完成までの話が思い付かず、時間がかかりました。
それでは第4話どうぞ。
逃亡したヒュージの討伐から次の日の朝…
出雲は朝早く百合ヶ丘女学院の校門を通っていった。
そのまま職員室へ向かおうとしたが、地面に転がってる黒い何かが出雲の目に映った。
出雲はその黒い何かを拾った。
拾ったのは、どこかに跳び写ろうとしてる黒猫のストラップだった。
出雲「黒猫…?」
「あっ、それは…!」
出雲の元へ誰かが来た。
来たのは王雨嘉だった。
出雲は拾ったストラップが誰のものか悟り、雨嘉に差し伸べる。
出雲「王雨嘉だな?」
雨嘉「はい…後、そのストラップ…」
出雲「わかっている。お前のだろ?」
雨嘉「は、はい!ありがとうございます」
雨嘉は出雲からストラップを受け取る。
出雲「自分の持ち物は管理しておけ。大切なものならな」
雨嘉「はい。すみませんでした」
雨嘉は出雲に礼をし、そのまま立ち去ろうとするが…
出雲「……王、お前の姉と妹はアイスランドで今も活躍してるんだったな」
出雲の話題に雨嘉は少し動揺し、その場に止まる。
雨嘉「……はい」
出雲「王瑞希(るーしー)と王莉芬(りーふぇん)、私は1年前、彼女達に会った事がある」
雨嘉「えっ?」
出雲「ヘイムスクリングラトレードゴードに試作品のCHARMを送り届ける任務中、敵の奇襲に会って…数分後、協力に駆けつけてきたガーデンのリリィ達と力を合わせて戦った事があったな。その時、駆けつけたリリィ達の中にいた二人が私が当時着てた制服に気付いてやって来た訳だ」
雨嘉「そうだったんですか…」
出雲「その後、二人と話してるうちにお前の事を聞いた訳だ。自分に自信がないってな…」
雨嘉「…私、私は姉や妹に比べて、出来が悪いから…心配されてるのだと…」
雨嘉は中等部時代、アイスランドのガーデンで姉と妹と一緒にリリィをやっていたが、二人のリリィとしての強さにプレッシャーをかけられ、自信を失っていた。
3年生になると、百合ヶ丘女学院に転入するよう言われ、彼女はより自信をなくしていた。
自分はいらないのではないかと…
しかし出雲はこう答えた。
出雲「出来が悪いとは思えんがな」
雨嘉「えっ?」
出雲「お前の戦闘スペックは姉と妹同様、十分に高い。その気になれば優秀なリリィとしての風格を手に入れるだろう」
雨嘉「や、やめてください!私はそこまで強くは…」
出雲「始めから強い人間なんていない」
出雲の言葉でハッとする雨嘉。
出雲「みんな色々なものを積み重ねて、始めて強い人間になれるんだ。姉や妹も始めから強い訳じゃない。王家の人間だろうと関係ない。お前に足りないのは自信だ。少しは自分を信じたらどうだ?」
雨嘉「…自信……」
出雲「私は行く。言われたこと、頭に叩き込めよ」
と言って出雲は雨嘉と別れ、校舎へと入っていく。
昼休み、出雲は新しいCHARMを借りるために、学院の地下にある工廠科へと向かった。
出雲「流石にカービンではこれから先がきついだろうな…」
出雲がここに着た理由は、ヒュージ討伐に使用したグングニル・カービンの替わりになるCHARMを借りるためである。
グングニルの派生機であるグングニル・カービンは使いやすさを重視した作りになっているが、出雲の使用してるカービンは低コストの素材を使ってるため必要なマギの貯蔵量に制限がある。
CHARMはリリィが持つマギをの量次第で強力かつ頑丈になるのだが、流石に限界がある。
昨日のヒュージとの戦いで出雲は全力を出せなかったのだ。
次はそうは行かないと思った出雲は別のCHARMを工廠科から借りることにしたのだ。
そんなこんなで、出雲は工廠科の扉を開けた。
中は工房らしい場所で、そこには自分のCHARM、ブリューナグの部品交換をしにやって来た夢結と、現在渡されたブリューナグの部品を交換してる最中の髪飾りを着けた青髪の少女がいた。
2年生 真島百由(ましま もゆ)
出雲「失礼する…先客がいたか…」
夢結「……何かご用でも?」
出雲「新しいCHARMを借りに来たんだ。そっちはブリューナグの点検だな」
夢結「…はい」
夢結は表情を一つも変えずに出雲に目を合わさず話していた。
「おお、貴女は出雲先輩ではありませんか!」
女なのに膝が見えるほどの長さのズボンをはいたボーイッシュな青のショートヘアーの少女がやって来た。
1年生 神楽月涼(かぐらづき りょう)
涼「去年の東京防衛戦での活躍はこちらでも伝わっております」
出雲「神楽月か、確かシエルリント学院から転入してきたアーセナルだったな」
涼「はい。そして少し前、レアスキルに目覚めてリリィになりました。現在リリィとしての訓練もこなしております」
出雲「うむ、いい心構えだ。後私の事は先生と呼べ」
涼「それは失礼しました。出雲先生」
礼儀良く話す涼。
そこにメンテナンスを終えたブリューナグを持った百由がやって来た。
百由「終わったわよ。夢結…って先生今来たの?」
出雲「用があって来た。先にそっちの件を済ませてからでいい」
百由「オッケー!」
百由はブリューナグを夢結に渡した。
渡されたブリューナグは砲身以外が新品同様に変えられていた。
百由「どう?」
夢結「ええ。良いわ」
百由「少しガタ付いてたから、幾つか部品を交換しといたわ。銃身は後2回出動したら交換よ。覚えといてね~。私忘れっぽいから。どういたしまして!」
出雲「先に言うのは不自然だぞ?」
夢結「ええ。ありがとう」
と、お礼を言って夢結はそのまま受け取ったブリューナグを持って工廠科から出た。
百結「全く、可愛気が無いんだから…」
出雲「……」
出ていく夢結を見て出雲は思った。
白井夢結…かつては仲間と共に戦ってきた彼女が、今は「2年前」の出来事で心を閉ざし、一人で戦おうとしている。
このままではいつか命を落としかねない、彼女を昔の頃に戻さないと…
百由「それで先生、何の用でここに?」
出雲「新しいCHARMを借りに来た。マギの貯蔵量が多く、シンプルでシャープな物をお願いしたい」
百由「……難しい事を言いますね…シャープと言ったら、グングニルかトリグラフじゃ駄目なんですか?」
出雲「確かにシャープだが、シンプルではないからな」
百由「前に使ったヨートゥンシュベルトは?」
出雲「卒業後に遭遇したラージ級相手に修復不可能な状態まで全損してしまってな…やはり第1世代のじゃ無理があったな」
