シデコブシの蕾。その花が満開に咲き誇るとき、その花は…… 作:青の色系が好きな者です。
やっとお話が出来ました。
本編では、日常+戦闘になります。
オリジナルを含む戦闘場面は、拙い表現になります。
それでも、少しでも皆様に楽しんでいただけたら
幸いです。
それでは、本編へどうぞ……
■■が笑った姿を初めて見たとき
アタシは笑顔が似合う子だと思って
その顔をもっと見たくなったのを覚えてる。
アタシの隣りには、いつもお前がいた
この先も、お前の笑顔を隣りで見られるんだと思った。
よく、ドラマやアニメで言ってた言葉がある
人は■■■から初めて■■だったことに気づくって。
それがやっと分かった時には、もう遅かった………
神世紀298年 5月15日 勇者御記
大赦書史部・巫女様 検閲済
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第三話
祝勝会の日から数日が過ぎた
初戦の日以来、敵が襲来して来る事はなく。
平穏な日々が続いていた。
だけど、またいつ敵が襲って来るかも定かではない。
準備の良い大赦は事前に訓練所を設けており、そこでは勇者としての基礎訓練を行っている4人の少女達。
それぞれが己の武器の扱いと、独自の戦闘スタイルを身につけていた。そんな訓練の日々と日常生活が続いていた
ある日のこと。訓練所では、いつもように訓練を行う勇者達の姿がある筈なのだが、、、勇者の姿は二人しか
見受けられず、訓練場に居たのは須美と園子の姿だけだった。
「………遅い、遅いわ。
銀は、勇者としての自覚をもっと持って欲しいわ!
それに時音ちゃんまで遅刻なんて……これは説教が必要ね?」
須美は遅刻している二人に対して
ぷんぷんと、怒りながら遅刻している銀と時音に
説教しようと心に決めていた。
「ごめんごめん、お待たせ!」
須美がそんな思考をしていたら
銀が遅刻した事に謝りながら訓練場へ駆け込んで来た。
「銀、時音ちゃん。どうして遅れたのかし、ら……あら?時音ちゃんはどうしたの?一緒ではないの?」
ぷんぷんと、怒っていた須美は
遅刻して来た銀と時音に、説教をしようとしたのだが
訓練場に来たのは銀一人だけだった。
それに気が付いた須美は一旦、怒りを沈ませて
銀に時音の事を聞いた。
「あーそれがさ、此処に来る時までは一緒だったんだけど着いた途端に、時音の携帯に電話が掛かってきて、今は
話してる最中だから少し遅れると思うよ?」
「あら、そうだったのね……」
いつも一緒に行動をしている
銀と時音のことだから、てっきり二人して遅刻
していると思っていた須美。
銀からの説明で、時音が遅れている理由は解ったが、、、
「ところで銀。訓練場に着いた時点で、あなた達は遅刻していたの?時音ちゃんと一緒だったのならそれは無いと思うのだけれど?」
「あーいや、その時は間に合ってたぞ!
時音と別れた後に、その…ええと……いや、何を言おうと遅れたのは自分のミスだし……ごめん、気をつけるよ!」
銀はそんな風に、詳しい理由は言わずに
頭を下げるだけだった。
そんな銀に対し須美のお説教が炸裂しようとした時だった、二人の傍で気持ちよさそうに寝ていた園子が、寝言を言ってきたのだった。
「……むにゃむ〜……ト、きーと、ミノさん……
来たの〜……?」
「……って、園子はまた寝てたのか?
ホントに寝るの好きだよなー?そうだよー、
三ノ輪さん家の銀さんが来ましたよー?
