シデコブシの蕾。その花が満開に咲き誇るとき、その花は…… 作:青の色系が好きな者です。
お話を見て頂いた方
そしてお気に入り登録して下さった方
本当にありがとうございます。( ⁎ᴗ_ᴗ⁎)
嬉しさと元気を頂いており、感謝しかないです。
今回のお話は 合宿終わりの本編に行く前に
本編で明かされなかった日常という名の内容になります。
このお話しは、時期的に一応二回目の戦闘後になりますが
基本はあまり深いことは考えないで読んでも構いませんので。
それでは 四人の少女達の日常を、どうぞ。
これは、勇者に選ばれた少女達のお話……ではなく。
平和な日常を送る四人の少女達のお話である。
須美の携帯に一通のメールが届いていた
宛先人を確認すると時音からだった。
メールの内容は、この間の戦闘で心配させた事と
泣かせてしまった事に対する言葉が綴られていた。
須美は律儀な彼女らしい文面に自然と頬が緩んだ後に
返事を返そうとしたが、どうやら時音のメールには
まだ続きがあるらしく、画面をスクロールして続きを読む。そこに書かれていたのは_______
翌日_____
鷲尾須美の日課は毎朝5時に起床すると裏庭にある井戸へ行き、そこで身を清めること。その後は、徒歩で数十分の場所にある神社へ参拝をし、祈りを捧げる。
境内に住んでいるであろう猫には、心の中で自分で考えた名を名付けていたりする。そうして帰宅すると、彼女は
朝食の準備を始める。
「朝は、お米を食べないと1日が始まらないわね」
そんな独り言を呟きながら、慣れた手つきで包丁を扱う。
鷲尾家の両親は朝食が洋食派であったのだが、須美はそれが我慢できなかった。米と味噌汁こそ日本人としての至高の朝食という、彼女の強い主義があるからだ。
「よし、完璧ね」
親の作るものに不満があるのなら、自分自身で責任を持って朝食を作る。真面目な須美が出した明快な方針だった。今では洋食を好んで食べていた両親も娘が作る和食料理を楽しみにしている。洋食派だった両親を和食派に好み塗り替えるという、須美の見事な作成は成功しつつあったのだ。学校の日も休日の時でも、彼女はこの日課を欠かさないのだ。
そして朝食を終えて自室に戻ると外出する準備をしていた。服装の身だしなみを整えると家から出て、何処かへ向かって行った須美。
番外編
須美が向かった先は、待ち合わせ場所によく使われている広場だった。辺りを見渡して待っている人を確認すると、その人物の元へ駆け寄る須美。
「時音ちゃん」
「あ、須美ちゃんおはよう」
そこに居たのは、手すりのポールに寄りかかりながら
須美のことを待っていた時音だった。
「うん、おはよう時音ちゃん。ごめんなさい待たせてしまったかしら…?」
「ううん、そんなに待ってないから大丈夫だよ。こっちこそ急な誘いだったのに付き合ってくれてありがとう」
本人は待っていないと言っているが実際は、30分ほど前から既にこの場所で待機していた。
「全然大丈夫よ。昨日届いたメールを見たときは驚いちゃったけど誘ってくれたのはその、嬉しいかったから……だから、誘ってくれてありがとう時音ちゃん」
本当は家に行って須美を迎えるつもりだった時音だが
『待ち合わせ場所を決めて集まりましょう』と届いた彼女からのそんなメールを読んで、須美らしい返事だと思った。それならばせめて、彼女よりも早く待ち合わせ場所に到着して須美を出迎えていようという時音なりの気遣いだったのだろう。
「そっか、それなら良かった。須美ちゃんのその服可愛くて須美ちゃんに似合ってるね」
「あ、ありがとう……時音ちゃんは今日、髪を結んでいるのね?その髪型も時音ちゃんに似合ってるわね」
「ほんと…?ありがとう。髪とか普段はあんまり弄ったりしないからどうかなって思ってたんだけど、須美ちゃんにそう言ってもらえて嬉しい」
そう言って喜色な表情をしながら須美に微笑見返した。
服装はというと、上半身は紺色のパーカを羽織っていて
左の胸元辺りに犬の足跡がプリントアウトしてある、白のTシャツを中に着ている。下半身は太腿の丈までのデニムのショートパンツを、その下に黒色のストッキングを履いて、上着と同じ色あいの紐なしスニーカーの格好だ。