百由「あれだけ使い込めばダメになりますよ…となると一から作るしかありませんね…」
出雲「時間はあるのか?」
百由「ちょっと新しいCHARMの刃を作ってる最中なの」
出雲は作業台から少し離れた所にある釜を見た。
蓋は閉まっているが、隙間から光が出ていた。
出雲「………CHARMの部品を作ってるのか?」
百由「ええ。少しでも性能のいい物を作りたいので…手が離せません」
出雲「そうか…邪魔するわけにはいかないな…」
代わりのCHARMがないことに悩む出雲。
そこへ涼が話しかけてきた。
涼「先生、CHARM選びにお悩みでしたら僕が専用のCHARMを用意しましょうか?」
出雲「いいのか?」
涼「中等部時代、僕はアーセナルとしての能力向上のため、日本武器CHARM職人に弟子入りした事があるんです。日本刀のCHARM制作はお手のものですよ」
CHARM開発の技術を学んだ涼は入学前、この百合ヶ丘女学院にいくつか自作の日本刀のCHARMをいくつか出してる。
彼女の作った刀のCHARMは変形、飛び道具等の機能を捨てて、高威力、強度の高さ、使いやすさを意識した作りになっている。
最大の人気は、和をイメージしたデザインである。
これらが合わさって、生徒達からかなりの評価を貰っている。
出雲は涼のCHARM制作の腕を見込み、頼むことにした。
出雲「日本刀…頼んでいいか?」
涼「3日後に完成する刀のCHARMで良ければ」
出雲「構わん。CHARMのテスト運用も出来ればやってやろう」
涼「それは是非僕からもお願いします。希望があれば制作中に色々調整しますけど」
真島「私も見てみたいわね。涼さんの新しいCHARM。こっちのCHARM開発のヒントが見つかるし」
百由は涼の技術を高く評価しており、たまに涼がCHARMをいじくる所を覗いたりしている。
三人がそう話してる時、ドアが開き、梨璃、楓、二水、ミリアムがやって来た。
梨璃「わっ!眩しい!」
百結「ごきげんよう。ちょっと待って。これからCHARMの刃を硬化処理する所なの」
釜からCHARMの刃を取り出すと、今度は低温の油に入れて刃を冷却する。
百由「いらっしゃい。梨璃さんと楓さんね。えーとあなたは…」
二水「二水です!二川二水!」
鼻血を警戒し、両手で鼻を押さえる二水。
百由「宜しく二水さん」
出雲「一柳とヌーベル、二川とグロピウスか。何の用で来たんだ?」
ミリアム「この者達にCHARMの事をもっと教えようと思ってな…」
涼「き、君は…!」
突然楓の姿を目撃した涼が楓に指を指す。
楓「!?」
涼「君は、楓・J・ヌーベルではないか!」
梨璃「楓さん知り合いですか?」
楓「いえ、この子の事は知りませんわ」
二水「彼女は神楽月涼さん!日本刀のCHARMを作った有名なアーセナルです。ぶふぉ!!?」
警戒を緩めてしまったのか、興奮してまた鼻血を出してしまう二水。
梨璃「うわ、二水ちゃん!?」
涼「僕は覚えてるぞ。中等部時代僕が自作のCHARMをメルクリウスに送り届ける最中に目撃したんだ。ヒュージと戦う君の姿を…その華麗なCHARMは僕の心を鷲掴みにし、虜にした。そして僕は理解した…君こそが僕のライバルに相応しいと!」
楓「私は知りませんわ。それに貴女とは会ってもいないし、ライバルでもありませんわよ」
二水「私の知ってる情報では、彼女は中等部時代、アーセナルとして活動していて、シエルリント学院に入ってた記憶が…」
ミリアム「お主また、いつもの妄想か?」
涼「妄想ではない!これは僕の記憶の物語だ。もう一人の君だってそうだろ?」
ミリアム「もう一人のわしってなんじゃ!!と言うか、そういうのを…!」
二水「あのー…」
ミリアム「なんじゃ?」
二水「思い出したんですけど、シエルリント学院と言えば中二病育成ガーデンとして名の高い…名門校だったと…」
梨璃「中二病?」
と、楓、二水、ミリアムの3人は涼を可哀想な目で見た。
涼「そ、そんな目で見るなー!」
恥ずかしくなって顔を赤くする涼。
涼「……そうだよ…そうなんだよ…僕は四年前、同級生からアーセナルになるならここがいいよとオススメされて、いざ入ってみたら、外から隔離された異質な世界だった。リリィを魔女と呼び、見るに耐えないネーミングの必殺技の数々。皆おかしいんじゃないかと思った事もしばしばあった…辞めたいと思った事もあった。けどアーセナルの技術力を得るためには耐えるしかなかった。本当に辛い3年間だったよ。お陰でこの通り僕も中二病が移ってしまった。今となっては思い出したくない過去だよ」
と、話し、涼は疲れたかのように頭を下げる。
楓「…自覚はしてるんですわね…というか、ごめんなさい」
百由「私はそんなの気にしてないわよ」
そういう話題もありながら、百由は冷却した刃をゆっくりと取り出す。
百由「さあ、上手く言ってよ…」
取り出した所でしばらく待つと、何かの金属音が響いた。
涼「割れたね。これ」
それを聞いた百由は崩れ落ち、頭を抱える。
百由「ああ…この一月の努力の結晶が~」
出雲「熱疲労に耐えられなかったようだな」
梨璃「あの…それは?」
落ち込む百由に変わって涼が説明する。
涼「CHARM専用の刃さ。一般的な刃と違ってこの刃にはルーン文字…マギを制御する術式が細かく刻まれている。リリィのマギがこの術式によって活性化することで、ヒュージの体を覆うマギを中和させ、傷を負わせられる。CHARMがヒュージにダメージを与えられる理由の一つだ。マギにはマギを、ヒュージがマギを宿す以上…対抗できるのは同じくマギを宿す者、リリィのみという訳だ」
出雲「これはもう知っているな?」
梨璃「はい。習いました」
ミリアム「こんな物もあるぞ」
ミリアムから渡されたのは、長い金属の筒らしき物だった。
梨璃「これは…」
ミリアム「CHARMの銃身じゃ。よく見い」
ミリアムに言われ、梨璃はCHARMの砲身の中を覗きこんだ。
良く見ると、ライフラインに術式が刻まれていた。
ミリアム「ライフリングにも術式が刻まれておる。弾がここを通る時に魔法マギと共に術式が刻まれると言う訳じゃ」
百由「ヒュージと違ってリリィはCHARMを依代とする事で魔法マギを制御するんだけど…はあ…やっちまった~」
出雲「気分転換に食事でも取ったらどうだ?時には休息も必要だ」