後から時音も来るから、もう少し待ってろー」
訓練中、園子は時々
こんな風に寝ている時もあったりするのだが……
「んん〜わかったぁ〜………トっきーが来るまで
もう少し寝てるね〜………すぴ〜」
「「いや、寝るなよ・寝ないでよ」」
それにしたって、あまりにも呑気すぎる園子に対して
銀と須美は、思わず揃って突っ込んでしまう。
須美、園子、銀がそんな会話をしてる一方で。
訓練場から少し離れた所にある、立ち入り禁止区域の
何年も使わわれていない古びた部屋の中で、掛かってきた電話の主と会話をしてる時音の姿があった。
「……周りに誰も居ないな?」
「はい、大丈夫ですよ静花さん」
「要件は2つ。まず1つは、お前の武器のメンテナンスが終わったから、次の戦闘からはその武器を使えるようにしといた。新しい機能も備わっている、特殊な物だがお前なら大丈夫だろう」
「はい、上手く使いこなしてみせますね。
ありがとうございます、静花さん。」
要件の一つ目は、バーデックスとの初戦の際に使用していた時音の武器についての話だった。
時音専用の武器は、まだメンテナンス中だった為に開発前の代用品を使っていたのだ。代用品といっても武器として使う分には、何の支障も無いので心配はいらない。
「それでもう一つの要件は何ですか?」
「…………お前のバイタルが、基準値より低くなっていた」
「………まあ。そうなる事は知っていたので驚きませんでしたがあれですね、皆んなとは違うっていうのはやっぱり………悲しいですね」
「……」
電話越しで時音の表情は見えないが、その声色はどこか
儚げで、どうしようもない寂しさと悲しいさに満ちていそうだった。
「……こんな想いをするのは僕だけでいい。
もうこれ以上、僕と同じ運命を背負わせたりなんてさせない。だから今の僕は、前だけを向いてやりたい事を精一杯する、それだけですよ」
「本当に変わったよな、お前。
きっと、
「……僕は、愛おしいと想える人達が出来きました。
その人達を護りたいと考えたのも、幸せになって欲しいと思える大切な人達を見つけられたのも。全ては、彼女が居てくれたから……だから、僕は今ここに居られるんです。彼女の命と共に
「そんなの決まってるだろう?私は、お前の味方側だよ。昔も今もな……。それにアイツにも頼まれたからな、お前を頼むと。最後の最後まで付き合うさ(それが私に出来るお前達への償いになるのなら……何だってやってやるさ)」
数分の会話が終わった後、訓練場に遅れて来た時音も
加わり4人で合同練習を行った。
そして特訓を終えた須美は、じっと考え込んでいた。
「銀だけが、どうして遅れるのか……。
これは調査して、原因があるなら元から経たないと
意味がないわね。よく考えると銀は、時音ちゃんと
一緒じゃない日は必ずというくらいに遅刻が多かったもの。やはり何か理由があるのよ。それを言ってくれないなら、こちらから探りに行くまで!そのっちも協力してくる?」
「zzZ………すぴ〜」
うつらうつらと、寝ていた園子に須美がそう問うと……
こくり、こくり、とウトウトする動作を強制的に了承として捉えた須美。だんだんと園子の扱い方を心得てきてるようだ。
「そう、ありがとうそのっち」
休日______
須美と園子は、三ノ輪家の前に来ていた。
「何か問題があるようなら、私達が力にならないと……」
二人の目的は銀の私生活を観察すること。
育ちの良い彼女からは考えられない行儀の悪い行為だった。彼女は昔から思い込んだら突っ走る傾向にあるのだ。
「いつの間にか私も協力する事になってるけど、頑張るよ〜!」
園子は、あまり深いことは考えていない。
それが友達の為になるなら頑張る、そういう友達想いの子だからだ。
「見て〜、わっしー。あれあれ」
園子が中庭を指し、その方向へ顔を向くと
銀が赤ん坊をあやしている姿が、須美の目に飛び込んで
来たのだった。
「……弟の世話をしていたのね、銀は」
家族構成で弟がいるとは聞いていたが
ここまで幼いとは、須美も思ってもなかった。
暫くすると、銀は別行動に移る。
「今度は家の中のお掃除もしてるよ〜、私ああいうのしたことないよ〜、ミノさん凄いね」
「ええ。本当に働き者だわ……」
乃木家は発言力だけでなく財力も絶大なので、園子から
