シデコブシの蕾。その花が満開に咲き誇るとき、その花は……   作:青の色系が好きな者です。

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前回の投稿から 約1ヶ月半ほど経ってしまいました…
投稿更新が遅くなって申し訳ございません……

勝手ながら 初めのお話を「序章」とします。
ですので、話数が変わりましたのでご了承下さいませ。



今回は合宿編です。
合宿編は 前編・後編で分けてお届け致します。


それでは本編へ、どうぞ





鷲尾須美は勇者である 第4話

1+1+1■■を、■ではなく、10にする。

私達なら出来ると 思ってた。

 

敵の名前は バーテックス。

ウイルスの中で生まれた 忌むべき存在。

 

でも、そんな存在にバーテックス……■■という意味の

言葉を何故つけたのだろうか……?

この時の私達は、何も知らずに戦っていた。

 

 

でも、■■■■は知ってたんだね。

バーテックスが ■に■られたモノだって……

 

 

 

 

 

神世紀298年 6月20日 勇者御記

大赦書史部・巫女様 検閲済

__________________________

 

 

 

 

乃木園子は、赤ん坊の頃からスローライフを貫いていた。

 

一人で蟻の行進を眺めたりするのが楽しくて仕方ない。

園子の両親は、そんな娘が少し心配だった。祖父は園子に光るものがあると評するが、どうにもそう思えない。

そこで両親は、わざと幼い娘の前で苦しんで倒れる芝居を見せた。それはもう迫真の演技だった。そんな姿を普通の子供が目撃したら、恐怖と不安で怖くなり泣き叫ぶだろう…しかし園子は違った。

両親が倒れた状景を目にし、最初は涙を溢れさせたのだが直ぐに家に使える使用人を呼ぶと、いかに倒れたか、どの程度の時間が経ったか等症状を的確に伝えると、両親の傍に寄り添って手を握りながら人を呼んだから、もう大丈夫だよ、と力強く語り続けていた。

 

 

 

そんな娘のたくましい姿を見て以後、彼女の両親は

園子がぼーっとしていても、何も言わなくなったようだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「わ〜、あの雲わっしーの武器みたい〜」

 

神樹館の中庭にある芝生で、風を浴びながら園子は空を流れる雲の形を観察していた。昔と同じようにぼーっと眺めていた、ただ昔と違うのは、、、

 

 

「おっ、そう言われりゃそうだな!」

 

「確かに、そう見えるね」

 

「えへへ〜、でしょ〜」

 

「こういう趣味が、そのっちの閃く力を育てているのね」

 

 

もう、一人では無いこと───。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

第四話

 

 

 

 

 

 

 

 

 

初夏の風が、瀬戸内海から舞い込んでくる。

人が居なくなった放課後、須美達は図書室で銀を囲んでいた。机を挟んだ銀の向かいには、須美と園子が座り。

銀の隣席には小説本を読んでいる時音。

 

 

「なぁ、勉強より先にイネス行かない?

あそこのフードコートがアタシを呼んでいるだ」

 

 

巨大ショッピングモール・イネスは、もはや地域に住む人々にとって無くてはならない場所にまで成長しているらしい。

 

 

「駄目よ?銀」

 

「須美ってば取り付く島もないっショ。……時音」

 

「ダメだよ?」

 

「アタシまだ何も言ってないのに!」

 

 

今日4人が集まっているのは何故か、それは勉強が苦手な銀の為に、付きっきりで勉強会を行う為。幼馴染みという長年の付き合いで、銀が次に話しかけてくる言葉は大抵解ってしまうらしい時音。

 

 

「イネスに行かないとアタシ落ち着かないんだよ〜。とか

言おうとしたんでしょ?銀ちゃんが言いそうなことは何となくわるからね。なので諦めて須美ちゃん先生に教わって下さい」

 

 

「こういう時にアタシの思考を読み取らなくてもいいじゃんか……というか、時音は教えてくれないのかよ?」

 

 

「僕に教えて貰うよりも須美ちゃんに教わった方が、いつもと違った解き方が出来るでしょ。そうやって新しい見方を身につけることも大事だからさ」

 

 

いつもは時音が銀の勉強を見ていたのだが、もっと幅広い範囲で知識を延ばして欲しいと思い、今回は須美から教わってもらう事になった。

 

