シデコブシの蕾。その花が満開に咲き誇るとき、その花は…… 作:青の色系が好きな者です。
今回は文章が長くなりました。
本当はもっとあったのですが 長くなりそうなので
書ききれなかった分は、短編か日常編 等として
書けたらいいなと思います。
前回の合宿編 前編に引き続き
今回は後編となります。
少しでも楽しんでいただけたらと思います
それでは、本編へ…どうぞ。
深夜の寝室には、疲れきってぐっすり眠っている少女達
いつもの眠りに何やら違和感を体に感じた時音は
ぼやけている意識の中、重い瞼をゆっくりと開けていく。
「んんぅ……ん?」
するとそこに居たのは、体にぎゅっと抱き着いて
とても気持ち良さそうに寝ていた園子がいた。
(そのちゃん…?)
今にも瞼が落ちそうな目をしながら
ぼーっと、園子を見てみると自分の片腕を枕にして
頭を乗せていた事に気付き、夢の中で感じた
違和感の正体が分かった。
(……腕が…………いい、か)
時音はその状態を気にせずに
動かせる片手で半分落ちかけている布団を園子に被せた。
そして再び瞼を閉じた。
(……暖ったかくて…柔らかい……)
ふわっと、感じた柔らかな温もりに
心地くなりそのまま優しさに身を委ね眠りついた。
一一一翌朝
園子が時音と抱き合いながら同じ布団で眠っている姿を
発見した二人。いつの間にか時音の布団に潜り込んだ様子だった。目の前の光景を見つめながら須美は…そのっちたら幸せそう顔をしてるわ。と微笑んでいた。須美と同じ光景を見た銀は…それにしたってちょっとくっつき過ぎじゃないか?と言葉を零していた。
その後は二人を起こす為に布団へ近寄り、須美がすやすやとまだ寝ている二人の肩を揺すっていた様子を見つめていた銀はというと………
(……時音に抱きついてるのなんて今までにだってあったけど。 そりゃあ園子にとって時音は初めての友達なんだし、抱き着かれても拒んだりなんか時音がする訳ないけど、だけど…………なんなんだ、このモヤモヤした変な感じ…………)
園子に抱き着いているのを受け入れている
時音の姿を見た銀は、モヤモヤとした黒い靄の様なものが心に纏わりついていた。そんな自分でも訳の分からない
感情を抱き初めたのだった。
第五話
合宿二日目___
午前中は基礎トレーニング、筋トレを行い体を休ませる為の休息を取る。一日目と変わらず同じメニューをこなした。午後からはこの合宿の中でもっとも苦戦する模擬戦闘での連携だった。
ズラりと横一直線に並べられたボールを発射させる機械。
それを敵からの攻撃とし、砂浜の向こう側の道路に停車してあるバスをゴールと見立て、敵からの攻撃を如何に躱しゴールへ仲間を辿り着けさせるか。
それがこの訓練で少女達のチームワークを培う事が出来き、互いを信頼し合うことで連携力を高められると判断した安芸。
園子が前線組を槍の穂先を変形させた盾で護り
カバーしきれない攻撃を須美が後方から矢で撃ち落とす。
銀と時音は配置された機械から放たれるボールから身を
守り、躱しきれないボールは各々の武器で防いだり弾き飛ばした。
最初こそ何とか連携の形をとっていたものの
やはりタイミングが合わず何度もボールを喰らったり
前衛の二人を盾で護る為に、柄の部分を強く握りしめていた手の平はマメになって、後方から仲間の援護を弓で狙い撃っていた腕と手は、疲労と弦を摘んでは離しを繰り返しで指先に軽傷を負う。この訓練は容易いものではないと
改めて実感する少女達であった。
一一一合宿最終日
初日の時の動きとは打って変わり
少女達は互いを信じ合うことで動きに無駄がなくなり
素早く行動が取れていた。園子は的確に迫り来るボールを
盾で捌く体勢も向上していて、須美は放たれるボールを
射抜けており確実に命中率が上がっていた。
(っ、今だ!)