「それじゃあ、そろそろ行こっか?」
「うん、そうね……ふぇっ?」
「どうしたの?」
「えっ!あ、いやその…ててっ、手!」
自然に須美の右手を握り手を繋いできた時音。
そんな彼女の何気ない行動に須美は、慌てたように言葉を乱してしまう。
「手?あっ、ごめん……もしかして手繋ぐの嫌だった?」
「そ、そんなことないわ!その…ただ驚いちゃって、それに手を握られるのは嫌いじゃないから…」
「そういえばこの間、銀ちゃんとそのちゃんに手を握ってもらってたもんね?」
「もうっ!時音ちゃんからかわないでよ!」
「あはは、ごめんごめん」
初々しくも、ほんわかな雰囲気な須美と時音だった。
そんな2人の様子を、物陰に隠れて覗いている二つの影があった。
「なんか様子が怪しかったから時音の後をつけて来たら、須美と一緒だったとは」
「むむむ〜、なんだかいい雰囲気だね〜」
人陰の正体は、銀と園子だった。何やら昨日から時音が
不審な様子だったので、気になって後をつけて来た銀と。
その話を銀に相談され、興奮気味に食いついて来て興味深々な園子は事前に待ち合わせをすると、時音の後を尾行していた。そして今現在、待ち合わせ場所に居たのは須美だったのだ。
「ていうかさ、アタシらにナイショで二人だけで出掛けるとか……な〜んか怪しいよな」
「しかも手まで繋いで二人っきりで秘密のお出掛けなんて〜。これは観察しがいがあるね〜それに、いいものが見れそうな予感がするんよ〜♪」
どこから取り出したのか手にメモ帳とペンを持つと園子は、自分の趣味である小説のネタに取り入れようとしているようだった。
「園子が言ういいものってどんなんだ?…まーとにかく、このまま二人を尾行するぞ。そんで後で二人に事の事情を聞きまくって証言させてやるゾ!」
「はーい!なんだか創作が捗りそうだよ〜♪
なんか前にもこんなことあった気がするけど〜、でもこういうの探偵みたいでワクワクするね〜」
元気よく返事をする園子だったが、今のこの行動に一瞬どこか既視感を感じたようだったが、とにかく今はこの探偵の様な行動が楽しい様子の園子だった。
「あれ〜?私、この道知ってる様な〜…?」
「間違いないこの方向は……やっぱりイネスだ!」
銀と園子が二人の後をこっそりと追いかけて行くと、そこは自称イネスマニア銀が愛してやまないショッピングモールイネスだった。
「あっ、ミノさん2人とも中に入って行ったよ〜」
「バレない様に追いかけるゾ!」
まず須美と時音が最初に立ち寄ったのは、キッチン用品コーナーだ。時音が手に取ったのは、子供でも安心して使える仕様になっている包丁のようだった。それを手にしたたまま、何やら須美と話し合った後それを買い物カゴに入れる。すると今度は、食品コーナーへと移動し、そこでお肉と卵と野菜やら色々と買い揃えていきながら、仲睦まじく会話をしていた。
「わぁ〜、あんなにいっぱい買ってどうするんだろうね〜?」
「んー、二人で料理でも作るのか?それにしては量が多いよなぁ……とっ、また移動した」
またしても場所を移動した時音と須美。
その後をこっそりと尾行すると、フードコートにへと着くと荷物をテーブルに置いて席に着く、どうやら此処で少し休憩をするようだ。
「お待たせ須美ちゃん、これは僕からの奢り。どうぞ」
「ありがとう時音ちゃん。でも本当に奢って貰って良かったの…?」
「うん、僕が奢りたかったしそれに今日一緒に付き合ってくれたお礼だから。受け取って貰えると嬉しいな?」
「お礼何て…そんなの気にしなくてもいいのに。でも時音ちゃんがそう言うなら有り難く頂くわ」
「ありがとう」
「はむ…んん……やっぱり宇治抹茶味も然る事乍ら、この焙煎抹茶味もいい味わいで絶品ね」
「良かった。この間イネスのチラシにここのジェラート屋さんの事をが書いてあって、期間限定の味が出るってあったから須美ちゃん好きそうだなと思ってたんだ。気に入ってくれて良かったよ」
