シデコブシの蕾。その花が満開に咲き誇るとき、その花は……   作:青の色系が好きな者です。

3 / 9
お待たせしてしまって申し訳ございません…。
書き上げてから、文書を見直して
言葉を書き足していました……。

それから、バレンタイン復刻ガチャの銀ちゃん。
去年爆死した銀ちゃんが、来てくれました。
今年一番で嬉しい出来事です。ありがとう、銀ちゃん。


少しでもこの作品で、皆様が楽しんでいただけたのなら嬉しいです。
それでは、本文へどうぞ…



鷲尾須美は勇者である 第1話

 

 

神樹様に選ばれた、と聞かされ

やってくる敵が世界を壊すものと

聞かされた時、本当は少し恐かった。

 

でも、大好きな■■■■が一緒に居てくれるなら

恐くても、辛くても、平気だって思えた。

 

その■■■■が、■■■なるなんて

この時は、夢にも思わなかった。

 

 

神世紀 298年4月25日 勇者御記

大赦書史部・巫女様 検閲済

 

____________________________________________________

第一話

 

 

 

 

ガラガラ…

 

「こんにちは。」

 

教室の扉を開けて中へ入った一人の少女が

挨拶を交わすと、その挨拶に返事を返してくれた。

 

「あ、鷲尾ちゃん!こんにちは」

「えぇ、こんにちは。」

 

 

少女の名は『鷲尾(わしお)須美(すみ)

この国を支える組織・大赦の家系である

鷲尾家の一人娘であり、大事な"お役目"を担っている

4人の内の一人である。

 

 

 

そして此処は、神樹館(しんじゅかん)小学校の六年一組の教室で

鷲尾須美が通う学舎とクラス名である。

 

神樹館____この世界の全てである"神樹"の

名前がついた学校なので、格式は高いし

生徒達も育ちと品も良い。先程の同級生も

しっかりと、挨拶を返してくれた。

この学校は主に、大赦の関係者の家柄の子達が通う

言わば、『お嬢様』『お坊ちゃま』の学校だ。

 

 

須美は、そんな学校とクラスメイト達が

好きだった…が、優等生の須美と言えども人の子なので、

教室には30人ものクラスメイトが居て、その中で、

どうしても苦手な方に分類してしまう人物が

2名ほど居た、いずれも女子だ。

 

 

その一人は、今まさに須美の隣りの席で

机に突っ伏して、気持ち良さそうに寝ていた。

 

 

「zzZ…むにゃむにゃ……私のベーコン」

 

(……ま、まぁ。朝は眠い時だってあるし……

仕方ないことよ…)

 

 

須美はそうやって自分に言い聞かせる。

こんな気持ちにさせるから、隣で寝ている

級友に苦手意識してしまうのだ。

 

 

「あわわっ、お母さんごめんなさい!」

 

 

そんな事を叫びながら、彼女はいきなり

立ち上がった。

しーん、と静まり返る教室のクラスメイト達。

 

 

「…はれぇ?家じゃない〜……?」

「ここは教室で、朝の学活前よ、乃木さん」

 

 

冷静な突っ込みを入れる須美…すると途端に

クラスがどっ、と笑いに満ちた。

 

 

「あわわわ……。あぁ…やっちゃったなぁ〜」

 

 

上品な顔立ちに似合わぬ

ドジっ娘っぷりを見せつけ、照れ笑いを

浮かべている彼女は『乃木(のぎ)園子(そのこ)

 

 

大赦の中でも、大きな発言力を持つ

乃木家の一人娘だ。だが、乃木家の威厳からは

とても想像出来ないくらいに園子は、誰とでも笑顔で

話してるし、かと思えば、ぽやーっとして

窓を見つめたりすることがあり、そして気が付けば

いつの間にか寝てしまったりする…

スローライフを満喫している様な女の子だ。

 

 

そんな園子を、チラチラと見る、須美の視線に気付き、

園子は彼女に気の抜けた挨拶をした。

 

 

「あ。すみすけ、おはよう〜」

「ごほん。おはよう、乃木さん」

 

 

きちんと挨拶を返す須美。

学生として、いや。人としても

挨拶とは大事なものだ。

挨拶をしないと、神樹様に怒られてしまうと、

そう昔から言い聞かされて来た

子供達は、育っていくのだ。

 

 

「ねぇ乃木さん。私、別にすみすけって

あだ名じゃないんだけれど」

 

「あ、シオスミの方が良かったかな〜?