と、百由に休むよう伝える出雲。
変わって食堂…
食堂にやって来た梨璃達と百由、出雲は昼食を取っていた。
ミリアムと涼はCHARMのメンテナンスでこれなかった。
そんな中、百由は大きなお皿4つ重ねたまま完食してきた
出雲「食べ過ぎじゃないか?」
百由「いいんです!」
梨璃は百由に夢結の事を話した。
百由「しっかし、よりによって夢結とシュッツエンゲルだなんてねぇ」
梨璃「はい。でも全然相手にして貰えなくて…あの、夢結様が今使っているチャームは…」
楓「ブリューナクですわ」
梨璃「2年前に使っていたのは…」
百由「ダインスレイフね」
梨璃「何故夢結様はチャームを持ち替えたんですか?」
百由「成る程ね。それは本人に聞くしかないでしょうね」
梨璃「百由様は何かご存じなんですか?」
百由「知ってるわ。けど教えない」
出雲「私も同様だ」
梨璃「何故ですか?」
百由「本人が望まない事を私がペラペラ喋る訳には行かないでしょ?」
梨璃「?」
出雲「一柳、もし誰かがお前の事を他の人間にベラベラと話されたらどうする?そういう事だ」
百由「リリィは税金も投入される公の存在であるけど、その個人情報は本人がそれを望まなければ一定期間非公開にされるの。個人の心理状態が戦力と直結する上に、感じやすい10代の女子ともなればまあ仕方ないかもね」
楓「あのお方、感度高そうには見えませんけど」
百由「感じ過ぎるのよ。感じ過ぎて振り切れてしまった。おっと言い過ぎた。後は本人に聞いて話してくれるならね」
と、話を切った百由だった。
楓「梨璃さん、どうしてそこまで夢結様に拘りますの?」
梨璃「初めて出会った時の夢結様と、今の夢結様はまるで別人みたいで…私…それが不思議で。知りたいんです」
出雲「白井がそれを望んでいなくてもか?それとも、お前なら白井を変えられると?そんなのはお前のエゴじゃないか?」
梨璃「それは…そうかもしれないですけど…何が夢結様を変えてしまったのか。夢結様が胸の内に何をしまっているのか。私それを知りたいんです」
引き下がる様子はない梨璃に、出雲は何かを思い付く。
出雲「一柳、3日後にお前とヌーベル、二川を含む10名で共同訓練を行う。白井に認めたければ、その力を示すしかない」
梨璃「先生…」
出雲「シュッツエンゲルの契りを交わせる…とまでは行かないが、お前に対する印象は少し変わるはずだろう」
梨璃「先生…ありがとうございます!」
出雲「その代わり、私は優しくないからな。覚悟しておけ」
出雲が梨璃に指を指す。
梨璃「は、はい!」
楓「これはもう当たって砕けるより他になさそうですわね。ここは私も一肌脱いで、必ず梨璃さんと夢結様にシュッツエンゲルの契りを交わさせてみますわ。そしてそのあかつきには…!うふふ…完璧ですわ!」
二水「楓さん、妄想がダダ漏れです」
出雲「抜け目のない奴だ」
それから数時間後…午後のホームルームで出雲は3日後の訓練に参加する生徒に話をした。
クラス外の参加生徒はメールで伝えた。
そんなこんなで、3日後…
一足早く出雲が訓練場に到着した。
時刻は午後3時を回っていた。
出雲「ちょっと早すぎたか…」
訓練を始める時間まで、まだある。
出雲はそれまでの間、準備運動を行った。
それから数分後、涼が横に長いアタッシュケースを持って到着した。
涼「すみません先生、最後の調整に時間を掛けてしまって…」
出雲「構わん。訓練までまだ時間はある。それでそのアタッシュケースは…」
涼「はい。完成しました」
涼はアタッシュケースを地面に置いて、出雲の前で開けた。
中には変わった日本刀が2つあった。
柄は少し長く、刃は直径1メートル。
鍔の所はマギクリスタルコアが内蔵され、左は砲身、右にはひし形のパーツが取り付けられていた。
まさにシャープな形状である。
片方は黒塗りでもう片方は白一色であった。
涼「僕が作った日本刀のCHARM、黒鉄(くろがね)と白銀(しろがね)です。過去に作った虎鉄の強度とマギによる強化を更に向上させ、牽制向けの飛び道具を追加した仕様となっています。先生はこちらの黒鉄を使ってください」
出雲「これか…」
出雲は指輪の付けた右手で黒鉄を持ち、契約を始めた。
すると、マギクリスタルコアにルーンが浮かび上がり、契約は完了した。
出雲「良く馴染む…」
涼「素材は耐久性に特化した物を、使ってるコアも大容量の物にしました」
出雲は持ってたリモコンを操作し、ヒュージに似たドローンを一体だけ呼び出す。
出雲は黒鉄を構えてマギを込める。
そして向かってくるドローンを黒鉄で3度も斬り、3つに分けた。
そこから黒鉄を横に向けてトリガーを押し、無数の弾丸をドローンに浴びせた。
ドローンは落ち、3つに分けられた胴体は無数の穴が出来ていた。
出雲「いい…この感じ…神楽月、気に入ったぞ!」
出雲は黒鉄が気に入ったようである。
涼「喜んでいただいてうれしい限りです」
涼は残った白銀を右手に持っていた。
既に契約を完了していた。
出雲「神楽月はそのCHARMか」
涼「テスト運用はこちらも兼ねてますから。こちらは性能も少し違います」
出雲「訓練で是非見せてもらうぞ」
そう話してる内に、二人がCHARMを持ってやって来た。
一人は白井夢結。もう一人は緑髪のショートヘアーの少女である。
2年生 吉村・Thi・梅(よしむら てぃ まい)
彼女の所有CHARMは父が開発に関わった大刃のタンキエム。
夢結「早いですね。先生」
梅「梅達が一番だと思ったんだけどな」
出雲「予定より仕事が片付いただけだ」
話をしてるうちに梅は出雲の持ってるCHARMに気付く。
梅「お、先生新しいCHARMか?」
出雲「神楽月が作った最新のな」
涼「先生、お二人も訓練に入るんですか?」
出雲「今回の訓練対象は1年生のみだ。二人には訓練のサポートを手伝ってもらう」
そして数分後、梨璃、二水、楓、雨嘉、神琳、無口な金髪のポニーテールの少女がやって来た。
1年生 安藤鶴紗(あんどう たづさ)
遅れてミリアムもやって来た。
梨璃「もう夢結様達、集まってる!」
二水「先生が新しいCHARMを!」
ミリアム「あれが涼の作った刀のCHARMか…良くできておる」
出雲「全員来たな。CHARMもちゃんと持参してる。1年生全員並べ」
1年生達「はい!」