時音の選んだジェラートは、今日新しく出来た焙煎抹茶味のジェラートだ。新聞に挟まっていたチラシに銀とよく行くジェラート屋で、期間限定の味が出ると書いてありそれを見た時音は和食のものが好きな須美が好みそうだと思い、ここへの寄り道を決めていた時音。
時音の持つジェラートの味はどんなん味なのだろう?と気になり本人に聞こうと、自身の焙煎抹茶味のジェラートから目を離し時音が座って居る方へ顔を向いた須美だったが……その瞬間____
「時音ちゃんのはどんなんあ、じ?………とととっ、時音ひゃんんん!!?」
「待って、動かないで……」
須美の頬へ右手を添え顔近くまで迫っていた時音の顔があったのだ。傍から見たらまるでキスをするのではないかという顔の距離感だった。
突然目の前で起きた出来事に困惑し、うろたえてしまったからか時音の名前を噛んでしまった須美。でもそんなのお構い無しに徐々に顔を近づけてくる時音にドッドッドッ、と心臓の心拍数が早く上がっていく須美の顔は茹でダコの様に真っ赤に染まっていく。耐えきれなくなった須美は目を、ぎゅーっと瞑った。
「はい、取れたよ」
「………ふえぇ??」
「頬っぺにジェラートついてたよ?須美ちゃん」
須美の口端についていたジェラートに気がつき、ハンカチを使って拭き取ろうとした時音だが、彼女のとる行動は、一つ一つが無自覚で行っている為に本当に、たちが悪くて……だからこのような被害にあう人は多かったりする。
今日は須美がその被害者になった。
「………あ、あ!拭き取ってくれたのね…?あ、ありが、とう………(でも言ってくれれば自分で取ったのにもぅ…時音ちゃんの行動は心臓に悪いわ…)」
須美がそんな目にあってた一方で_______
「ビュオーー!!これはメモを取らなくっちゃ〜!」
「須美ったらまたあんなに真っ赤にしちゃって…(まー気持ちは分からなくもないけどな。時音の顔の距離感って近すぎるもんなぁ)」
「いや〜トっきーの天然が炸裂するね〜♪しかもこれが無自覚なのがまたいいんだよ〜!もっとやっちゃえ〜♪」
「いやいや、これ以上の天然が発動したらやばいだろ?……主に須美がさ」
フードコート入り口前にある大きな柱の陰に身を隠し二人の様子を伺っていた銀と園子は、急に顔を接近させ口端についたジェラートを拭き取ろうとした時音に、キスをされてしまうのではないかと錯覚してしまった須美。
そんな二人の恋人同士のようなイチャイチャに興奮しメモ帳に書きとっている園子と。そんな行動をとった幼馴染みの無自覚な天然振りに、やっぱり顔の距離感が可笑しいと認識し直した銀だった。
ちなみにこの二人の話し声は全て小声である。
フードコートでの休息が済むと、イネスから出てまた別の場所へと向かった須美と時音が着いたのはとある公園だった_______
「……ここって公園、よね…?それにしては少し小さいような?」
「ここね、新しい建物が建設されるんだって」
「えっ?」
「待ち合わせに使った大きな公園広場があるでしょう?あっちが出来てからこっちの公園は殆ど使われなくなっていったみたいで、それで。だから無くなる前に須美ちゃんとこの公園来たかったんだ」
「どうして? 私と…」
何故、自分をこの場所に連れて来たのか
疑問に思ってしまい、時音に問い掛けた須美。
すると、次の瞬間_____
サァァーーという音と共に、颯々たる風が吹いた。
そして、風が吹き止むと少しの間を置いてから
須美がいる方向に体を向き直した時音。
「初めて須美ちゃんと会った時も……こんな感じの小さな公園だったよね?」
二人の尾行をしていた銀と園子はというと___
「ダメだ、こっからじゃ何話してるのか聞こえん。
かと言ってこれ以上近付けないしな……二人でどんな話してんだろうな?」
「ん〜、なんだかわっしーが驚いてるみたいだけど……何かあったのかなあ〜?」
草むらから須美と時音の様子を伺っていた。
この小さな公園には隠れる場所が少なく唯一あった
草むらに身を隠した銀と園子だったが、須美と時音が居る位置から離れた場所にある為、話している会話の内容が
聞き取れずにいた。
あれから少しの沈黙の間が出来たが、とりあえず座ろうか?と時音の言葉によって解けた。言われた通りにベンチに腰掛けると須美はゆっくりと口を開らき、淡々と昔の話しを語り始めた。