私の事も乃木さんじゃなくて、自由に呼んでいいよ。

ノギーとかさ〜」

 

「……あまり英文字っぽい響は…」

 

 

ニコニコと、善意100%な笑顔を向けて

あだ名を付けて来る彼女の扱いに困ってしまう。

彼女がこうして、にこやかに隣りで過ごしている分には

良いのだが……。

須美が、園子を苦手にしてる理由にはもう一つある。

それは……乃木園子が自身と同じお役目を担っていて

彼女の天然系な性格が、神聖で大事なお役目を果たせるのか、不安になってしまってるからだ。

 

 

と、須美がそんな事を考えていると

教室の扉が勢いよく、ガラッ!と開く。

 

 

「おはよう!いや〜、間に合って良かったー!」

「あ、おはようギンちゃん!間に合ったね!」

「うん!ギリギリセーフだったよ♪」

 

 

そう言って、教室の入口を開けて入って来た彼女は

三ノ輪(みのわ)(ぎん)』その底抜けた快活さで皆んなに挨拶を

すると周りの同級生達が自然と華やいでいく……

そんな魅力を持つ女の子。

 

 

彼女も乃木家と同じく大赦で大きな発言力を持っている

一家の娘で、三ノ輪銀も大事なお役目を担っている

4人の内の一人だ。銀は昼休みにいつも、校庭で同級生達と遊んでいたりと、明るく元気な体育会系のコミュニティに属している娘である。

 

そして……須美が苦手としている

もう一人の少女でもある。彼女の持つ魅力でもある、

底抜け過ぎてる快活さが、大事なお役目をちゃんと

成せるのか不安になってしまい…。

銀に苦手意識をしてしまう、理由の一つだった。

 

 

「皆んな、おはよう。」

「あ、時音ちゃん!おはようー!」

「うん、おはよう」

 

 

続けて、銀の後ろから現れ教室へ入って来た

もう一人の少女は、快活な銀とは違って

落ち着いた態度で同級生達に爽やかに微笑んで、挨拶を

終えると…一緒に登校して来た銀に対し、話しかける。

 

「銀ちゃん。間に合ったのは良かったけど、

急に突っ走るのは止めようね?危うく怪我するとこ

だったでしょ…」

 

「うっ、ごめん。学校が見えて来たから、つい…

走り出しちゃって、、でも!時音のお陰で猫は無事だったし、学校にも間に合ったんだし……それじゃあダメ?」

 

銀に名前を呼ばれた少女は、一緒に登校して来た銀に

忠告をしつつも、彼女のことを気に掛けていた。

 

幼少の頃から一緒らしい、銀の幼馴染みである彼女は

周りに気配りもでき、老若男女を問わずに優しく、

クラスメイト達からも慕われていて、勉学も運動神経も

良くて…文武両道とは、まさに彼女の事を言うのだろう。

普段は大人びている彼女が、ふと見せる、

あどけない表情に魅了され、いつの間にか

惹かれてしまう人達も多い。……そんな女の子だ。

 

『水月家』と言えば、大赦で知らない者は居ないだろう。

全ての研究者の中の、最高地位に立っていて、今までに

研究で大赦に数々の貢献をし、その地位を上げて

今や水月家は、大赦に欠かせない一族だ。

大赦の中でも、高い地位に存在する名家からは

今までに“勇者”又は“巫女”を輩出してきた。

だが、元々は大赦の家系では無い水月家からは

勇者も、巫女も輩出する事は無かった……

しかし、そんな水月家に初となる勇者が

誕生日したというのだ。

 

それが彼女。須美達と同じく

"お役目"を担う最後の一人『水月(みづき)時音(ときね)』だ。

 

 

 

 

 

教室の扉の前から未だに動かない二人は

何やら言い合っていた。話していた内容はこうだ。

学校が見えて来た瞬間、急に全速力で

走り出した銀。そこにタイミング良く(悪く)

茂みから現れた野良猫と、危うく衝突しそうに

なったが、間一髪、時音が彼女の手を引いた事で

野良猫も銀も無事だった_____というのが

二人がここに来るまでの、出来事のようだ。

 

「駄目じゃないけど…でも今度からは

気を付けようね?銀ちゃんは女の子なんだから

怪我なんてしたら駄目だよ…銀ちゃん一人の体じゃ

ないんだからね?」

 

「わ、わかってるって!時音は心配し過ぎなんだって!