したら家事をこなしていくクラスメイトの姿は、斬新のようだった。養子入りでひとりっ子の須美には、兄弟や姉妹は居らず、故に銀のそんな姿を目の当たりにし、感心していた……時だった_____
「本当に銀ちゃんは働き者だよね。
それに弟想いの優しいお姉ちゃんで、家族想いの良い子
だからね」
「ええ、本当にそ、う………うぇっ!?」
「ところで須美ちゃん、そのちゃん。
こんな処で、二人して何してるの?」
「……え〜と。時音ちゃん……こ、こんにちは〜……」
「あ、トっきーだぁ〜♪こんにちは〜」
「須美ちゃん、そのちゃん、こんにちは」
生け垣の茂みから屈んで銀を観察していた、須美と園子の背後から聞き慣れた声が聴こえ、それに驚いた須美が振り向くとそこには居たのは、二人と同じ体勢で屈んでいた
時音の姿。
そのまま彼女は須美達に何をしていたか、理由を尋ねた。
突然、気配もなく現われた時音に驚いてしまった須美は、普段の彼女からは想像も出来ない変な声を上げてしまう。それから少しの間を置くと、ぎこちない挨拶を時音にした。そんな須美とは対照的に、園子はいつもの様に明るい声で時音に挨拶を交わす。
「ええと、それは、その〜……と、時音ちゃんこそ、どうしてここに…?」
未だ挙動不審の須美は何とか話を逸らそうとして
逆に、何故ここに居るかと時音に質問を返した。
「弟君のお世話をしてる銀ちゃんの代わりに、お使いをした帰りだよ。で、こんな所で何してたの?」
どうやら彼女は、銀の代わりにお使いに行ってたらしい。
三ノ輪家は大赦で発言力はあるものの家自体は、使用人を雇うほど裕福ではない為、家の手伝いは銀と時音がしているとの事だった。
そういうのも幼馴染みの誼というやつなのだろうか……?須美がそう思っていると隣にいた園子が、時音の問に
答えたのだった。
「あのね〜?ミノさんの様子を調査してたんよ〜」
「ちょっ、そのっち!」
「調査?……なるほどね。
それなら、ここで覗き見なんてしないで家に入ったらどうかな?それに本人に直接聞いた方が早いと思うよ?」
園子の答えに一瞬、疑問を持った時音だが、少し間を置くと何かに気づいたのか、納得した表情を浮かべ、本人に聞いた方がいいと提案してきた。
「……え?で、でもそれだと調査にならな」
「わあ〜い!ミノさんのお家にお邪魔してもいいなら私、入りた〜い♪」
「はぁ……そのっちがこんな調子じゃ調査にならないわね。調査はやめましょう……その代わり。
こうなったら銀に事情聴取を取るまでよ!」
「そうだね。こっそり覗き見するよりかはその方がいいと思うよ?」
「ゔっ……」
銀の事情聴取をすると、意気込んでいた須美に
覗き見は良くないと指摘されて、非常に手厳しい言葉に
反論出来なかった須美だった。
「なるほどなー、そんで二人して家の前でアタシの行動を観察していた所を、時音に見つかったと。てか、見てたんなら最初から家に来いよなー」
「ごめんね〜ミノさん」
「ご、ごめんない……」
結局、須美と園子は監視していたことを銀に伝える。
すると銀は、時音が二人を家に連れて来た理由に納得する。いくら相手が自分でも、須美の堂々とした行動に、それはちょっとどうなんだと
すると、何処からか少し大きめな音が鳴り響く。
ぐぅぅ〜う〜……
「「………」」
「ごめ〜ん。お腹鳴っちゃったぁ〜えへへ〜」
「もう、そのっちったら…」
「あははっ!園子らしいな。
そういえば、もうお昼の時間だもんな?二人ともどうせならお昼ご飯食べて行ていけよ?」
「わあ〜い♪食べる食べる〜!」
「ちょっとそのっち、少しは遠慮というものをね、」
「いや、堂々と覗き見してた須美が遠慮とか言える立場じゃないだろ?」
「………はい、そうでした…」
園子は嬉しそうにお昼ご飯を食べると言って、
あまりの遠慮のない態度に忠告を言おうとした須美だが、逆に銀に自身のしでかした事実を指摘され再度、反省の
色を見せたのだった。
須美と園子も食べて行くだろうと思い、キッチンで4人分の昼食を用意していた時音。ちょうど3人の会話が終わった頃合いに、作っていた料理を持って来た。
席に着いた4人は手を合わせて『頂きます』と揃って言うと、時音の用意してくれた『オムライス』を食する。
「あむ。もぐ、もぐ……美味しい。玉子のこの半熟具合い、見事な技だわ……」
「んん〜このオムライス美味しいよ〜トっきー!