1年生達が横一列に並ぶ。
出雲「よし、まず訓練を始める前に各自、自己紹介をしろ」
梨璃「自己紹介?」
出雲「リリィ足るもの、仲間との交流も大事なことだ」
楓(めんどくさいですわね)
鶴紗(めんどくさ)
そう考えてる二人の足下に突然チョークが飛んできた。
チョークは地面に当たり、粉々になった。
楓「ひっ!?」
鶴紗「!?」
それを見た二人は恐怖を感じた。
無表情の出雲からは恐ろしいオーラを発していた。
出雲「今、めんどくさいとか考えてただろ?しゃきっとしろ」
二人「は、はい!」
残りの6人も危機感を感じ、気を引き締め。一人一人が前に立ち、自己紹介を始めた。
梨璃「一柳梨璃です」
二水「二川二水です!」
楓「楓・J・ヌーベルですわ」
雨嘉「王雨嘉です」
神琳「郭神琳と申します」
鶴紗「…安藤鶴紗だ」
ミリアム「ミリアム・ヒルデガルド・v・グロピウスじゃ」
涼「神楽月涼です」
出雲「よし、次は2年生、お前達の番だ」
2年生の二人も自己紹介をする。
梅「吉村・T・梅だぞ」
夢結「……白井夢結よ」
出雲「そして今回お前達の指導を担当する如月出雲だ。よろしく」
1年生達「よろしくお願いします!」
1年生達は礼をしながら挨拶をした。
出雲「うむ、いい挨拶だ」
楓「ちょっと宜しいでしょうか」
出雲「なんだ?」
楓「何故ミリアムさんと涼さんがいらっしゃるのですの?椿組ではありませんけど…」
出雲「二人はレアスキルに覚醒したばかりの新米リリィだ。そして今回はCHARMの試験機の運用を兼ねている」
二水「先生の持ってるそのCHARMもですか?」
出雲「ああ。グロビウスのCHARMはニョルニール。ユグドラシル社CHARM「ミョルニール公開コンペ」の出品機体だ。そして神楽月のCHARMは白銀。強度の良さと近接戦闘に特化した機体だ」
楓「そうでしたか…ですがライバルと言った割には、レアスキル覚醒したばかりとは…とんだ拍子抜けでしたわ」
涼「あながち間違ってはいないよ」
楓「?」
涼「僕には夢があるんだ…」
雨嘉「夢?」
涼は握りこぶしを作り、自分の夢を告白する。
涼「僕の夢…それは世界一のCHARMを作り上げる事!有名CHARMメーカー、グランギニョルを越える物をこの手で生み出す事なんだ!」
二水「ぐ、グランギニョルを越える物!?」
神琳「す、すごい夢ですわね…!」
ミリアム「大きく来たのう…」
彼女、神楽月涼の夢に驚く皆。
特に、楓の反応は大きかった。
楓「なるほど…たいした夢ですわね…」
涼の夢の告白で闘争心に火が付いたのか、楓はジョワユーズを涼に向けた。
楓「前言撤回します。貴女をライバルとして認めますわ!グランギニョルにケンカを売ったことを…このジョワユーズで思い知らせてあげますわよ!」
涼「ようやく火が付いたみたいだね。僕にとってグランギニョルは最大の関門。望むところだよ。楓・J・ヌーベル…君にもこの白銀の性能を見せて上げるよ!」
涼は白銀を横に向け、楓の前に出す。
楓「初心者でも手加減しませんわよ」
涼「僕もだって人並み以上の特訓をしたからね。全力でいかせてもらうよ」
お互いに対抗心が宿った。
梨璃「うわぁ……」
ミリアム「お互い燃えておるのう」
といった所で…訓練は始まった。
出雲「まずは射撃訓練だ。CHARMをどれだけ使いこなせるか見せてもらうぞ」
訓練場には専用の円形の的が沢山用意されていた。
出雲「最初は王、郭、安藤!」
呼ばれた3人は位置に立ち、CHARMを機動させ、シューティングモードへと変形させて構えた。
郭神琳のCHARMは媽祖聖札(マソレリック)。
量産されていない世界で1つしかない盾に似た円形の機体で、神琳の戦いに合わせた調整が施されている。
シューティングモードは外側に砲身が出てきただけであり、変形構造は少ない。
王雨嘉のCHARMはアステリオン。
シンプルな構造だが、距離を選ばない汎用性の高い機体である。
シューティングモードは刃の下部分が反対に周り、前にスライドした形態である。
撃つときは刃の下部分に付いたグリップを利手で扱う。
安藤鶴紗のCHARMはティルフィングの量産テスト機。
単体の攻撃性能が高い上に、砲塔部分を切り捨てたショートブレードモードという形態を持つ高級CHARMの1つ。
シューティングモードは柄の部分が90度周り、砲身が露になった状態で。肩に背負って撃つスタイルとなっている。
梅「まずは5発。始め!」
梅の合図で神琳、雨嘉、鶴紗は的に5発命中させた。
特に雨嘉の射った的は中心をしっかり捕らえていた。
梅「うん、全員5発命中だな」
出雲「流石だ。特に王のは見事な射撃だな」
雨嘉「あ、ありがとうございます…!」
喜ぶ雨嘉の隣で神琳は頬笑む。
出雲「他の二人も中々だったぞ。次はヌーベル、神楽月、グロビウス、前に出ろ」
楓、涼、ミリアムが入れ替わりで的の前に立つ。
楓はジョワユーズをシューティングモードに変形させる。
涼は白銀を横に構える。
ミリアムのニョルニールは先端の斧の上部が開き、隠れていた砲身を前に向けた。
これがミリアムのニョルニールでのシューティングモードだろう。
梅「始め!」
梅の合図で3人は射撃を行った。
これも問題なく5発命中。
出雲「流石だな」
楓「動かない的なんて大したことありませんわ」
涼「右に同じく」
二人は的の中心を僅かな擦れがあったものの、当てていた。
しかしミリアムは外してはいないものの、中心からちょっとずれていた。
出雲「グロビウスのCHARMはもう少し調整が必要だな」
ミリアム「うむぅ…」
梨璃「みんなすごい…」
出雲「感心してる暇はないぞ。次は一柳、二川の番だ」
梨璃「は、はい!」
梨璃と二水が入れ替わりで前に出た。
梨璃、二水の持つCHARMは、同じグングニルであった。
出雲「ここでお前達二人の持つCHARM、グングニルについて説明する。グングニルは初心者でも扱いやすいポテンシャルの高い機体だ。近距離のブレイドモードと中距離のシューティングモードの2つに変形する。今回は射撃の訓練な為、シューティングモードの扱いになれてもらう。構えろ」
出雲の指示に二人はグングニルをシューティングモードに変形させる。
梨璃は今回、CHARMをしっかりと変形させていた。
出雲「マギの扱いは覚えたようだな」
梅「では、始め!」
