宇宙最強の龍神たちが異世界を征く   作:御代川辰

3 / 5
第参首 密会×ト×交流

「おいお前ら!聞こえてるか!聞こえてるなら静かにしろ!」

 

 百人以上もいる人間の叫び声をかきけすかのような大声が響き、神殿が大きく揺れる。場はしんと静まりかえり、ついさっきまで大騒ぎしていた者たちは皆声のした方へ注目した。

 視線の先には狼狽(うろた)えているイシュタル、そして身に付けているもの全てが闇のように真っ黒に染め上げられている青年が立っていた。

 

「いいか?今から俺と、この神官が言うことを耳の穴かっぽじってよく聞け」

 

 一同は一瞬放心状態になるものの、すぐに気を整え直した。青年は確認するかのようにうんと一度だけ(うなず)くと、イシュタルに説明を促す。

 

「皆様にお伝えします…………」

 

 百人を越える人間から一斉に怒気のこもった視線を向けられる。

 

()()()の我々が扱える空間魔法では、皆様が元いた世界を()()()()()()()()ことは()()()です…………しかし…………」

 

 ここでイシュタルは一度言葉を切る。目の前に陣取る自分たち以上の強さをもつ人の皮を被った怪物の群れ、そして真横に立つ全てを食い尽くす捕食者の気配。この凄まじい恐怖からくる体の震えをなんとか抑えながら、再び言葉を(つむ)ぐ。

 

「いつ魔人族の軍勢が人類(ヒト族)の領域に侵攻してくるかわからない状況です。皆様が我らの危機を救って(いただ)けるのであれば…………」

「ふざけた物言いをするのも大概にしてくれませんか?」

 

 森羅(シンラ)と同じ格好をした大柄な男、【秋樽桜備(アキタル・オウビ)】がイシュタルの言葉を(さえぎ)って声を挙げた。

 

「何故俺たちがあなた方を守る前提で話を進めるのか、全く理解できません。第一我々の同意もなく突然ここに連れて来た。これは戦争当事国とは関係のない中立国から(さら)って来た人間に(もっと)もらしい嘘を並べ立てて無理やり戦争に参加させる、あまりにも非人道的なやり方だ!」

 

 アキタルの言葉はまさしく正論だった。

 

「でも、戦争当事国の兵士全てが中立国の国民と敵対国の兵士を区別できる。そんなことあり得ないんじゃないですか?」

 

 しかし、思わぬ反論がアキタルに返された。

 

「【光輝(こうき)】くん……何言ってるの……?」

「何バカなこと言ってるんだお前!?」

 

 【天之河(あまのがわ)光輝(こうき)】。18歳にも満たない学生である。

 

(確かにそうだ……おそらく文化の水準は近代以前で、しかも外見が決定的に異なる人種と敵対している……イシュタルさんたちと同じヒト族である俺たちは、姿を見られた瞬間に殺される可能性も否定できないわけか…………)

 

 飛羽真(とうま)はアキタルと光輝の発言を分析し、頭に浮かべた幻影の中で、最悪の未来を予想した。光輝の否定は的確であるし、アキタルの主張も筋が通っている。

 しかし。

 

(さっき光輝って呼ばれた子は危険な気配がする……ちょうど、まるでカリバーの……)

 

 飛羽真(とうま)は光輝の言葉……というよりは存在自体に危険を感じ、彼とは一切コミュニケーションをとらないことを腹に決めた。

 

「…………わかりました。では皆様が元いた世界へ帰還するための準備をする間、人類(ヒト族)の領域から許可なく離れない場合に限り、無条件で衣食住と安全を補償することを諸国に()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 最後の言葉に十何人かは違和感を覚えたものの、ある程度の安全を補償されたことで安堵した者が多数。

 

「待ってください」

「(チッ……)おい、呼ばれたぞ」(クソガキが…………)

 

 黒い服の青年、ルキフィアが説明に入ろうとした時、やはり天之川光輝が首を突っ込んで来た。

 

「改めて、勇者というのは一体?」

 

 勇者という(ワード)にイシュタルが反応し、先ほどまでのおどおどとした態度が一変し、まるで水を得た(うお)の如くルキフィアを押し退けると、そのまま説明を再開した。

 