ふわふわトロトロで〜中に入ってるチーズがまたいいね〜♪」
「だよな〜、このオムライスは、卵を熟知した卵マスターの時音にしか作れん。」
「ふふっ、お褒めのお言葉ありがとうございます。須美ちゃんとそのちゃんの口に合って良かったよ」
「いいなあ〜ミノさん。トっきーの手料理いつも食べれるなんて羨ましいな〜」
「別にいつもって訳じゃないぞ?どっちかの手が空いてる時に作るって感じだよ。アタシも簡単な料理なら作れるし」
「ミノさんも料理が出来るの〜!」
「あら、銀も料理が出来たのね?」
「ん?それは一体どういう意味ですかな〜鷲尾さん家の須美さんや?」
そんな会話を交わす銀と須美が、戯れをしている横で園子がそっと呟いた。
「私も、毎日トっきーのご飯食べたいなあ〜……」
「そのちゃん……毎日は無理だから休日の日でよければ、僕の家でご飯作ってあげるよ?それに作り方も教えあげられるし、どうかな?」
「……本当に、トっきーのお家に行ってもいいの〜?」
「うん、もちろん。そのちゃんなら大歓迎だよ」
「私ね?トっきーのお家、ず〜っと行きたかったんだ〜
だから嬉しい〜。えへへ〜」
時音の誘いが喜ばしかったのだろう。
そう言った園子は、とても嬉しそうに笑った。
園子が愉快な笑みを浮かべる姿を見ると、いつもように
園子の頭を優しい手つきでそっと撫で、彼女に微笑み返した時音だった。
四人は昼食を済ませると、お昼をご馳走になったせめてもの恩返しという事で、須美と園子は食べ終わった食器を
洗って片付けてくれてる間に、銀と時音はお昼寝から起きて泣きだした赤ん坊の金太郎のお世話をしていた。
お互いを助け合う事が自然に出来ている、彼女達の姿は
確実に当初の頃より仲が良くなっていた。
それぞれの担当を済ませた四人は、一旦リビングに集まりそこで、銀が遅刻してしまう理由と疑問だった点。
時音と一緒の際は遅れない理由について、順を追って語られた。
どうやら銀は、やたらとトラブルに巻き込まれるらしく。
家では、まだ幼い弟達のお世話や家事をしていて、外に出れば困っている人達をほっとけなくて助けていて、それで気が付けば約束した時間ギリギリになったり、遅刻をしてしまう……所謂トラブル体質持ちということが判明する。次に時音には、巫女としての適性が僅かながらにあると
聞かされ、驚いた須美と園子。
でもそれは微微たるものだと時音は説明する。
嫌な予感を感じた時は、先読みしつつ持ち前の運動神経で反射的に、怪我や事故を回避して遅刻しないように道を
選んでいるとか。道端で困っている人には、二人で協力して助けているとか。それが二人一緒だと遅れない理由。
時音が感じる予感というのは、本人曰く『何となく』だそうだ。
「ミノさんもトっきーも偉いね〜!