アタシだってもう6年生なんだから、もうちょっとは

頼りにしてくれてもいいだろ?」

 

「うーん。そうは言っても、銀ちゃんだからなぁ……」

「……むす〜」

 

「ははっ、ごめんってば銀ちゃん。

わかったよ、じゃあ今度何かあった時は

よろしくね?頼りにしてるよ、銀ちゃん」

 

「あぁ!この銀様にまかせろって!!」

 

 

 

そんな二人の少女のやり取りを、須美はじっーと、

遠くの方で見つめていた。

須美は、時音の事が少し前から気になっていた。

 

「……(似てる…けど、やっぱり違うよね。

だって、あんな風に笑う子じゃなかったもん…

人違いよ、きっと。)」

 

その理由は、須美が幼少の頃に一度だけ

時音と出逢っていた事がある…かもしれない

という、朧気な記憶があるからだ。

とは言え、須美が覚えているのは…怪我をして

その場を動けなくなってしまった、須美の

傷の手当を器用にするも、あまり感情を表情に

出さない少女の顔と。

手当をが終えた後に、ぎこちない手つきで

頭を撫でてくれた不器用な優しさだけだった。

その後すぐに須美の両親が迎えに来て

手当をしてくれた少女に、お礼の言葉を言おう

としたら、少女の姿はもう居なく……。

なので、少女の名を聞くことが出来なかったので

今、目の前に居る水月時音が

その時の女の子なのか、確証が取れずにおり、

勇気を持って話し掛けようにも

彼女の隣にはいつも、三ノ輪銀が傍に居る為に

話をかけられずに居るのだ。

 

時音のことは、昔から噂で聞いた事はあった。

成績優秀で勉学では同級生達に教えてあげて、

その教え方も上手だとか、運動神経も良くて、体育の授業では幼馴染みの子とペアを組むと、息ぴったりで負け無しの凄い子が居るとか…が、実際に本人と話したことは無く、噂だけ聞いていると少し好感を持ち、仲良くなりたいと想うようになっていた須美だった。

それから暫くして、勇者として訓練を行うようになって

から、他の勇者達と合同での訓練をする際に、初めて

噂の主である時音と対面した。

性格は、落ち着きがあって穏やか。

成績優秀で運動神経も良く、噂通りの人物だったが

 

ただ1つだけ_____噂と違った事があった。

それは幼馴染みの三ノ輪銀に対して

彼女は、正反対の性格だったこと。

 

天真爛漫な性格で、元気いっぱいの銀とは違い

大人しい性格で、落ち着きのある時音が

なぜ銀と仲が良いのか、須美は不思議で仕方なかった。

時音を見つめながら、須美がそんな事を思考していると

須美が、自分に向けてくる視線に気付いた時音は彼女の

前まで行き、考え込んでいる顔の前で手を振りながら

挨拶をする。

 

 

「鷲尾さん。おはよう」

「……ぇ、あ!おはようございます。水月さん…」

「鷲尾さん、どうしたの?考え事でもしてた?」

 

「い、いえ。その……(貴女のことを考えてた、なんて

言える訳ないし…でも、聞くなら今しかない……よし!)

あ、あの水月さん。昔に私とあなた「時音!今日出る

宿題、アタシの家で一緒にやろう!」

 

「うん、いいよー。…それで鷲尾さん。

さっき何か言いかけてたけど、何かな?」

 

「ぇ…な、なんでもないわ……(また聞けなかった…)」

「?…そっか」

 

 

いつもの如く、銀が会話を遮ったことで結局、

時音に聞く事が出来なかった、須美なのだった。

 

 

 

 

須美との会話の後、教室の入口から移動した

銀と時音は、それぞれ自分の席へ着く。

鞄を降ろした時音は、こちらを見る園子に気付き

微笑みながら挨拶を交わす。

 