梅の合図で二人はグングニルを構え、弾を5発撃ち出した。
しかしこの後夢結が頭を抱える。
二水は5発とも的に当たっているが、梨璃の的だけ当たっていなかった。
梅「ん?全部外れてるぞ」
出雲「一柳、目をつぶってやれと誰がいったんだ?」
梨璃は弾を撃ち出す時、目をつぶっていたため、狙いがそれてしまったのだ。
出雲「戦場では目を瞑るのは自殺行為にあたる。その事も頭に入れておけ」
梨璃「ご、ごめんなさい…」
そこへ夢結が助け船にやって来た。
夢結「梨璃さん、見ておきなさい…こう撃つのよ」
夢結が右手で持ってるブリューナグをシューティングモードに変形させ、左手を砲身を抑え、梨璃が狙おうとした的に5発撃った。
二水「うわぁ…!!」
神琳「5発とも、全て中心に…!」
出雲「流石白井…見事な射撃だ」
狙った的は5発とも中心に当たっていた。
しかも1発目で開けた穴を残りの4発が通っていた。
梨璃「うわぁ…」
夢結「……ちゃんと見てた?」
梨璃「は、はい!」
夢結はこれ以上なにも言わず、元の位置へと戻る。
出雲「一柳は後で射撃の特訓だな…他のみんなは実力申し分ない…さて、それじゃそろそろ…」
「ちょっと待ったー!」
突然聞き覚えのある声が聞こえた。
やって来たのはメガネをを掛けた少女、百由だった。
ミリアム「百由様!」
出雲「真島か、なにか用か?」
百由「思ったんだけど、ここにいるのはほとんど実践経験のある子達でしょ?動かない的が相手じゃ物足りないと思いますけどね?」
出雲「何が言いたいんだ?」
百由「訓練の事で提案があるんだけど?」
出雲「提案か…聞かせてもらおうか」
百由「これから8人には、模擬ヒュージ戦で実力を競ってもらうわ!」
二水「模擬ヒュージ戦!?」
百由「しかも、2チームに別れてヒュージの撃破数を競う対決方式よ!」
楓「対決?」
出雲「真島、それを行おうにも準備が…」
百由「準備ならもう済んでますよ」
出雲「早いな。というかこうなることをわかってやったな?」
百由「バレたか」
一方、生徒達は…
涼「いいですねえ。楓に白銀の性能を見せつける絶好の機会ですよ」
楓「言いましたわね。ジョワユーズが貴女のCHARMより優れてる事を教えて差し上げますわ!」
二人の対抗意識が更にヒートアップする。
梅「なるほど、面白そうだな!」
出雲「おい何かってに…」
夢結「…」
楓「私は梨璃さんのチームに入りますわ!」
梨璃「え、私のチーム!?」
涼「二水、君はこっちに入ってくれ。鶴紗も一緒に」
鶴紗「めんど…わかった」
出雲にやられた事を思い出し、危機感を覚えた鶴紗は渋々涼のチームに入る。
神琳「面白いですわ。私、雨嘉さんとは競ってみたいと思ってましたの」
雨嘉「わ、私なんか…」
引っ込もうとする雨嘉だが、朝に出雲から言われたことを思い出すと、表情が変わった。
雨嘉「うん…私、負けないよ…!」
神琳「え!?」
雨嘉が口にした予想外の答えに驚く神琳。
雨嘉「ん?どうかしたの?」
神琳「雨嘉さんがその気になるなんて思わなかったから驚いたわ」
雨嘉「そう?」
神琳「いいわ。勝負よ!」
ミリアム「じゃあワシと雨嘉は梨璃のチームに入ることになるな」
雨嘉「よろしくお願いします」
梨璃「わ、私まだCHARMの扱いがまだ…」
楓「大丈夫ですわ。梨璃さんは私が守って差し上げますわ!」
と言って梨璃に抱きつく楓。
そのまま楓の右手が梨璃のお尻を捉え……
出雲「スキンシップという皮を被ったセクハラはやめろ」
突如出雲が楓のセクハラを止める。
楓「皮を被ったなんて、言いがかりですわ」
という感じでチームは決まった。
場所は代わって外の廃虚エリア。
梨璃が逃げたヒュージを探すために訪れた場所であり、ここが2チームが競う戦いのフィールドになる。
梨璃、楓、ミリアム、雨嘉のチームと…涼、神琳、二水、鶴紗のチームは、それぞれ指定されたエリアに着いた。
周囲には百由が用意したミドル級の模擬ヒュージがあちこちに動いていた。
百由「ざっと30体は用意したわ」
出雲「出しすぎだ。模擬ヒュージの思考はどうなんだ?」
百由「普段は特定の範囲を移動しますが、相手が視界に10メートル以内に入ると殺傷力のない弾を撃つように設定してあります」
出雲「なるほどな。まあそれぐらいがいいだろう」
2年生の二人は外の環境が気になった。
梅「風が強いな…」
夢結「ええ…これでは攻撃の軌道が読みづらいわね」
梅「そこが勝負どころだな」
2チームの方は、それぞれの特徴を話しつつ作戦を立てている。
涼「テスタメントとファンタズム、それと鷹の目か…模擬ヒュージ戦では必要不可欠なスキルだな」
二水「ところで涼さんのレアスキルは何ですか?」
涼「ゼノンパラドキサだ。素早く動きながら攻撃を簡単に出来るようになる戦闘特化のスキル」
神琳「円環の御手と並ぶ程の強力ですね」
鶴紗「で、戦法は?」
鶴紗に言われ、涼は戦術を皆につたえる。
もう一組のチームも、戦術をたてていた。
楓「まずは私と梨璃さん、ちびっ子2号と雨嘉さんの二組で模擬ヒュージを倒して行きますわ。それぞれが単独で撃破するより、撃ち漏らした敵をまとめて倒す方が確実に撃破数を多く稼げますわ」
ミリアム「そうじゃな…って、誰がちびっ子2号じゃ!というか、何故この組み合わせなのじゃ?」
楓「梨璃さんはまだ初心者ですわ。そのため現場はカバー出来る者が必要になりますわ。ちびっこ2号のCHARMは射撃より近接戦の方が活躍出来ますし、後方は射撃の得意な雨嘉さんが適任ですし、彼女と組んだ方がバランスよく戦えると判断したまでですわ」
中等部時代、楓はレギオンの予備隊でファンタズムを複数扱える司令塔として活躍してたため、指揮能力は高い。
多少下心はあるものの、的確な戦法を3人に伝えているので非常に心強い。
これにはミリアムと雨嘉も反対するなく戦法を受け入れる。
ミリアム「わかったのじゃ。この勝負、お主の戦術が重要だからの」
雨嘉「私も意義ありません」
梨璃「わ、私も頑張らなきゃ…」
楓「梨璃さん、ここは夢結様にいいところを見せつける絶好のチャンスですわよ。頑張ればシュッツエンゲルの夢も叶うはずですわ!」
梨璃「楓さん…うん。私やるよ!」
楓「その意気ですわ!」
雨嘉(初心者のこの子も頑張ろうとしている…私も頑張らなきゃ…!)