でもそれなら、ちゃんと理由を言ってくれればいいのに〜」
「いや、なんかそれはさ。弟達や道行く人達のせいにしてるみたいで……どんな理由であれ、遅れたのは自分の責任な訳だしさ」
「昔から困っている人を、みすみす無視なんて出来ないし、自分よりも相手の事を大切にする。そういう優しい
銀ちゃんをほっとけなくて、いつも一緒なことが多くて……」
「銀が一人だと遅刻してしまうのは困っていた人達を助けていたというのは解ったわ。時音ちゃんも、銀といつも
一緒に来る理由も解った……でも。理由が何であろうと
遅れていい訳はないわ。それはしっかりと解ってるわね
銀、時音ちゃん?」
「「はい……」」
「幾ら幼馴染みで姉妹よのように育ったからと言っても、銀のことを甘やかすのはいけないわ。
これから二人には、ちゃんと反省するようにみっちりと、説教をします!確かに、銀がトラブルに巻き込まれずに
遅れて来ないのは、時音ちゃんのお陰かもしれないけども、ぶつぶつ…………」
「ごもっともです……」
「ごめんなさい……」
「Zzz……すぴ〜、すぴ〜、むにゃ〜」
しばらくの間、銀と時音に須美による説教タイムが続き、園子はというと。昼食を食べてお腹が満たされ事により、眠気が来たのかスヤスヤと気持ち良さそうに寝ていたのだった。
夢の眠りから覚め、ぽや〜としていた園子。
二人に厳しい説教を施した、須美。
長い説教から解放され銀と時音は、げんなりとしていた時だった________
突如、4人を襲った異変。
それに気づいた彼女達は、人類の敵が訪れた事をその体で体感した。
「もしかして〜、これって……」
「ええ。敵が来たのよ、そのっち」
「あっ、金太郎!金太郎は!?」
「大丈夫だよ。時が止まってるだけだから、ぐっすり眠ってるよ。落ち着いて銀ちゃん」
「はぁ〜、良かったぁ〜…」
その異変に対して須美と園子が、そう言葉を零す。
銀は、まだ赤ん坊の金太郎を心配して慌てるが、時音が
金太郎の心配は要らないと伝えると、銀はそれに安心する。そうこうしている内に、あっという間に四国は、樹海へと姿を変えていった。
少女達は以前と同じように、勇者の姿に変わって大橋の
中央を陣取っていた。
「あれ〜?トっきーの武器、もしかして前のと違う〜?」
「あ、うん。前回使ってたのは代用品なんだ。
戦闘になる前に完成する筈だったんだけど、間に合わなくてね?この武器が、僕の本来の武器【大鉄槌】だよ」
「やっと出来たんだな、時音の武器」
「やっぱり近くで見ると大きいわね……」
そんな話をしていると、そこに現れたのは20メートルはあるだろう不気味で巨大な敵が、ゆらゆらと揺れながら
少女達の方へ前進していた。
「今回の敵って、アレか……?」
「何あれ〜、天秤?」
「みたいだね……それも宙に浮いてる」
「それにしたって、ウィルスの中で生まれただけで、どうしてあんな形になるもんかね」
両手に持った斧を構え攻撃態勢を取りながら、銀はそう
口に零す。
「……なんでだろうね?ま、でも。僕達のやる事は一つ、あの敵を神樹様に近づけさせないように食い止めるだけだよ」
銀と同様に、両手で大鉄槌の柄を握り構えた態勢の時音は、自分達が出来ることをするだけと口にした。
「そうね。時音ちゃんの言う通りよ。
皆んな、動くわよ。そのっち、準備はいい?」
「うん、いつでも大丈夫なんよ〜」
須美の言葉に応えるように園子は、3人の前へ出てバーデックスの方へ、槍の形状を盾に変え構えると、その盾の後ろへ他の勇者達の身を隠す。
「まず、私の矢で仕掛けるわ!」
そう言うと、巨大な敵に初撃を仕掛けた須美だったが、彼女の放った複数の矢はまるで磁石のように、敵の分胴部分に吸い寄せられてしまう。敵には傷一つ付けられずに終わったのだった。