ゴールであるバスまでの距離が残り僅かに迫った瞬間
隣りの銀に目で合図を送ると、園子の盾から飛び出た
銀と時音はバスまでの距離を飛んだ。
「おりゃあーーーーっ!!」
前方から迫るボールは前を行く銀が弾き返し、時音が躱しきれないボールは後方から援護し須美が弓で射抜き落としていた。二人を信じて時音はボールから身を躱しつつ
武器に力を一点集中させ続け攻撃の威力を高めていた。
通常攻撃力の強さだけで言えば銀がこのチーム内で高いのだが、それよりも一撃の破壊力を持っている時音の攻撃威力は凄まじく、その攻撃が決まれば勝利の確率は上がる。
(っ、まずい落ちて来てる!このままじゃバスまで届かない…っ!)
これまでの疲労が体に来たのか、ゴールまであと少しの
ところで飛距離が足りず徐々に落ちてきてしまっている事に気づき、どうするか焦っていた
「時音っ!」
大声で自分の名前を叫ばれ目線を向けると銀が大きく体を捻っていて、片方の斧を構えていた姿を捉えて何をするか察した時音は彼女の斧の面に足が当たる様に体勢を取り、銀は思いっきり斧を振りかぶるとそのまま時音をバスまで投げ飛ばした。それはまさに阿吽の呼吸のようだった。
「いっ、けぇーーーーー!!」
飛ばされた勢いのまま、バスの上空まで上がった時音は空中で体勢を整え、狙いを定めると力を高めていた大鉄槌を自身の頭上に大きく掲げ。
そして一一一
「これでっ、終わりだぁーーーーーっ!!!」
銀の叫び声に感化された時音は、今までに無い凄まじい一撃を叩き込み、ゴールのバスを破壊し粉砕した。
合宿での訓練が無事に終わり皆んなで温泉に浸かっていた。少女達の身体は繰り返した訓練で出来た擦り傷、切り傷、打撲など、ボロボロになっていた。
「ふぅ〜、疲れたねぇ…」
「そうだな〜、あぁ〜疲れたが取れてくわ〜」
「トっきー、ミノさん大丈夫〜…?」
「全然大丈夫だよ。こんくらい大した事ないって」
「心配してくれてありがとう、そのちゃん」
この訓練で一番ボールを受けていたのは
前衛にいた銀と時音で、二人は多くの怪我を負っていた。
特に、止めの一撃を繰り出した時音はバスの破片が体を
切り裂いた部分もあり、本人は大丈夫だと言うが見ただけでこちらまで痛くなってしまう見た目の傷だった。
「でもまさか、あのままバスを壊したときは驚いちゃったわ。……でも時音ちゃんに大きな怪我が無くて安心した」
「今なんか言った〜?わっしー?」
「い、いいえ!何も言ってないわよ?」
小声で何かを呟いた須美。それに気付いた園子がそう問いかけたが、須美は慌てて何も言ってないと言う。
「慌ててるとこがまた怪しいな〜♪」
「ほ、本当に何も言ってないってばっ!もうっ…」
その様子に銀は怪しみ、じぃーっと目線を送りつつ
そう言いながら須美を揶揄っていた。温泉に入っているからなのか須美の頬は若干赤く色付いていた様にも見えた。
「ま〜二人とも〜。ゆっくり浸かろうよ〜せっかくの温泉なんだから〜」
そんな銀と須美のやり取りを、にっこりと微笑ましい顔をして見つめながらそう言った園子。その横で時音は……
「……ありがとう須美ちゃん」
須美を見ながら周りに聞こえないくらいの声で
そう感謝の言葉を呟いた。その後
落ち着きを取り戻すと皆んなで温泉に浸かり直した。
「それにしても〜、この三日間は凄くキツかったね〜」
「そうだねぇ、でも無事に目標達成が出来て良かった」
この合宿での訓練を改めて思い返すと
ハードな合宿だったと実感していた。
「でもなんかこう〜、漫画やアニメみたいに必殺技を
バーンと授けるようなイベントあって欲しかったよな〜」
「少し文句が多いわよ銀?