「トータスにおいて唯一なる神エヒト様がお選びになった救世の士のことです!」

勇者(Brave)よりも騎士王(Knight King)の方がずっと格好(かっこ)いい)

(勇者よりもヒーロー(英雄)の方がもっと格好いい)

 

 一方【アーサー(Arthur)ボイル(Boil)】とシンラは全く無関係なことを考えていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その後長々と魔人族と人類(ヒト族)との戦争の内容などの説明を終え、一度《神山(しんざん)》から下山することになった。そして時系列は(ふもと)の町に到着したところから再び動きだす。

 

「結局あのクソガキども(光輝・【大介】)のせいで説明ができなかった…………」

 

 ルキフィアは川原(かわら)に転がっている大きな石に座り、怒りに満ちながらもひどく落ち込んだ様子で愚痴を吐いていた。エリュシオンは苦笑いをしながら釣ったばかりのアユのような川魚の焼き加減を確認しており、絲遊(スーヨウ)は力なく黄昏(たそがれ)ているルキフィアの頭を健気(けなげ)に撫でている。

 

「まあ、味方になってくれそうな子は少なからずいるし…………ほら、ルキとスーちゃんの分焼けたよ」

 

 エリュシオンは焼けた魚をルキフィアに手渡した。

 

「ああ…………(わり)いなエル…………」

 

 ルキフィアは元気のない態度のまま、ゆっくりと焼き魚を受けとる。

 

「味方になってくれそうな子って?」

 

 スーヨウも焼き魚を受け取りながら、エリュシオンの言葉を追及する。

 

「うん。ちょっと待ってね…………《汝我心顕表。(Njàng kib vèy rómá jak.)光霊龍皇名。(Aôn xìur Hoü Erú wê.)*1

 

 エリュシオンが詠唱を終えると、ルキフィアの黒いオーロラの如く円形の光が現れた。その光の(サークル)の中には、おそらくこのトータスに召喚されたであろう人々の名前が列記(れっき)されている。

 

・【南雲(なぐも)ハジメ】 ・【白崎(しらさき)香織(かおり)】 ・畑山(はたやま)愛子(あいこ) ・【八重樫(やえがし)(しずく)

・【真神(まかみ)拓士(たくし)】 ・森羅日下部(シンラ・クサカベ) ・アーサー・ボイル ・秋樽桜備(アキタル・オウビ)

神山(かみやま)飛羽真(とうま) ・【掟上(おきてがみ)今日子(きょうこ)】 ・坂田(さかた)銀時(ぎんとき) ・(かつら)小太郎(こたろう)

・エリザベス ・【志村(しむら)新八(しんぱち)】 ・【神楽(かぐら)】 ・【遠野(とおの)一二三(ひふみ)

・【遠野オリガ(Origa)】 ・リムル・テンペスト ・【(おおとり)天馬(てんま)

・【八雲(やくも)(ゆかり)】 ・【八雲(くろ)】 ・【紺野(こんの)(らん)】 ・【紺野木綿季(ゆうき)

・【ハート(Hart)ロイミュード(Roimude)】 ・【神威(かむい)】 ・【竈門(かまど)炭治郎(たんじろう)

・【竈門禰豆子(ねずこ)】 ・【吾妻(あがつま)善逸(ぜんいつ)】 ・【嘴平(はしびら)伊之助(いのすけ)】 ・【武久火縄(タケヒサ・ヒナワ)

・【茉希尾瀬(マキ・オゼ)】 ・【アイリス(Iris)】 ・【環古達(タマキ・コタツ)

・【ヴィクトル(Victor)リヒト(Licht)】 ・【伊丹(いたみ)耀司(ようじ)】 ・【ターニャ(Tanya)デグレチャフ(Degurechaff)

・【ン・ダグバ・ゼバ(Ng Dagba Zeba)】 ・【天道(てんどう)総司(そうじ)】 ・【中村(なかむら)主水(もんど)

・【エレン(Ellen)イェーガー(Jäger)】 ・【ミカサ(Mikasa)アッカーマン(Ackarmnn)】 ・【烏丸(からすま)惟臣(ただおみ)

・【一条(いちじょう)(かおる)】 ・【ベル(Bell)クラネル(Cranell)

 

「………………まあ、現時点で目星(めぼし)をつけてるのはこのぐらいかな」

 