「どうやら、遠距離での攻撃をするにはあの分胴部分を止めないことには須美ちゃんの矢が通らないみたいだね……そのちゃん、何か閃いた?」
「あのね〜、あの敵の体と体が繋がってる部分が細くて脆いと思うんよ〜」
「なるほど…ありがとうそのちゃん。
接続部分を狙って同時に攻撃するよ、銀ちゃん!」
「おうさ!いっちょかましてやるかー!」
「須美ちゃんは、アイツの動きが止まったらすかさず矢を放ってみて!そのちゃん、須美ちゃんを頼んだよ!」
「うん、まかせて〜!わっしー、私の盾へ隠れてて」
「わかったわ」
園子が閃いた敵の弱点であろう部分を、銀と時音が呼吸を合わせて、敵の左右の方向から攻撃を仕掛けていく。銀は両手に構えた斧から炎を散らしながら敵へと向かっていく。時音も両手で握っていて大鉄槌を下の向きに構えながら、敵へ向かい攻撃を喰らわせる直接、天秤は分胴を振り回し、大回転をしだしたのだ。
「っ!うわぁ!」
「っ、銀ちゃん!」
銀と時音は、咄嗟に己の武器を構えた盾にしたことで
直撃を躱すことは出来たが、竜巻のような防御璧によって弾き飛ばされてしまう。
「トっきー、ミノさん!」
「二人とも大丈夫!?」
「っう〜、……って、時音!?大丈夫か!」
「……大丈夫だよ」
「アタシらは大丈夫だー!」
「……とにかくあの風を何とかしないと。攻撃がまともに通らない」
天秤の怪しい動きに、素早く気付いた時音は突風で弾き返される前に、銀の腕を掴むと自身の方へ抱き込み、着地時には時音が下敷きになり銀は時音に庇れて無傷だった。
二人は態勢を立て直すと、園子が構える盾の後ろへ入り込む。すると敵は回転を利用し、先程吸い寄せた須美の矢をお返しとばかりに、須美のいる方向へ射出したが園子が構えていた盾の後ろに居た須美は無事だった。だが、数本の矢は樹海の方向へ飛んでしまい、樹木を傷付ける。
その光景を目の当たりにした須美は、動揺してしまう。
自身が放った攻撃で、樹木を傷付けてしまった事。
それにより樹海化が戻った際、街に何かしらの形となって降りかかる。それはダメージを負えば追う程、深刻になると教えられていたからだ。今回はまだ軽微だか、極力樹海を傷付けさせる訳にはいかない。
「……っ、また突風が来るよ!」
「皆んな、私に掴まって〜!ゔっ、ぐぅぅ……うぅ!」
「っ、園子、踏ん張れっ!」
「このままじゃあ、そのっちがっ!」
「……っ、僕がアイツの動きを止めて来る!回転が止まったら須美ちゃんと銀ちゃんは一斉に攻撃して!」
このままでは、敵に近づくことすら儘ならず、この状況にいつまで耐えられる訳でもない。それにこれでは、園子に負担が掛かってしまう。園子の体力の限界が訪れる前に、何とかしないといけないと時音は考えた。その思考の末辿り着き導き出した応え、それは自ら突破口を作ることだった。
「な、何をする気なの時音ちゃん!」
「なんか考えがあるんだろ、時音!」
「うんっ!」
「後のことはアタシらに任せて、行って来いっ!」
そのことを須美と銀に伝え、了承の声を聞くと時音は敵が回転で起こした突風に体を浮かせた。
上空へ高く浮かぶと、敵の頭部部分を捕捉する。
武器である大鉄槌を自身の頭上へとかざし振り下ろす、するとその勢いを利用して体も一緒に回転させた、鉄槌の重さを活かした回転攻撃だ。回転は徐々に勢いと速度を増して、敵へと迫る。
「とおおぉまああぁあぁれぇぇぇえ!!!!」
普段の落ち着きある彼女からは、想像出来ない叫び声を上げる。4人の中で、勇者適正値が一番低い時音。