厳しい訓練のお陰で私達も成長出来たじゃない」
「そうだけどさー。成長中の女の子には色々辛いですよって話し……時に須美さんは大きな桃を二つも抱えて辛くないんですかい?」
「え?何よ突然。大きな桃?二つ……な、ななな!?銀ーーっ!!」
「なんだよ!事実を言ったまでじゃんかー!むしろ大きいくせに照れてるとか贅沢言うなー!おりゃっ!」
逆ギレした銀が、須美の顔目掛けて湯を掛けた。
須美はまだ少しだけ平常心を保って、怒りを堪えていた。
「……耐えるのよ須美。こんなの子供のいたずらだわ」
「ああ、そうだよ子供だよ〜だ!ほれほれ」
だがしかし、銀に煽られてしまう結果になった。
遠慮なしに湯を掛けてくる銀に、我慢の限界が須美に訪れたのだった。
「くっ!もう我慢ならない……このっ!」
「おっと!なんだよ須美、沸点低いなー」
「そっちからやってきたんでしょうが!えいっ!」
ハジャッ! 須美が銀に湯を掛けた時だった
「ふぶっ!……」
「「あ」」
「あらら〜」
銀へ掛けた湯が誤って時音の顔面に命中したのだった。
「ご、ごめんなさい時音ちゃん!」
「あはは、大丈夫大丈夫。お湯が掛かっただけだから」
「あーあ、何してんだよ須美〜」
「なっ!……元わといえば銀のせいでっ、しょうっ!」
バシャっ!
「ふぶっ……や、やりやがったな〜。お返しじゃあーー!!」
「二人ともまた始めちゃったね〜」
「あはは、結局こうなっちゃうんだね。…ふぅ」
湯を掛けられ、髪が濡れてしまった時音は顔に手を当て
ゴシゴシと拭った後、前へ垂れた髪を後ろへかきあげた。
その姿を見た園子はいつもの幼い顔立ちの彼女とは違う
大人っぽいすこ色気のようなものを感じて
心臓が、ドクンっ…と脈を打った。
時音とお風呂に入ったのはこれが初めてではないのに
園子の鼓動は鳴り止まず、うるさいくらいに脈打っていた。
思い返せばこの合宿期間中
今と同じように胸が高鳴ったことが何度かあった。
勇者服を身に纏わせて午前中の基礎訓練が終わった後
勇者服を解除して学校指定のジャージに戻った時だった。
長時間の訓練で溢れ出し、滴り落ちる汗をタオルではなく
Tシャツで拭った際、時音のお腹がチラリと見えたのだ。
それを見た園子は先程と同じ胸の高鳴りを感じたのだった。因みに時音のその姿を目撃した須美に御行儀が悪いわよ!と注意されていた。
温泉から上がると皆んなで寝室に移動した。
訓練での疲労もあり、就寝時間になり敷かれてあった
布団に入り電気を消し部屋を暗くしてそのまま眠ると
思ったのだが、一人の少女は何やらニヤニヤと含み笑いをしていた。
「それじゃあ、そろそろ寝ようか」
「私はいついかなる時でもすぐ寝られるよ〜」
「ふっふっふ。そう簡単になれると思ってる?お前ら」
「何言ってるのよ銀。明日も早いのよ?早く寝なさい」
「い・や・だ。合宿に来てから女の子っぽい話ししてないだろ?そこで女子の定番の恋バナしよ♪」
須美の意見を拒否をした銀は唐突に、恋バナをしようと言い出したのだ。確かにこの合宿で訓練ばかりだったので、年頃の女の子らしい話しは一切していなかった。
「恋バナって……例えばどんな?」
「そりゃあもちろん、好きな人の言い合いっこだろ?」
「おお〜恋バナいいね〜♪」
「そ、そういう銀はどうなの?」
「アタシか?アタシはな〜……」
「どきどき〜……」