 と、エリュシオンはこぼす。

 

本当(ほんと)にこれだけの大戦力が()()()私たちの味方になるのなら、苦労はないんだけどね…………」

 

 スーヨウは呆れながら光の円の向こう側に座るエリュシオンを睨みつけ、豪快に焼き魚を頬張る。

 

「しかし(ゆかり)(くろ)がいるのか。よっぽど暇なんだなあの姉弟(きょうだい)

 

 空中に浮かぶ名簿にあった名前に、ルキフィアが反応を示した。その時。

 

「あら、暇なんて失礼ね」

 

 誰もいないはずの木陰から声が響く。三人が木陰に目をやると、暗闇に無数の目が浮かぶ異空間、“スキマ”から眠ったままの(くろ)を抱き抱えた(ゆかり)が姿を現した。

 

「あなたたちこそ、バカンスが目的でここ(トータス)に来たわけじゃないでしょ?」

「やっぱりお見通しなのね」

 

 意味深長(いみしんちょう)な表情で、スーヨウは呟いた。(ゆかり)はにやりと冷徹な笑みを浮かべ、三人に問う。

 

「それじゃ聞かせてもらうわ。あなたたちの目的を」

 

 

───────────────────────────────────────

 

 

「消防士なのに炎の超能力って、矛盾してるんじゃないか?」

 

 《ハイリヒ王国》の兵士に案内された王城の一室で、飛羽真(とうま)はシンラたち特殊消防官が(あやつ)る能力を、自前(じまえ)の分析力と想像力で演算しながら、目の前の青年に質問した。飛羽真(とうま)の頭の中には、足から炎を吹きながら空を飛び、上空から消火剤を散布するシンラの姿が浮かんでいる。

 この問いに対し、シンラとアーサーは首を横に振って答えた。

 

「いや、俺たち能力者は伝導者が世界中にばら蒔いた、人体発火現象を起こして人間を(ほむら)ビトに変える虫の力に適合した存在なんだ。根っこが同じだから、似た者同士ってことになるんだよ」

「がむしゃらに水をかけるよりも、同じ焔ビトの力を使って無力化する方が遥かに高い効果が得られる。アイリスたちシスターの鎮魂(ちんこん)の補助にも、一役買っているというわけだ」

 

 二人の返答に対し、飛羽真(とうま)はなるほどと(うなず)く。

 

「何だか仮面ライダーとよく似てるな」

 

 ()()()という(ワード)から連想されるのは、飛羽真(とうま)自身、そして友人たちが所属する〈Sword of Logos(文字の剣)〉の剣士たちと、敵対する組織〈メギド(Megid)〉の魔人たちの関係だ。前者はシンラたち特殊消防士にあたり、後者は伝導者たちにあたる。さらにどちらも《大いなる本》の欠片(かけら)である《ワンダーライドブック》、そして《大いなる本》のコピー品である《アルターライドブック》の力を媒体として戦っていることから、使う力の根源は同じである(クロス・オブ・ファイア)と断言できる。

 

「仮面ライダーってなんだ?ヒーローみたいなものか?」

 

 仮面ライダーという言葉にシンラが興味を示し、その悪魔のような表情からは考えられない無邪気な笑顔を見た飛羽真(とうま)は、いつから持っていたのか大きな(かばん)から万年筆と真っ白な植物繊維でできた大量の紙、そしてアルバムを取り出し、説明を始める。

 

「ヒーローと騎士王の良いとこ取りってところかな。何より俺自身が仮面ライダーだから、説明が楽だ」

「なんと!貴殿(きでん)も騎士王となることを(こころざ)す同志であったか!これは()いことを聞いた!飛羽真(とうま)殿、俺と共に騎士王を目指そうぞ!」

「いや、俺は小説家なんだけどな…………」

 

 同志が増えたと勝手に喜んでいるアーサーを他所に、飛羽真(とうま)は大きなアルバムを開く。アルバムにはメインライダーを始めサブライダー、ダークライダーを問わずあらゆる仮面ライダーたちの写真が、一枚ずつ丁寧(ていねい)に貼られていた。

 

 

───────────────────────────────────────

 

 

(やはり()()したのは間違いだったな…………)

 