梨璃の頑張りに感化したのか、雨嘉の自信が更に強くなる。
ミリアム「張り切っておるのう」
ミリアムが感心する中、アナウンスが響いた。
出雲「準備はいいな?それでは始めるぞ」
出雲の合図に向けて各チームのリリィ達がCHARMを展開し、構える。
出雲「対抗戦…始め!」
開始の合図と共にゴングの音がフィールド場に響いた。
百由「いつの間に持ってきたんですかそれ?」
出雲「対戦と言ったらこれだろ」
各チーム、それぞれの戦法で模擬ヒュージ討伐に向かう。
戦陣を切ったのは楓。
シューティングモードのジョワユーズで空を動き回る模擬ヒュージを撃ち倒していく。
それに付いていくかのように、梨璃がグングニルをシューティングモードに変えて同じく模擬ヒュージを攻撃していく。
夢結が先程梨璃に見せた構え方を試したが、まだかすり程度だが、狙いはよくなってきている。
グングニルのシューティングモードは、光の弾を連続で撃ち出す中距離に適したレーザーマシンガンタイプ。
命中精度もよく、初心者の梨璃でも扱いやすい。
梨璃「まだ当たらない…」
楓「いえ梨璃さん、少しずつ上手くなっていますわ。その調子ですわよ!」
梨璃「うん、ありがとう」
と、梨璃を誉めてる楓。
ミリアムと雨嘉は…
向かってくる模擬ヒュージをミリアムがニョルニールのアックスモードでなぎ倒し、逃げる模擬ヒュージを雨嘉がアステリオンのシューティングモードの後方射撃で確実に撃ち抜いていく。
ミリアム「やるのう」
雨嘉「これぐらい普通だと思いますけど…」
ミリアム「いや、そこまで正確な射撃、他のリリィには出来ん。頼りにしておるぞ」
雨嘉「……はい!」
ミリアム、雨嘉のペアは問題なしである。
一方相手の涼率いるチームは二人いるアタッカーを生かし、大きく前進していった。
向かってくる模擬ヒュージの群れを涼が右手に持った白銀で斬り倒しながら、鶴紗が続けてティルフィングのブレイドモードで叩ききる。神琳が媽祖聖札のシューティングモード、二水がグングニルのシューティングモードで溢した敵を撃ち抜いていく。
涼の立てた作戦は、相手チームの陣地に早く着いてからUターンして模擬ヒュージを倒す戦法である。
こうなると相手チームの周囲にいる模擬ヒュージが減ってしまい、不利になってしまう。
涼「よし、順調だ」
鶴紗「ちょっとセコい」
神琳「でも、いい作戦ですわ」
二水「私、今有名なリリィ達と一緒に戦ってる!ここまで嬉しいことは…ぶふぉ!!?」
模擬ヒュージ戦でも興奮して鼻血を出してしまう二水。
神琳「あらら、大丈夫ですか?」
二水「ごめんなさい、大丈夫ですから…」
涼「ティッシュあげるから、これで鼻を塞いで」
すぐに駆けつけた涼が二水にティッシュを渡す。
二水「あ…ありがとうございはふ…」
順調に進む涼のチーム。
そんな中、神琳は了解の新しいCHARMの性能に驚いてた。
神琳(涼さんの白銀…細めの刀身なのに刃こぼれがない…!)
そんな両チームの様子をドローンで確認して、タブレットで観覧している出雲と夢結、梅と百由は…
百由「皆飛ばすわね~」
梅「両チーム、中々やるな!」
夢結「……」
出雲「まだ序盤だ。勝負はこれからだろう…」
と、両チームの戦いを見守る出雲達だが…
外を見ると、遠くから何やら黒く巨大な人のようなものが両チームのいるフィールドにやって来た。
出雲「!?」
梅「どうしたの?」
出雲「ラージ級がこっちに来る…両チームはまだ気付いてない…!」
夢結「合流した方がいいわね…」
百由をその場に残し、出雲は黒鉄を起動させる。。
出雲「真島は模擬ヒュージを撤退させた後、オペレートを…吉村、白井は一柳のチームと合流しろ。神楽月のチームは私が行く」
夢結「わかりました」
梅「後輩たちを助けないとな!」
百由「ついでにヒュージの捕獲も…」
出雲「却下」
と言って出雲は涼のいるチームに向かって跳んでいった。
夢結と梅も後から梨璃のいるチームの元へ向かっていった。
代わって梨璃のいるチームは突然模擬ヒュージが去っていったのを見て違和感を感じた。
梨璃「あ、あれ?」
楓「模擬ヒュージが去っていく…」
ミリアム「何かおかしいのう…」
梨璃「楓さん危ない!」
突然梨璃が何かに気付き、楓を庇い避ける。
その後、楓のいた場所にビームが着弾した。
楓「この攻撃は…!?」
雨嘉「皆、あっちを見て!」
雨嘉が指差した先を梨璃達は見た。
すると、巨人のようなものがこちらに向かってきた。
ミリアム「模擬じゃない、本物のヒュージじゃ!」
雨嘉「さっきのはあのヒュージから…!」
巨人のヒュージは梨璃達に再びレーザーを放つが、後から夢結と梅がレーザーを弾き返し、梨璃達の元へ合流し、目の前のヒュージを睨みつつCHARMを構えた。
夢結「皆、訓練は中止よ!」
梨璃「夢結様、まさかあれは…!」
夢結「ヒュージよ。しかもラージ級…!」
ミリアム「ラージ級じゃと!?」
夢結「しかも2体同時よ」
雨嘉「2体!?
梅「ここからは梅で夢結で対応するぞ!」
夢結「皆は一足先に校舎に戻って!」
「いや、戦ってもらう」
涼のチームを連れた出雲が合流してきた。
梨璃「二水ちゃん、皆!」
出雲「ラージ級の他にも、取り巻きのスモール級、ミドル級もいる。1年生達はこのまま取り巻きの殲滅をやってもらう」
二水「ええっ!?」
涼「それって実戦ってことに…」
夢結「先生、まだ彼女達に実戦は…」
出雲「実戦に勝る訓練はない。それに取り巻きがいてはお前達も全力をだせんだろう?」
夢結「しかし…!」
出雲「彼女達はリリィだ。リリィならやることはお前もわかっているはずだ…」
楓「その通りですわ。リリィたるもの、ここで逃げる何て出来ませんわ!」
神琳「私もです!」
ミリアム「わしもじゃ!」
雨嘉「はい!」
鶴紗「敵は倒す…!」
涼「そういうことですよ」
梨璃「私も戦います!」
二水「は、はい!」
全員、戦う気満々である。
梅「困った奴等だな…なあ夢結」
夢結「……わかったわ。皆はスモール級、ミドル級を頼むわ」
出雲「極力固まって行動しつつ取り巻きを確実に仕留めろ」
1年生達「はい!」
1年生達は取り巻きのスモール級、ミドル級の処理に向かった。
その後、百由からの通信が出雲の端末から聞こえてきた。
百由「3分後に別のラージ級をこっちで確認しました。すごいスピードでこっちに来るから気を付けて!」
百由からの通信を聞き、出雲は夢結、梅にそれを伝える。
出雲「別のラージ級が3分後に来る。早めに片付けるぞ。この一体は私がやる。お前達はもう一体をやってくれ」
夢結「はい」
梅「そうだな!」
出雲を残し、夢結、梅はもう一体のラージ級へ向かった。
残った出雲とラージ級は互いに睨み合う。
まず先手を切った出雲がラージ級に対し、牽制を仕掛ける。
黒鉄を横に構えてトリガーを引くと、柄に取り付けられた2本の砲身から無数の光の弾を撃ち出す。
しかし、強風のせいで弾の軌道がずれてしまい、狙いがそれてしまう。
それでも弾のいくつかはラージ級に命中した。
出雲「さすがに遠距離でこの風は読みづらいか…なら」
遠距離では部が悪いと考えた出雲は近接攻撃に切り替え、ラージ級に攻撃を仕掛ける。
出雲「この黒鉄の切れ味…お前で試させてもらう」
出雲はラージ級の周囲を跳び回りながら右手に持った黒鉄で何度も切りつける。
たった数秒で、ラージ級の体には大きな傷が数ヶ所付き、ラージ級の右肩は切り取られ、それぞれ青い液体を吹き出していた。
出雲「いいCHARMだ。これほどの切れ味に加え、刃こぼれもないとは…素晴らしい」
出雲は黒鉄の性能を改めて実感した。
一方、夢結と梅ももう一体のラージ級に遠距離で攻撃するも、こちらも強風によって攻撃が逸れてしまう。
梅のCHARM、タンキエムは片刃の大剣だが、変形時は刃の先端が2つに別れ、砲身が露になる。
それを重機関銃のように持ちかえて撃つのが、タンキエムのシューティングモードである。
威力はあるが、命中精度は普通に悪い。
強風が吹く環境なら尚更である。
梅「風が強くて…軌道が読めない…!」
夢結「!」
これではらちが明かない為、二人はCHARMをブレイドモードに変形させ、近距離で短期決戦を狙う。
そして遅れて1年生組が取り巻きのヒュージ達を全て片付け、こちらに向かってきた。
涼「ラージ級はまだ健在か…」
ミリアム「見たところ攻撃をかなり受けてるようじゃが、まだ耐えておる」
二水「出雲先生の方は…」
二水が出雲の方を気にする。
神琳が少し離れたところで戦ってる出雲の方を確認した。
神琳「すごい…一人であのラージ級を追い詰めてる…!」
楓「前にヒュージを相手にした時よりも動きが違いますわ。それに新しいCHARM…すごいですわね」
涼「CHARMもそうだけど、それ以上に先生のマギが強いのは驚いたよ…」
と、話してる内に出雲がラージ級の一体を倒した。
二水「先生がラージ級を一体倒しました!」
ミリアム「もう一体は…!」
夢結と梅が戦ってるラージ級も少しずつ追い詰めてられている。
夢結「そこ!」
夢結がブリューナグに更にマギを込めて攻撃力をあげた後、そのままラージ級に攻撃しようとした。
しかし次の瞬間、夢結の横から新たなヒュージが飛んできた。
サイズからして、ラージ級だろう。
その姿は、鳥に似た頭に無数の翼を付けた異形の生物である。
梅「もう一体!?」
夢結(不味い…避けられない!)