須美は自身でも驚く程、この話題に食いついていた。園子も目をキラキラと輝かせ期待に胸を膨らませていた。
「いない!」
「ええ〜ずるいよミノさん〜」
銀はドヤ顔でそう言い張った。
そんな銀に対し、園子は抗議をした。
まぁそうだとは思ってたけど、そんなドヤ顔で言わなくても……と時音は苦笑いをしていた。
そんなことだろうと思っていたのか、須美は呆れ顔をしていた。
「須美はどうなんよ?」
「私?私もいないわよ。そのっちは?」
須美は手短に返事を返すと、今度は園子に問いかけた。
「えへへ〜♪いるよ〜」
「おぉ!恋バナ来たんじゃない?」
「だ、誰なの?」
「クラスの人とかかな?」
園子の意外な返答に銀はテンションが上がり、須美はなぜか緊張していて、時音はクラスの中に居るのかと尋ねた。
「うん!わっしーとミノさんとトっきー♪」
「「そうだと・思ったわ……」」
ぱぁっと、煌びやかなに返答する園子に反比例して、須美と銀のテンションは落ちていった。
「そのちゃんらしい答えだね?嬉しいよ(なでなで)」
「えへへ〜」
そう言いながら園子の頭に手を伸ばして、いつものように優しい手つきで撫でた時音。それを嬉しそうな顔をして受け入れた園子。
「それじゃあ最後は…時音ちゃんだけね」
「僕?」
「皆んな話したんだから時音も言わなきゃ駄目だゾ?」
「うーん……いないかな」
時音は少し考えた後、そう言った。
銀は思ってた通りの返答にやっぱりなと言う顔をしていて、時音も自分や銀と同じで好きな人がいない事が分かって安堵した須美。
(いないんだ良かった〜……良かった?なんでそう思ったんだろう〜……??)
園子もその返答に安堵したがそれと同時に、時音に好きな人がいない事を知ると安心した自分に疑問符を浮かべていたのだった。
体は疲れている筈なのに、何故か目が覚めてしまった時音は旅館から抜け出し外へ向かうと備え付けてあったベンチに腰掛け、夜空に煌めく星を見上げていた。
(そういえばここ最近、こうやって夜空の星を眺めることも忘れてたなぁ……)
「……綺麗」
暗闇の空には、淡く儚げな星々が光を帯びていた。そのまま暫く夜空を眺めていた時音は物思いにふけていた。
勇者としての御役目を任せられてからはこうして一人になる事もなかった。
(静かだ………)
いつもなら銀が真っ先にはしゃぎ出して、それに続いて園子もワクワク楽しそうにして二人で騒ぎ出して、そんな二人に対して真面目な須美は、落ち着きがない等と言うけれど最終的には楽しそうに笑っている………。
だけど今は一一一一
………ザァーー、ザザーー………
静寂な暗がりの中に自分一人だけ。
その空は黒く染まっており無数に光る星々と、浜辺に打ち上がる小波の音がだけが鳴り響いている。
(………怖いくらいに)
今、感じているこの心情に気付かされる。自分の周りにはいつも皆んなが傍にいてくれて、賑やかさと愉しさと笑いで溢れていた事に。
こんなに毎日が楽しくて自分が笑ってる未来なんて
昔の自分じゃ想像すらも出来てなかった。
皆んなと一緒に居たくて…この時間が愛おしくて……
もっと続けばいいと思うのに、一日の終わりは必ずやって来る。その度に一人になるのが淋しくなる……それを怖いと感じてしまう自分に、随分と弱くなったと実感してしまう。
(こうして一人でいると、まるで世界に取り残されたみたいだな……………あぁ、逆か)
「僕が皆んなの世界に残れなかったのかな……」