 ため息を吐きながら、現職自衛官の【真神(まかみ)拓士(たくし)】、またの名を【フェンリルオルフェノク】はベッドに身を横たえる。

 彼は勤務歴15年の陸上自衛隊幹部候補生で現在の階級は一等陸佐、自宅での個人鍛練中に事故死。三途(さんず)の川の一歩手前で奪衣婆(だつえば)に蘇生させてもらい、その時にオルフェノクとして覚醒したのだ。

 が、蘇生して一年も()たない(うち)に異世界に召喚され、しかも無益(むえき)な戦争に参加すると言い出した頭のおかしい高校生たちを説得らしい説得もできないまま、自身も参戦することになってしまった情けない男でもある。

 

(ライダーズギアが無い以上、人間態のままで戦闘するしかないか…………)

 

 あったとしても使えるかすらわからないが、と落胆しながら拓士(たくし)は眠りにつこうとする。が、ノックもなく部屋の扉が開けられ、彼の眠りは(さまた)げられた。

 

(さが)しましたよ真神(まかみ)さん!」

真神(まかみ)大佐殿(どの)!ただいまお迎えにあがりました!」

伊丹(いたみ)烏丸(からすま)……今度はどうした……」

 

 部屋に入って来たのは防衛大学校の後輩であり、三等陸尉の伊丹(いたみ)耀司(ようじ)。そして、同窓生で同じく一等陸佐の烏丸(からすま)惟臣(ただおみ)の二人。伊丹(いたみ)は〔食う、寝る、遊ぶ。その(あいま)にちょっとの人生〕を座右の銘としており、烏丸(からすま)拓士(たくし)の二人とはまるで正反対な自由人である。

 

「いえ、実は俺の友人の息子さんがこっちにいるんですよ。それで真神(まかみ)一佐の話をしたら、もう目の色変えて実際に会いたいって聞かなくて…………」

「たかが子供の望みを叶えるために俺の寿命を削るのか伊丹(いたみ)…………」

「たかがとは何ですか、たかがとは!」

「おまえ、本当に【両津(りょうつ)】さんに似てきたな…………」

 

 伊丹(いたみ)はあきれる烏丸(からすま)を他所に、拓士(たくし)を無理やり起き上がらせて南雲(なぐも)ハジメのもとへ連行しようと歩みを進めるのだった。

 

 

───────────────────────────────────────

 

 

 王城のまた別の部屋には、四人の男女が集まっていた。

 

「ほう?お前も“神”を自称する者に出会ったのか?それも三人?」

「戦争に巻き込まれて左手無くして異世界召喚が三度目って……そりゃとんでもない災難だね……」

 

 一二三(ひふみ)の話を聞いたターニャはいかにも不機嫌な表情で、その隣のリムルは驚愕一色の表情でそれぞれ反応を示す。一方一二三(ひふみ)の隣に座るオリガは、二人の反応を楽しむように、口元(くちもと)(するど)(みが)かれた鉄扇(てつせん)で隠しながら狂気(きょうき)()みた笑顔を浮かべている。

 

「まあ、俺自身欲望の(おもむ)くままに人間(ひと)を殺せる世界ならどこにでも行きたいと思っていた矢先だからな。力をくれた神たちには感謝してる。死神の態度を除けばだが」

 

 リムルはあっさりと本音(ほんね)を吐いた一二三(ひふみ)に恐怖を覚える。

 

「願ったり叶ったりってことだね…………」

(遠野一二三(ひふみ)…………その狂気、気に入った!)

 

 対してターニャは一二三(ひふみ)の心の内に秘められた狂気に魅了されつつあった。

 

 

───────────────────────────────────────

 

 

「ブレン、メディック、みんな…………本当にごめんな……()()俺だけが…………」

 

 王城の一室で大粒の涙を流しながら、ハートはロイミュードたちの遺影に謝罪の言葉を投げ掛けていた。万事屋(よろずや)のメンバーと小太郎(こたろう)、エリザベスはその様子を神妙(しんみょう)な様子で見ていたが、新八(しんぱち)だけは疑問を覚えずにはいられなかった。

 

「…………あの、銀さん?僕たち、ハートさんのお友達の供養をしてるんですよね?どうして、ハートさんは懺悔(ざんげ)を?」

 

 銀時(ぎんとき)新八(しんぱち)の肩にぽんと手を置くと、呆れたように説明する。

 