「あの頃の私は鷲尾家へ養子になることが決まって、ちょうど鷲尾家への挨拶に行っていたの」
須美が、鷲尾須美になる前の名前は【
という名前だったらしい。勇者の適正検査の結果
勇者の資格があることが判明した【美森】は
鷲尾家へ養子になるようにと大赦からそう降された。
そして、鷲尾家への挨拶を終えて帰る予定だったのだが、初めて訪れた土地に不慣れだったので、道に迷ってしまったようで、両親は道行く人に訊ねていた。
その日は風が強く、外に居ると整えていた髪もボサボサになってしまう位の強風が吹いていたからなのか、長距離の車での移動のせいなのか、彼女のリボンの結び目が緩んでいたらしく、その日1番の突風が吹き荒れ彼女のしていたリボンが解けて飛ばされてしまい、慌てて追い掛けよう夢中で走っていたら、転んで足を擦りむいてしまう。しかも突然の出来事だったので、気がつけば周りに彼女の両親は居らず、見知らぬ土地で両親ともはぐれてしまった彼女は、足の痛みを我慢しながら近くにあった公園のベンチに座った。
「それからどうしようかと思い悩んでいた時だったわ……私の前に一人の女の子が現れたのは」
……………………………………
『______どうしたの…?』
『…えっ?』
突然、そう呼びかけられ俯いていた顔を上げると
そこにいたのは、ここら辺の子供だろうか?
自分と同い年位もしくは年下の女の子が目の前にいた。
『あ、あの……さっき結んでいたリボンが風で
飛ばされてしまって、追い掛けていたんですけど…転んで
怪我をしてまって……それで、両親とも…っはぐれてしまって』
『……』
目の前で今にも泣き出しそうな彼女を見た
少女は見つめていた。二人の間に少しの無言が続く_____すると次の瞬間、無言だった少女は『待ってて』と言って何処かへ行った。暫くして走って戻って来た少女の手には水の入ったペットボトルが握られていた、どうやら自販機で買って来たと見られた。そして少女は彼女の足を優しく掴んだ、それに彼女は驚いて声を上げてしまった。
『えっ…?えぇっ!?』
『動かないで……』
それから少女は腰に身に着けていたポーチから消毒液や絆創膏を出して、怪我の治療を施した。処置をしてくれている少女を見て普段からこういう事に慣れているのか、どこか手馴れた手付きだった。
『あ、あの!手当てして下さってありがとうございま、す……ふえ?』
(なで、なで……)
手当てをしてくれた少女にお礼の言葉を言おうとしたら、不意に彼女の手が頭に乗りなぜか頭を撫でられていた。
両親以外の人に、頭を撫でられる事が無かったので突然の事に
『………頑張った、ね』
拙い言葉ながらも紡ぎ出した少女のその一言で、今まで堪えていた感情の糸が切れたかのように目から零れた一筋の涙を流し泣いていた。
やがて娘を見つけた両親と、両親の姿を見て慌てて駆け寄り ごめんなさい。と
振り返ったが。
そこにはもう少女の姿はなく、先程まで自身が座っていたベンチには彼女が無くした筈のリボンが、一枚の板チョコレートと元に添えてあった____
………………………………………
銀に頼まれたお使いをしていた時音はその帰り道の途中だったらしく、公園の横を過ぎ去ろうとした時に公園の植木の枝に引っかかっていたリボンを見つけた後、見知らぬ女の子が一人で座っていてその子は、風の強い日なのに長い髪を下ろしたままで髪を纏めておらずに居たのを見た時音は、きっとこのリボンはあの子のだと確信して自分から話しかけたという。
リボンと共に添えてあった板チョコレートは、またリボンが飛ばされないようにする為と『疲れた時には甘いものを食べると元気が出るんだよなー!』という、幼馴染の言葉を思い出して置いて行ったと話してくれた。
無くした筈のリボンがベンチに置いてあった真相を聞いて須美はそこでようやく、ずっと疑問にしていたリボンと
一枚の板チョコレートについて納得したのだった。
「でもまさか、あの時の女の子が本当に時音ちゃんだったなんてね。驚いちゃった」
「うん、僕も驚いたよ。…ん?須美ちゃん『本当に』って?」