勇者として戦う力は備わっているのだが、他の3人とは違って彼女は勇者としての力を最大限に引き出す事が出来ないのだ。しかし、それと引き換えの様に神樹の力で勇者になった身体を、自在に扱う才能を持っていた。
この型破りな攻撃も、彼女ならではのやり方だ。
ズガァァァーンッ!!!と大きな衝撃音が樹海に鳴り響く。すると回転は止まり、竜巻が止んだ。
竜巻に飛び込んだ時音は、鋭い鎌鼬のような風で全身を細かく切り刻まれる。彼女のモチーフ花、シデコブシの白を基調とした薄ピンク色の勇者装束を、自らの血で塗らしていった。
「っ、銀ちゃん!須美ちゃん!」
「ああ、任せろ!!」
「っ、ええ!この距離からなら……っ!」
銀と須美は、動きの止まった天秤に近づくと、銀は斧から炎を吹上げ、斬撃を繰り出そうとし、須美は弓を限界まで引き絞ると、敵の方へ向け零距離の接射を仕掛けるが、敵はそれに勘づいたのか、再び回転をし始めようとする。
敵のその行動にいち早く気が付き、素早く態勢を立て直した時音は、左手に大鉄槌を持ち替えると右手にもう一つ同じ形状の大鉄槌を、空間から出現させた。
両手に構えた大鉄槌を、敵の分胴部分目掛けて連続で猛攻撃をして回転を食い止めるが、連続で敵を撃ち込む度に時音の身体には、凄まじい衝撃が体中に響き渡る。それは骨の髄まで振動していてそれに耐えるような声を上げる。
「うっ、ぐぅぅ……っ、はああああああぁぁぁ!!!!」
時音の扱う大鉄槌は3人の武器と異なっており、須美、園子、銀。それぞれの武器の要素を兼ね備えていた。
その内の一つが銀の双斧を思わせる、この双槌である。
大槌や鉄槌を扱う勇者は歴代にもいたが、大鉄槌という
特殊な武器を扱う勇者はおらず、それ故に基本となる型は無かった。それは同様に、双斧という特殊な武器を扱う銀にも言えたことだ。銀と時音の戦闘スタイルは、独自で
編み出した物ばかりだ。
類まれなる身体能力を持ち、自身のスタンスを弁えている彼女だからこそ、水月家が託した武器なのである。
「オっラぁあー!!ラストスパートだあああぁぁ!!!」
「これで終わりよー!!」
「っ、私だって〜やああぁ!!」
銀と須美の繰り出す攻撃に園子も加わり、形状を通常に
戻した槍で、突撃に加わった。回転を許すことなく少女達はラッシュを続る、すると_______敵は少女達の攻撃を受けたまま、進路を変えると橋を戻り始め、暫くすると橋から撤退したのだった。
「……終わった、のか?」
「そう、みたいだね〜……?」
「はぁ、はぁ……勝った、、ね」
「「やったぁー!!」」
「…はぁ、はぁ……やっ、た……バタッ」
「時音ちゃん!?」
バーデックスの姿が無くなったのを確認すると、銀と園子は、歓喜の声を上げ勝利を喜んでいた時、体力が限界だった時音はバタッ、とその場に仰向けで倒れ込む。
その姿に心配して駆け寄った須美、それに続けて銀と園子も時音の元へ駆け寄り、3人は彼女を囲むような態勢になる。
「大丈夫か時音!?」
「トっきー!?」
「大丈夫だよ……ただ、骨の節々に響いて、痺れちゃって。暫く動けそうにないや」
「よ、良かったぁ〜〜」
「心配かけさせちゃってごめんね、そのちゃん」
「はぁ、びっくりさせるなよな〜。竜巻に回転しながら
突っ込んで行くわ、また竜巻をさせない為に連続して
分銅ぶっ叩くわだし、まー自業自得だな?」
「あはは、ごもっともで……」
時音の身体は、どうやら骨の節々にまで振動が響き渡っていた。少女達が負った怪我は、勇者服の回復機能のお陰で、徐々に傷を癒していく。
「たく、今度はアタシも一緒に突撃するからな?
お前一人だと危なっかしいからな〜」
「それ、銀ちゃんに言われたくなかったのに……」
「ん〜、水月さん家の時音さんや?