 

 

「そうね、時音ちゃんの意見も一理あるわ。

ほら頑張って銀、集中よ」

 

「はーい、分かったよ」

 

 

銀はそう言うと、再び資料に目をおとした。

ちなみに、園子はというと……。

 

 

「すぴ〜……うどんってなんであんなに白くて美味しいんだろう〜……すぴ〜」

 

 

園子は机に突っ伏して、気持ちよさそうに寝ていた。幸せな夢でも見ているのか、何とも園子らしい寝言を発していた。

 

 

「寝てる園子は放置でいいンすか?鷲尾先生〜」

 

「そのっちはいいのよ、頭いいのだし……見えないけど」

 

「そのちゃんは基本的な学力は備わってるから心配は要らないと思うよ?」

 

 

「おのれ天才系少女め……耳元で害虫の名前をひたすら囁いてナイトメアを見せてくれようか、いひひ♪」

 

 

「よくそんな鬼のような発想が浮かぶわね。自分がされたらどう思うのよ…」

 

「ふふーん♪アタシ虫とか大丈夫だもん!」

 

「やるじゃない……」

 

 

見つけた虫を掴んでは、嬉しそうに親に見せていた幼少期の銀。彼女の両親は娘の無邪気な姿に笑っていた。

幼い銀は虫を見せれば両親のように皆んな笑ってくれると思い、当時通っていた幼稚園の子供たちにも虫を掴んで見せてあげたらしいが、園児の中には虫が苦手な子がいたりする訳で……その反応が面白かったのか、銀がイタズラ心に目覚めたきっかけは恐らく、この時が原因なのだろう。

 

 

「銀ちゃんは昔から虫とかGとか触れるからね。

須美ちゃんは、虫とか苦手なの?」

 

「……どうして虫ってあんなに足が多いのか分からないわ、絶滅してくれないかしら……」

 

「(絶滅って…)まぁ、苦手な物は誰にだってあるもんね」

 

「お、苦手なんだ。やだーカワイイ〜」

 

「……自分が平気だからと言って無防備に寝てる人にやって良い理由にはならないわよね?ぎーん」

 

 

銀が揶揄ったのが良くなかったのか、須美の背後からゴゴォ……という不穏な音と共に、目だけが笑ってない須美の笑みがそこにはあった。

 

 

「あ、はい。すみませんごめんなさいでした……」

 

「 お、落ち着いて須美ちゃん。歴史の勉強に戻ろうよ、ね?」

 

 

視界の端に入り込んだ震えている銀の姿を確認し、見るに見兼ねた時音は黒いオーラを纏っている須美に一声、言葉を掛けた。

 

 

「……そうね、少々取り乱してしまったわ。

では話しに戻るわね?銀、この四国を囲う壁はどうして

存在するの?」

 

 

すると、徐々に落ち着きを取り戻した須美。

その様子を見て内心ではほっと、安堵した銀なのだった。

これで少しはイタズラに懲りればいいのだが……と心の内で呟いていた時音。

 

 

「アタシだってそこまでウマシカじゃないよ、神樹様が

四国にいる人間を結界で護って下さっているんだ」

 

「そうだね、外の世界で蔓延っている死のウイルスから

神樹様が護って下さってる」

 

「で、ここから先は教科書に載ってないけどウイルスの

海から産まれた敵……その名も【バーテックス】だろ?」

 

 

銀は開いていた教科書を、トントンと人差し指で指差しつつきながら問を返す。

 

 

「ええ、神樹様を破壊せんと向こうからやってくる

人類の天敵……それが勇者に選ばれた私達の御役目。

それでは続けて質問するわね?バーテックスと戦うのは

私達、勇者でないといけないのは何故?」

 

 

「もう教科書に書いてないことばかりじゃんか。

んと、通常の兵器が効かないから神樹様にお願いして

お力を分けて貰って誕生日したのが、勇者だけが使える【勇者システム】」

 

 

人間を捕食する訳でもなく

ただ殺す為だけに攻撃を仕掛けてくる存在。

果ては、神樹を破壊してこの世界を滅亡させようとしている敵は、まさに【悪魔】と言っても過言ではない。そんな悪魔に対抗するには、神の力を借りる他無いのだ。

 