「(新八(しんぱち)、見てわからねぇか?あいつにとって友達は、死んでもなお自分の命以上に大切な存在みてぇなんだよ)」

 

 銀時(ぎんとき)の口から()げられた事実に、新八(しんぱち)は驚きのあまり一瞬言葉を失う。ハートの背中とハートが見つめる107個の遺影、そして銀時(ぎんとき)の顔を見比べ、我にかえって言葉を(つな)げようとする。

 

「(えっ!?それってつまり…………)」

「(それ以上は言うな。私どもの言葉は、彼の耳にもにもしっかりと聴こえている。今は葬儀中だからな、悲しい気持ちは胸の内にしまっておけ)」

 

 しかし、銀時(ぎんとき)小太郎(こたろう)新八(しんぱち)の発言を(さえぎ)る。短い説教を終えると、全員でハートの後ろに座り、合掌(がっしょう)して黙祷(もくとう)を捧げた。

 

(成仏……してくれよ)

 

 

───────────────────────────────────────

 

 

「へえ…………そのエヒトルジュエって神、聞けば聞くほど何も(まな)ぶ気のない老害だってことがよぉくわかるわ」

 

 (ゆかり)は黒い笑みを浮かべ、未だぐっすりと眠っている(くろ)の頭を撫でながら呟く。

 

「やってることがアホすぎるんだよ。よりにもよって大御寳(おおみたから)にまで手を出しやがって…………」

 

 ルキフィアは何度目かもわからないため息を吐き、ロングコートのポケットから煙草(たばこ)とライターを取り出した。

 

「ちょっと待ってルキ!大御寳(おおみたから)がいるってどういうことなの!?」

 

 煙草に吸い始めたルキフィアに、スーヨウが慌てた様子で(せま)った。

 ルキフィアは機嫌の悪さが一目でわかる態度で煙草の(けむり)を吐き、怒気を(はら)んだ口調で答える。

 

「つまるところ、人質(ひとじち)だ」

 

 エリュシオン、(ゆかり)、スーヨウは戦慄(せんりつ)する。

 

「エヒトは恐らく、國つ祇(くにつかみ)人間(ヒト)の混血を得ようとしているんだろう」

 

 ルキフィアの仮説はこうだ。

 まず、天皇(すめらみこと)がいる世界線から異民族と混血していない、つまり純粋な天つ神(あまつかみ)、または國つ祇(くにつかみ)である日本国民を探し出し、それらをまとめて拉致()()()

 次に、脅迫(きょうはく)した上で(おだ)て上げて復活した解放者と戦わせ、生き残った者に配偶者を(あて)がい、帰還の意思を奪って子を作らせる。

 一定数の子と地球の軍事力に関わるものなどの知識が得られれば充分であるため、用済みになった生き残りを皆殺しにし、証拠を隠滅する。

 最終的にトータスのヒトと日本の天神地祇(てんじんちぎ)の混血種族を支配層とする国家を建てさせ、ゆくゆくは地球をもエヒトルジュエの勢力圏とするというもの。

 

「それは無茶苦茶が過ぎるんじゃないの?」

 

 エリュシオンはそのあまりにもおおげさな仮説に苦言を呈した。しかし、ルキフィアは真剣な表情を崩さず、冷徹に言い放つ。

 

「確かに大袈裟(おおげさ)すぎると自覚してる。が、折り紙つきの実力者(バケモノ)が百人近くこの世界に呼ばれているんだ。()()()()()()()()()()()()()()()()()?」

 

 ルキフィアの言葉から、スーヨウはテトの言葉を思い出していた。

 

((たった一度だけ、復讐をすることが許されるなら、僕はあいつ(エヒト)を地獄に連れて行きたい。殺された人たちの苦しみを理解させてやるんだ。たとえそれが自分自身を滅ぼす結果になったとしても、あいつだけは許せないから))

 

 涙ながらに復讐の代行を懇願してきた、神としての威厳など皆無の幼い少年。

 かつての自分の姿と重なる。

 

(テト…………待ってて。必ず約束を果たすから)

「さて、トータス征伐の作戦会議といくか」

 

 改めてルキフィアは宣言した。

*1
意訳:汝、我が心を(あらわ)せ。光の御霊(みたま)よ、龍の(すめらぎ)が呼んでいる。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。