ぽつり。そう言葉を零した一一一一瞬間
「こんな所に居たんだね〜トっきー」
「うわっ!……そ、そのちゃん?」
「えへへ〜、トっきーびっくりした〜?」
突然、背後から声を掛けられ驚いた時音。
声の主は寝ている筈の園子だった。
「はは、うんびっくりしちゃった。でもそのちゃん寝てた筈じゃ…?」
「そうなんだけどね〜目が覚めちゃったんよ〜。
そしたらトっきーが居なかったから何処に行ったのかな〜って、探してたら外に人が居たからもしかして〜って来てみたらトっきーだったから、声掛けたんよ〜」
「そうだったんだ」
「うん。トっきーは何してたの〜?」
「僕もそのちゃんと同じ、目が覚めてちゃって外の空気でも吸おうと思ったら星が綺麗で眺めてたんだよ。……そのちゃん良ければ隣りにどうぞ」
「うん、それじゃ〜お邪魔しま〜す」
時音は自分が座っていたベンチの隣りに園子を誘った。
時音に誘われたままに、隣りに腰を下ろした園子は夜空を見上げた。
「わぁ〜……本当にお星様が綺麗だね〜」
「うん。とても眩しくて………綺麗だ…」
夜に浮かぶ星空を眺めていた園子。
隣りでは自分と同じく星空を見上げていた時音が静穏な声でそう呟やいていた。今のこの静けさも、時音と一緒にいるだけで不思議と落ち着くと感じていた園子。
夏の夜空に浮かぶ無数の星から放てる光が暗闇を照らし、同じベンチに座っている二人は少しでも動けばお互いの体が触れ合ってしまう距離だった。
静まり返った真夜中の夜空を二人して眺めていると、時音がその静寂を断つかのように園子に話しかけてきた。
「……そのちゃん。恋バナの話しをした時、僕は好きな人はいないって言ったこと覚えてる?」
「え?うん覚えてるよ〜?」
皆んなで恋バナをして、好きな人の言い合いをした事を言ってきた。
「……あのとき好きな人はいないってあんな風に言っちゃったけど、本当は自分じゃ分からなくて………」
好きな人はいないと発言したのは、時音の思想に戸惑いがあったからだったらしい。
「……誰か一人の人を好きになる感覚って、友達を好きになるのとどう違うのかなって。自分に……そういう人が、その……」
徐々に言葉が途切れ途切れになっていき、当惑した顔で何か言いたそうな表情をしていた。勘のいい園子は何かを読み取ったようで、彼女にこう問いた。
「それってつまり〜。トっきーは恋心がどいう気持ちなのか分からなかったから、あの時は好きな人は居ないって言ってたんだね〜」
「うん……」
「それで今トっきーは自分に好きな人が居るのか、自分の気持ちはどっちなんだろう〜?って悩んで、私に相談してきた……ってこと〜?」
園子は隣りにいる時音の顔をチラリと見てみた。
「…………う、うん」
園子の問いかけに、両手をもじもじと動かしながら顔の向きは正面を向いたまま気恥しそうに静かに頷くと小さく返事をした時音。
(これってもしかして…………照れてる?あのトっきーが??…………………)
そんなに恋について分からない事が恥ずかしかったのか
彼女の耳は心做しか赤く色付いているように見えた。
普段から相手を思いやって優しく話す言動や
その時に応じる一つ一つの行動の仕草は周りから見ると
まるで、王子様に見えてしまう。
そのせいか彼女のことを【王子・王子様】というあだ名が
学校で広まっていたりする。(※本人は知りません)
(か、かわいい……っ!)
