜に仲良くしてやってくれ。これも命令ではない。……」

 

 

その時、偶然なのか、或いは移動教室か何かだったのか知らないが、一之瀬の姿をした由比ヶ浜が通った。

 

チラッとこちらを見て、少し残念そうに顔を顰めたが、すぐに正面を向く。

 

「あと、由比ヶ浜はお前らのことを憎んでいない」

 

「へ?」

 

「そんな驚くことか?由比ヶ浜はお前らについては一切怒ってねぇよ。寧ろうまくやれなかった自分に怒ってるくらいだ。」

 

「ほ、本当なの?由比ヶ浜さん」

 

泣きそうな表情で由比ヶ浜の姿をした一之瀬に顔を向けるが、一之瀬は。

 

ニコッと笑顔を向け、怒っていないとばかりに頷く。

 

「ゆ、由比ヶ浜さぁああん。ご、ごめん。本当にごめん!!」

 

3人とも一之瀬の元に走っていき、抱きつく。

 

結局俺はこう言うのが見たかったのかもな。ちゃんと解決して、前に進む。そんな姿が俺は見たかったのかもしれない。

 

「は、あははー。分かった。分かったからはなして〜」

 

「いいや、離さない。ごめん。ごめんね」

 

「私達もごめん。私が止めてればよかったのにね」

 

「私もごめん。由比ヶ浜さんとちゃんとそうだんしてれば…」

 

だから、お前は胡散臭いっての。もうちょっとちゃんと演技しような〜

 

「最後は言わなくてもいいだろうが、あえて言う。仲良くしろよ」

 

と言い。俺は教室をさる。雪ノ下はどうしただろうか。

 

俺の予想では、微笑をしながら、ゆっくりと席についたのだと思う。優しい微笑みを由比ヶ浜に向けながら。

 

やはり移動教室だったのか、移動していた、一之瀬の姿も、少し笑っているように見えた。

 

「ふっ、由比ヶ浜も明日の学校が楽しくなるといいな」

 

 

 

 

 

 

 

「なーに言ってんの。比企谷」

 

「はっ?!お、お前………」

 

恐る恐ると言った風に振り向く。その時間は妙に長く感じられ、それは振り向きたくないと言う意思の元かもしれなかった。

 

なんでここにいる

 

「久しぶり〜って言っても一年ぶりかな。比企谷」

 

「折本」

 

折本かおりの姿がそこにあった。

 

俺が捨てていった過去の変貌が、

 

見えた気がした。

 

誰かとカップリングさせたいと思っているのですが誰がいいですか?

  • 櫛田桔梗
  • 一ノ瀬帆波
  • 坂柳有栖
  • 椎名ひより
  • 龍園翔
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