 

「そんで、その勇者システムを更に開発して強化させたのが【水月家】水月家の技術力は、勇者を支援する大赦に

とって今やなくてはならい存在だ」

 

 

「良かった、ここら辺の知識は理解しているのね。

小テストでいきなり52点なんて取るから緊急の勉強会を開いたけど、大丈夫そうね」

 

 

「流石に勇者が自分に関する歴史分かんなかったら、パッパラパーだろ?」

 

「そのっちは分からなそうだけど……」

 

「まぁ、園子小テスト0点だったし」

 

 

ちなみに、須美は92点。時音は98点だった。

 

 

「そのちゃん、テストは0点だったけど答案用紙の記入が1個ずつ間違えてただけで、ちゃんと正したら満点だったからね。凄いような、惜しいような」

 

「オォーう、まさに紙一重だな、色々と」

 

「そうね、そのっちらしいわね」

 

 

三人の視線を浴びている事を知らずに、園子はスヤスヤと寝息を立てており、未だ夢の中で楽しそうに笑っていた。

 

 

 

「トっきー、ミノさん……だいすき………すぴ 〜」

 

「……ふふ。そのちゃんってば、一体どんな夢見てるんだろうね?」

 

「ははは、大好きとか言われると照れるな」

 

 

時音は嬉しそうに微笑んで、銀も名前を呼ばれて嬉しかったのか照れていた。

 

 

「私は?ねぇそのっち私は?」

 

「こらこら、揺らすなって須美。気持ちよさそうに寝てるだろ?」

 

「あっ、もう訓練の時間だ。行く支度しようか?」

 

 

園子も起きて大赦の訓練場に移動しようとした時、須美たちの担任教師である安芸がやってきた。

 

 

「そろそろ移動時間……って、分かってるみたいね。それじゃあ訓練場に向かいましょうか」

 

 

 

「「「「はい先生。宜しくお願いします」」」」

 

 

四人は安芸先生に、しっかりと挨拶をした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

学校から大赦の大橋支部にある訓練場は、徒歩で行ける

距離なのだが今日は、ギリギリまで勉強をしたいという

須美の意向を汲んで車での移動となった。勇者として実戦が始まってから暫くすると、大赦が全面的に四人をバックアップし始めたのだ。大赦は全ての恵みである神樹を祀る組織である。この国の総理大臣よりも発言力が強い。

家には使用人を派遣し、学校では遅刻しても便宜を図ってくれる。クラスメイトにも、須美達四人は神樹様にまつわる大事な役目をしている、という旨は大赦から通達されている。だが、それでも変わらずにいつも通り接してくれる神樹館の皆に、四人は有り難さを抱いていた。その後も、車内ではクラスメイトの話しをしては盛り上がっていた。

 

 

 

無事に訓練場に到着すると、安芸に集まるよう言われ

一箇所に集った四人の姿を見た安芸は、話し出した。

 

 

「着いて早速なのですが、貴女達の中から隊長を決めておきたいの。そこで隊長を、乃木さん。貴女に頼めるかしら?」

 

「え。わ、私……ですか〜」

 

 

園子が隣りにいた須美を、ちらりと見る。

隊長と来れば自分、もしくは時音だろうとすっかり思っていたので、須美は意外な人選に驚いたが、直ぐに笑顔の

表情になる。

 

 

「そのっち、私はその意見に賛成よ」

 

 

大赦において、絶大な権力を持った乃木という家柄に比べたれば、鷲尾家も三ノ輪家も格が違い過ぎる。

故に須美は、園子も大変な立ち位置に居るのだと一人で納得をしたのだ。

 

 

「アタシじゃなければ、どっちでもいいよ」

 

「わ、私にできるかなぁ〜……」

 

 

隊長に抜擢されて戸惑っている園子。

そんな彼女の表情を見た時音は、園子の手を取ると少し強く握り、けれども優しく包み込んだ。

 

 

「大丈夫、そのちゃんなら出来る……大丈夫だよ」

 

「トっきー……うん。私、頑張るよ〜」

 

 

園子の目を見つめながら時音はそう言葉を紡いた。ただそれだけの言葉なのに、今の園子にはその一言がとても胸に響いた。それまで自分が隊長なんて務まるのか不安の気持ちで覆われていたが、不思議と晴れていった。