「そうね…勇者として訓練をするようになった辺りだったかしら。時音ちゃんが私に優しくしてくれる度あの時の女の子を段々と思い出したの。それからよ、あの時の女の子は時音ちゃんだったのかなって思い始めたのは……」
「そうだったんだね…。でもそれならどうして聴いてきてくれなかったの?」
「何度か時音ちゃんにその事を尋ねようとしたわ……でも!その度にいつも銀が会話に入ってきて聞くに聞けなかったのよっ!」
「そ、そうだったんだ……」
「へくちっ……ヤバっ!今の聴こえてないかな?」
「大丈夫だと思うよ〜。あっちの声が聴こえないから、こっちの声も二人には聴こえてない筈だから〜」
公園の草むらでは、突然のくしゃみに襲われた銀が咄嗟に手で口を覆ったが声を零してしまい、須美達に聴こえたのではないか。と慌てる。
「はあー、よかった……誰かアタシの噂でもしてんのかな?」
「もしかしたら、わっしー達がミノさんの話してたりね〜?」
「えっ、アタシのことを?まっさかー」
どうやら草むらから二人の声が聴こえないのと同じで、こちらの声もあちら側には届いていないようだった。まさか自分が須美と時音の会話を遮っていたなんて銀は知る由もなかった。
「ねぇ時音ちゃん。あの頃の貴女と今の貴女は随分と変わったのはどうしてか、聴いてもいい…?」
その言葉にこくり、と頷くと今度は時音が語りだした。
「須美ちゃんと出会う前の僕は今と全然違っていて、友達なんて要らないと思ってたし友達になりたいとも思わなかったんだ……」
「時音ちゃんが……?」
「うん。感情表現が苦手でまだ感情を上手く表情に出せなくって、それでよく勘違いされて人に恐がられたりもしてた」
確かに彼女と出会った頃は今とは違い、表情を表に出さなくて口数も少なかった。須美が知る今の時音とはまるで別人の様に思えた。
「特に寂しくも悲しくもなかったし、寧ろこのままで良いと思った僕は人と距離を取ることでいつの間にか心に囲いを作ってた。でもそんなのお構い無しにその囲いを物の見事に破って僕の心に飛び込んできた子が居たんだ」
「その子って、銀ね」
「うん」
強引に囲いを破ったかと思えば、そのまま勝手に手を掴かまれて見たことのない世界へと連れ出された。僕の世界は突如現れた一人の女の子によって無彩だった筈の世界は、まるでパレットの上で数え切れない程の色が交わりあって色鮮やかな色彩に彩られていった。
「銀ちゃんに出会ってから僕は変わっていった。
一人じゃ気づけなかった事、知れなかった事、見つからなかった事、二人一緒だから出来る事……本当に数えきれない程の沢山の大切さを教えてくれたんだ」
慈しむような声で頷いた彼女の横顔を見ると
とても穏やかでいて、優しい柔らかな表情を浮かべていた。
「今の時音ちゃんがいるのは、銀のお陰なのね…」
「うん__」
そんな時音を見て、彼女はまるで植物の様だと須美は思った。
植物は何もしなければそのまま枯れ果ててしまうが
水を与え、温かい日光を浴びることで成長をして花を
咲かせる。育て方次第では美しく花を咲かせる植物もあれば、誤って枯れてしまう物もある。その姿は人間の生き様にも捉えられたから。人が生きていく中で、様々な人達に出会うことで影響を受けて開花する者もいれば、悲しみや苦しみを背負いながら未だに蕾のまま生きる者もいるから。
だから時音が『植物』だとしたら、きっと銀は
彼女にとってなくてはならない
大事な陽の光『太陽』なのだろうと。
「時音ちゃんにとって銀は特別なのね…」
「うん特別で…大切な人だよ___」
彼女はそれ以上何も言わなかったが、その横顔を伺えば一目瞭然だった……時音にとって銀という存在は、かけがえのない人なのだということが一一一
「さてと。隠れてないでそろそろ出てきたら二人とも?」
「「!?」」
ベンチから立ち、草むらが茂っている場所に呼びかけた
時音。
「あちゃー…気づいてたのか」
「あはは、バレちゃったね〜…」
すると、茂みからガサガサと草が揺れそこから出て来たのは隠れて尾行をしていた銀と園子だった。