 

「そのちゃん、おはよう。」

「 おはよう、なんよ~♪トっきー!」

「今日も寝てたの?」

 

「お日様が出てきて、そしたらぽかぽかしてきて

気持ち良くなっちゃって、えへへ〜」

 

「ふふっ、そのちゃんは相変わらずだねぇ。

まるで、眠り姫みたいだね?」

 

「おぉ〜、私がお姫様かぁ〜。

それなら、トっきーが王子様だねぇ〜♪」

 

「え、僕が王子様?…いや、僕には似合わないんじゃないかな?」

 

「そんなことないよ?スヤスヤ王子〜

トっきーにピッタリなんよ〜♪」

 

「スヤスヤ王子か…うん、僕でなんかでよければ

いつでも一緒に寝てあげますよ?スヤスヤ姫(ナデナデ)」

 

「えへへ....やっぱり王子様なんよ〜♪

トっきー!もっと撫でてぇ〜(スリスリ〜)」

 

「わっ、ははっ。スヤスヤ姫は甘えん坊ですね?

(ナデナデ…)」

 

「えへへ〜、スヤスヤ姫は、王子には

甘えん坊の姫なのです〜♪えへへ〜」

 

「それは光栄です。ふふふっ(ナデナデ…)」

 

 

 

大赦組織の中で、絶対的地位の乃木家。

その当主に、挨拶をしにやって来た水月家の当主は

自分の娘を連れて訪れた。

その時に初めて顔を見合わせた。それを切っ掛けに

お互いの連絡先を交換し合って、それから何度か

園子との話し相手をしていた。その頃から園子は

大赦組織で有名な乃木家の令嬢としてではなく

普通の女の子の乃木園子として、そして勇者に

選ばれた後も、昔と変わらずに接してくれる時音のことが

園子は昔から好きだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そうこうしてる内に、朝の学活が始まろうとしていた。

クラスメイト達は、それぞれ自分達の席へ着く。

 

担任の先生が教室に入って来た

担任は、二十代半ばの凜とした女性だ。

普段はこそは厳しいが、それは彼女が生徒達を想うから

こその厳しさなのは、生徒達にも伝わっているので心配はいらないだろう。

 

 

そんなこんなで、日直が朝の号令をかけ終え

いつもの日常を迎える

 

 

 

_____筈だった。

 

 

 

 

ドーン!と大きな衝撃音が響き

その衝撃音と同時に、クラスメイト達の動きが

止まっていて、外の景色は静止していたのだ。

 

 

「これは……まさか!」

 

「ねぇねぇ!これって

敵が来たってことじゃないの!?」

 

「うん。銀ちゃん、そうみたい」

 

「三ノ輪さん、水月さんも…2人とも動けるのね」

 

「うん、銀ちゃんと鷲尾さんも動けるってことは……

間違いなくお役目をする時が来たって、事だね」

 

 

3人が、そんな真面目な話をしていると…

 

 

「ふぁ〜、ねみゅい…また寝ちゃったぁ…」

 

 

園子が延びをしながら、瞬きをしていた。

 

 

「あれ?あれあれ?あれ?……夢かぁ〜…むにゃ」

 

「「寝るなぁーっ!!」」

「はぅあ?!!」

「あはは、そのちゃんってば…」

 

 

そのまま二度寝しようとして、須美と銀から

叩き起こされ、驚いた声を上げた園子。

そんな園子の様子を見て、彼女らしいや…と

思わず気が抜けて笑っしまう時音だった。

 

 

そうこうしている内に周囲が光りだし

4人を包み込んでいった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ゆっくりと瞼を開けると

周りの景色が変わり、目の前は異質の空間になっていた。

 

 

「綺麗だねぇ〜、これが神樹様の力で出来た

世界の樹海化なんだねぇ……」

 

「う〜ん。綺麗、なのかな?