気持ちが決まった園子は隊長を引き受けた。

安芸は一つ頷くと、言葉を続けた。

 

 

「隊長が決まった所でもう1つお話しがあります。前回の戦闘についてです。前回はゴリ押しの結果、何とか敵に勝てたという状況でした。でもそれでは貴女達の身が持たないし命の危険も増えるわ……そこで強化合宿を行おうと思います」

 

 

「「強化……」」「「合宿?」」

 

 

「貴方達には足りないもの…それは連携とお互いを信じ合う信頼関係です。今度ある連休を使って、大赦が運営している旅館に行きます。連携に必須なチームワークを深め、お互いを信じ合って戦えるようにもっと信頼関係を築いて下さい」

 

 

安芸が言い終えると、須美は皆んなの力を鍛えられるのとお互いを今よりも信じ合える関係性を、効率良く双方出来ると真面目に考えていて。

園子は皆んなでお泊まり出来る〜と、人生で初めての合宿に浮き足立ち。

銀もお泊まりに行ける喜びと、もうすぐ訪れる夏の季節も相俟って気持ちが高ぶっていた。

そんな三人の温度差を見て、何だか大変な合宿になりそうだなぁ、と苦笑いをしながら三人を見つめていた時音だった。

 

 

 

少女達が真面目すぎても、御役目という重圧さに潰されるだろう。そういう意味ではきっとこのチームは良いチームだろうと、彼女達の担任教師である安芸は思った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

____そして、合宿当日

 

 

 

まず基礎体力を作る為、走り込みをしたり筋トレを行い終えると暫しの休息を取り、身体を休ませる。そしてバランスの取れた食事を食し、次の日のエネルギーに変える。というのが合宿でのスケジュールだ。

 

 

「ああ〜。疲れた体に温泉が染み渡る〜……にしても、バランスの取れた食事に激しい運動。そしてしっかりと睡眠。勇者というか体育会系の合宿と同じだよなコレ」

 

 

「仕方ないわよ銀。これも勇者として必要な基礎訓練だもの、とにかく基礎を上げることはとても重要なことよ。……ふぅ、それにしても良い湯ね……」

 

 

四人は、疲労した体を温泉でゆっくりと浸かり体の疲れを取っていた。

 

 

「そうだね〜。いっぱいトレーニングしたからかな〜なんだか私、少し筋肉ついたかも〜……む〜、むん!ほら力こぶ〜どうどう?」

 

 

力こぶを作り見せてきた園子の腕を、つんつん。と押してみた時音。 ぷにゅ、ぷにゅ…

 

 

「え〜と……ぷにぷにしてて、柔らかい、ね?」

 

「………ガビ〜〜ン……」

 

「あはは……よしよし(なでなで)」

 

 

落ち込んでしまった園子を宥めるように、時音が頭を撫でていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

お風呂から上がって来た少女達は、就寝する為に寝室部屋へ移動する。寝室には4人分の布団が敷いてあった。銀と須美、時音と園子の組み合わせで布団の上に座る。ちなみにこの配置は園子がどうしても時音の隣りがいいと言い出し、こうなった。

 

 

「銀ちゃんお土産もう買ってきたの?」

 

「いや〜お土産コーナー見てたら弟達の顔が思い浮かんで、ツイな」

 

 

合宿1日目にして、旅館の売店で家族の為に沢山のお土産を既に買い揃えていた銀。

 

 

(僕も後で買っておこう…)

 

 

そのお土産の山を見て、ある人の顔を思い浮かべた時音は自分もお土産を買って行こうと思った。

 

 

「わっしーの荷物あれだけ〜?少なくない?」

 

「そう?普通じゃないかしら?ねぇ時音ちゃん」

 

「うん、僕も必要なものしか入れてないしね」

 

 

須美は必要最低限のものしか持って来ておらず、荷物はバック一つだけ。時音も荷物は大きめのリュック一つだけだった。

 

 

「そういう園子の荷物はどうなんだよ?」

 

 