突然の友人の出現に驚きを隠せない須美は驚愕の声を上げた。
「えぇっ!そのっち、銀!?どうして二人が此処に!」
イネスのフードコートで、買ったジェラートを持って席に向かう途中で、銀と園子が隠れていた柱の後方にあったお店のガラスに二人の後ろ姿が写っており、二人が尾行している事に気づいていた時音は、わざと離れている場所にあった公園のベンチに座り、話し声が聴こえない距離を取っていた。銀と園子は二人の跡をこっそりと尾行していた事を白状した。そんな二人の行動に内心、飽きれた須美だったがいつぞやの自身も同じような事を仕出かしていたので二人に何も言えないのだった。
何はともあれ、いつもの4人が集まった。
それからお昼を食べる事になり皆んなで時音の家へお邪魔する事になった。時音の家に初めて訪れると須美は、内装を見て清潔感があって彼女らしい部屋だと思った。園子はというと、興味津々で辺りを見渡し普段時音が使っているだろうソファへと座り込んで嬉しそうに微笑んでいた。
それから少し経って、時音は園子に料理を教えていた。
「まずは手を、こうしてネコの手にして…」
「えっと〜、こうかな〜?」
料理初心者の園子にも安全に扱えるセラミック製の子供包丁を握らせ、お手本を見せながら説明をしていく。やはり料理初心者にいきなりオムライスは難しいだろうと思い、まず初めに包丁の握り方、食材の切り方、卵の割り方、玉子で包むのではなく上に乗せるだけのやり方などを教える事になった。
「そうそう、そしたらこう手を添えて…」
「トっきー…?」
「僕も一緒にやるよ。そのちゃんゆっくりでいいからね?」
「うん!わかったんよ〜」
時音が説明の途中で園子の背後に立つと、後ろから園子の手に自分の手を添えた。こういった事は初めてで一瞬、戸惑っていた園子だが直ぐにいつも通りに戻った。
それから料理を始める際に判明したことがあった、時音達が買ってい調理器具や食材についてだ。本来は須美と買い物した後、銀と園子の二人も呼んで自分の家お昼をご馳走する予定だったらしい。園子との約束の【オムライスの作り方】を教える為に、安全に扱える道具や須美に相談していた。そして少しでも須美に楽しい気持ちになってもらいたくて誘い出したのだ。
出来上がった料理は綺麗にテーブルに並べられた。
「んぅ〜、美味い!美味いよ園子!」
「ええ、そのっちとっても美味しいわ!」
「ホントー!よかったあ〜♪」
時音に教わりながら初めて園子が作ったオムライスは、玉子部分があちこちが破れて中が見えていた。
それでも園子が一生懸命に作ったオムライスには真心が込められていて、皆んなから絶賛された。
「玉子のところは破れちゃって形も歪になっちゃったけど、トっきーが丁寧に教えてくれたから何とか出来たよ〜。ありがとう〜トっきー」
「うんん。そのちゃんが一生懸命に頑張って作ったからだよ。僕はただほんの少し手伝っただけだよ」
「えへへ、トっきーってば褒め上手だな〜。うん、決めた!私もっと料理を上手にする、いっぱい練習するよ〜!」
「おっ、園子ってばやる気満々だな」
「そのっちならきっと上達するわよ」
お昼ご飯を食べ終えた後は皆んなで最新機種のTVゲームをした。それぞれがカスタマイズした乗り物を相棒に、様々なコース上に配置されていた多彩なギミックを駆使しながら、ランダムに種類の異なるアイテムを使って順位を競ったり、2対2でチームに別れてチーム戦をで勝敗を付けたりして、笑い合いながら愉快な時間を過ごした。
ゲームが終わった後は休憩になって時音の自室へ移動すると、時音が使っているだろうベットに即座にダイブした銀。それに続けて、ミノさんずるいよ〜私も〜♪と言ってベットに飛びこんだ園子。二人のその行動に須美がはしたないわよ!と言った。須美が二人に軽い説教を促していたとき、園子の目にふと、入った本棚にあったある物を発見すると、横になっていた体を素早く起こすとソレを手に取った…。
「「か、かわいいーー!」」
園子と須美はアルバムを観賞しだした。
そこには幼く愛らしい姿の銀と時音が写っていた。
「わあ〜見てみてわっしー!この写真のトっきー髪が長いよ〜!」