照れたり恥ずかしがったりすることなど無い時音が今
自分の隣りで気恥しそうな素振りを見せ照れている姿を
初めて見た園子は、思わず心の声が口から溢れだしそうだった。
「??……そのちゃんどうしたの?」
「……えっ!ううん。何でないんよ〜気にしないで〜、あはは〜」
「そ、そう?」
時音の新たな一面に心中穏やかじゃない園子は
今のこの感情を抑えることを必死で隠そうとした。
「えっと……トっきーは恋愛の好きって感情がどういうのか分からなくて、だから私に聞いて来た。ってことでいいんだよね?」
急に黙り込む園子が気になり声をかけるが
園子は何でもないと言葉を濁すと先程の恋の話題に
話しを切り替えた。
「う〜ん……私、趣味で小説を書いててるんだけどその書いてる内容が恋愛物だから良かったらお話し聞いてみる〜?」
園子は趣味で一次創作の小説を書いているらしく
その小説の内容は恋愛模様を書いたものだと教えてくれた。
「もしかしたらトっきーの気持ちが分かるかもだし、少しでもトっきーの役に立てれば嬉しいからさ〜」
「うん。聞きたい…」
時音の返事に頷き
自分が書いた物語を淡々と物語る園子。
「恋をしたりするっていう感情は、人それぞれで違うんだと思うんだけど。
私が書いた主人公の女の子はね、自分が感じている今の気持ちが分からなくてそれが友達としての好きなのか恋をしてる好きなのか分からなくて悩んでる時に、友達から借りた一冊の漫画に出会うの」
一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一
漫画の少女は自分と同じように『好き』という感情に
悩んでいた。その主人公の少女には大親友の友達がいて、どんな時でもいつも一緒にいた本当に大切な友達。
けれど、ある日から親友に対して今まで感じた事の無い
感情が現れたのだ。
親友が他の誰かと楽しそうに話してるだけで胸がモヤモヤするし、それを見ているだけで何故だかとても寂しくて、親友が隣りに居ない事がどうしようもなく淋しくて、胸が苦しい気持ちになってしまうのだ。そんな自分の姿を心配して優しく頭を撫でたり手を握ってくれたり、触れられる度にドキドキするのと同じくらい嬉しさで胸が締め付けられた。
その後も親友が他の子と話している姿をいつも目で追ってしまっている自分は可笑しいのではないのかと、自分を疑っていた。
少女の心の中心は渦巻く感情にとらわらて、その心に大きな靄が覆い被さり濃い靄の中にいるような…..その靄はどんどん濃くなって行って、少女は怖くなってしまう。
そんな情緒不安定な日々が続いていた時、クラスの女子に好きな人が出来たという話で盛り上がっており、周りの
女子達が興味津々でその子に色々と質問を投げ掛けていた。聞きたくなくても聞こえる程に大きな話し声は、心の中で渦巻く感情にそれどころじゃない少女の耳にも届いていた。女子達の五月蝿いと思える程の盛り上がる会話を何とか耳に入らない様に授業が始まるまでの間、何処かに移動しようと席を立った一一一瞬間。
話題の中心にいる女子が、想い人を好きだと認識した話が聞こえてきて、引いた椅子はそのままにその場で立ち尽くした。
恋をした女子は言った。
その人が他の誰かと自分の知らない話の内容を楽しそうに笑いあってる姿を見て嫌な気持ちになって、早く終わって自分と話をして欲しかったと。
その後、俯いていた自分を心配してくれた事が嬉しくて、その人に手を触れられて凄くドキドキしたと。その優しさにきゅーっと胸が苦しくなって泣きそうになったと。それからずっと、気付いたらその人をいつも目で追っていたと話した。
それは、今まさに少女が心の中で渦巻いていた訳の分からない感情にそっくりだった。そして少女はずっと胸の中心に渦巻いていた靄が一瞬で晴れて、自分の気持ちがようやく理解したのだった。
自分は親友が友達としてじゃなく一人の女の子として好きなんだと……【親友に恋をしている】のだと自覚を持った瞬間だった。