園子の荷物はというと、ネコらしき姿をした抱き枕や、プラネタリウム、挙句には臼を持って来ていたりして合宿に必要ない物ばかりで溢れていた。園子自身はニワトリのパジャマを着ており、何故ニワトリ?と理由を聞くと、焼き鳥好きだから!だそうだ。

その返答に須美と銀は口元を引き攣らせていたにも関わらず、時音は園子の理由が面白かったのか何なのか、くすくすと笑っていた。

 

 

就寝前のそんな他愛もない会話が終えると、早朝5時から始まる訓練に備えて寝る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一一一深夜

 

 

 

少女達が寝静まる寝室に、ごそごそと何かが布団の中で

擦れ合う音が鳴っていた。

 

 

「………うん、しょっ」

 

 

(トっきーと一緒のお布団〜、えへへ〜)

 

 

音の正体は、隣りで寝ている時音の布団に潜って体を近づけた園子だった。すやすやと気持ち良さそうに眠る時音の横顔を見つめる園子。

 

 

(こんな近くにトっきーの顔がある。……寝てる顔初めて見たな〜かわいい〜)

 

 

いつもは、時音より身長が高い園子の方が見下ろしてしまうのだが、寝ている体勢だと同じ目線になれるから寝ている時音の顔をまじかに見ていた。いつもと違う時音の姿を見れて園子は嬉しそうに微笑んだ。その時だった___

 

 

「んんぅ、……すぅ、すぅ………」

 

 

ビクッ!?

 

 

寝顔を見つめていたら時音が寝返りをしたようで、体の向きを園子がいる方向に向けてきた。そうなれば当然、時音の顔と園子の顔は向き合う状態な訳で……寝息、心臓の音、体温。時音から感じられる様々なものがとにかく近い。突然な状況に対し、園子は驚きと困惑を隠しきれずに内心ではとても慌てていた。

 

 

(トっきーの顔が!?……ち、近いよ〜あわわわ〜!)

 

 

「……すぅ、すぅ………」

 

 

(あっ、これって……傷痕?)

 

 

軽いパニック状態から落ち着いてきた園子は、時音との

顔の距離を取ったことで冷静さを取り戻した。

それから再度ゆっくりと、寝息を立てている彼女の顔を

見てみたらある事に気がついた。

暗い部屋に月の明かりが差し込んだことで部屋が薄明かりになり見えた、彼女の額の右側に薄らだが傷痕を発見したのだ。傷痕の具合を見ると恐らく古傷なのだろうか、幼少の頃に出来て成長するに連れ傷痕が目立たなくなって行ったようだ。

 

 

(全然気がつかなかったんよ〜………私って、トっきーのこと知ってるようで全然知らないんだ……)

 

 

額の傷痕を確かめるようにゆっくりとなぞる。

いつ、どこで、どのようにしてついた傷なのかも

その時、何があったのかも園子は何も知らない。

 

 

(ミノさんなら、この傷痕のことも知ってるんだろうな〜……。もっと早く出逢っていたら、もしも何かが違っていればそしたら私もトっきーのこと、もっといっぱい知れたのかな……)

 

 

今まではそんなこと考えてもいなかったのに……気がつけばいつも彼女との、そんなもしもの空想ばかりを考えてしまう。

 

「そのちゃん」って優しい声で名前を呼ばれるだけで

それだけで胸が高鳴ってしまう。

どうして時音が笑ってる姿を見るだけで、こんなにも心が動かされるのか。

仲間と共に過ごす日々の中で、時音にだけ現れる

この名前の分からない感情は溢れ出しては、胸の中で降り積もるばかりで。でも……

 

 

(こうやって、トっきーの近くにいられるだけでそれだけで嬉しいんよ〜。だから今だけは我儘になってもいいよね……)

 

 

時音の片腕に自分の頭を乗せ、もう片方の腕を持ち上げその間に挟まった。時音から聴こえてくる心音の音が心地よくて、彼女の匂いに包まれて行くのを感じながら瞼を閉じて眠りについた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

名前が分からないその感情に、はっきりと名前が付くのは意外と近かったりするのかもしれない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 




前回、オリジナルの話しを書きますと言いったのですが
まだ少し時間がかかりそうなので
先に本編を書いていく方針に変更致します。

出来るだけ早く投稿するよう頑張りますが
それでもまた、期間が空いてしまったら申し訳ございません。


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