鳥のヒュージが夢結目掛けて光のビームを放つ。
空中では体勢を変えられない為、夢結に攻撃を避ける手段はなかった。
梨璃「危ない!」
突然夢結の横に現れた梨璃がグングニルで放たれたビームを受け止めるが、弾き返される。
梨璃「きゃあ!」
しかし、弾き返されたビームは夢結に当たらず、空に反れていった。
夢結「梨璃さん!?」
二水「梨璃さん!」
楓「梨璃さん!」
二水と楓が、飛ばされた梨璃の元へ来た。
梨璃「あいたたたた………」
二水「梨璃さん大丈夫ですか!?」
梨璃「うん、大丈夫」
楓「突然の奇襲から夢結様を守る梨璃さん。なんてたくましい…!」
梨璃を讚美する楓。
と、そこに、先程奇襲を仕掛けた鳥のヒュージが1年生達の元へ現れ、同時に取り巻きのスモール級、ラージ級も数体現れた。
こちらは2種とも4枚の虫のはねが生えた目が付いた鉄の球体の姿をしていた。
その数はスモール級、ミドル級、ラージ級を含み19体。
ビームを弾き返した梨璃を危険視し、狙いを変えたようだ。
二水「さっきのヒュージが!?」
梅「不味い!」
梅は助けに行こうとするが、突然鳥のヒュージが遅れて来た出雲によって横に飛ばされた。
梨璃「先生!」
出雲「遅れてすまない。あのラージ級は私に任せろ。新たに現れた取り巻きは頼むぞ!」
取り巻きのスモール級、ミドル級を1年生組に任せ、出雲は飛ばした鳥のヒュージを追いかける。
対し、鳥のヒュージを追いかける出雲にミドル級達がレーザーを連射したが、当たらなかった。
梅「夢結、梅達もこのヒュージを!」
夢結「ええ」
二人も仕切り直して今相手にしているラージ級に再び攻撃を行う。
一方、合計18体のスモール級、ミドル級を相手にする1年生達は…
二水「スモール級とミドル級…結構いますね…!」
神琳「スモール級とはいえ、油断は出来ませんわね…それにこの数…」
敵の数はこちらの倍…ミドル級はスモール級の後ろで止まっていた。
このまま攻めても、後ろにいるミドル級の集中砲火を受けるため迂闊に近付けない。
涼「問題はあのミドル級だ。見たところ支援に特化したヒュージのようだ。早めに片付けたいが、援護射撃に加え、この風だ。遠距離攻撃はあてにならない」
鶴紗「それでも…倒すだけだ」
楓「大丈夫ですわ。ここは私が…!」
ミリアム「ワシに任せい!!」
突然楓と鶴紗が攻撃を仕掛ける前にミリアムが前に立った。
ミリアムの体から紫色のマギが溢れていた。
涼「ミリアム、そのレアスキルはまさか…!」
ミリアム「受けてみよ、ワシの渾身の…一撃じゃー!!」
ニョルニールを前に構え、溜め込んだマギを巨大ビームのように放出し、周囲のスモール級、ミドル達を巻き込んだ。
雨嘉「やった!
梨璃「ミリアムさん凄い!」
二水「ミリアムさんのレアスキルは、フェイズトランセンデンスですね!」
ミリアム「どうじゃ!これで全部倒したはず……」
ミリアムが突然力が抜けたように大の字に倒れた。
梨璃「ミリアムさん!?」
ミリアム「か、体が…うご…かぬ…」
見た限りミリアムは立ち上がれる力が無いようだ。
涼「その様子だとフェイズトランセンデンス、実戦では初めてのようだね」
梨璃「どういうことですか?」
二水「フェイズトランセンデンスは、一定時間マギを無限に使用できる強力なレアスキルですが、使いこなせない内はこのように動けなくなるんです」
涼「更に、使用後は一時的にマギが低下する」
楓「ぶっつけ本番で初めてレアスキルを使うなんて、なに考えてますの…って聞いてますの!?」
ミリアム「…」
返事がない……ミリアムは気を失っているようだ。
涼「マギを使い果たして気を失っているな、これは…」
鶴紗「気を付けて…まだ敵がいる!」
皆が鶴紗の方へ向くと、ダメージを受けたミドル級が数体残っていた。
スモール級はミリアムのフェイズトランセンデンスで全てやられたようだ。
雨嘉「ミドル級が…」
神琳「倒しきれなかったようですわね。ですがこれだけなら…」
涼「次は僕に任せてくれ」
涼が白銀を構え、レアスキルを発動する。
二水「り、涼さん!?」
涼「僕のレアスキルは、取り巻き相手との相性がいいからね」
そう言った後、涼が普段より早く動き、残ったミドル級達をすれ違い様に一瞬で斬り倒した。
梨璃「ヒュージが一瞬で…!」
二水「今のは…!」
神琳「ゼノンパラドキサ…!」
レアスキル ゼノンパラドキサ
「縮地」と「この世の理」のサブスキル…Whole orderとインビジブルワンの効果をあわせ持った複合スキルであり、高速移動しながら同時攻撃が可能となる。
もしもの時の緊急回避にも使える。
涼のお蔭で取り巻きのヒュージは全て倒され、残すは出雲、夢結、梅が戦ってる2体のラージ級である。
しかし、出雲はともかく、夢結、梅のマギは残り少ない。
夢結と梅が戦ってるラージ級は結構大きいため耐久力が
高い。体のあちこちに沢山の斬られた傷が出来たものの、まだやられる様子がない。長引けば二人が不利なる。
神琳「雨嘉さん、ミドル級のコアを狙って下さい」
雨嘉「神琳!?」
神琳「二人のマギも残り少ない上にこの強風…でも貴女のレアスキルと腕なら、ラージ級のコアを狙えるはずですわ」
雨嘉「でも…」
神琳「大丈夫ですわ。雨嘉さんなら出来ます。自分を信じて」
梨璃「雨嘉さん!」
楓「悔しいですが、ここは貴女が頼りですわ。私達では狙えませんもの」
皆が信じてくれてることに自信が出たのか、雨嘉は決意した。
雨嘉「………やってみる!」
雨嘉が高い建物に跳び移り、シューティングモードに変形したアステリオンを構えた。
更に自身のレアスキルを発動し、夢結と梅が戦ってるラージ級に狙いを定める。
涼「あれは、天の秤目か」
二水「遠く離れた敵も数分の誤差もなく把握する」
雨嘉がラージ級に狙いを定めるも、強風が狙いを妨害する。
雨嘉(また風が…やり過ごす。ううん、いける!)