…それにしても、想像してた以上に不思議な空間だね。

樹海(ここ)は……。」

 

のんきにそんな事を言う園子に、彼女の

マイペースはいつも通りだと思う時音だった。

 

「正直、事前に話しを聞いていなかったら

アタシは完全にパニくってたかも…」

「だね、私もそう思う…」

 

 

銀と須美の言う通りだ。

目の前に広がる、こんな景色を目撃したら

普通の人間ならパニックになるだろう。

でも、神樹様に選ばれた勇者達は大赦から

事前に、この事を教えられていたのだ。

 

自分達は、これから襲って来る敵と戦い

世界を護る。でも、その事を知っているのは限られた

人達だ。大赦の大人達や、彼女達の両親達…それ以外の

人達は、この事を知らないのだ。

 

そんなの可笑しいのに……

 

 

「……いよいよ私達が、勇者となって敵と戦うのね…」

「ちょっと緊張してくるねぇ〜…」

 

「まぁー、それは仕方ないよ。

敵と戦うの今日が始めてなんだし…

でもアタシ達は神樹様に選ばれた勇者なんだよ?

大丈夫だって!胸張って行こうよ!

時音もそう思うだろ?」

 

「…………」

 

お役目を遂行して、勇者達(3人)を護って

敵と戦っていく____ 僕が存在(いきる)する意味は

それだけの筈だった。

 

 

 

目の前で考え込んでいた

僕の様子を伺いながら、首を傾げている

彼女と出逢うまでは_______

 

「そうだね、僕達なら大丈夫だよ。

神樹様も見守ってくれているし、何よりも

こうして銀ちゃんが、そのちゃんが、鷲尾さんが…

皆んなが一緒に居るからね。」

 

 

そう自分の想いを三人に告げた、時音。

 

 

「えへへ〜、私もだよ〜♪

トっきーや皆んなが一緒に居てくれるから、

大丈夫って想ってるよ〜!」

 

「わっ!とと。そのちゃん…ありがとう」

 

 

そう言いながら、時音の体に抱き着いてきた

園子を受け止める。

 

 

「あぁ!皆んなと一緒なら大丈夫だよな!」

 

 

銀はそう言うと、時音に向かって

親指を立てて、グッ!と突き出し大丈夫!

と示すと、時音はそれに応えるように

頷き、うん。と返事をした。

 

 

園子と銀が、時音の想いに応える。

そんな三人の姿を見て須美は、覚悟をしていた。

自分達は、神樹様によって選ばれお役目をする

存在なんだ。……ならば、教えられたことをやるしかない。

ぐっと拳を握り締め、須美が口を開いた。

 

 

 

「うん、そうだね。

…私達でお役目を成し遂げよう!」

 

「「「うん」」」

 

 

須美の言葉を合図に4人は

互いに顔を見合わせ、制服のポケットから

それぞれスマホを取り出し、真ん中にある『花』の

アイコンを一斉に押す。

 

 

途端に、彼女達を眩い光が包み込む。

 

 

彼女達4人だけが使えるアプリ…

このアプリこそが、人類が敵と

戦う為に、水月家の現当主が

代々受け継がれてきた研究資料を元に創り上げ、

そこへ神樹の力をもらい製造した物……それが

勇者達だけが使えるアプリ【勇者システム】だ。

 

 

 

神樹…その名の通り、神が住む樹だ。

神樹を元にする力により、勇者達の姿は

それぞれ植物を象り、美しい『花』を咲かせた。

 

 

鷲尾須美は、言うなれば清楚の花。

乃木園子は、言うなれば優雅の花。

三ノ輪銀は、言うなれば情熱の花。

水月時音は、言うなれば豪華の花。

 

 

 

勇者として戦う為の衣装へと姿を変える。

この姿は神の力を具現化したもので

彼女達の中には神樹が分け与えた

とてつもなく大きな力が漲るのだ。

 

 

 

4人はそれぞれ武器を手に持つ。

銀は、大きな斧を両手に持ち

園子は、身の丈よりも大きな槍を

須美は、仲間を援護射撃できる弓を

時音は己の体重よりも重量のある、鉄槌だった。

 

 

 

敵は、大橋を渡り向こう側から来る。

神樹様を守る為、今。勇者達の戦いが始まる____

 

 

 

 

「行こう、大橋へ!」

 

 

 

 

 

____________________________________

______________

________

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

敵との戦闘が終了すると、バーデックスは進行ルートを

変え、元来た道を引き返して行き、敵の進行を食い止める事が出来たのだった。

少女4人は、歓喜の余り互いに抱き合い喜びの想いを

叫んでいた。

 