「時音ちゃん幼少の頃は髪を伸ばしてたのね?とても似合っていて可愛らしいわ!」
「トっきーってロングヘアの時あったんだね!かわいい〜♪」
背中まで伸びている長髪の姿の時音を見つけた園子の顔は、ふにゃ〜となっていた。須美も可愛いらしい二人の姿に見入っており、いつもより話す言葉に力強さを感じられた。
「なんか、須美達の熱量すごいな…」
「あはは…」
「でも、やっぱり昔の姿をこんなに見られるのって恥ずかしいなぁ…」
そういう銀は恥ずかしのか、彼女の頬は若干赤みを帯びていた。
その後も須美と園子はアルバム鑑賞をしていた。
ページを1枚ずづ捲っては、大きな声でかわいいやら愛らしいと連呼していて銀と時音は二人のその様子を見て圧倒されてしまっていた。
「あ、確かこの写真は銀ちゃんの家で誕生日会をした時のだ」
「ん、どれどれ?あー!懐かしいなー♪」
須美達がアルバムを捲っていると、ある写真が時音の目に入った。
その写真にはカットされた誕生日ケーキが紙皿に乗せられていて、それを両手で持って口の周辺をクリームだらけにした銀が写っていた。
「この写真のミノさん口いっぱいにケーキ頬ばってるよ〜。あ、ほっぺたにクリームつけてる〜かわいいね〜♪」
「ふふっ、銀ったらとても嬉しそうに笑ってて愛嬌のある笑顔ね」
アルバムを捲る度、自分達がまだ見ぬ幼少の銀と時音を見つけていく。
一枚一枚の写真の中に居る、小さくて愛らしい姿の銀と時音を見ていると心がほっこりしてくる、須美と園子。
「このときの銀ちゃん可愛かったんだよ?ケーキを一口で食べようとしてそのままケーキにかぶりついて、そしたら口の周りクリームだらけになっちゃって。それを僕が拭き取ってあげたんだよ。ね?銀ちゃん」
「そうそう、あの時はこれ一口で食べれる!って本気で思ってたからさー……て、時音まで須美達の話しに乗るなよー!」
須美達の言葉に便乗するかのように、銀の幼少期を詳しく語り始めた時音にお前も話しに乗っかるなよ!と突っ込んだ。幼少の頃の自分を語られて徐々に羞恥心に襲われていく銀。
「ふふっ、銀はこの頃から天真爛漫な子供だったのね?」
「ミノさんは昔からミノさんなんだね〜」
「この頃の銀ちゃんは今と変わらず可愛いくてね?とにかく好奇心旺盛で考えなしで何でもしちゃうからいつも危なっかむむぐう…」
「わああっ!!頼むからそれ以上はもう言うなぁー!」
銀の昔話しをまた語りだす時音に対し、恥ずかしさに耐えられなくなって……すると銀は頬を真っ赤に染めながら時音の口を手で押さえ、話しを強制的に終わらせた。そんな二人の掛け合いを見てた須美と園子は、くすくすと笑みを零しながら二人の事を見つめていたのだった。
そんな何気ない何処にでもある日常が彼女達を勇者ではなく、何処にでもいる普通の少女達でいられるのだ。
楽しい時間はあっという間に経つ。
外はいつの間にか出始めたばかりの月が顔を覗かせ、空は淡淡しい紺青色で覆われていた。その後、須美と園子は帰り道が一緒なので園子が手配したリムジンに乗り二人一緒に帰って行った。
二人を見送り終えると家の中へ戻った。
銀はリビングにあるソファーに座ると、時音も銀の隣りに座り体をソファーに預けた。そのまま暫く、お互いが今日の出来事を思い出しながら楽しいそうに笑いあった。
談笑し終え一息つくと、温かい飲み物を持ってくると時音はキッチンへ向かい、可愛くミニキャラ化された猫と犬の足跡マークが入ったお揃いのマグカップにホットミルクとコーヒーを入れて銀がいるソファーへと戻った。
「お待たせ、ホットミルク持ってきたよ……銀ちゃん?」
リビングに戻るとそこには、ソファーに首を預け頭だけが上を向いて珍しく遊び疲れて寝ている状態の銀。
「…zzz………」
「寝てる…」
一旦テーブルの上にコップを置くと、銀の体を自分の方に横倒しにして頭を膝に乗せ膝枕をした。
「よい、しょっと…」
ぽふっ…
今日は4人が集まって一緒に遊んだのがよほど楽しかったのか、いつも学校の昼休みに遊んでいる銀より活き活きとしていた。
「はしゃぎすぎちゃったのかな。今日1日ほんとに楽しかったもんね」