それはどういう意味ですかねー?(つんつん)」
「あうっ、つつかないでよ…」
「……私も、つついちゃおっかな〜?」
「えっ、」
「いいんじゃないか?心配かけさせた罰だ。大人しく
つつかれるんだなー時音?よし園子、つついてやれ」
「は〜い!」
「そのちゃんまで!」
「つん♪つん♪」
「あう、うぅ…」
銀と園子がそんな会話をしながら、時音にイタズラをしていると。須美は、動けず地面に寝そべっていた時音の元に寄ると彼女の頭を自身の膝の上に乗せる。
そのまま時音の顔を覗き込むが、須美の顔は俯いていて
顔色がわからなかった。
「須美ちゃん……?」
「……」
「どうしたんだよ、須美?」
「わっしー……?」
「……私の、せいで」
そう呟きを零した須美の目からは、涙がぽろぽろと頬を
伝って流れ、その溢れた涙は時音の頬に落ちる。彼女が
泣いている顔を真下から見た時音は、目を見開いた。
「須美、ちゃん………」
「竜巻の中に時音ちゃんが飛び込んだとき、心配で……心配で………動きが鈍くなっちゃったから……」
自分の放った矢で樹海を傷付けたこと。
お役目で役に立てなかったこと。
そのせいで時音を危険な目にさらしてしまったこと。
様々な感情の堰が切れたように、清らかな目からは
とめどなく溢れ出てくる涙。
「私の矢がちゃんと通じてれば……うぅ」
「須美……お前のせいじゃないんだから泣くなって、な?」
「わっ、わっしー泣かないで〜……」
園子は、須美の手を握る。
銀は須美の頭をよしよしと、優しく撫でる。
「須美ちゃん……心配させてごめんね」
「こんな気持ちになるなら、私達……仲良くならない方がいいのかな………」
「えっ、ど、どうしたのわっしー!?」
「い、いきなりどうしたんだよ須美……?」
「………」
突然、そう言い出した須美。
それに対して時音は、自身の想いをこう告げた。
「須美ちゃん……。勝手な行動とって心配かけさせた僕が、こんなこと言っていいか分からないけど……… そんな悲しいこと言わないで、僕達まで悲しくなっちゃうよ」
「……だって、」
「僕……須美ちゃんと、もっと仲良くなりたい」
「うんうん、私もだよ〜わっしー」
「あぁ、アタシだってそうだぜ?アタシらもっと仲良くなろうよ!な?」
時音の言葉に続けて、そう告げていった銀と園子。
自分の為に涙を流してくれた彼女に、時音は優しく声をかけた。僅かに残っていた力を振り絞り、腕を動かして
利き手である左手を、須美の頬へと持っていくと壊れ物を扱う様な優しい手つきで触れた。
「泣かせてごめんね……」
「どれだけ、心配したと思ってるのよ……」
須美も、時音とは逆の手で彼女の右頬に触れる。
「うん、ごめん……須美ちゃん。僕ね、須美ちゃんの
笑ってる顔が好きなんだ……だから、もう泣かないで?」
須美のことを、優しい声で呼びかける時音。
「うぅ……時音ちゃんが無事で良かったよぉ……」
その声に安堵したのか、須美は再び泣きだす。
樹海化が解けるまで園子、銀、時音の3人は、須美のことを心配して優しい声をかけていた。
少女達の「お役目」は続く。
敵は、まさしく星の数ほどいるのだから_____
__________________________________________________
【■■】という言葉の意味は
後で■■■■■ように今、出来る事をすることだ。
僕の■■■た■は■い、だからこそ。
■■■したことがないように、精一杯■■■■■と
この時は、そう思いながら皆んなの傍にいた。
そう思っていたのに……
■おしい人達が■■できてしまった僕は、■■■になっていくばかりだ………
神世紀298年 5月15日 勇者御記
大赦書史部・巫女様 検閲済
最近ゆゆゆいの方で、銀ちゃんのSRが復刻で
また来てくれたので嬉しいです。
そのっちのURは来てくれなかったけど
何故か棗さんが来ました、いつもピックアップと対象外の娘が来るのは何ででしょうね……
時音の体質や専用武器について等が、分かる回でした
彼女の謎が増えていくばかりですね……。
次回は、オリジナルの話を入れようかと思います。
また期間が空いてしまうかもしれませんが、気長に待ってもらえると助かります。