初めての戦いは、苦戦こそしたものの

園子が咄嗟に閃いた作戦を実行して、何とか乗り切れた

のだ。

 

それから暫くすると、樹海化が解け、学校の保健室で

検査を受けに来た4人。

これは勇者として戦った自分達が、体に怪我をしていな

いか、異常は起こっていないかを詳しく調べる為の

決められた検査である。今は検査の準備中だ。

 

 

 

「いや〜、ミノさんがバーデックスの

水を飲んじゃってた時はビックリしたよ〜」

 

「あー、あれな…

あんま思い出したくないや、ははっ……」

 

「大体、バーデックスから出た水なんかを

飲もうだなんて、普通は思わないと思うけど…」

 

「あんなにゴグゴクと、敵の水を飲み干すんだもん

銀ちゃん……あれは流石に驚いたよ…。」

 

「で、でも!あの時は!

ああするしかなかったんだってば!」

 

 

バーデックスの攻撃により

銀の頭部に水の球が張り付いしまい、どうしたら…と

必死に考えていた、時音と須美を置いて、なんと銀は

水球の水を飲み干していったのだ。

驚きの行動を取った銀に、須美は思わず困惑の声を上げ、そんな幼馴染みの、破天荒っ振を目の当たりにして、唖然となっていた時音をよそ目に、銀は…初めはサイダーで

途中からウーロン茶に変わっていったから、飽きずに飲め

た。などと、そんな味レポをしたのだった。

 

 

 

「あの時のミノさんの攻撃は凄かったねぇ〜!

でもすぐに敵が再生しちゃって、ミノさんってば

敵の攻撃当たりそうになっちゃって…そうしたら、

トっきーが敵の攻撃を打ち落としたんだよね〜!

あの時のトっきー、カッコよかったよ〜♪」

 

「え…そうかな?ありがとう、そのちゃん。

そのちゃんもカッコよかったよ?」

 

 

なでなで…と、園子の頭を優しく撫でる

時音と、今まさに頭を撫でられていつも以上に

にこにこと笑顔でいる園子だった。

 

 

「あははっ、なんか微笑ましい光景だなぁ〜」

 

「………(あの子は、あんな撫で方じゃなかった。

だとしたらやっぱり、私の勘違いなのかな…)」

 

 

須美は、目の前で行われている二人の光景を見て一人、

胸の内で思考していた。すると、特殊な術式が組み込まれた検査の準備が出来たらしく、4人はそれぞれ順に検査を受けて行った。

 

 

 

「うん…うん。4人とも身体に異常は無いようね。

あなた達が世界を守ってくれたお陰で、今この世界の

人々は生きていられるわ。みんな、本当にありがとう。」

 

 

須美達の担任の先生であり、勇者達の監督役でもある

安芸先生に珍しく褒められた4人は

それが素直に嬉しくて、笑顔になる。

 

 

 

「ただ、バーデックスの液体を取り込んだ三ノ輪さんは、まだ詳しく検査をするので残ってもらいます。

いいですね?」

 

「えぇぇ!?そ、そんなぁ…。

もう外だって暗くなって来てるのに、このままじゃあ

真っ暗な道を帰んなきゃならないじゃないですかぁ……」

 

 

「それなら大丈夫です。

三ノ輪さんの御家族には既に、検査の為に帰宅が

遅くなると伝えてあるので心配はいりません。

それから三ノ輪さんの奥方には、水月さんが一緒なら安心なので大丈夫ですよ。と、了承も得ています。

なので水月さん?三ノ輪さんの事を頼みますね?」

 

 

「はい、わかりました。銀ちゃんのことは任せて下さい。きちんと家まで送り届けますから。」

 

「えっ!大赦が車とか出してくれないですか!?」

 

「銀ちゃん…家まで歩いてそんなに掛からないんだから、無理に大赦から車を出して貰うのはどうかと……」

 

「ちぇ〜、大赦の車に乗れるかと思ったのになぁ…」

 

 

まぁ、そんな事だろうとは思っていたけど…ね。

まったく、銀ちゃんらしい理由だな。と時音は想いながら、そんな幼馴染みの検査が終えるまで、待っている事になった。

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

一方、検査を終えた須美と園子は

検査をしてくれた人達に御礼を言うと

その場を後にして校門前に居た。

 