時間は…まだ大丈夫。
もう少しだけ寝かせておこう、時間になったら起こして家に送ってあげて……時計を見ながらそう考えていた時だった、膝の上でもぞもぞする感触に気付いた。
「んんぅ〜……すぅ…」
ふと、視線を下に向けると時音の方へ寝る向きを変えていた。
スヤスヤと心地好さそうに寝息をたてている銀のあどけな寝顔が視界に入った。嬉しい夢でも見てるのか幸せそうに微笑んでいた。眠る銀の頭に手を置き、優しくゆっくりと撫で下ろす。
ハッキリとした大きな瞳、照れて笑うと八の字になる眉毛に、癖毛のないさらさらとした髪、笑った時に見える可愛らしい八重歯……
(こうやって見ると、やっぱり銀ちゃんは可愛い女の子だと…改めてそう思う)
本人は気付いてないだろうけど、銀ちゃんに想いを寄せている男子はクラスにいる。
誰に対してでも心の距離を縮めて来て、明るく活発な彼女の周りはいつも笑顔があって輝いてて、家族思いでとても世話好きで弟たちを溺愛している。
トラブル体質故か困ってる人達に遭遇すると自分の事より相手を優先して絶対に放っておけない性格。
そのうえ年頃の女の子ながらの可愛さを持つ、乙女心の
持ち主一一一こんな素敵な子を好きにならない訳がない。
きっといつか銀ちゃんにも好き人が出来て恋愛を経験して大人になっていくのかな……そしていつかは大切な人と結婚をして、子どもを産んで幸せな家庭を持って…………。
須美ちゃんも、そのちゃんもいつか訪れる未来。
それは、きっと誰もが願う夢。
そんな当たり前の眩い幸せで満たされた
そこには、今と変わらずに愉しく笑い合っている
「僕も、皆んなと一緒に……」
ただ、願った。
当たり前に訪れるであろう、日常を。
「銀ちゃんと一緒に。大人になりたいな…」
そうやって紡いでいくそんな自分の発言に対して、自身の胸の奥を徐々にキツく締めあげられていく感覚に襲われていった。
「ねぇ銀ちゃん。僕のこと一一一一」
その声は今にも消えかけそうな、声色だった__
銀 side
須美と園子が帰って行った後
アタシ達はお互いに今日の出来事を思い出して
そしてついつい楽しくて話し込んでいた。
そんな楽しかった談笑が終わると時音がソファーから立って温かい飲み物を作って来るとキッチンへ行ったのを見送ると、時音が来るまで少しだけ目を閉じていた。
そのままアタシはいつの間にかソファーで
うたた寝をしていたらしい。自分でも気づけないくらいに皆んなと集まって遊んだのが相当楽しかったんだろうな。
その後の記憶はなんとなくしか覚えてない。
目は閉じたままで、微かに覚えているのは膝枕されていたと言うことと、上から下へゆっくりと頭を優しく撫でられたこと。
そして、その手をアタシは良く知っている。
優しくて、暖かくて、握られると嬉しいあの手を…
アタシよりも少し、小さなその手。
あぁ、時音だ。と直ぐに分かった。
頭を撫でられ気持ちよくなったからか、また徐々に意識が遠のいていく最中ハッキリとは分からなかったけど、何かを言っている声が聞こえてきた。
何かを懇願していた言葉を、まるで冗談だったかのように言う声色は何故だか、どこかへ消えて行ってしまいそうで……。
アタシは、その声を離したくなくて捕まえる様に
逃がさないように抱き締めた。
『ねぇ銀ちゃん。僕のこと______
ずっと覚えていて。
なんて。そう言えたらいいのに……な』
爛漫咲輝祭…シルエットで分かってたけど
本当に制服銀ちゃんが来るとは……めっちゃ欲しいっ!
初期の方に実装された制服の銀ちゃんは持ってる人なかなかいないと思うので
咲輝祭で来てくれて嬉しいけど…けどもっ!当たる確率
低いから……辛たんです(T ^ T)
それにしても 神花前の絵は本当に泣けますよね…。
東郷さんとそのっちの事を 須美、園子と呼ぶ銀ちゃん…
二人に話しかける口調も、話し方も……。
うまく言葉で言い表せませんが、この三人のお話は
いつも心を締め付けられて、銀ちゃんの運命は変えられないのかなと。
ただただ、わすゆの三人の幸せを願っては祈るばかりです……。
大満開の章で銀ちゃん出てきてくれたら良いなぁ〜。