その漫画の少女の言葉が、自分に当てはまっていた小説の女の子はゆっくり目を閉じて、静かに瞼の裏に思い浮かべる。触れられてドキドキするのは誰か、何気ない優しさに嬉しくなるのは、他の誰かと楽しそうに笑ってそれを見て胸が苦しく締め付けられるのは……そう思うのは誰か
一一一一一一一一一一一一一一一一一一一
「そして女の子は自分の本当の気持ちに気付いたの。
自分はあの子が大好きで。恋焦がれていて………気付けば女の子はどうしようもないくらい相手の子が愛おしくなり、涙を流した一一一一一一一そんなお話しなんよ〜」
そう物語を語った園子の話しが終った。
「………すごい」
「ふえ?」
「凄い、凄いよそのちゃん!そんな素敵なお話を書いてるなんて知らなかったよ……本当に素敵なお話だったよ」
小説のお話だった筈なのに、その小説の中に出てきた漫画の少女までもが物語の登場人物になるなんて思わなかったのだろう。時音は園子の書いた小説の話しにとても感銘していた様で、またその話しを書いた園子にも感激した様だ。
「ありがとう〜。そんなに言われると思わなかったから照れちゃうよ〜えへへ〜」
まさかこんなに褒められるとは思っていなかったので園子は驚いたが、ここまで純粋な瞳でそんな風に言われて嬉しくない筈が無い。
「もしもトっきーにそんな風に想う人が居るのか分からないなら、お話しの中の彼女達みたいに思い浮かべてみたらどうかな〜?」
「やってみようかな…」
「それじゃあ〜私が言ったことを頭で思い浮かべてみてね〜?まず、目を閉じて」
園子に言われたまま時音は、ゆっくりと目を瞑った。園子は目を閉じた時音の顔を見て、長いまつ毛に、ぷるっとした小さな唇を眺めていた。
(トっきーっていつもは可愛いのに、こうやって見ると綺麗な顔立ちしてるな〜………)
いつまで待っても園子の声が聞こえないから目を閉じたまま名前を呼んだ。
「……?そのちゃん?」
「…あ、ごめんね〜今から言うよ〜」
自分の頭を空っぽにさせると
園子の言葉を待ち、その言葉通りに思い浮かべる。
「頭で思い浮かべた人がトっきーを心配してくれました」
(うーん……友達とか親しくしてくれてる人しか思い浮かばないけどいいのかな?)
「続けるね?今頭の中で思い浮かべた人に触れられて、トっきーはドキドキした?」
園子の問いかけられたと同時に、頭の中にある声が聞こえた。
『ほら、これでどうだ?』
それはずっと隣りにいてくれた幼なじみの声だった。
「…………」
「トっきー…?」
「……あっ、ごめんね。続けて大丈夫だよ」
園子が時音に問いかけたが返事は来ず黙り込んだままだったので、心配になって声をかけた園子。その声に気づき
大丈夫と返事を返すと、話しを続けて大丈夫と言ってきた。
「それじゃ〜今度は、自分以外の誰かと思い浮かべたその人が楽しそうに笑っている姿を見てると胸がぎゅーって苦しくなる?」
そう問われたので、さっき聞こえてきた声の事は考えないようにし、園子の言う通りに想像してみる。
「……僕以外の人と楽しそうにしてる姿を思い浮かべたけど、皆んなが楽しいのならそれでいいかなって思ったよ」
「う〜ん…それじゃあ次は〜トっきーがずっと一緒に居たいって思う人。もちろん友達だからって気持ちじゃないよ〜?この人と別れたくないな〜、もう少し一緒にいたいな〜って思う人」
ピクッ…
園子に言われたその言葉に体が咄嗟に動いた。
思い当たる節があったから。
『一緒の時間が終わるんだなって、そう考えたら……』
時音の脳裏では
過去に言った自分の言葉を思い返していた。
(…………違う)
『もう少しだけ、銀ちゃんと一緒に居たかったなって思って……』
トクン……
(あの時はただ、そんな気持ちになっただけで………それに昔からしてたことで……)
『これで、寂しくないか?』
トクン……トクン……
(………あれは、嬉しかっただけで………)
『アタシもだ』
トクンっ……トクンっ………トクンっ…
(……僕、は……………)
『アタシも時音と、もうちょっと一緒に居たいなって思ってた』
ドクンっ!