普段ならここでお別れなのだか....。

 

訓練だけでは、チームとして一つに纏まることは

難しいと。須美は考え、日頃から仲良くなれるようにしていかねば....と真面目な性格が故の義務感として、園子に

祝勝会をしないかと声をかけた。

すると園子は、ぱぁっと顔を輝かせた。

 

 

「うんっ、いこういこう!」

須美の手を取りながら握ると、言葉を続ける。

 

「ありがとうね。私も今、シオスミを誘うぞ誘うぞって

思ってて、でも、なかなか言い出せなかったから....すごく嬉しいんだよ〜♪だからね?これはもう、ガンガン語りたいなって思ってたの!シオスミもそうなんだよね!」

 

 

「乃木さん.....う、うん...」

 

「よ〜し、じゃあイネスのフードコートに行こうよ!

もちろん次は、ミノさんとトっきーも入れてね〜♪」

 

 

ぐいぐいと、手を引っ張られる須美。

そんな園子の、はしゃぎっぷりを見ていると

自分が少し恥ずかしくなった。

 

園子も“お役目”が緊張すると言っていた。

だが実際に、彼女の訓練された槍捌きを見て思った。

彼女は彼女で、お役目という自分の責任と、きちんと

向き合ってたのだ。尊敬すべき同士だったのだ。

意識して、仲間関係を構築しようなんしなくても良かったのだ。勝手に苦手意識を持たずに、もっと早く沢山、会話しておけばよかった…と須美は後悔していた。

 

 

「フードコートはいいけど...乃木さん。

シオスミだけはやめて欲しいかな.......」

 

「えっ、じゃあねぇ....じゃあねぇ....

ワッシーナとかどうかな?アイドルっぽくない?」

 

「えと、それもやめて....乃木さんも、ソノコリンとか、嫌でしょ?」

 

「わぁ〜素敵。.....でも若干、チョイスが古いような.....」

「なんですって?」

 

「あわわ、ごめんって。.....あ、閃いたよ!

わっしー!どうかな?」

 

「うーん。まぁ変なのになるよりいいかな」

「宜しくね、わっしー!」

 

 

園子にぎゅっと手を握られた須美は

不思議と、この感覚が嫌いではなかった。

二人は仲良くはしゃいで、イネスに向かう。

そこに勇者の面影なんてものはなく、年相応の

少女そのものだった。

 

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

学校の保健室にて______

 

 

 

銀が再検査に行ったのを見送ったのを確認した

時音の元に、水月家の配下の者が来た。

 

 

「失礼致します、時音様。

正昌様からの伝令でございます。

明日からデータの移行を開始する。とのことです」

 

 

 

先程まで銀達と一緒に居たとは思えない程......時音の

表情は、暗く、冷たい表情を浮かべていた。

 

 

 

「……はい、解りました。

明日、大赦の方へ向います。」

 

 

 

 

 

これは【()()】の勇者の物語

神に選ばれた少女たちのおとぎ話

そう…いつだって、神に見初められるのは

無垢なる少女なのである。

 

 

 

仮初め(かりそめ)の勇者は、無垢な少女で(あら)ず、故に願う。

ただ、無垢な少女達を想って願うのだ

ただ、幸せになって生きて欲しいと……願うのだった。

 

 

 

 

 

 

これはもう一人の少女の、生涯の物語である。

 

 

 

 

 

 

________________________

________________________________

 

 

 

 

僕は皆んなとは■■■から。

だから自分の■と■■■■に『■』を■■して

皆んなと一緒に戦った。

 

例えそれが、僕の■を■■■■で■■、

■■■の『■』だとしても。

 

それが■■■■■■あの子との■■だから。

僕は、僕に出来ることを精一杯する。

それだけだ……

 

 

神世紀 298年4月25日 勇者御記

 

大赦書史部・巫女様 検閲済

 

 

 




すみません、今回は戦闘シーンを省略しました。
次回は、少しでも書けれたらいいなぁ…と思います。

次の更新も、このくらいのペースかと思います。
遅くなりますが、お待ち下さいませ。

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