だが、現実はそこまで彼に甘くはなかった
とにかく、現状を確認しなければお話にもならないと気付いた彼は先ず、ランドソルの街への侵入を試みた
しかし、しかしである
彼は忘れていた
自分が人間から恐れられる魔物であったことを
「うわあっ!ま、魔物だっ!」
「だ、誰かnightmareか何処かギルドを呼んで来るんだ!」
「女、子供は避難しろ!
畜生、何だってこんな所に魔物が」
[あるぇー?
あ、俺魔物だったか!]
ランドソルの街に足を踏み入れて、住民の悲鳴を聞いてから漸くそれに思い当たったのである
仕方ないので、彼は街から出て行く事にした
此処にいたところで、怖い怖い宴おばさんなどに絡まれると思ったからでは決してない!
ないったら、ない!
彼はランドソルの街からかなり離れた森の中で頭を抱えた
原作における時期が分からない以上、接触するにも介入するにも、状況が不明であるからだ
しかも、彼は悲しい事に一部のストーリーは閲覧したが、二部については全く知識がなく、アニメは未視聴であった
とは言った所で、魔物の身である以上はできる事にかなりの制限がかかるのは疑い様のないはなしであり、本来ならば原作キャラに関わるなど夢のまた夢である
一応主要メンバーの1人が魔物を操る能力を有しているが、彼女とて当面はとある人物の排除を目的としている。この為に今接触しようものならば、間違いなく使い潰されるのは目に見えていた
一応あてはある。あるにはあるのだが、彼としても彼女を利用するのは気が咎めた
前世においては騙し、騙されの生活を送っていた彼とて、あの純真無垢の少女を利用するのは流石に気がひけると言うものである
彼は彼の同僚の様に巧く立ち回る事が出来ずに周囲から孤立していた時期が長かった
なればこそ、同じ境遇にいる人物を利用するのは如何に外道であり、魔物に変じたとても、許容しかねた
余談ではあるが、件の同僚であるならば「それはそれ。これはこれ。緊急避難というやつだ」等と言い切るのであったが、彼はそこまで割り切る事ができなかったのである
かといって、このまま野生で生活するというのは、如何に外見こそ魔物であろうとも中身は人間である以上不可能でないにしろ、困難であった
「グルアッ!」
しかし、しかしである。彼もまたナマモノである以上は食べなければこの先生きのこれないのも事実だった
悲しいが弱肉強食こそが自然の掟
幸いにして、彼は腕が4本ある。であるからこそ、その辺の魔物に打ち負ける事などあり得なかった
とはいえ、殺生をしたことのない者では当然、無意識の内に何らかの不手際が出てしまうのは仕方のない事だった
「ご、ゴウウッ!」
故にそう簡単には仕留めきれなかった
〇〇〇〇〇〇〇は困っていた
彼女はとある事情により、自らの場所を追われてしまった
だが、彼女は何とか自らの居場所を取り戻すべく、実力をつけながら追っ手から逃れる生活を送っていた
幸いというべきか、彼女が持ち出したモノにより、戦闘能力については不足ない。
たが、とんでもなく燃費が悪いのである
故に彼女はその華奢な見た目からは想像できない様な食料を必要としているのだが、当然それ相応の負担を少女に課していた
だからこそ、少女はできる限りは食べられる魔物を探して討伐している。勿論食費のみではなく、追手の目を晦ます為でもあった訳だが
「お腹へりましたー」
そう呟きながら、少女は森の中を進む
その少し先には魔物と戦っている彼がいた
nightmare団長
本日、ランドソルの市街にてリザードマンが出現したとの連絡があり、急行しました
しかしながら、既に当該の魔物は街中から去っていたようです
街中を人海戦術で調べたのですが、特に被害は出ていなかったようです
目撃した人間からの話では、何かに怯えた様に街から出て行ったとの事です
なお、クリスティーナ殿は嬉々として追跡を試みたそうですが、取り逃したとの事であります
気になるのが、そのリザードマンは腕が4本あったという目撃情報が複数寄せられております
変異種の可能性が高いと思われますので、暫くは街中の警備を強化すべきではないかと思われます
「ふむ」
黒い鎧は報告書を見て呟く
黒い鎧、もとい黒い鎧を纏っている人物はジュンといい、王国直属ギルドnightmareの団長を務めている
ジュンは基本的に王宮の警備に専念しており、市街方面については副団長のクリスティーナや団員屈指の実力者であるトモ達に任せていた
今回は偶々、両名とも初動が遅れてしまい、団員達が先行する形となってしまった
それ自体に問題はない。形はどうあれ、民を守る事がnightmareな使命であるから
だが、魔物が街中にまで入り込んだ挙句、何もせずに帰るということ自体が明らかに不自然である
たしかに高位の魔物ならば知能も発達しており、ある程度の思考も出来る。それであるならば、ジュンとて納得しよう
だが、今回の魔物はリザードマンである
リザードマンは確かに民衆が相手するには困難であるものの、それこそ少しでも戦いに慣れてしまえば、脅威にはならない程度である
その程度の魔物が理性的に見える行動を取ったのであれば、違和感しか抱けない
「おや、団長か」
「クリスちゃん。戻ったのかい?」
「ああ。折角街中まで来たというから期待したのだがな、見事に逃げ切られたよ」
思考していたジュンの元に副団長であるクリスティーナが戻ってきた
話を聞く限り、彼女は街中という危険地帯まで入り込んだ魔物を倒そうとしたらしいが、逃げ切られてしまったらしい様である
不満そうな言葉と態度からも、折角の機会を逃した事への不満が感じられた
「クリスちゃんから逃げ切れるなんて、ね」
「全くだよ
少しばかり期待していただけになぁ」
クリスは楽しそうな口調とは裏腹に目は真剣そのものであった
クリスティーナはとある強大な力を有しており、狙った獲物を逃す事など滅多にない
しかも、今回の対象はリザードマン。クリスティーナにかかればそれこそ赤子の手を捻る様な気楽さで片付いた筈であった
だが、現実には片付かなかった
この時、ジュンとクリスティーナの中で件のリザードマンに対する警戒心が芽生えた
作中の少女は何者なのだろうか?(棒読み)
どうやら、彼はnightmareからロックされた模様
では雑文失礼しました