「トっきー……?トっきーっ!」
ずっと目を閉じたままだった時音の様子が可笑しい事に気づき、咄嗟に大きな声で呼びかけた園子。
「っ!?…………ぁ、そのちゃん……」
「トっきー大丈夫…?なんだか顔色が良くないみたいだよ?」
園子の呼ぶ声が聞こえたのか目を見開き驚いて、はっ!とした表情の時音。
「ごめん……体が冷えてきたみたいで、少し寒くて…」
「…もしかしたら長く外に居すぎたせいかもしれないね。すぐに部屋に戻ろう〜」
「ありがとう、そのちゃん………ごめんね…」
初夏に入ってまだ間もない夏の夜空の中で話し過ぎたせいかなのか、時音は体をすっかり冷やしてしまった。その様子を心配して話しを中断した園子は、俯いた姿勢のままの時音の手を取るとそのまま旅館へ戻ることにした。
既にまっ暗い寝室へ入ると、二人分の寝息の音が聞こえたので須美と銀はぐっすりと眠っているのが分かった。
園子に手を引かれながら時音は、自分の布団の前に着いた。ありがとうとお礼を言うと二人はそれぞれの布団の中に入り、眠りについた。
園子side
皆んながぐっすりと眠る夜更け頃。目が覚めてしまっていた園子は今日の出来事を思い出していた。
(トっきーのこと考えてるとなんで胸が苦しくなるんだろう〜)
この合宿中に感じた、胸の高鳴りと激しいほどの胸の鼓動音に戸惑ってしまっていた。
(それに今日だって一緒にお風呂に入ってただけなのにドキドキしちゃって……こんなの初めて………私、どうしちゃったんだろう〜……)
頭で一生懸命に考えようとするも、今までの自分が初めての感覚にどうすればいいのか分からず布団の中でゴロゴロと寝返りを繰り返して気がついた。
「…………トっきー?」
時音が寝ている筈の布団には時音は居らず、布団は捲られた状態のままだったのだ。
寝室から出て廊下を歩きながら時音を探す園子。しかし、旅館の何処を探しても時音の姿は見つからなかった。
「トっきーってばどこに行ったのかな〜?う〜ん……」
夜の旅館を至る所まで探して歩いた園子は、ロビーの窓ガラスから差し込んで来た明かりに思わず顔を向けた。そこには綺麗な満月が園子を照らしていた。そのまま月を眺めていると、月明かりに照らされた事により今まで暗闇で隠れていた人影を窓ガラスの向こう側に発見した。
「あ、見つけた…」
そこには園子が探していた人物、時音の姿があった。この合宿期間中はこの旅館は貸し切りにしているので、今この旅館には園子達と安芸それからこの旅館を経営者のみで、発見した人影は遠目からでも分かる自分と同じくらいだった。だから時音だと確信をした。
「でも、あんな所で何してるんだろう〜?」
彼女は旅館から少し離れた場所に設置されているベンチに腰を掛けていた。
とにかく園子は、時音の元へと向かった。
(そうだ〜!折角だからトっきーをびっくりさせちゃお〜♪よ〜し、後ろからこっそり行こう〜)
そうこうして、静かに時音の座るベンチの傍までゆっくり近寄る。彼女は夜空を見上げながら何やら呟いていた。
(トっきー驚くかな〜どんな顔するのかな〜わくわく〜♪)
時音の驚いた様子を想像して、心を躍らさせていた園子。時音を驚かそうと出るタイミングを伺っていた時だった、その言葉を聞いたのは。
『僕が皆んなの世界に残れなかったのかな……』
時音が呟いたその言葉を聞いた途端、園子に得体の知れない不安と恐れが襲いかかった。
ただ、怖かった。
とにかく怖くて、だから咄嗟に声を掛けた。
気がつくと園子は先程まで考えていたこと等すら、既に消えさっていた。
もしもあの時、あのまま声をかけなかったら……
トっきーがどこか遠くに行っちゃう気がした。
『自分だけが残れなかった』なんて言葉を普通使うだろうか?何をどう思って言った言葉なのか、どんな想いが込められていたのかなんて分からない。
時音が言ったあの言葉の意味も分からなかったけど……それでも、ただ一つだけ分かったことがある。
それは【絶対に聞いてしまったらいけない】ということだけだった。
ゆゆゆい4周年に入りましたね
本当におめでとうございます!
このままずっと、ずっと、続いて欲しいですね(*^^*)
*↓ここから少し個人の感想…
4周年の銀ちゃん
カッコ可愛い過ぎました…(尊死)
交換で銀ちゃんだけはなんとか11は凸れました。
デビルシルバー…ズルいよ……ヴッ(尊死)二回目
わすゆ組の掛け合いも大好きでした!!
更新の方なのですが
私は本当に書くのが遅いので
また遅くなると思います…。
時間がかかってしまうけど書きたいお話は
まだまだいっぱいあるので、マイペースに書いて行こうと思います。