強風に関わらず、雨嘉は軌道を読み取り、ラージ級の頭部目掛けて精密射撃を数発撃った。
弾は全て頭部を貫き、大きなダメージと一時的な隙を作った。
梅「今だ!」
夢結「はあああ!!」
雨嘉が作った隙を狙って、夢結と梅は残ったマギをCHARMに込めてラージ級の両肩、体を切り裂いた。
手応えがあったのか、ラージ級は倒れた。
梨璃「やった!」
神琳「流石でしたわ。雨嘉さん」
鶴紗「出雲先生の方は…」
二水「………あちらもどうやら終わった見たいです!」
鷹の目を使った二水は、出雲が鳥のヒュージを倒したことを確認し、皆に伝えた。
エリア内にいるヒュージはもういない。リリィ達の勝利であった。
神琳「雨嘉さん、貴女はもっと自信を持っていいですわ。そうでしょ?」
雨嘉「神琳…うん!」
戦いが終わり、リリィ達は集合した。
出雲「よくやったお前達。突然のヒュージの襲来に怯みなく戦った行動はリリィとして恥ずかしくない」
1年生組「はい!」
梅「梅も驚いたぞ。ここまでやるなんてな。良かったぞ」
夢結「………そうね」
出雲「神楽月、このCHARMのお蔭で全力を出せた。データは後で真島から貰ってくれ」
涼「いえいえ、こちらこそデータ収集に強力してくれてありがとうございます」
出雲「思わぬトラブルがあったが、今日の訓練はここまでにする。各自身体を休めておけ。ヌーベルはグロビウスを保健室に連れてってくれるか?」
楓「本当なら梨璃さんを背負いたかったですが、今回は我慢しますわ」
楓は今、フェイズトランセンデンスの反動で眠っているミリアムを背負っていた。
二水「私も手伝います」
出雲「よろしい。全員…解散!」
解散の号令に全員は別々に校舎へと帰ることとなった。
楓も帰ろうとした所、涼がやって来た。
楓「涼さん?」
涼「楓、トラブルがあったけど、君のジョワユーズ…中々良かったよ」
涼が楓のCHARMを誉めた。
楓「あ…貴女の白銀も、中々でしたわよ」
楓の返しの誉め言葉で涼も笑みをとる。
楓「ですが、グランギニョルのCHARMはこの程度では御座いませんわよ。次のヒュージ戦でその真価を見せますわ!」
と、自信げに自分のCHARMが優秀であることを涼に告げる楓。
涼「ふふっ、こっちも白銀を更に磨きをかけて見せてあげるよ!」
同じく涼も自分のCHARMもこれから強くなることを楓に告げる。
と、お互い笑みを浮かべつつ、楓と涼、二水は校舎へと帰っていった。
出雲も一旦帰ろうとするが、雨嘉がこっちにやって来た。
出雲「王か…どうした?」
雨嘉「先程は、ストラップを拾って頂いた後にアドバイスをありがとうございます」
出雲「アドバイス?」
雨嘉「自分を信じたらどうだと言われて、私は自信を持とうと考えることが出来ました。今回のヒュージ戦でも、他の皆からも私を信じてくれて、私ならやれると思い始めました。だから私も、これからも自信が持てるよう頑張りたいと思ってます」
出雲「当たり前だ。お前は強い。だからその力でお前の守りたいものを守ればいい。いいな?」
雨嘉「はい!」
雨嘉と別れ、出雲は百由の元へ向かった。
百由はノートパソコンで今回現れたヒュージ達のデータを整理していた。
出雲「何か分かったか?」
百由「先生の言った通り、このヒュージ達…行動が少し戦略的になってる」
出雲「やはりか…1年生達の戦ったミドル級が何故かスモール級の後ろで反撃に備えてた…普通じゃあり得ないことだ」
出雲は1年生達がスモール級、ミドル級の取り巻きと戦ってる所をチラチラと見ていた。
百由「考えるヒュージなんて…初めて聞いたわ」
出雲「今後の対応が必要になるな…私はもう少し黒鉄をならしておく。残った模擬ヒュージを用意しといてくれ」
百由「分かりました。準備するから一足先に行っててくださいね」
出雲「ああ…任せる」
そういう流れで出雲は残った模擬ヒュージを相手にしたのち、校舎へと帰っていった…
…………………………………………………………………
二水「次回は夢結様がルナティックトランサーを…!」
奈々「絶叫リリィの再来ですか?」
夢結「誰が絶叫リリィよ!」
NEXT 白井夢結は受け入れる
CHARM紹介
黒鉄(くろがね)
涼が出雲の要望通りに用意して作った日本刀ベースの実験機で、近接戦闘に特化した仕様になっている。
発注した新型のマギクリスタルを搭載したことで他のCHARMよりも沢山のマギを込められるため、全力を出せばラージ級を一撃で倒すことも可能である。
刀身が他のCHARMと比べて細いのにも関わらず、独自の方法によりダインスレイフ級の強度を持つ上に威力も高い。
鍔のところにはコアとレーザーバルカンの砲身が取り付けられているが、あくまで牽制程度の威力しかない。
白銀(しろがね)
涼が黒鉄と同時に作り上げたCHARM。
性能は黒鉄とほぼ同じだが、この白銀はレーザーバルカンの代わりに高威力のビームが撃てるアーチャーモードの変形が可能。
近距離、遠距離、どちらにも対応出来る。
虎鉄(こてつ)
涼が最初に作った日本刀の形を模したCHARMで、白銀、黒鉄の基となった機体である。
近接専用で飛び道具は搭載されていない。
第一世代CHARMであるヨートゥンシュベルトの上位互換ととらえるぐらいに、ダインスレイフ並の強度とグングニル並の威力を兼ね備えてる。
涼は百合ヶ丘に入学する前に量産する予定だったのだが、他のCHARMよりも製作に時間がかかるため、用意できたのは僅か5本のみである。
虎鉄の性能テストを生徒達の前で披露して以来、今も注文が来る程の人気のあるCHARMとなっている。
次の話はアニメの第3話の内容に近くなります。
投稿まで時間が掛かるかもしれませんが、どうぞよろしくお願いいたします。